Livewireの概要

Livewire(ライブワイヤー)は、Fortnite・Robloxなどのゲーム内でブランド施策を企画・制作し、ゲーマーのID基盤「Gamer.ID」とセルフサーブの入稿機能まで持つ、2021年設立の豪州発ゲーミングメディア企業です。2026年10月時点で公式サイトに日本市場への対応は示されていないため、日本の広告主は同社の手法を参考にしつつ、国内のゲームタイトルに配信できる手段と組み合わせて検討することになります。

Livewireの設立5周年と現在の体制

Livewireは2026年3月に設立5年を迎え、公式サイトの記事「Five Years of Building the Infrastructure Between Brands and Gaming Audiences」でこれまでの歩みを公表しました(出典: Livewire公式「5 Years」)。同記事と公式サイトで確認できた内容は次のとおりです。

  • 2021年3月に豪州で設立。共同創業者はブラッド・マニュエル(Brad Manuel)とインディ・カブラ(Indy Khabra)
  • 従業員は約60名で、北米・EMEA・UAE・アジア太平洋で事業を展開
  • サムスン、アマゾン、ナイキ、ウーバー、ベライゾン、A24などに「数百件」のキャンペーンを実施し、業界賞を38件受賞
  • NFL、DAZN、ライブ・ネーション(Live Nation)とゲームIPを共同制作

あわせて、ゲーマーID基盤「Gamer.ID」と、Canvaのデザインをそのままゲーム内広告として入稿できる「Ads by Livewire inside Canva」を提供しています(出典: Livewire公式「Gamer.ID」、Livewire公式「Ads by Livewire inside Canva」)。

同社はこの5年間で、ゲーム内ブランド施策の制作会社から、データ(Gamer.ID)とセルフサーブ入稿(Canva連携)を持つゲーミングメディア企業へ事業を広げてきました。

Livewireとはどんな会社か

Livewire(ライブワイヤー)のロゴ。黒い斜体で「LIVEWIRE」と書かれたワードマーク
出典: Livewire(

基本情報

項目

内容

ブランド名

Livewire(ライブワイヤー)。ドメインは livewire.group

法人

Livewire Gaming Australia Pty Ltd(豪州)、Livewire Group UK Ltd(英国)、Livewire US Inc.(米国)

設立

2021年3月

所在地

豪州法人の住所はメルボルン。公式サイトに「本社」の明記はない

創業者

ブラッド・マニュエル(設立当時はゲーミング・タレント事業のCEO)、インディ・カブラ(元Dentsu Programmaticの地域CEO)

経営体制

共同CEOの2名体制(インディ・カブラ、フィオナ・メラー(Fiona Mellor))。最高戦略責任者はギャレス・リーディング(Gareth Leeding)

従業員

約60名

拠点

4オフィス・7か国。国名が公表されているのは豪州・英国・米国・カナダ・UAE

自社の位置づけ

「global gaming media company」。キャッチコピーは「Taking brands from NPC to MVP」

出典: Livewire公式「Our Story」、同「5 Years」、同プライバシーポリシー(2026年8月更新)

キャッチコピーの「NPC」はゲーム内で脇役として動くキャラクター、「MVP」は最優秀選手のことです。ゲームの中でブランドを脇役にとどめず主役にする、という同社の考え方を表しています。ミッションには「to become the defining generational gaming media company(世代を代表するゲーミングメディア企業になる)」を掲げています。

提供している4つの事業

公式サイトのメニュー構成に沿うと、Livewireの事業は次の4つに分けられます。

事業

中身

Gaming Campaigns

Fortnite・Robloxなどでのブランド施策の企画・制作

Strategic Partnerships

スポーツ・音楽などのIPと共同でゲームIPを作る

Gamer.ID

ゲーマーのID基盤と、それを使った広告配信

Ads by Livewire inside Canva

Canvaから直接ゲーム内広告を入稿するセルフサーブ機能

このほか、メニューや問い合わせフォームには自社調査(Research)、自社保有のゲーム体験(Owned gaming experiences)、クリエイター・コミュニティ、パブリッシャー向けの提携窓口があります。

