結論

SuperAwesome(スーパーオーサム)は、子どもとティーンに向けた広告を、個人データではなく配信先の内容(文脈)に合わせて届ける2013年設立のキッズテック企業で、2026年6月からRobloxの13歳未満向け広告を全世界で唯一の第三者として販売している。日本の広告主にとっては、海外の子ども向けゲーム内広告で「文脈で配信し、審査と広告表記をそろえる」運用が具体的に動き出した事例であり、同社のサービスを日本向けに使えるかどうかは、現時点では公式に確認できない。

発表の内容

この記事の起点はSuperAwesomeでゲーム事業を率いるジェシカ・ワトソン(Jessica Whatson、Head of Gaming)氏が2026年8月10日に公式ブログで公開した「Game On: Why Roblox Ads Belong on Every Toy Brand's Media Plan」である(初出は英業界誌Toy World Magazineの8月号)。玩具ブランドはRoblox広告をメディアプランに組み込むべきだ、という主張の記事だ。

ワトソン氏は記事の中で「アルファ世代はすでに選んでいる(Gen Alpha has made a choice.)」と書き、玩具ブランドにとっての問いは「もはやこのプラットフォームを本気で扱うかどうかではない」と述べている。同ブログが挙げるRobloxの規模は次のとおり。

  • 日間アクティブユーザー(DAU)1億4450万人
  • YouTubeとTikTokのRoblox関連動画は1日29億回再生
  • ゲーム数は4400万超で、毎日約1万5000本が追加される

DAUは時点によって数値が異なる。2026年6月4日のSuperAwesomeの公式リリースでは1億3200万人、AdExchanger(2026年6月4日)はRobloxの2025年第4四半期の値として1億4400万人と報じている。上の1億4450万人は、8月10日のブログにSuperAwesomeが記載した値である。

前提となる発表は2026年6月4日にあった。Robloxは13歳未満向けのコンテクスチュアル広告(ゲームの内容に合わせて配信する広告)の商業・技術パートナーにSuperAwesomeを指名し、同社は全世界で唯一の第三者販売事業者になった。対象はRoblox KidsとRoblox Selectを含む全年齢の体験で、北米では一部の戦略パートナーへの直販をRobloxが自社で続ける。提携そのものの詳細とRoblox側の方針転換は「Roblox×SuperAwesome提携で13歳未満向け広告が解禁」で解説しているため、ここからはSuperAwesomeという会社の解説に絞る。

SuperAwesomeとはどんな会社か

SuperAwesomeの企業ロゴ(青紫の太字ロゴタイプ)
出典: SuperAwesome(

基本情報

項目

内容

社名

SuperAwesome Inc.(商標表記上の名称。英国法人の正式名は未確認)

設立

2013年(公式)

本社

ロンドン(報道ベース)。公式リリースの発信地は「New York & London」

創業者

公式サイトはリー・ヴィーチ(Lee Veitch)氏を共同創業者と記載。ほかの創業者の名前は公式に記載がない

経営陣

CEO ケイト・オラフリン(Kate O'Loughlin)氏、President & CSO ニック・ウォルターズ(Nick Walters)氏、CTO レオ・ザンカーニ(Leo Zancani)氏ほか

従業員数

非公開

売上

2019年は5500万ドル、2020年の見通しは8000万〜9000万ドルで黒字(TechCrunch 2020年1月27日、同社の説明として)。以降は非公開

月間リーチ

「毎月5億人近い子どもとティーン」(自社記載)

顧客数

「300超の主要ブランドとコンテンツ事業者」(自社記載)

株主

Epic GamesからのMBO(経営陣による買収)で独立。現在の出資者は非公開

同社は自らを「アルファ世代とZ世代に安全に届けるためのデータ・技術・サービスのリーダー」と定義している。公式サイトの会社紹介によると、創業時の考え方は、子どもの関心がテレビからデジタルへ移り、米国のCOPPA(児童オンラインプライバシー保護法)や欧州のGDPRなどのプライバシー法がある中で、「ゼロデータのインターネット」を支える基盤をつくることだった。

