スーパーリーグ(Super League Enterprise, Inc.)は、ロブロックス(Roblox)やフォートナイト(Fortnite)の中にブランドの遊び場を作る米国のゲーム広告企業で、2026年第4四半期に東証スタンダード上場のメタプラネットの連結子会社になり、社名をスーパープラネット(Superplanet, Inc.)に変える予定です。日本の上場企業の傘下に入っても、日本法人や日本語の窓口は確認できず、広告事業を日本で展開する計画も発表されていないため、国内で同じことをするなら国内タイトルの配信面を持つ事業者を探す必要があります。
メタプラネットによる出資の内容
2026年8月18日、株式会社メタプラネット(東証スタンダード、証券コード3350)は、米子会社 Metaplanet Holdings, Inc. を通じてスーパーリーグ(Nasdaq: SLE)に出資すると発表しました(出典: スーパーリーグ公式IR 2026-08-18)。

項目 | 内容 |
|---|---|
出資の中身 | 2,100BTC(約1億3,210万ドル)と現金250万ドル、合計約1億3,460万ドル。2,100BTCはメタプラネットの保有BTCの約4.9% |
BTCの評価基準 | 2026年8月14日16時(ニューヨーク時間)のコインベース(Coinbase)終値。取引完了までの価格変動で株数は変わらない |
受け取る株式 | 普通株44,859,400株(1株3.00ドル)、転換型永久優先株100株、ワラント |
保有比率 | 取引完了後に約95.7%(既存のプレファンデッド・ワラントがすべて行使された場合は約93.6%) |
ワラント | 期間10年、最大3億8,100万株、4回に分けて行使、行使価格3.00〜33.50ドル |
追加引受権 | 取引完了から24か月以内に、劣後流動性優先株を最大2億1,000万ドル分引き受けられる |
ロックアップ | メタプラネットが取得する普通株について5年 |
新社名・ティッカー | スーパープラネット(Superplanet, Inc.)/SUPA。Nasdaq上場は維持 |
取締役会 | 9名のうち5名と会長をメタプラネットが指名 |
1株3.00ドルは2026年8月17日の終値とほぼ同じ水準で、第三者からの割引付き資金調達はないと発表に明記されています。
広告事業は独立した事業セグメントとして続け、CEOのマット・エデルマン(Matt Edelman)氏も続投します。2026年10月16日の年次株主総会では、この取引に関わる議案を含む全議案が承認されました(出典: スーパーリーグ公式IR 2026-10-19)。取引完了は2026年第4四半期の予定で、Nasdaqへの届出など通常の完了条件が付いています。
メタプラネットCEOのサイモン・ゲロビッチ(Simon Gerovich)氏は「当社は自らのビットコインを拠出し、株式をロックアップし、当社の財務基盤と知見でスーパーリーグを支える」とコメントしました。2026年10月6日付の株主への手紙では、BTCを「事業成長の主な原動力」、広告事業を「並行して続ける」事業と位置づけています。会社の軸足は、企業が財務資産としてBTCを保有するビットコイン・トレジャリーに移り、広告は第二の柱になると読めます。
スーパーリーグ(Super League)とはどんな会社か

基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
正式社名 | Super League Enterprise, Inc.(取引完了後は Superplanet, Inc.) |
設立 | 2014年10月1日、米デラウェア州で Nth Games, Inc. として設立 |
社名の変遷 | Nth Games → Super League Gaming(2015年6月)→ Super League Enterprise(2023年9月) |
本社 | 米カリフォルニア州サンタモニカ |
上場 | Nasdaq Capital Market。2019年2月にIPO(当時のティッカーはSLGG、現在はSLE) |
経営陣 | マット・エデルマン氏(会長兼CEO兼社長)、リアノン・アップル(Rhiannon Apple)氏(EVP)、アンソニー・アレクサンダー(Anthony Alexander)氏(収益担当EVP、2026年6月着任) |
従業員数 | 34名(2025年12月31日時点、フルタイム換算を含む) |
創業者 | 年次報告書(10-K)と公式リリースに記載がなく、確認できていない |