Gaming Campaigns:ゲームの中にブランド体験を作る

同社のインハウススタジオがFortnite(クリエイティブモード/UEFN)、Roblox、AAAタイトル、モバイルゲーム、ゲーム実況者を使ったキャンペーンを制作します。事例ページから整理すると、手法はおおむね次の6つです。

  1. 既存の人気ゲームの中にブランドの空間やコースを作る(例: Roblox『Driving Empire』内のサムスンのゾーン)
  2. ブランド専用のゲーム(マップ)を新しく作る(例: Fortniteの『Clash of Commuters』)
  3. 人気ゲームにイベント、限定アイテム、予告編を組み込む(例: Roblox『Anime Defenders』×映画『Red One』)
  4. ゲーム内のアイテムを現実で注文・体験させる(例: Uber Eats×Starfield)
  5. 実況者・配信者を起用する(例: パラマウント『Smile 2』、メイベリン)
  6. ブランドの自社アプリにゲームを組み込む(例: Uber Backseat Arcade)

ゲーム空間の看板・モニターに動画を流すサイネージ型と比べると、Livewireの施策の多くはゲーム会社やクリエイターと組んでゲームの中身を作るコラボ型にあたります。ゲーム内広告の種類の違いは「ゲーム内広告とは」で整理しています。

制作の協業先として、事例ページにはGamefam、CHEP Network、Moisty Media、Small World Games、Barrier Four、Specialの名前があります。広告会社側ではEssenceMediacom、Akcelo、Foxtel Mediaと組んだ事例があります。

Strategic Partnerships:スポーツ・音楽IPとの共同ゲームIP

NFL Race to the End Zone LIVE powered by Verizon のロゴ
出典: Livewire(NFL / Verizon のロゴを含む)(

スポーツリーグや音楽企業とゲームIPを共同で作り、そこに協賛社を付ける事業です。公式サイトで確認できる主な案件は3つです。

  • NFL「Race to the End Zone」: NFL選手とゲーム実況者が出演するクリエイター主導の番組で、ベライゾンがプレゼンティングパートナー。パートナーシップページではシーズン1の実績を1億7,800万回視聴、3億4,200万分視聴としています(2026年2月のニュースでは「シーズン通算で約1億回視聴」と書かれており、集計時点が異なるとみられます)。シーズン2は2026年のNFL開幕前後から週1回・全21話で、最終回はスーパーボウルLXI週にロサンゼルスで配信する予定とされています
  • ライブ・ネーション「Music Festival Tycoon」(Roblox): 音楽フェスを作って運営するゲーム。公開以来プレイ数240万回超、プレイヤーが作ったゲーム内ライブ1,000万回超、平均セッションは12分
  • Kayo Sports「Kayo SPORTS Stadium」(Roblox): Foxtel Media、DAZNと共同で制作し、AFL、Cricket Australia、Supercarsが参加

パートナーシップページにはテリー賞(Telly Awards)のゴールド・シルバー、Digiday Content Awardsのゴールドの受賞も記載されています。

Gamer.ID:ゲーマーを1つのIDで結ぶデータ基盤

Gamer.IDについて、公式は「世界最大のゲーミング・アイデンティティグラフ」と説明しています。ゲーム・メディア・IDに関する「数十億のシグナル」から作られ、リーチは世界36億人のプレイヤーとしています(出典: Livewire公式「Gamer.ID」)。

公式の説明による仕組みは次のとおりです。

  1. 1人のゲーマーを、デバイスや画面をまたいで1つの持続的なIDで結びつける
  2. プレイ行動、コンテンツの視聴、デバイスの使い方、ID信号からオーディエンスセグメントを作る
  3. AIで、商品カテゴリごとにスコアの高いセグメント、反応の良いフォーマット、反応しやすい時間帯を分析する
  4. オーディエンスを統合して、フリークエンシーの管理、重複の削減、プラットフォーム間のメッセージの統一を行う

配信面はゲーム内、モバイル、CTV、ソーシャル、動画、ディスプレイです。公式は「プレイ行動にもとづくターゲティングは、一般的な興味関心・属性データより一貫して高い成果を出す」と書いていますが、裏づけの数値は示していません。