2020年時点のCEOはディラン・コリンズ(Dylan Collins)氏だった(TechCrunch、Microsoft UK)。創業者かどうかは一次情報で確認できていない。

提供しているソリューション

公式サイトのメニュー(2026年10月26日時点)は、配信面ごとに次のように分かれている。

ソリューション

内容

公表されている規模(自社発表)

Awesome Video / AwesomeAds

子ども向けに安全な広告マーケットプレイス。YouTube、モバイルアプリ、OTT/VOD、Webに配信する。表示広告と動画広告には「SAFE AD」の透かしが入り、人による審査と文脈だけのターゲティングを経た広告であることを示す

AwesomeAds経由で月1550億超のインプレッションと動画再生。マーケットプレイスの月間販売可能インプレッションは180億超。審査・分類済みのYouTube 11.2万チャンネルで月5880億超の再生

Awesome Gaming

ゲーム内ビルボード(静止画・GIF・動画)、ゲーム内ポータル、既存ゲームへのブランド統合、カスタムゲーム制作、eスポーツ、ゲーム実況クリエイターとのライブ企画「Game With Me」

ゲーム内ビルボードとポータルで月70億超のインプレッション

Roblox Ads

Robloxの13歳未満向け広告の独占販売

「数千万人の子ども」に届く計画ツール

Awesome Creators

若年層向けクリエイターとのキャンペーンを一括で運用

非公表

Awesome Audio

キッズ・ファミリー向けポッドキャスト広告。2026年1月のStarglow Media買収で強化

Starglowの年間再生1.2億回超、45超の番組

Awesome Intelligence

若年層のトレンドとファンダム(ファン文化)のデータ、配信に使えるオーディエンス、計測をまとめた自社データ基盤

「数万件」の若年層キャンペーン実績が土台

AwesomeAds、Roblox Ads、Awesome Intelligenceの説明に共通するのは、個人のデータではなく、配信先のコンテンツの内容や若年層の関心を手がかりに広告を届けるという考え方である。Robloxでは国・性別・年齢帯といった粗い指定もできる(後述)。

広告がゲーム内に表示される仕組み(Robloxの場合)

Robloxの街並みでアバターたちがバス停の動画ビルボード広告を見ている様子。右下に「Ad」の表示がある
出典: SuperAwesome(

Robloxでの配信は、公式ブログ、Roblox Adsのページ、AdExchangerの報道によると次の流れになる。

  1. 毎日約1万5000本追加されるゲームを、社内の若年層専門家がAIの補助を受けて審査する。プレイ映像、SNSのコミュニティ、ゲームの仕組みを確認する。
  2. 文脈カテゴリ(80超)、ブランド適合フラグ(軽度・重度の暴力、写実的な武器などを含む11種)、武器表現(3段階)でタグを付ける。アニメ調の武器と写実的な武器は区別する。
  3. 広告主は「教育」「パズル」「タウン&シティのロールプレイ」などのカテゴリを選び、写実的な暴力表現を除いて出稿する。
  4. ビデオビルボード、ブランドポータル、ホームページ広告、スポンサータイルで配信する。いずれもCOPPAに準拠し、モバイル・PC・コンソール・VRに対応する。
  5. 動画は自動再生され、ユーザーが目を離すと一時停止する。ビデオビルボードのインプレッションは、アバターが十分近くにいて、適切な角度で見ている場合だけ計上する。
  6. 個人データや行動履歴は使わない。国・性別・年齢帯といった粗い指定はできる(AdExchanger)。

ワトソン氏はこの方式を「個々のユーザーが誰かではなく、その環境が何についてのものかに基づいて広告を環境に合わせている」と説明している。

AdExchangerの報道では、取引条件は次のとおり。

  • 13歳未満向けは直接取引のみで、プログラマティック(システムによる自動売買)での販売はない
  • リワード動画(視聴すると報酬がもらえる動画)は対象外
  • 収益はゲーム開発者と分配し、SuperAwesomeが手数料を取る
  • DoubleVerifyとIASもブランドセーフティのパートナーに入る(SuperAwesomeとの直接契約かどうかは未確認)