出典: SEC 10-K(FY2025)、公式IR
公式の日本語表記は確認できなかったため、本記事では「スーパーリーグ」と表記します。
事業の中身
スーパーリーグは自社を「ゲームをプレイする消費者とブランドをつなぐ、オーディエンス分析とメディアアクティベーションの会社」と説明しています(10-K)。メディアアクティベーションは、広告をどの配信面にどう出すかを設計し、実際に配信まで行う業務のことです。公式サイトでは「ゲーマー文化のためのメディアアクティベーション企業」、2026年10月のリリースでは「遊びを起点にした広告とオーディエンス分析の会社」と、時期によって表現が変わります。
10-Kに挙がっている広告フォーマットは次のとおりです。
- ロブロックス・マインクラフト(Minecraft)・フォートナイト内のミニゲームとカスタムのゲーム内インテグレーション
- プレイアブル広告、リワード動画
- ゲーム内のビルボード広告
- CTV(ネット接続テレビ)向けのゲームとスポンサーシップ
- インフルエンサーコンテンツ、3Dキャラクター、デジタルアバターアイテム、ロイヤルティプログラム
- ブランドリフト計測
ゲーム内に広告が表示される経路は大きく3つに分かれます。1つ目はロブロックスやフォートナイトにブランド専用のマップや体験を作り、プレイヤーに遊んでもらう方法です。2つ目はゲーム空間の看板にブランドの広告を掲出する方法です。3つ目はモバイルやCTVで遊べる広告(プレイアブル広告)やゲームそのものを配信する方法です。ゲーム内広告全体の種類と仕組みは「ゲーム内広告とは」で整理しています。

プロダクト構成
公式サイトではサービスを次の5つにまとめています。
名称 | 内容 |
|---|---|
プレイエフェクト(Play Effect) | 全体をまとめる独自のインテリジェンスエンジン |
プレイペルソナエンジン(Play Persona Engine) | AIとデータで、オーディエンスを6つのプレイペルソナに分ける |
オーディエンスインテリジェンス(Audience Intelligence) | 誰が、何に動機づけられ、どこで最も注意を向けているかを特定する |
メディアアクティベーション(Media Activation) | ゲーム・デジタル・ソーシャルの配信面に広告を出す |
クリエイティブレリバンス(Creative Relevance) | オーディエンスの行動に合わせた参加型のブランド体験を制作する |
6つのペルソナは Change Makers / Progress-Driven / Strategic Minds / Bold Expressers / Risk Takers / Social Connectors です。分類には、AIで消費者行動の心理的な動機を分析するソルステン(Solsten)の研究を使っています。2026年1月23日にはソルステンと「一部独占」の提携を結び、同社の心理データと予測モデルをキャンペーン設計・制作・最適化に組み込むと発表しました。データは「数百万人」が任意で回答した診断から作られていますが、正確な人数と独占の期間・地域は公表されていません(出典: 公式IR detail/288)。

対応プラットフォームとインベントリ規模
公式サイトに並ぶ配信面は、ロブロックス、フォートナイト、モバイル、PC、クレイジーゲームズ(CrazyGames)、ゲームラント(GameRant)、そしてサムスン(Samsung)・ビジオ(Vizio)・LG・ロク(Roku)のCTVです。10-Kにはマインクラフト、2026年10月の施策ではディスコード(Discord)も加わります。
在庫の規模を示す公表値は次のとおりです。
- 世界のゲーム人口へのリーチとして「約33億人」を掲げています(10-Kと2026年10月のリリース)。2026年4〜6月のリリースと2026年9月の白書のリリースでは35億人と書かれていました。いずれもゲーム人口全体の数字で、スーパーリーグが配信できる在庫の規模ではありません
- ミスフィッツ・ゲーミング・グループ(Misfits Gaming Group)とは、月間アクティブユーザー合計1億人超のロブロックスのゲーム群を対象に、優先的な商業パートナー契約を結んでいます(2026年5月)
- CTVでは、米国の広告販売パートナーとして、1億世帯超に届くプレイワークス(Play.Works)の在庫を扱います。プレイワークス側の公表値は、1セッション平均19分超、月間広告インプレッション1億5,000万超、視聴完了率95%です(2026年6月9日)