プライバシーポリシーには「Livewireはデータパートナーと協力し、Gamer.IDを含む形で広告目的のオーディエンスセグメントを提供している」との記載があります。自社で一次データを集めるより、外部のデータパートナーのデータを束ねるグラフに近いと考えられます。パートナー名は公開されていません。

Ads by Livewire inside Canva:デザインツールからゲーム内広告を入稿する

Canvaの中で動くアプリで、マーケターがCanvaで作ったデザインを、Canvaを離れずにゲーム内広告として入稿できます(出典: Livewire公式「Ads by Livewire inside Canva」)。手順は次の流れです。

  1. Canvaで広告素材を作る
  2. アプリを起動し、フォーマットとサイズを選ぶ
  3. ゲーム内での見え方をプレビューする
  4. オーディエンス、市場、期間、予算を設定する
  5. Livewireに送って審査を受け、承認後に配信が始まる

公式は「Canvaから24時間以内にゲームメディアで配信開始」とうたい、リーチはモバイル・PCで36億人としています。ローンチ特典は500ドルの出稿で100ドル分のメディアを追加するもので、豪ドル・ポンド・米ドル・カナダドルで表記され、期限は2026年10月31日です。提供開始日、対応フォーマット、配信先のゲームタイトルは公式ページに記載がありません。

大手ブランド向けの受注制作に加えて、中小の広告主が少額から買える入口を作った点が、この商品の意味だと考えられます。

ここまでの歩み

公式サイトに資金調達の記載はない

Livewireの公式サイトには、資金調達ラウンド、調達額、投資家の記載がありません。日本企業の出資の有無も公式サイトでは確認できません。本記事では二次サイトの数値は使わず、公式サイトで確認できる事業展開の時系列で5年間を振り返ります。

創業から5周年までの時系列

時期

出来事

2021年3月

豪州で設立。ゲーム人口に対して広告予算のゲーム比率が小さいことを事業機会と見た

2021年〜

豪州でブランド施策を積み上げる(サムスン『Clash of Commuters』、Uber Eats×Starfield、メイベリンなど。各事例の実施年は事例ページに記載なし)

2023年

英国に進出

2024年

米国に進出。「2024 Next-Gen Attention Study」を発表(当時のCEOはトム・シンプソン(Tom Simpson))

2025年

カナダとUAEに進出(UAEはDubai Mediaと提携)。『Clash of Commuters』がMFA Awardsグランプリ、Spikes Asia、クリオ賞(Clio Awards)を受賞

時期は記載なし

Gamer.IDを発表(「ゲームオーディエンス向けで初のプライバシー・セーフなIDフレームワーク」)

2026年2月4日

スーパーボウルLX週のサンフランシスコで「NFL Race to the End Zone LIVE powered by Verizon」を開催。実況者19人とNFL選手5人による招待制のFortnite大会を、NFL公式YouTubeで配信

2026年3月

設立5周年。共同CEO体制、約60名、受賞38件

2026年10月時点

Ads by Livewire inside Canvaを提供中(提供開始時期は記載なし。ローンチ特典の期限は2026年10月31日)

2026年(予定)

NFL Race to the End Zoneシーズン2(全21話)

出典: Livewire公式「Our Story」、同「5 Years」、同NFLニュース

4つの段階で見る事業の広がり

時系列を事業の中身で区切ると、4つの段階に分けられます。

  1. ブランド施策の受注制作: 豪州で、サムスン『Clash of Commuters』(Fortnite)やUber Eats×Starfieldなどの施策を手がけ、広告賞を重ねた
  2. 海外展開: 2023年の英国から2025年のカナダ・UAEまで、ほぼ1年に1地域のペースで拠点を増やした
  3. 共同IP: NFL、ライブ・ネーション、DAZNと、協賛社を付けられるゲームIPを持った
  4. データとセルフサーブ: Gamer.IDでターゲティング配信を、Canva連携で少額の入稿を始めた

2026年2月のNFLイベントのニュースで、共同創業者のカブラは「gaming isn't an experimental channel anymore; it is a fully scaled, premium media environment(ゲームはもはや実験的なチャネルではない。十分な規模を持つ、プレミアムなメディア環境だ)」と述べています。制作会社からメディア企業への広がりは、この認識と対応していると考えられます。