同社は効果について、コンテクスチュアル・ターゲティングは一般的なターゲティングより視聴完了率が5ポイント高い傾向があり、RobloxとYouTubeをまとめて買う「マッチド・バイ」で最大42%のリーチ上積みがあると公表している。どちらも自社の主張で、第三者の検証は確認できていない。

Awesome Intelligence

SuperAwesomeのAwesome Intelligenceのキャンペーンダッシュボード画面。インプレッション、視聴完了率、配信国別の内訳を表示している
出典: SuperAwesome(

Awesome Intelligenceは、若年層のデータ、配信に使えるオーディエンス、計測をまとめた自社のデータ基盤である。オーディエンスは年齢・性別ではなく、価値観、熱中しているもの、ファンダムで設計する。Pocket Gamerによると2024年9月25日に発表され、最初のデータパートナーはGamefamである。

広告基準と教育プログラム

SuperAwesomeの教育プログラム「Roblox Aware」のロゴ
出典: SuperAwesome(

同社は広告基準「The SuperAwesome Ad Standards」を公開している(最終更新2026年2月17日)。日本の食品・菓子メーカーが海外で出稿を検討する場合、次の規定が実務に直接かかわる。

  • UNICEFの子どもの権利に基づくガイダンスに沿う
  • 6歳未満向けの食品・飲料広告と、子ども向けのキャンディ・菓子の広告は全地域で禁止
  • 英国ではHFSS(脂肪・塩分・糖分が多い)食品を禁止
  • 米国では13歳未満向けの食品広告にCFBAI基準、欧州ではEU Pledge基準を適用
  • 13歳未満向けの広告は原則としてECページや13歳以上限定のSNSにリンクしない
  • 広告であることの明示は、インフルエンサー、ゲーム内施策、ポッドキャストのすべてで必須

準拠を明示している法規はCOPPA(米国)とGDPR-K(EU)である。

教育プログラムとして、Kid Aware、Teen Aware、Creator Aware、Roblox Awareを運営している。Creator Awareは2026年7月9日に始まり、メンタルヘルス支援のSelf Spaceと提携してクリエイターを支える。Robloxとの共同研修は2026年6月4日のリリースでは「Blox Aware」、現在の公式サイトのメニューでは「Roblox Aware」と表記されている。改称なのか別のプログラムなのかは確認できていない。

対応プラットフォームと主要パートナー

配信先はRoblox、Fortnite(事例あり)、YouTube、モバイルアプリ、Web、OTT/VOD・CTV、ポッドキャストである。

区分

パートナー

確度

プラットフォーム

Roblox

公式

データ

Gamefam

報道ベース

ブランドセーフティ

DoubleVerify、IAS

Roblox案件のパートナーとして報道

メンタルヘルス

Self Space

公式

代理店

WPP(2020年6月に提携)

PPC Landの報道のみ。一次情報は未確認

顧客(公式サイト掲載ロゴ)

Nike、Universal、LEGO、Hollister、L'Oréal、任天堂、Nickelodeon、MGA、Disney、Roblox、Aeropostale、Warner Bros.

公式。取引の内容と地域は非公開

事例の効果計測には自社の事前・事後分析「KidsLift studies」を使っている。外部の調査会社名は公式に記載がない。

ここまでの歩み

SuperAwesomeの資金面の歴史は、独立系スタートアップとしての調達、ゲーム大手による買収、経営陣による買い戻しという3つの段階に分かれる。

時期

出来事

金額

確度

2013年

設立

—

公式

2013〜2019年

2020年以前の各ラウンド

未確認

公式のニュースルームがなく確認できない

2020年1月27日

追加調達。MicrosoftのCVC(事業会社のベンチャー投資部門)M12が戦略出資し、既存投資家のMayfair Equity、Hoxton Ventures、Ibisとエンジェル投資家が参加