- ロブロックスの人気ゲーム「My Avatar!」(DAU 80万超、2026年4月)と「Hide or Die!」(ロブロックスのトップ100、2026年1月)に出資しています。My Avatar! への出資比率と金額は非公開です
主要パートナーと顧客
分類 | 名称 |
|---|---|
ゲームプラットフォーム | ロブロックス、フォートナイト、マインクラフト |
データ | ソルステン(一部独占の提携) |
プレイアブル広告 | アドアーケード(AdArcade、独占提携) |
CTV | プレイワークス |
ロブロックスの在庫 | ミスフィッツ・ゲーミング・グループ |
第三者計測 | ニールセン(Nielsen、パンダエクスプレスのブランドリフト調査) |
常設の計測パートナーや、IAB・MRCなどの第三者認証は公式資料で確認できませんでした。
公式サイトの取引ブランドには、マテル(Mattel)、パラマウント(Paramount)、ESPN、ディズニー(Disney)、ヒュンダイ(Hyundai)、チポトレ(Chipotle)、パンダエクスプレス(Panda Express)、ハイチュウ(HI-CHEW)などが並びます。売上の約60%が広告代理店経由、約40%がブランドとの直接取引で、50%超がリピート顧客です。2025年は上位2社で売上の22%を占めました(10-K)。
業績
期間 | 売上 | 粗利率 | 損益など |
|---|---|---|---|
FY2023 | 2,507.9万ドル | — | — |
FY2024 | 1,618.2万ドル | 約37.7% | 純損失1,664万ドル |
FY2025 | 1,134万ドル(前年比約30%減) | 約40.5% | GAAP純損失2,072万ドル。年末の現金1,439万ドル、無借金 |
2026年Q2 | 総売上約300万ドル | 41% | 調整後EBITDA約170万ドルの赤字。現金と投資は約670万ドル |
出典: 公式IR detail/240・292・303
売上は2年続けて減っていますが、粗利率は上がっています。会社は2026年第4四半期に調整後EBITDAの黒字化を目指すとしています。
スーパーリーグのここまでの歩み

スーパーリーグは上場企業ですが、従業員34名の規模で、上場前のVCラウンドから現在まで資金調達を繰り返してきました。調達の履歴に事業の主軸の変化を重ねると、会社がその時々に何を目指して資金を集めたかが見えてきます。
資金調達の振り返り
時期 | 手段 | 金額 | 主な投資家 | 当時の事業と会社の動き |
|---|---|---|---|---|
〜2017年 | シリーズA・Bなど | ラウンドごとの時期・金額は確認できず(2017年6月の公式リリースに「累計2,800万ドル超」との記載) | 初期の投資家としてシネマーク(Cinemark USA)、ET Capital、Quadrant Managementの名前のみ公表。リード投資家は確認できず | 映画館を会場にしたアマチュアeスポーツの運営 |
2017年6月 | シリーズC | 1,500万ドル | ニコロデオン(Nickelodeon)、DMG Entertainment(リリースではソフトバンクが運用するファンドと記載)、Toba Capital、Cali Group、ジェフ・ヴィニック(Jeff Vinik)氏ほか。リード投資家は明記なし | マインクラフトやリーグ・オブ・レジェンドのアマチュアeスポーツを展開(調達資金の用途は記載なし) |
2019年2月 | Nasdaq IPO | 約2,500万ドル(引受手数料を差し引く前) | 主幹事: ノースランド証券(Northland Securities)、レイクストリート(Lake Street) | 「アマチュアeスポーツのコミュニティ・コンテンツプラットフォーム」として上場 |
2021年1月・2月 | 普通株の売出し | 800万ドル、1,200万ドル | 確認できず | 同年に配信・クリエイター事業とロブロックス広告の買収を相次いで実施 |
2023年8月 | 引受公募 | 220万ドル | — | 「メタバース」路線でのブランド体験の制作 |
2024年10月 | 登録直接募集 | 100万ドル | インフィニット・リアリティ(Infinite Reality) | 同社による過半数株の取得提案の検討 |