経営体制も変わっています。2024年の調査リリースではトム・シンプソンが「CEO of Livewire」としてコメントしていましたが、2026年の5周年記事ではカブラとメラーの共同CEO体制になっています。交代の時期と理由は公式サイトでは確認できません。

Livewireの広告出稿事例

公式の事例ページのうち、効果数値が公表されているのは次の1〜3の3件です。4〜6は数値の公表がない事例ですが、手法の幅を示すために載せます。

1. サムスン×Roblox『Driving Empire』

Roblox『Driving Empire』内のSamsung Ultra Arcade Season 2。「SAMSUNG presents」の文字と青いスーパーカー
出典: Livewire(

Galaxy S25 Ultraの訴求として、Robloxのゲーム『Driving Empire』で3週間のタイアップ「Ultra Arcade Season 2」を実施しました。ゲーム内にSamsung Experience Zoneと専用のブランドコースを作り、参加者に限定のサムスンのUGCアイテム(Roblox内のアバター用アイテム)を配布しています。Roblox内のゲーム内広告で告知し、YouTube・TikTok・Instagramでインフルエンサー施策も組み合わせました。

指標

公表値

ブランドゾーン訪問

1億9,000万回

インプレッション

2億3,500万

プレイ時間

12億5,000万分

出典: Livewire公式「Samsung x Roblox」

2. 映画『Red One』×Roblox『Anime Defenders』(Amazon MGM Studios)

Roblox『Anime Defenders』内の映画『Red One』コラボ。RED ONE RAIDSの看板の前に並ぶ3体のキャラクター
出典: Livewire(作品: Amazon MGM Studios『Red One』)(

クリスマスのアクション映画『Red One』を、若い男性層に新しいフランチャイズとして知ってもらうことが課題でした。Robloxのトップ10に入る『Anime Defenders』(累計30億訪問超)の制作陣と協力し、映画をもとにしたレイドステージを作りました。キャラクターの収集、限定UGCアイテム、ロビーでの予告編の放映も組み込んでいます。協業先はAmazon MGM Studios、Small World Games、Barrier Fourです。

指標

公表値

ゲーム訪問

1億6,300万回

エンゲージメント

88億回

平均プレイ時間

10分以上

出典: Livewire公式「Red One x Roblox」

すでにプレイヤーが集まっている人気ゲームに入り込み、新しいゲームを一から作らずに映画の世界観を体験させた例です。

3. Uber Backseat Arcade(ウーバー)

Uberアプリ内のミニゲーム「Backseat Arcade」の画面。Snake、Meteors、Brick Breakerの3作品が並ぶ
出典: Livewire(Uber Backseat Arcade)(

ウーバーのアプリの中に、乗車中だけ遊べるレトロゲーム(Snake、Meteors、Brick Breaker)を入れた施策です。1回のプレイ時間を平均乗車時間に合わせて設計し、高得点を出すと次回の乗車割引がもらえます。告知はDiscord、ゲームメディア、Fortnite・Valorant・Rocket League・The Sims Mobileのゲーム内広告で行いました。協業先はEssenceMediacomとSpecialです。

指標(2週間)

公表値

アクティブユーザー

2万人

エンゲージメント率

78%

アプリ内クリック率

42%

Festival of Media Awards 2026でゴールドとシルバー、Cairns Crocodiles 2026でシルバーを受賞しています(出典: Livewire公式「Uber Backseat Arcade」)。

ほかの2件と違い、ゲームを置いた場所は他社のゲームではなくブランド自身のアプリです。乗車割引という形で、ゲームの体験をサービスの利用につなげています。

4. サムスン『Clash of Commuters』(Fortnite・豪州)

Samsung『Clash of Commuters』のFortnite内マップ。荒野でバスの上に立つプレイヤーと押し寄せる通勤客
出典: Livewire(

新しいGalaxyの訴求として、Fortniteのクリエイティブモードでブランド専用のゲームを作りました。最大4人のチームで、豪州の通勤ルートを走るバスを守りながら街を目指します。カフェイン切れの通勤客を退け、豪州で嫌われ者の鳥として知られるトキ(Bin chicken)が見張るなど、豪州の日常の「あるある」を盛り込んでいます。協業先はCHEP Network、Gamefam、Moisty Mediaです。

