株主総会で全議案を承認
米スーパーリーグ・エンタープライズ(Super League Enterprise, Inc.、Nasdaq: SLE)は2026年10月16日の年次株主総会で、メタプラネット(東証スタンダード 3350)による2,100BTCと現金250万ドルの出資に関わる議案をすべて承認し、取引は2026年第4四半期の完了に向けて最大の前提条件を満たした。親会社は日本企業になる見込みだが、日本の広告主から見ると、同社のロブロックス(Roblox)などでの広告を国内から発注できる体制は現時点で確認できず、国内で同じ種類の施策をするなら国内の事業者を選ぶことになる。
この記事は2026年8月に発表された出資契約の続報にあたる。取引条件の詳しい解説は「メタプラネットがSuper Leagueに2,100BTCを出資 Roblox広告事業は「Superplanet」の下で継続」にまとめている。
スーパーリーグは2026年10月19日(米国東部時間午前8時)、GlobeNewswireを通じて「Super League Stockholders Approve All Proposals Related to Metaplanet's Proposed 2,100 Bitcoin and Cash Investment」と題するリリースを出し、10月16日の年次株主総会で全議案が承認されたと発表した(出典: スーパーリーグ公式IRリリース)。出資するのは、メタプラネットの米国子会社 Metaplanet Holdings, Inc. である。

取引条件は8月の契約から変わっていない
10月19日のリリースに書かれた条件は次のとおりで、2026年8月18日の最終契約と同じである。
項目 | 内容 |
|---|---|
拠出 | クロージング時に2,100BTCと現金250万ドル。BTCは現物で移転するため、市場で買わずにトレジャリーを立ち上げられる |
普通株 | 44,859,400株(1株3.00ドル)。株数は2026年8月14日のBTC基準価格で固定済み |
優先株 | 転換型永久優先株100株(一定の議決権・ガバナンス権付き) |
ワラント | 10年、最大3億8,100万株、4トランシェ、行使価格3.00〜33.50ドル |
追加投資枠 | クロージング後24か月間、非転換ジュニア流動性優先株を最大210万株(1株100ドル)引き受けられる。最大2億1,000万ドル |
ロックアップ | クロージングで発行される株式などに5年間(一定の例外あり) |
新社名・ティッカー | Superplanet, Inc.(スーパープラネット)/Nasdaq「SUPA」 |
完了見込み | 2026年第4四半期。Nasdaq Capital Marketへの必要書類の提出などの慣例的な条件付き |
10月19日のリリースはメタプラネットの持株比率に触れていない。公式の数値は8月18日のリリースにある「クロージング後の発行済普通株の約95.7%(プレファンデッド・ワラント行使を前提にすると約93.6%)」である。
8月から変わった3点
1点目は8月時点で条件に挙がっていた「スーパーリーグ株主の承認」が満たされたことである。8月のリリースは条件として株主承認、日米の規制手続き、Nasdaqへの届出を挙げていた。10月19日のリリースは「Nasdaqへの必要書類提出を含む慣例的条件」とだけ書いており、日米の規制手続きが終わったかどうかは書かれていない。
2点目は拠出される2,100BTCの評価額である。8月14日の基準価格では約1億3,210万ドルだったが、10月16日時点では約1億7,000万ドルとリリースは記している。10月6日の株主向けレターでは10月2日時点で約1億7,900万ドルとしていたので、その時点からは下がっている。発行株数は8月14日基準で固定されているため、BTC価格が上がった分は既存株主に有利に働く。
3点目はリリースには出てこないが、スーパーリーグが自社でもBTCを買い始めたことである。詳しくは後の「ここまでの歩み」で扱う。
議決の結果
SECに10月19日付で提出されたForm 8-K(Item 5.07)には、議案ごとの票数が載っている(出典: SEC EDGAR)。主な議案は次のとおりである。
議案 | 賛成 | 反対 | 棄権 |
|---|---|---|---|
Nasdaq上場規則5635に基づく普通株の発行(メタプラネット向けの発行) | 1,055,621 | 25,314 | 19,343 |
第4次修正・再表示定款の承認 | 1,069,071 | 21,672 | 9,535 |
社名変更(勧告的決議) | 1,381,852 | 24,388 | 10,179 |
授権株式数の増加(勧告的決議) | 1,044,801 | 37,673 | 17,804 |
期差取締役会の廃止(勧告的決議) | 1,083,610 | 15,517 | 1,151 |
8-Kには基準日の発行済株式数と出席株式数が書かれていないため、発行済株式の何%が賛成したかはここでは計算しない。投じられた票は140万株前後で、2度の株式併合を経たあとの小さな株式数である。
経営陣のコメント
会長兼CEO兼社長のマット・エデルマン(Matt Edelman)氏は、リリースで次のように述べている(訳は当サイト)。
「この承認で、この会社が何になれるのかを定義し直すところへ一歩近づいた」
「取引が完了すれば、当社はもはや現在の事業規模だけで測られる会社ではなくなる」
リリースはスーパープラネットをNasdaqと東京証券取引所という2つの主要な資本市場をまたぐプラットフォームと位置づけている。広告事業については「広告・メディアアクティベーション事業は、独立した事業セグメントとして続く」と今回も明記した。エデルマン氏はCEOを続ける。
スーパーリーグとはどんな会社か