2025年10月 | 私募増資 | 総額2,000万ドル | エボ・ファンド(Evo Fund、1,000万ドル)ほか | 借入の返済とNasdaqの純資産基準の回復 |
2026年(Q4完了予定) | 第三者割当 | 約1億3,460万ドル(2,100BTC+現金250万ドル) | メタプラネット | ビットコイン・トレジャリーへの転換 |
出典: 公式IR detail/30・32・267・304、10-K。2021年・2023年・2024年の株式発行はリリースの表題で確認した金額です。2023年5月の私募増資と2025年5〜6月の公募などは、金額を確認できていません。累計調達額の公式な通算値はありません。
日本との関わりは2回あります。2017年のシリーズCにはソフトバンクが運用するファンドが入り、2026年には東証上場のメタプラネットが親会社になります。
金額の推移を見ると、2017〜2021年は1回あたり800万〜2,500万ドルの調達が続き、金額を確認できた2023〜2024年の調達は100万〜220万ドルに縮みました。2025年の2,000万ドルは、用途が借入の返済とNasdaqの純資産基準の回復でした。今回の約1億3,460万ドルは金額を確認できた調達の中で最大ですが、中身の大半はBTCで、目的はビットコイン・トレジャリーへの転換です。
事業の主軸の変化
時期 | 出来事 |
|---|---|
2015年 | 映画館を会場にしたアマチュアeスポーツを展開 |
2021年6月 | ライブ配信プラットフォームのモブクラッシュ(Mobcrush)を約1,260万株の発行で買収。マイクロソフト公認のマインクラフトサーバー「Mineville」も取得 |
2021年8月 | 英国のクリエイター収益化プラットフォーム、バナーファイ(Bannerfy)を買収 |
2021年10月 | ロブロックスのビルボード広告ネットワーク、ブロックスビズ(Bloxbiz)を買収。75超のゲームで月間アクティブ2,500万人。ロブロックス中心の事業に舵を切る |
2022年 | iHeartMedia、ドリームワークス『The Bad Guys』などと組み「メタバース」路線を進める |
2023年9月 | 現社名に変更し、1対20の株式併合 |
2024年2月 | マインクラフト系サーバー「Minehut」を売却 |
2024年10月 | インフィニット・リアリティが過半数株の取得を提案 |
2025年3月 | 同案件は成立せず独占交渉期間が満了。エデルマン氏が社長からCEOに昇格 |
2025年5月 | スーパーソーシャル(Supersocial)を買収。従業員の35%を削減し、モブクラッシュ・ストリーミングを解散、Minevilleの運営会社を売却 |
2025年6月 | 1対40の株式併合 |
2025年9月 | エボ・ファンドが1,000万ドルの出資を発表し、暗号資産の活用を検討すると表明 |
2026年1月 | 1対12の株式併合。ソルステンと提携 |
2026年5月 | ミスフィッツの広告部門(Misfits Ads)の買収を完了 |
2026年6月 | プレイワークスの米国広告販売パートナーに就任 |
2026年8月 | メタプラネットによる出資を発表 |
2026年10月 | 年次株主総会で取引に関わる議案を含む全議案を承認 |
出典: 10-K、公式IR
撤退と縮小の記録
2014年の設立から約12年、スーパーリーグは主軸の入れ替えを続けてきました。映画館でのアマチュアeスポーツ(2015〜19年)、配信とクリエイター支援(2021年)、ロブロックス中心のメタバース型ブランド体験(2021〜24年)、プレイアブル広告とオーディエンス分析(2025〜26年)と移り、2026年にはビットコイン・トレジャリーへ転換する予定です。
- 2021年に大型買収したモブクラッシュは2025年に解散し、マインクラフト関連のサーバーは2024〜25年に少額で売却しました
- 2024年のインフィニット・リアリティによる過半数株の取得提案は成立しませんでした
- 株式併合は2023年・2025年・2026年の3回行い、Nasdaqの上場基準を一時割り込んで2025年に回復しています
一方、広告事業そのものは現在の形に絞り込まれてきています。ロブロックスのビルボード(2021年のブロックスビズ)を起点に、2026年には心理データ(1月のソルステン)、ロブロックスの在庫(5月のミスフィッツ)、CTV(6月のプレイワークス)を順に加えています。過去の転換では事業を売却・解散してきましたが、今回は広告事業を残したまま、BTCという新しい財務の柱を足す形です。これが広告事業の成長につながるかは、現時点では判断できません。