効果数値は公表されていませんが、2025年にMFA Awardsグランプリ、Spikes AsiaのBest Game Integration、クリオ賞シルバーを受賞しました(出典: Livewire公式「Samsung x Clash of Commuters」)。

5. Uber Eats×Starfield

Uber EatsとStarfieldのコラボで実物化されたゲーム内フードやグッズ。Uber Eatsの紙袋とともに並ぶ
出典: Livewire(Uber Eats × Starfield)(

「ゲームコミュニティの中でUber Eatsを有名にする」ことを課題に、Uberアプリ内に期間限定の「Starfieldストア」を出し、ゲーム内の人気アイテムを再現しました。シドニー在住者は週末限定で、ゲーム内の商品をほぼ何でも自宅に届けてもらえる企画です。Starfield側との提携はLivewireが仲介し、EssenceMediaCom、Akceloと協業しました。効果数値は公表されていません(出典: Livewire公式「Uber Eats x Starfield」)。

ゲームの中のものを現実の商品にする手法は、食品・外食の広告主が自社商品で応用しやすい形です。遊びを通じて商品を知ってもらう考え方は「ブランド体験とは」で詳しく説明しています。

6. ANZ銀行×NBA 2K ほか

NBA 2Kの試合画面。コート脇の広告看板にANZのロゴが並び、右上に「HOME COURT ADVANTAGE」の表示
出典: Livewire(ANZ Bank × NBA 2K)(

事例一覧にはANZ銀行×NBA 2KのようなAAAタイトルでの施策も並んでいます。ほかに、英国でのサムスン×PUBG Mobile(4週間のタイアップ、Galaxy S25 Ultraブランドのハブ、英国向けのジオターゲティング通知)、メイベリンの「Under the Avatar」(豪州・NZの人気女性ゲーマーとYouthlineのカウンセラーが一緒にプレイし、ゲーム内の嫌がらせへの対抗を呼びかけた施策)があります。

日本との接点ではポノス(Ponos)の『にゃんこ大戦争』のブラックフライデー施策が一覧に掲載されています。日本のゲーム会社が自社タイトルのマーケティングで起用した例で、日本の広告主が日本国内向けに出稿した事例ではありません。

なぜLivewireのような会社が伸びてきたのか

ゲーム用コントローラーを両手で持ち、モニターに映るゲーム画面をプレイしている様子
写真: Unsplash

ゲームの利用時間と広告費の差

Livewireは設立時の問題意識として、世界のゲーム人口が約30億人で男女比はほぼ半々、人々はテレビより長くゲームをしているのに、広告予算に占めるゲームの比率は5%未満だった、と述べています(2021年時点の同社の認識。出典: Livewire公式「5 Years」)。利用時間と広告費の配分のずれを埋める事業として始まったことが、5年間の拡大の前提になっています。

若い世代ほどゲーム内のブランド体験を受け入れる

同社の自社調査も、この市場認識を補強する内容になっています。

調査

対象

主な結果

2024 Next-Gen Attention Study

英・米・豪のゲーマー1,801人

α世代・Z世代はミレニアル世代より、ゲーム内のブランド体験を「20%近く」多く楽しむ。α世代の70%が週4〜5回以上プレイ

Power in Play(Publicis MediaのPMCI Playと共同)

米・英・加・豪のゲーマー2,400人超

ストレスや不安への対処にゲームを使う人が82%(Z世代は92%)。「ゲーマー」という呼び方に強く共感しない人が64%

出典: Livewire公式「2024 Next-Gen Attention Study」、Livewire公式ニュース(Power in Play)

「ゲーマー」という呼び方に強く共感しない人が多いという結果は、ゲームを特定の趣味層ではなく、一般の生活者がふだん使うメディアとして扱う根拠の一つになります。いずれも同社が関わった調査で、対象国に日本は含まれません。

単発の施策から継続して使うメディアへ

人気ゲームでのタイアップは案件ごとに企画と制作が必要になります。Livewireが共同IP、Gamer.ID、Canva連携を加えたのは、継続して出稿できる枠とデータを用意し、ゲームを媒体計画に組み込める広告メディアにするためと考えられます。共同CEOのメラーは5周年記事で「Gaming provides the platform for sustained engagement that drives brand impact(ゲームは継続的なエンゲージメントの場であり、それがブランドへの効果を生む)」と述べています。