スーパーリーグはゲームとデジタルメディアの上で広告とブランデッドコンテンツの施策を組み、ブランドと世界のゲーム人口をつなぐ会社である。公式の会社説明は、ブランドの広告費のなかでゲームをする層の比重が増していることを事業機会に挙げている。対象とするゲーム人口は資料によって「33億人」(2026年8月18日のリリースなど)と「35億人」(2026年10月5日のリリースなど)の2通りが使われている。
基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
正式社名 | Super League Enterprise, Inc.(クロージング後は Superplanet, Inc.) |
上場市場 | Nasdaq Capital Market(SLE、クロージング後はSUPA) |
設立 | 2014年10月1日(Nth Games, Inc. として設立) |
社名の変遷 | 2015年6月 Super League Gaming、2023年9月 Super League Enterprise |
本社 | 米カリフォルニア州サンタモニカ |
経営陣 | 会長兼CEO兼社長 マット・エデルマン氏、CFO クレイトン・ヘインズ(Clayton Haynes)氏、収益担当EVP アンソニー・アレクサンダー(Anthony Alexander)氏(2026年6月就任) |
監査法人 | WithumSmith+Brown, PC |
創業者・従業員数 | 公式資料で確認できず |
売上の半分強は受託制作
「ロブロックス広告の会社」と紹介されることがあるが、売上の構成を見るとそれだけではない。2026年第2四半期の売上は約300万ドルで、内訳は次のとおりである(出典: 同四半期のForm 10-Q)。
区分 | 第2四半期売上 | 内容 |
|---|---|---|
メディア・広告(Media and advertising) | 141.6万ドル | 人気ワールドへのブランドの組み込み、プログラマティック取引、リワード動画、Webゲーム・CTVの在庫販売 |
受託制作(Publishing and content studio) | 159.3万ドル | ブランド専用ワールドの企画・制作・運営 |
受託制作が約53%、広告が約47%を占める。決算の詳細は「Super League 2026年第2四半期決算」で解説している。
広告がゲーム内に表示される仕組み
スーパーリーグの広告は配信の仕方で大きく3つに分けられる。
1つ目はロブロックス、フォートナイト(Fortnite)のクリエイティブモード、マインクラフト(Minecraft)にある人気ワールドへの組み込みである。ゲーム内の看板、NPC、カットシーン、報酬アイテムといった形で、プレイの流れの中にブランドを入れる。
2つ目はブランド専用ワールドの制作である。「Job City by Indeed」や、後述する「Panda Express Obby」のように、ブランドが主役のワールドを企画から運営まで請け負う。売上区分では受託制作にあたる。
3つ目はゲームの外側も含めた在庫の販売である。2026年5月に取得したミスフィッツ(Misfits Gaming Group)の広告部門によるプログラマティック取引とリワード動画、ディスコード(Discord)でのリワード動画、Webゲーム(ポキ)の在庫、CTV向けのアドバゲーミング在庫がある。
こうした手法がゲーム内広告のどの種類にあたるかは「ゲーム内広告とは」で整理している。ロブロックスやフォートナイトのワールド内でブランド体験をつくる考え方は「メタバース広告とは」も参考になる。
対応プラットフォームとリーチ
配信面 | 公表されている規模 | 出典 |
|---|---|---|
ロブロックス/フォートナイト/マインクラフト | ミスフィッツ側のロブロックスのポートフォリオで月間アクティブユーザー1億人超 | 2026年5月のリリース |
ディスコード | 施策の告知でディスコードのDAU 9,000万人を引用 | 2026年10月13日のリリース |
Webゲーム(ポキ) | 2026年に月間アクティブプレイヤー1億人超(2020年比10倍) | 2026年9月17日のリリース |
CTV(プレイワークス) | 1億世帯超、月間1.5億インプレッション超 | 2026年6月のリリース |
ディスコードについては、施策の配信面として使っていることは確認できるが、提携契約があるかどうかは公表されていない。ユーザーのうち日本の利用者がどれだけいるかは、どの配信面についても開示がない。
主要パートナー
資本面ではクロージング後に親会社となるメタプラネットと、投資家のエボ・ファンド(Evo Fund)がいる。広告商品の面ではミスフィッツ(広告部門を取得)、プレイワークス(Play.Works、CTV在庫の米国独占販売)、ポキ(Poki、Webゲーム)と組んでいる。ほかにSolsten、AdArcade、ES3の名前がリリースに挙がっている。
効果測定では、パンダエクスプレスの施策でニールセン(Nielsen)がブランドリフト調査を担った。DSPやアドベリフィケーションの事業者名は公表されていない。
ここまでの歩み:eスポーツからゲーム広告、そしてBTCトレジャリーへ
スーパーリーグは上場企業で、ベンチャーキャピタルのラウンドを重ねてきたスタートアップとは資金の集め方が違う。ここでは事業の転換と資金調達をあわせて時系列で振り返る。
事業の転換と撤退
時期 | 出来事 |
|---|---|
2014年10月 | Nth Games, Inc. として設立。2015年6月にSuper League Gamingへ改称し、アマチュアeスポーツの大会運営を始める |
2019〜2022年 | Minehut、Mobcrush、Bloxbizなどを取得し、UGCプラットフォーム上のメディア企業へ転換(個別の取得日は公式資料で確認できず) |
2023年9月 | Super League Enterpriseへ社名変更 |
2025年 | eスポーツ事業を終了。Minehut/Minevilleを100万ドルで売却(5月)、Mobcrushを解散(5月14日)、InPvPを売却 |
2026年5月1日 | ミスフィッツの広告部門を取得 |
2026年6月9日 | プレイワークスのCTVアドバゲーミング在庫の米国独占販売パートナーになる |
2026年9月17日 | Webゲーム(ポキ)の白書を公開 |
2025年は事業を絞り込んだ年だった。2025年度の売上は1,130万ドルで前年の1,620万ドルから約30%減り、純損失は2,070万ドルだった。2025年6月30日時点で株主資本はマイナス410万ドルになり、Nasdaqの株主資本基準に抵触した(2025年10月29日に回復)。
2026年上期は買収と提携で売る広告商品を増やした時期にあたる。ミスフィッツの取得でプログラマティック取引とリワード動画が加わり(「Super LeagueによるMisfits広告部門の買収」)、プレイワークスとの提携でテレビ画面の在庫(「Super LeagueとPlay.WorksのCTVアドバゲーミング」)、ポキの白書でWebゲームの在庫(「Super LeagueのWebゲーム白書」)を打ち出している。