広告出稿事例
パンダエクスプレス(フォートナイト/ロブロックス)

パンダエクスプレスは2025年7月25日にフォートナイト・クリエイティブ(Fortnite Creative)の4つのマップとロブロックスで施策を始めました。マスコットのペイペイ(Pei Pei)をゲーム内のキャラクターとして登場させ、ゲームの自然な区切りで流れるインタラクティブなカットシーンで、Hot Orange Chickenの復活を予告しました。プレイを止めずに区切りで見せる設計は、コンテンツの流れに沿って表示するインフィード広告と考え方が近いものです。メディア代理店はザ・メニー(The Many)です。
最初の2週間で、カットシーンの視聴者は26.5万人を超え、ペイペイとの交流によるエンゲージメントは18.5万件を超えました(出典: 公式IR detail/261)。
2026年10月5日にはニールセンによるブランドリフト調査の結果が公表されました。対象は18〜34歳、信頼水準は90%です(出典: スーパーリーグ公式IR 2026-10-05)。
指標 | 結果 |
|---|---|
キャンペーン想起 | +9pt(非接触者との比較) |
ブランド認知 | +3pt |
検討意向 | 67% vs 64%(+3pt) |
推奨意向 | 64% vs 61%(+3pt) |
30日以内の高い購入意向 | +5pt |
近い時期の来店 | +5%(対照群との比較) |
認知や好意だけでなく来店まで第三者のデータで示しており、ゲーム内広告の効果測定の事例として情報量の多いものです。ゲーム内の接触をどう測るかは「アテンション指標(Attention Metrics)とは」で解説しています。
パンダエクスプレスは2026年後半から常時展開(Always-On)に移っています。フォートナイトでは期間限定メニューと連動したマップを3つ追加し、ゲーム内ビルボードを6か月間掲出します。ロブロックスでは「Panda Express Obby」を常設化し、毎月の更新を6回行います。ゲーム空間に長期間置く看板は、生活空間に溶け込ませるアンビエント広告と同じ発想です。単発のタイアップから、媒体としての継続出稿に切り替わったと考えられます。
この施策「Leveling Up」は2025 Planning & Buying Award(New/Emerging/Experimental Media部門)を受賞し、受賞時にはロブロックスのエンゲージメント率16%、フォートナイトのエンゲージメント53.7万件が示されました。2026年の旧正月施策は、OMMA 2026 Gamingのファイナリストに残っています。
EVPのリアノン・アップル氏は「ゲームを単なる媒体購入として扱うブランドは、出稿して終わるだけになる」「この18か月で、ゲーム内の接触が実際のブランド指標を動かすことを第三者のデータで示せた」と述べています。
チポトレ(ロブロックス、2025年3月)
チポトレはロブロックスの「Chipotle Burrito Builder」内にある映画館「Carnitas Cinema」で、30秒の短編アニメ『Unfolded』を初公開しました。サイドクエストをクリアすると視聴チケットがもらえ、先着5万人に無料のメイン料理のコードを配りました。
5万個の無料ブリトーは最初の1時間でなくなり、ピーク時には1分間に1,000個が配られました(出典: 公式IR detail/238)。チポトレとの取引は2021年から続いており、当時はデイワン・エージェンシー(Day One Agency)と協業しています。
ゲーム内の映画館で作品を見せ、遊んだ報酬として商品の無料コードを渡す構成は、ゲーム空間そのものをブランド体験の場にする没入型マーケティングの例です。
ハイチュウ(フォートナイト、2024年11〜12月)

日本企業につながる事例です。出稿主体は、ハイチュウの米国公式販売元で森永製菓株式会社の完全子会社であるモリナガアメリカ(Morinaga America, Inc.)です。2024年11月18日から12月15日まで、フォートナイトの「Minigame Box PVP Island」に3つのミニゲーム(Color Switch、Spin Cycle、新作のHI-CHEW Hoppers)を設置しました。プレイヤーはパワーアップアイテムやゲーム内通貨を集め、限定の帽子と交換できます。初の公式マスコット「Chewbie」のゲームデビューを兼ね、YouTuber 3名がプレイ動画を制作しました(出典: 公式IR detail/236)。