1700万ドル

金額は報道ベース(TechCrunch)。M12の出資はMicrosoft UK公式で確認(金額は非開示)

2020年9月25日

Epic Gamesが買収

非開示

報道ベース

2021年9月

Epic傘下で、Unreal Engineの開発者向けに保護者による承認の仕組みを無料提供

—

報道ベース(本文未確認)

2023年9月

Epicが870人の人員削減とあわせ、SuperAwesomeの分離を発表したと伝えられる

—

二次情報。Epicの公式発表は未確認

2024年1月

EpicからのMBOで独立

非開示

MBOの事実は公式。時期は報道ベース(PPC Land)

2024年9月25日

Awesome Intelligenceを発表

—

報道ベース

2026年1月13日

Starglow Mediaを買収(MBO後初の買収)

非開示

公式

2026年2月17日

広告基準を改定

—

公式

2026年6月4日

Robloxの13歳未満向け広告の独占パートナーに

—

公式

2026年7月9日

Creator Awareを開始

—

公式

2026年8月10日

玩具ブランドにRoblox広告を提案するブログを公開

—

公式

2020年1月:M12の戦略出資

確認できる最後の外部調達は、2020年1月の1700万ドルである(TechCrunch)。リード投資家と資金の用途は報道に記載がない。同じ記事で同社は2019年の売上を5500万ドル、2020年の見通しを8000万〜9000万ドルと説明し、黒字であるとしていた。M12の出資はMicrosoft UKの公式発表でも確認できる。Microsoftのベンチャー部門による戦略出資は、子ども向けのプライバシー対応技術が大手テック企業の関心を集めていたことをうかがわせる。

2020年以前の各ラウンドの時期・金額・リード投資家は確認できなかった。累計調達額も公式の記載がないため、この記事では書かない。確認できた範囲では、日本企業の投資家は見つからなかった。

2020年9月〜2024年1月:Epic Games傘下から独立へ

2020年9月、Epic Gamesが同社を買収した(金額非開示)。傘下の時期にはUnreal Engineの開発者向けに保護者の承認の仕組みを無料で提供したと報じられている。

その後、2023年9月にEpicが870人規模の人員削減を発表した際、Bandcampの売却とあわせてSuperAwesomeを切り離す方針を示したと伝えられている。同社は2024年1月ごろ(報道ベース)にMBOで独立した。Epicがどの事業を手元に残したかは、一次情報で確認できていない。

親会社のリストラをきっかけに独立した形だが、独立後の同社は買収と独占契約を続けて実現している。

2026年:独立後の拡大

SuperAwesomeとStarglow Mediaのロゴを並べた買収発表のビジュアル
出典: SuperAwesome(

2026年1月13日、同社はキッズ・ファミリー向けポッドキャストのStarglow Media(2023年に事業開始)を買収した。MBO後初の買収で、Starglowの創業者ジェド・ベイカー(Jed Baker)氏はSuperAwesomeの音声事業の責任者に就いた。ウォルターズ氏は「次世代のエンゲージメントは音にあふれている、という明確な確信のもとでこの買収を行った」とコメントしている。

続く2026年6月にRobloxの独占パートナーとなり、オラフリンCEOは「当社のインテリジェンス製品を通じてこれを実現する、Robloxの信頼されたパートナーに選ばれたことを誇りに思う」と述べた。Roblox側のコメントは公式リリースに含まれておらず、Robloxの公式ニュースルームにも提携の投稿は見当たらなかった。

確認できる外部からの調達は2020年1月が最後である。一方で同社はMicrosoftからの戦略出資、Epicによる買収、Robloxによる独占パートナーへの指名と、ゲームとテックの大手3社とそれぞれ異なる形で関係を結んできた。調達額の大きさより、子ども向けの安全な広告という専門分野を軸に、大手との関係を変えながら事業を続けてきた記録として読むのが適切だと考えられる。