日本市場ではどうか

夜の東京の繁華街。ビルの看板や大型ビジョンが並ぶ通りを多くの人が行き交う
写真: Unsplash

2026年10月24日時点で、Livewireの公式サイトに日本市場や日本拠点への言及はありません。拠点は「アジア太平洋」とだけ書かれています。サービスごとに見ても、日本の広告主がすぐに使えるかどうかは公式サイトの情報からは判断できません。

サービス

日本からの利用

Gaming Campaigns(受注制作)

日本向けの窓口や日本語対応は公式サイトでは確認できない。英語での相談はできるとみられるが、日本国内向けの実績は公開されていない

Ads by Livewire inside Canva

特典の表記通貨は豪ドル・ポンド・米ドル・カナダドルのみ。日本円や日本市場の記載はない

Gamer.ID

日本のユーザーのカバー状況は公開されていない

障壁は主に3つあります。公式サイトで日本への対応が示されていないこと、日本語のクリエイティブや国内ゲームタイトルの在庫が見えないこと、ID連携型のターゲティングが国内の個人情報保護法や電気通信事業法の外部送信規律のもとでどう扱われるかが明らかでないことです。

一方で、手法そのものは日本でも参考になります。人気ゲームの中にブランドの空間を作る、ゲーム内のアイテムを現実の商品にする、自社アプリにゲームを入れる、といった形は、国内のプラットフォームや制作会社と組めば実施を検討できます。Roblox・Fortniteのような仮想空間での施策は「メタバース広告とは」で整理しています。

日本で同じ広告を実施する選択肢

Livewireの事業は制作(ブランド体験を作る)と配信(ゲーム内の広告枠に届ける)の両方にまたがっています。日本国内で同じことをする場合も、この2つに分けて手段を選ぶと整理しやすくなります。その選択肢の一つが、Ad-Virtuaのゲーム内広告と、PRゲーム制作のゲームバズです。

比較表

比較ポイント

Livewire

Ad-Virtua ゲーム内広告

ゲームバズ(Ad-Virtua)

主な形式

Fortnite・Roblox等でのコラボ型施策、Gamer.IDによる配信、Canva連携入稿

国内ゲームの看板・モニターに動画広告を配信するサイネージ型

ブランド専用のPRゲームを制作

対象市場

豪・英・米・加・UAEなど。日本対応は公式サイトに記載なし

日本国内

日本国内

配信先・規模

リーチ36億人(公式)

国内ゲーム600タイトル以上(2026年4月時点、公式サイト)

―

入稿素材・制作範囲

Canvaで作るデザイン(対応フォーマットは記載なし)

既存の動画素材(MP4・16:9・30秒以内・3MB以下)。音声は原則非対応

ゲーム開発に加え、LP・特設サイト、インフルエンサー手配、プレスリリースまで一括

料金・期間

Canva連携はローンチ特典で500ドル出稿に100ドル分のメディアを追加(2026年10月31日まで)。受注制作の料金は記載なし

1週間30万円〜、週2枠限定、初期費用なし、100万回再生が目安

企画立案は無料、制作期間は2か月が目安

ターゲティング

Gamer.IDによるID連携型

ID連携型のターゲティングは公式サイトでは確認できない

―

継続コスト

公式サイトに記載なし

出稿ごと

完成したゲームを継続して使え、ランニングコストは原則不要(オンラインゲームなどはサーバー費がかかる場合あり)

出典: Livewire公式サイト、Ad-Virtua公式サイト、ゲームバズ公式ページ(いずれも2026年10月24日確認)

Livewireの事例のうち「ブランドの体験そのものを作る」部分に近いのはゲームバズで、「ゲーム内広告で告知する」部分に近いのがAd-Virtuaのゲーム内広告です。サムスン×Robloxの事例でも、ブランドゾーンの制作とRoblox内のゲーム内広告による告知を組み合わせていました。ただし、ゲームバズが作るのはブランド専用のゲームで、Fortnite・Robloxなど海外プラットフォーム上の空間づくりとは形が異なります。Ad-Virtuaは出稿企業の事例として、自然検索流入26%増、サイト滞在時間1分9秒から3分4秒への伸びを公式サイトで公表しています(単一事例の数値)。