資金調達と財務の動き
時期 | 内容 | そのときの会社の状況 |
|---|---|---|
2025年6月18日 | 1対40の株式併合 | 株主資本がマイナスに転じ、Nasdaqの基準に抵触していた時期 |
2025年9〜11月 | デジタル資産トレジャリー投資家のエボ・ファンド主導の私募で計2,000万ドル | 2025年度に純損失2,070万ドルを計上するなか、トレジャリー投資家が株主に入った |
2026年1月21日 | 1対12の株式併合 | 2度目の併合 |
2026年8月14日 | 第2四半期決算。現金および投資は約670万ドルで、半年で約770万ドル減った | 第4四半期の調整後EBITDA黒字化を目標に掲げる |
2026年8月18日 | メタプラネットとの最終契約。同日、ATM(随時売り出し)契約を締結(上限222万9,000ドル、販売代理人はThe Benchmark CompanyとStoneX Financial) | 財務の主役をBTCトレジャリーに移す設計に入る。ATMの資金使途は記載なし |
2026年8月24日 | ATM枠を最大227万ドル追加。約222万8,999ドル分を売却済みと記載 | 資金使途の記載なし |
2026年9月29日 | ATM枠を最大96万6,000ドル追加(累計上限546万5,000ドル) | 同上 |
2026年10月21日 | ATM枠を最大95万ドル追加(8-Kの記載では累計上限642万1,000ドル) | 同上 |
日本の読者にとっての要点は、出資者の中心が日本の上場企業になることである。ただしメタプラネットの目的はBTCトレジャリーの立ち上げで、広告事業を取りに行った出資ではない。メタプラネットの既存事業にもゲーム広告・マーケティング事業は含まれていない。
承認前後に始まった自社でのBTC購入
10月のSEC提出書類には、リリースに書かれていないスーパーリーグ単独の動きがある。
日付 | 内容 |
|---|---|
2026年10月10日 | 初めて1BTCを購入(購入額83,041.40ドル)。現金・現金同等物と並ぶ財務資産としてBTCを検討する一環と説明 |
2026年10月16日 | 株主総会の当日に2BTCを平均81,444.82ドルで購入 |
2026年10月22〜25日 | 4BTCを平均約80,581.26ドルで購入 |
8-Kで開示された購入は計7BTCである。売却の有無と保有残高は公表されていない。ATMで株数が増えているため、クロージング時のメタプラネットの持株比率は8月公表の約95.7%から変わる可能性があるが、更新された公式の数値はない。
今回の発表の位置づけ
8月の契約で、会社の主役はBTCトレジャリーに移る設計になった。今回の株主承認はその設計の最大の関門を越えた出来事である。一方で広告事業は10月に入ってもパンダエクスプレスの常設化、ディスコードでの施策と発表を続けており、「独立した事業セグメントとして続く」という説明と実際の動きは食い違っていない。ただし、広告事業への追加投資計画は公表されていない。次の節目は第3四半期決算(日付は未発表)とクロージング、スーパープラネットとしての最初の開示になる。
広告出稿事例
パンダエクスプレス:単発の施策から常設化へ
パンダエクスプレス(Panda Express)は、2025年に限定メニュー「Hot Orange Chicken」のゲーム内施策をフォートナイトとロブロックスで実施した。マスコット「Pei Pei」のNPC、ブランド入りのカットシーン、報酬アイテムを使った施策で、公式のケーススタディでは次の数値が公表されている(出典: スーパーリーグ公式ケーススタディ)。
- カットシーンの視聴と報酬の獲得:26.5万人超
- Pei Peiとの接触時間:累計65日分
- インタラクション:18.5万回超