広告出稿事例

公式サイトの事例ページから、効果指標が公表されている4件を紹介する。数値はすべてSuperAwesomeの自社発表で、第三者による検証は確認していない。実施時期はいずれもページに記載がない。

Paramount『スポンジ・ボブ』映画(Roblox)

Robloxの『Teamwork Puzzles』内に設置された映画『スポンジ・ボブ』のクエスト画面。報酬アイテムと進捗が表示されている
出典: SuperAwesome / Paramount(

映画『The SpongeBob Movie』のために、Roblox内の複数ゲームをつなぐクエストを実施した。Teamwork Puzzlesを軸に、Obby(障害物コース)などのゲームを横断する。25,000点の限定UGCアイテムを配り、YouTubeクリエイターの施策とインタラクティブ広告を組み合わせて22市場で展開した。クリエイティブは年齢層別に分けている。

指標

結果

目標・ベンチマーク

エンゲージメント

2億2500万

目標1億8600万

訪問

8000万

目標5500万

ビルボードのインプレッション

1300万

—

Obbyの滞在時間

12.1万時間

—

プレイ開始

290万回

—

インタラクティブ広告のエンゲージメント率

19.4%

ベンチマーク7%

プレロールの視聴完了率

78%

同70%

TrueViewの視聴率

58%

同40%

この施策はShorty Awardsを4部門で受賞している。

adidas X Speedportal(Fortnite)

Fortnite内に作られたadidas X Speedportalのサッカースタジアム風の空間
出典: SuperAwesome / adidas(

adidasの「X Speedportal」のために、Fortnite内にスピードラン(タイムアタック)用のマップを制作し、TikTok・Twitch・YouTubeのクリエイターと連動させた。

  • クリエイター動画は1240万再生(想定の2倍)
  • プレイ数は前週比43%増、30日で80万プレイ超
  • カスタムスピードランの完走率は38%
  • サッカーをするZ世代ゲーマーの77%が「数週間以内に購入しそう」と回答

Post PEBBLES(米国のシリアル)

Post PEBBLESシリアルのクリエイター動画広告。スマートフォン画面に「AD」表記入りで表示されている
出典: SuperAwesome / Post(

テレビを補う形で、AwesomeAds(YouTubeとアプリ)とクリエイター5家族を起用した。代理店はSparkである。

  • 親に購入をねだる意向が36%上昇
  • ブランド好意が37%上昇
  • 広告を見た子どもの90%が何らかの行動を起こした
  • YouTube動画は30日で320万再生超

ゲーム内の事例ではないが、食品ブランドが「子どもが親に購入をねだる」ことをKPIにしている点で、日本の食品メーカーにも参考になる。ただし日本で同じKPIを置く場合は、国内の業界自主基準や表現規制に照らして確認する必要がある。食品・飲料の若年層向け施策は「食品・飲料メーカーの若年層リーチ」で整理している。

大手玩具ブランド(社名非公表)

Robloxのカスタムワールド、クリエイター施策、AwesomeAdsを13市場で展開した。Robloxワールドの訪問は300万超、クリエイターコンテンツ400本で5500万インプレッション超、YouTubeは1230万再生、完全視聴は1830万回だった。

ゲームを使った3件(スポンジ・ボブ、adidas、玩具ブランド)は、いずれもゲーム内の施策だけで完結させず、クリエイター動画やYouTube広告と組み合わせている。ゲームの中と動画の両方でブランドに触れてもらう設計である。

なぜこの動きが起きたのか

Robloxのアバターと各種ゲーム体験のサムネイルを並べたRobloxのブランドイメージ
出典: Roblox Corporation/SuperAwesome公式ブログ掲載(

Robloxは2022年に広告を始め、2026年4月に13歳未満の層を広告主に開放する方針を示した(AdExchanger)。Roblox自身はこれを「方針転換」と説明している。AdExchangerによると、年齢確認を済ませたユーザーは45%で、その内訳は13歳未満35%、13〜17歳38%、18歳以上27%である。年齢確認を済ませたユーザーに限っても、13歳未満は3分の1強を占める。