こんな企業におすすめ

  • 日本国内のゲームプレイヤーに、手持ちの動画素材で短期間に認知施策を打ちたい企業
  • 若年層・ファミリー層への接点として、TVCMやSNS広告の補完を探している食品・日用品・外食・交通などの企業
  • 自社の商品やサービスを遊んで知ってもらうゲームを作り、キャンペーン後も使い続けたい企業

おすすめしない企業

  • 豪州・英国・北米など海外市場でのFortnite・Roblox施策が主目的の企業。現地の実績と協業先を持つLivewireのような事業者に直接相談する方が早いと考えられます
  • 行動データにもとづくID連携型のターゲティング配信が必須条件の企業
  • 音声を前提としたクリエイティブで訴求したい企業(Ad-Virtuaのゲーム内広告は音声が原則非対応)

広告主が取るべき判断

Livewireの5年間は、ゲーム内のブランド施策が単発の話題づくりから、数値で効果を示す継続的な媒体に移りつつあることを示していると考えられます。ただし、日本の広告主が同社のサービスを直接使えるかどうかは公式サイトから確認できないため、判断は「手法を国内でどう試すか」になります。

今動くべき企業

  • 10〜20代やファミリー層への認知が課題で、TVCMやSNS広告だけでは届きにくいと感じている企業
  • 新商品の発売や季節キャンペーンなど、数週間単位で集中して接点を作りたいタイミングがある企業
  • 海外事例のようにゲーム内の行動指標(訪問数、プレイ時間など)で効果を説明する準備ができる企業

様子見でよい企業

  • 主なターゲットがゲームをほとんどしない層の企業
  • 認知よりも直接の獲得(CPA)を最優先にしていて、ブランド施策の予算を確保できない企業
  • 海外の大型タイアップと同じ規模の施策を国内で求めている企業。国内のRoblox・Fortniteでのブランド施策の事例や在庫を確かめてから判断する方が安全です

最初の一歩としては既存の動画素材を使った短期間の配信でゲーム内の接触データを取り、反応を見てから体験型の施策に広げる順番が、予算のリスクを抑えやすいと考えられます。

関連する基礎知識

よくある質問

電動バイクの「LiveWire」と同じ会社ですか?

別の会社です。電動バイクのLiveWireはハーレーダビッドソン系のブランド(livewire.com)で、本記事で扱っているのはゲーミングメディア企業のLivewire(livewire.group)です。調べるときはドメインで見分けてください。

Gamer.IDは個人情報を販売しているのですか?

Livewireのプライバシーポリシー(2026年8月更新)では、過去12か月に識別子、ネットワーク上の行動、推論(プロファイル作成)を共有したものの、個人情報の販売はしていないと説明しています。データパートナーから受け取ったデータの同意やオプトアウトは、各データ提供元が管理するとしています。どのデータパートナーと組んでいるか、どのような手法で「プライバシー・セーフ」を実現しているかは公開されていません。

事例の数値は第三者が計測したものですか?

公式サイトには計測パートナーやブランドセーフティ認証の記載がありません。事例の数値はLivewireが事例ページで公表しているもので、誰がどの方法で計測したかは示されていません。社内で海外事例として紹介するときは、「同社の公表値」と明記するのが安全です。

家族向けの商品でもゲーム施策は合いますか?

Livewireが米・英・豪の4〜17歳の子を持つ親2,100人に行った調査「Game Time Is the New Prime Time」では、家族で日常的にゲームをする家庭が74%、価値観に合いゲーム体験を良くするブランド連携を歓迎する親が96%でした。プレイのピークは17〜22時と土曜日で、一緒にプレイする家族はテレビの視聴が約40%少ないという結果も出ています(出典: Livewire公式ニュース)。日本のデータではないものの、家族向け商品とゲームの相性を考える材料になります。ファミリー層への施策設計は「ファミリー向けマーケティングとは」で詳しく解説しています。