2026年10月5日にはこの施策を常設に切り替えたと発表した(出典: スーパーリーグ公式IRリリース)。フォートナイトでは限定メニューに合わせたマップへの組み込みを3本追加し、ゲーム内の看板を6か月の出稿期間を通して掲出する。ロブロックスでは「Panda Express Obby」を単独の常設ワールドとして再公開し、新しいNPC、季節ごとのコース、メニュー連動などの更新を月1回、計6回行う。パンダエクスプレスのメディアエージェンシーはThe Manyである。
ニールセンのブランドリフト調査(90%信頼水準で有意)の結果は次のとおりである。
指標 | 結果 |
|---|---|
ブランド認知 | +3ポイント |
検討意向 | 接触群67%、非接触群64% |
推奨意向 | 接触群64%、非接触群61% |
キャンペーン想起 | +9ポイント |
近い将来の来店意向 | 対照群比+5% |
今後30日間の高い購入意向 | +5ポイント |
スーパーリーグ幹部のリアノン・アップル(Rhiannon Apple)氏は「ゲームを単なるメディア購入として扱うブランドは、出稿期間が来れば終わる施策しか得られない」とコメントしている。第三者の調査で効果を示し、それを根拠に常設化したという順序が、この事例の特徴である。

チポトレ:ロブロックスの「Boorito Maze」
チポトレ(Chipotle)はロブロックスで「Boorito Maze」を実施した。公式ケーススタディによると、ユニークプレイヤーは350万人を超え、モバイル売上が過去最高の日を記録し、アプリのダウンロード数とデジタル取引も1日あたりの過去最高になった。ゲーム内の施策の結果を、ゲーム内の数値だけでなくモバイル売上やアプリの数値で示している例である。

メイベリン:ロブロックスでのバーチャル試着
メイベリン(Maybelline)は、ロブロックスで「Sunkisser Blush」のバーチャル試着企画を実施した。公表値はバーチャル試着2,500万回超、ブランドインプレッション3,850万、平均エンゲージメント9分である。試着回数や接触時間は同社が定義した指標で、ほかの媒体の数値とそのまま比べられるものではない点に注意が要る。

ランチャブルズ:「Playables」
ランチャブルズ(Lunchables)の「Playables」では、エンゲージメント1,000万時間、獲得ポイント74億、バーチャルペットの交換730万回、購入率+6.3%が公表されている。食品ブランドがゲーム内の体験と購入率をつなげて示した例で、国内の食品・飲料メーカーにとって比べやすい事例といえる。