2023年に続く2回目のフォートナイト施策で、リリースではハイチュウ側のテルヒロ・カワベ(Teruhiro Kawabe)氏が「昨年の施策の成功を受け、再びスーパーリーグと組めることをうれしく思う」とコメントしています(同氏の役職は確認できていません)。効果指標はリリースに記載がありません。
メイベリン(ロブロックス)

公式サイトにはロブロックス内に作ったメイベリンの「Sunkisser Blush」ポップアップストアが掲載されています。商品の世界観を空間として見せる施策で、視覚などの感覚に訴えてブランドの印象を伝えるセンサリーマーケティングの考え方に近いものです。実施日と効果指標は公式リリースで確認できていません。
そのほかの公表値
- 2024年の投票啓発施策「Virtual Vote」(ロブロックス): 300万訪問、1億メディアインプレッション、有権者登録とその確認が約4,000件、30社超の企業連合が参加
- 公式サイトには「購入意向+31%」「ROAS 13倍」「モバイル売上ランキング2位」といった数値が載っていますが、どの案件の数値かは示されていません
スーパーリーグがメタプラネット傘下に入る背景

公式資料から読み取れる背景は3つです。
1つ目は業績です。売上はFY2023の2,508万ドルからFY2025の1,134万ドルまで縮み、2025年には従業員の35%を削減しました。2026年第2四半期末の現金と投資は約670万ドルでした。
2つ目は株価です。エデルマン氏は株主への手紙で、直近18か月で無借金化とコスト削減を進めたものの株価に反映されなかったと書き、今回の取引をその流れを変えるためのものと説明しています。
3つ目は取引の前段階がすでにあったことです。2025年9月、デジタル資産トレジャリーに投資するエボ・ファンドが1,000万ドルの出資を発表し、スーパーリーグは暗号資産の活用を検討すると表明しました。エボ・ファンドの出資を伝えるリリースではメタプラネットとの関係にも触れており、今回の取引ではエボ・ファンド向けにも最大1,000万株のワラントが発行されます。
これらを合わせると、今回の取引は、広告事業の売上だけでは上場企業としての評価を保ちにくくなったスーパーリーグが、財務の柱をBTCに求めたものと考えられます。
一方で、ゲームを広告媒体として使う需要自体は続いています。リピート顧客が50%を超え、パンダエクスプレスは第三者計測を経て常時展開に移りました。広告主側の需要と、広告専業企業の経営の難しさは分けて見る必要があります。
日本市場ではどうか
スーパーリーグに日本法人、日本語サイト、日本の広告主向けの窓口は確認できませんでした。メタプラネットの発表には、将来スーパープラネットの「証券」を日本で販売する手続きを検討しているとの言及があるだけで、広告事業を日本で展開する計画は発表されていません。

日本ブランドとの接点にはハイチュウの事例がありますが、これは米国法人による米国向けの施策です。日本の広告主が日本の生活者に向けてスーパーリーグを使うには、次の点が障壁になると考えられます。
- 日本法人や日本語の窓口が確認できない
- 顧客と計測の中心が米国である(ニールセン調査の対象も米国の18〜34歳)
- ロブロックスやフォートナイトのカスタム体験は制作型で、運用期間も長い。パンダエクスプレスは検証から常時展開まで約1年かけて段階的に進めた
- 制作費と最低出稿額が公開されていない
米国市場を持つ日本企業が、現地法人を通じて米国向けに施策を行う場合は、モリナガアメリカのように直接取引する道があります。
日本で同じ広告を実施する選択肢
スーパーリーグのゲーム内施策には、「ゲーム内に専用の体験を作る」ものと「ゲーム空間の看板に広告を出す」ものがあります。パンダエクスプレスの常時展開でも、カスタムマップと並んでゲーム内ビルボードの6か月掲出が使われています。
日本国内で後者のゲーム内看板型の広告を行う場合の選択肢の一つが、Ad-Virtuaです。国内400タイトル以上のゲーム空間にある看板やモニターに、動画広告を配信するアドネットワークです。
比較ポイント | スーパーリーグ(米国) | Ad-Virtua(国内) |
|---|---|---|
主な手法 | ロブロックス・フォートナイトのカスタム体験制作、ビルボード、プレイアブル広告、CTV | 既存ゲーム空間の看板・モニターへの動画配信 |
届く生活者 | 米国中心 | 日本国内 |
対応タイトル・面 | ロブロックス、フォートナイト、マインクラフト、モバイル、CTVなど | カジュアル・RPG・パズル・アクションなど400タイトル以上 |