一方で、Robloxは児童の安全をめぐる訴訟を少なくとも130件抱え、米連邦地裁で集団訴訟に統合されている(AdExchanger)。13歳未満に広告を出すなら、審査・分類・計測を外部の専門企業に任せ、その基準を公開しておくほうが、プラットフォームとして説明しやすいと考えられる。SuperAwesomeは2013年の設立以来、子ども向けに個人データに頼らない仕組みを手がけており、11種のフラグや食品の年齢別の規定のような公開済みの基準を持っていた。独占パートナーに選ばれた背景には、こうした事情があったとみられる。

玩具ブランドに向けた8月のブログは、この提携を受けて販売を本格化させるための提案と位置づけられる。子どもの時間がゲームと動画に移るなかで、玩具の広告予算をRobloxに振り向けてもらうことが狙いだと考えられる。

なお、この提携によってRobloxが子どもにとって安全になったと評価できるかどうかは別の問題である。訴訟は継続中で、広告主はブランド毀損のリスクを自社で判断する必要がある。

日本市場ではどうか

SuperAwesomeと日本の接点は、公開情報からは見つからなかった。

  • 日本の拠点、提携先、投資家は確認できなかった
  • 公式サイトの言語は英語・ドイツ語・フランス語のみ
  • 顧客ロゴに任天堂があるが、取引の地域と内容は不明

Robloxの13歳未満向け広告は「グローバル」とされているものの、AdExchangerによると提供市場は明示されていない。日本向けに配信できるか、日本の取引窓口があるかについて公式情報はなく、日本の広告主が今すぐ使えるかどうかは確認できない。検討する場合は、少なくとも次の点を同社に確認する必要がある。

  • 英語での直接取引が前提になるか
  • 審査・分類の対象に日本語のゲームが含まれるか
  • 日本のユーザーに配信でき、国別の指定で日本を選べるか

日本の規制環境も米国とは異なる。COPPAに相当する子ども専用のプライバシー法は、日本では成立していない。個人情報保護委員会は個人情報保護法の「いわゆる3年ごと見直し」で子どもの個人情報に関する規律を検討しており、今後の動向を追う必要がある。国内の子ども向け広告の規制は「子ども向け広告の規制と注意点」でまとめている。

子ども向けの文脈型ゲーム内広告を専業で扱う日本の事業者は、今回の調査範囲では確認できなかった(網羅的な調査ではない)。隣接する選択肢としては、キッズスターの「ごっこランド」が親子向けのブランド体験を提供している。

日本で近い施策を実施する選択肢

日本国内で「ゲーム空間の中のビルボードに動画広告を出す」施策を実施する場合、選択肢の一つがAd-Virtuaである。ゲーム空間内の看板・モニターに動画広告を配信する国内のアドネットワークで、SuperAwesomeのビデオビルボードと同じく、プレイを中断しない形で広告に接触させる。ゲーム内広告の種類と仕組みは「ゲーム内広告とは」で解説している。

ただし、両者は対象も設計も同じではない。違いを公開情報の範囲で整理すると次のようになる。

比較ポイント

SuperAwesome(Roblox Ads)

Ad-Virtua

主な対象地域

「グローバル」とされるが、提供市場は明示されていない(日本での提供は未確認)

日本国内

配信面

Robloxという1つのプラットフォーム内の多数のゲーム

国内の複数ゲームタイトル(公式FAQでは400タイトル以上)

主な対象年齢

13歳未満(Roblox Kids、Roblox Selectを含む)

Z世代が中心(公式サイトには「Z〜α世代」の記載もある)

ターゲティング

文脈カテゴリが中心。国・性別・年齢帯の粗い指定は可

タイトル単位の対象年齢・性別・カテゴリ、地域、タイトル個別の指定

13歳未満向けの専用規定

あり(COPPA準拠、広告基準を公開)