ディスコードとWebゲームでの施策
ゲーム本体の外でも施策が始まっている。2026年10月13日には超党派の非営利団体ヘッドカウント(HeadCount)とVirtual Voteによる、Z世代向けの投票啓発施策を発表した(出典: スーパーリーグ公式IRリリース)。2026年11月3日の米中間選挙に向けて、ディスコード上のロブロックスや原神、Rocket Leagueのファンコミュニティで展開する。ユーザーが自分で選んで短い動画を見ると、ディスコード内の報酬と、2027年のGalaxyConへの旅行が当たる抽選に参加できる。目標リーチは500万人。アップル氏は「通常のコミュニティ投稿より175%高いエンゲージメント」と述べているが、これは第三者の計測ではなく同社幹部の発言である。広告主は非営利団体だが、ディスコードでリワード動画を配信する手段ができたことを示す事例である。リワード動画の基本は「リワード動画広告とは」で解説している。
Webゲームでは、セラヴィ(CeraVe)がポキのゲーム「Sprint League」内に「CeraVe Pharmacy」を設け、平均5分のブランド接触を得た。同社はこれを一般的なソーシャルコンテンツの231倍と説明している。
なぜこの動きが起きたのか

背景には、広告事業の規模と現金の減り方がある。2026年第2四半期の売上は約300万ドル、粗利率は41%で、現金および投資は約670万ドルと半年で約770万ドル減っていた。2025年には株主資本がマイナスになり、2度の株式併合も行っている。広告事業を伸ばすための資金を、事業の成績だけで集め続けるのは難しい状況だったと考えられる。
エデルマン氏は10月6日の株主向けレターで「その制約の中でやり続けることもできた。だが私たちは制約そのものを変えるほうを選んだ」と書き、取引を「バランスシートを大きくするだけでなく、より大きな未来への道」と表現した。同じレターでは「ゲームメディア・広告事業はトレジャリーと並んで続くと見込む」としている。
メタプラネットの側から見ると、Nasdaq上場企業に現物のBTCを移すことで、市場からBTCを買わずに米国でトレジャリーを立ち上げられる。スーパーリーグが選ばれたのは広告事業のためではなく、Nasdaqに上場している会社であることが大きいと考えられる。10月19日のリリースが東京とNasdaqの2つの市場をまたぐことを強調しているのも、この見方と合う。
日本市場ではどうか