制作 | 体験ごとに制作が必要 | 手持ちの動画素材を使える |
料金 | 非公開 | 1週間30万円のプランあり |
公表されている効果 | パンダエクスプレスでキャンペーン想起+9ptなど(ニールセン調査) | 広告想起率約1.8倍、注目度約1.7倍、CPM約300円 |
出典: スーパーリーグ公式IR・10-K、Ad-Virtua公表値
Ad-Virtuaが合うのは、日本の若年層やゲームをよく遊ぶ層に認知を広げたい企業、TVCMやSNS広告用に作った動画素材をそのまま活用したい企業、まず1週間単位の予算で反応を確かめたい企業です。
合わないのは、プレイヤーが遊び込むブランド専用のワールドを作りたい企業や、ロブロックス・フォートナイトで北米のプレイヤーに届けたい企業です。この場合は、スーパーリーグのようなカスタム体験の制作会社や、現地のパートナーを探すほうが目的に合います。
広告主が取るべき判断
今動くべき企業の条件は次のとおりです。
- 18〜34歳の認知・想起に課題があり、TVCMの補完になる接点を探している
- 外食・小売で、認知から来店までを一続きの施策として設計したい(パンダエクスプレス、チポトレの事例に近い)
- 北米で売っている商品があり、現地法人がマーケティング予算を持っている
様子見でよい企業の条件は次のとおりです。
- 主なターゲットが40代以上で、ゲームをよく遊ぶ層と重ならない
- スーパーリーグとの直接取引を考えているが、取引完了(2026年第4四半期予定)後の体制と広告事業の方針をまだ確認できていない
海外の新興ベンダーに直接発注する場合は、窓口の言語、契約の継続性、計測の方法を事前に確かめておく必要があります。ここまでの歩みが示すとおり、ゲーム広告専業の企業では事業転換や再編が起きることがあります。
関連する基礎知識
- ゲーム内広告とは: ゲーム内広告の種類・仕組み・費用の全体像
- アテンション指標(Attention Metrics)とは|効果測定の新基準と広告活用法・ゲーム内広告での応用: ゲーム内接触の効果をどう測るか
- 没入型マーケティング(イマーシブマーケティング)とは|AR・VR・ゲーム空間で実現する五感を使ったブランド体験設計: ゲーム空間をブランド体験の場にする手法
- アンビエント広告(環境広告)とは|日常に溶け込むブランド体験設計と事例【企業向けガイド】: 空間に溶け込む広告の考え方
- センサリーマーケティング(五感マーケティング)とは|視覚・聴覚・触覚を活用したブランド体験設計ガイド: 五感に訴えるブランド体験の設計
- インフィード広告 とは 効果: コンテンツの流れを止めない広告の仕組み
よくある質問
メタプラネット傘下に入ったあと、既存の広告主との取引はどうなりますか?
2026年10月6日付の株主への手紙で、エデルマン氏は広告事業を「経営陣・従業員・顧客・ブランドパートナーを引き継いだまま」続けると書いています。個別の契約条件の扱いは公表されていないため、取引中の企業は担当者に確認する必要があります。
スーパーリーグの競合にはどんな会社がありますか?
10-Kでは、AppLovin、Unity、Anzu、Bidstack、AdInMo、Frameplay、Overwolf、Playwireを競合として名指ししています。このうち一部のゲーム内広告会社は、スーパーリーグが在庫パートナーとしても使っていると書かれており、競合と取引先を兼ねる関係です。
「33億人にリーチ」は、スーパーリーグの広告がそれだけの人に届くという意味ですか?
違います。33億人は世界のゲーム人口全体の数字で、10-Kでは外部の調査(Exploding Topics、2026年1月)を出典にしています。スーパーリーグが実際に配信できる在庫の規模ではありません。在庫の規模は、ミスフィッツのロブロックスのゲーム群(月間アクティブ合計1億人超)やプレイワークスのCTV網(1億世帯超)など、配信面ごとの数字で見るほうが実態に近くなります。
フォートナイト内の施策はエピックゲームズの公認ですか?
スーパーリーグのフォートナイト施策のリリースには、「エピックゲームズ(Epic Games)の後援・承認を受けたものではない」との但し書きがあります。
スーパープラネットの株式は日本で買えるようになりますか?
メタプラネットは、既存の子会社が将来スーパープラネットの証券を日本で販売する手続きに関われるかを検討中としていますが、発行・募集の決定はしていません(2026年8月18日の発表時点)。


.jpg)