公式サイトでは確認できない

審査

社内の専門家とAIによるゲームごとの審査、11種のフラグ

Google・Appleの広告ガイドラインに準拠しない広告は原則として掲載を断ると明記

取引条件

直接取引のみ(日本語での対応は未確認)

1週間30万円から、初期費用なし、最短翌日配信、レポート無料(公式サイト)

Ad-Virtuaの公式サイトでは、配信が文脈だけに基づくのか、個人データを使うのかは明記されていない。13歳未満に限った配信や、COPPA相当の基準への準拠を求める場合は、Ad-Virtuaで要件を満たせるかを事前に確認する必要がある。

こんな企業におすすめ

  • Z世代を中心とした国内の若年層への認知を広げたい食品・飲料、日用品、外食・小売の企業
  • TVCMやSNS広告を補う施策として、プレイを中断しない広告を週単位の予算で試したい企業
  • 英語での直接取引や海外プラットフォームとの契約に人員を割きにくい企業

おすすめしない企業

  • 13歳未満の子どもだけに絞って配信することが必須の企業
  • 北米・欧州のRobloxユーザーに届けたいグローバルブランド。この場合はSuperAwesomeへの直接の問い合わせが先になる
  • 未就学児と保護者が一緒に遊ぶ場でのブランド体験を求める企業。この目的なら親子向けアプリなどの選択肢が合う。比較は「ファミリー向けマーケティングとは」で整理している

広告主が取るべき判断

今動くべきなのは、次の条件がそろう企業である。

  • 玩具、映画・アニメのIP、スポーツ用品など、北米・欧州の子どもとティーンに向けた商品を持っている
  • 英語での直接取引ができ、現地の代理店や担当部署がある
  • Robloxの訴訟を踏まえたうえで、ブランドとして出稿を判断できる社内の体制がある

こうした企業はSuperAwesomeの事例のように、Roblox内の施策とYouTube・クリエイター施策を組み合わせた計画を問い合わせる価値がある。

様子見でよいのは次のような企業である。

  • 国内市場が中心の企業。日本のRobloxユーザーへの配信可否がはっきりしないうちは、判断材料が足りない
  • 子ども向けのキャンディ・菓子や、6歳未満向けの食品・飲料を扱う企業。これらの広告はSuperAwesomeの広告基準で全地域で禁止されている
  • 13歳未満への配信そのものに、社内のコンプライアンス上の懸念が強い企業

国内向けにゲーム内広告を試す場合も、SuperAwesomeが公開している審査の考え方は参考にできる。どのジャンルのゲームに出すか、暴力表現をどこまで許容するか、広告であることをどう示すかを出稿前に社内で決めておくと、媒体を選ぶときの比較基準になる。

関連する基礎知識

FAQ

SuperAwesomeは今もEpic Gamesのグループ会社なのか

Starglow Mediaの買収を伝える公式ブログでは、EpicからのMBOで独立したと記載されている。現在の出資者は非公開で、Epicが株主として残っているかどうかは公式情報からは確認できない。

SuperAwesomeを通じてMinecraftに広告を出せるか

公式サイトのゲーム関連ページには、Minecraftへの言及がなかった。事例が公開されているゲーム内の配信先はRobloxとFortniteである。

SuperAwesomeはkidSAFEなどの第三者認証を取得しているか

公式サイト上ではkidSAFEやCOPPA Safe Harborなどの第三者認証の記載を確認できなかった。認証の有無が出稿条件になる場合は、同社に直接確認する必要がある。

SuperAwesomeに日本語の正式な社名表記はあるか

日本語の公式表記は確認できなかった。この記事では読みとして「スーパーオーサム」を添えたが、問い合わせや契約書では英字表記のSuperAwesome(SuperAwesome Inc.)を使うのが確実である。

ポッドキャスト広告も同じ会社に頼めるのか

公式サイトには、Awesome Audioとしてキッズ・ファミリー向けのポッドキャスト広告のメニューがある。2026年1月に買収したStarglow Mediaの番組が中心で、日本語の番組があるかどうかは確認できていない。