日本の上場企業が米国のゲーム広告会社を傘下に入れる例
日本の上場企業が米国のゲーム広告事業者を傘下に収める案件として、この取引は目立つ例である。ただし目的はBTCトレジャリーで、日本でゲーム広告事業を始める計画は発表されていない。メタプラネットの適時開示一覧(2026年10月5日〜23日の表示分)には、スーパーリーグの株主総会の結果に関する開示は見当たらない。現時点で確認できた一次情報は、スーパーリーグ側の英語のリリースだけである。
日本の広告主がスーパーリーグを使えるか
現時点では、使える体制は確認できない。スーパーリーグの公式サイトとIR資料には、日本法人、国内の代理店、日本語の窓口の記載がない。営業は米国中心で、プレイワークスの在庫も米国での独占販売である。
日本の広告主が発注を検討する場合、次の障壁がある。
- 取引は英語・米ドル建てになる
- 配信面のユーザーは北米中心とみられ、日本の利用者の比率は開示されていない
- 事例は米国のブランドと米国の商習慣が前提になっている
- 効果指標の多くは同社独自の定義で、ニールセンの調査も米国で行われたもの
- 親会社の関心は財務戦略にあり、広告事業の今後の体制は公表されていない
日本で同じ広告を実施する選択肢
スーパーリーグの施策は大きく「人気ワールドの看板・NPCへの組み込み」と「ブランド専用ワールドの制作」に分かれる。日本国内で同じ目的、つまり若年層が長い時間を過ごすゲーム空間でブランドに触れてもらう施策をするなら、選択肢の一つがAd-Virtua(アドバーチャ)である。Ad-Virtuaは国内400タイトル以上のゲーム空間にある看板・モニターに動画広告を配信するアドネットワークで、日本語で発注でき、1週間30万円のプランから試せる。
比較ポイント | スーパーリーグ | Ad-Virtua |
|---|---|---|
主な対象地域 | 米国中心(日本向け窓口は確認できず) | 日本国内 |
発注の言語・通貨 | 英語・米ドル | 日本語・日本円 |
主な手法 | 人気ワールドへの組み込み、ブランド専用ワールドの制作、リワード動画、CTV | ゲーム空間の看板・モニターへの動画広告配信 |
配信面 | ロブロックス、フォートナイト、マインクラフト、ディスコード、Webゲーム、CTV | 国内400タイトル以上のゲーム |
制作 | NPC、カットシーン、専用ワールドなどの作り込みが中心 | 既存の動画素材を流用できる |
予算の目安 | 公表されていない | 1週間30万円プランから |
どちらが合うかは、目的と体制で決まる。
- 米国の若年層に向けてブランド専用ワールドを作り込みたい企業や、米国法人のマーケティング部門が発注する企業には、スーパーリーグのような作り込み型の事業者が合う
- 日本国内の若年層への認知を、手元のTVCMやWeb動画の素材で短期間・小さめの予算から試したい企業には、Ad-Virtuaのような国内のアドネットワーク型が合う
- ロブロックスの中に自社のワールドを持ち、継続的に運営したい企業には、Ad-Virtuaの看板・モニター配信だけでは目的を満たせない。ワールド制作を請け負う事業者を別に探す必要がある
広告主が取るべき判断
今すぐ動いてよいのは次の条件に当てはまる企業である。
- 米国市場で若年層向けの施策を予定しており、米国側の担当者が英語で発注・管理できる
- パンダエクスプレスのように、第三者のブランドリフト調査で効果を測りたい
- 日本国内ではゲーム内広告をTVCMやSNS広告の補完として小さく試したい
様子見でよいのは次の条件に当てはまる企業である。
- スーパーリーグとの取引を検討しているが、契約の相手方や担当体制がクロージング後にどうなるかを確かめたい。取引の完了は2026年第4四半期の予定で、その後の最初の開示を待ってからでも遅くない
- 「親会社が日本企業になるので日本でも使えるようになる」と期待している。日本展開の計画は発表されていない
すでにスーパーリーグと取引している企業は、クロージング前後に担当者と契約主体に変更がないかを確認しておくとよい。
関連する基礎知識
- ゲーム内広告とは:看板型、コラボ型、リワード型など、ゲーム内広告の種類と仕組み
- メタバース広告とは:ロブロックスやフォートナイトのワールドを使ったブランド施策
- リワード動画広告とは:ディスコードの施策でも使われた、ユーザーが自分で選んで見る動画広告
- メタプラネットがSuper Leagueに2,100BTCを出資:今回承認された取引の条件
- Super League 2026年第2四半期決算:広告事業の売上規模と現金の推移
よくある質問
Q. 「勧告的決議」とされた議案はどういう扱いか
社名変更、授権株式数の増加、臨時株主総会と書面決議、デラウェア州一般会社法203条の適用除外、事業機会の放棄条項、専属管轄条項、期差取締役会の廃止の7件(議案4(a)〜(g))は、拘束力のない勧告的決議である。8-Kによると、議案2〜5は議案2(メタプラネット向けの普通株発行)の承認を条件としていた。
Q. 株主総会ではほかに何が決まったのか
クラスIIIの取締役としてアン・ハンド(Ann Hand)氏とロバート・カルトキエヴィッチ(Robert Kalutkiewicz)氏が選任された。ほかに、2025年包括株式報酬制度の改定(賛成1,059,618、反対37,726)、監査法人WithumSmith+Brown, PCの選任の承認(賛成1,399,735)、総会の延会に関する議案も承認されている。
Q. 取締役会の構成はどうなるのか
8月の契約時点の条件では、取締役は当初9名で、メタプラネットが議長を含む5名を指名し、エデルマン氏を含む4名がスーパーリーグ側から残る。メタプラネットは優先株を通じて取締役の過半数を指名する権利を持つ。
Q. メタプラネット以外に権利を受け取る投資家はいるのか
投資家のエボ・ファンドが、別途最大1,000万株分のワラント(2トランシェ)を受け取ると8月のリリースに記載されている。エボ・ファンドは2025年の私募も主導した投資家である。
Q. メタプラネットから日本語の発表は出ているのか
メタプラネットの適時開示一覧(2026年10月5日〜23日の表示分)には、今回の株主総会の結果に関する開示は見当たらない。同じ期間の開示はユーロ円建て転換社債の発行、自己株式の取得、主要株主の異動、BTCの追加購入などである。


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