Sony Interactive Entertainment(SIE)が、PlayStation向けの社内広告組織「PlayStation Media Solutions」の主要ポジションを、東京を含む世界複数拠点で募集していることが、業界専門メディアDigidayの2026年8月5日付報道で明らかになった。日本の広告主にとっては、Xbox Media Solutions(Microsoft)・EA Advertising(Electronic Arts)に続き、コンソール・大手パブリッシャー3社が自社広告事業を本格構築する動きが、日本拠点の営業体制を含めて進み始めた段階にある、という事実として受け止めるべきニュースである。

発表の内容
Digidayは、ソニーがここ数ヶ月で少なくとも4つの広告関連職種の求人を出しており、PlayStation向けの本格的な社内広告組織「PlayStation Media Solutions」を構築中であると報じた。求人の一部はロンドン発の投稿で、当該部門を「PlayStationの新設された広告組織(newly formed advertising organisation)」と明記している。ソニーはDigidayのコメント要請に応じていない(出典: Digiday "Sony is scaling up its Playstation advertising ambitions")。
確認できた求人は次の4件である。
求人 | 勤務地 | 職務内容 | 掲載状況 |
|---|---|---|---|
Global Director, Client Partnerships | 記載なし(グローバル統括) | プログラマティック広告・FAST(無料広告付きストリーミング)・CTV(コネクテッドTV)・新興広告ソリューションを含むグローバル戦略・組織・パフォーマンスの統括 | 2026年7月中旬掲載、確認時点で掲載中 |
Director, Ad Operations & Technology | 米カリフォルニア州サンマテオ(SIEグローバル本社) | ad serving・プログラマティック収益化・オーディエンスターゲティング・計測・プライバシー起点のデータ活用を含む、広告技術・オペレーション基盤の構築。チームは米国・英国・日本にまたがる | 掲載中 |
広告オペレーション職 | ロンドン | 求人票内でPlayStationの部門を「newly formed advertising organisation(新設された広告組織)」と表現 | 2026年8月3日以前に掲載終了 |
Client Partner (Ad Sales) | 東京 | 「戦略的な広告パートナーのポートフォリオに対する信頼されるアドバイザーとして、コンサルティング型営業とリレーションシップ・マネジメントを通じて長期的なビジネス成長を推進する」。所属は「Media Solutions team」、「グローバルな広告営業組織」と説明 | 2026年7月中旬〜下旬掲載、確認時点(2026年8月12日)で掲載中 |
東京拠点の求人はSIE公式採用サイト(careers.playstation.com)で直接確認できる一次情報であり、報道の裏付けとなっている。
Digidayはこの動きを「ソニーにとって4度目のPlayStation広告事業構築の試み」と位置づけている点も重要である。過去3回はいずれも持続的な事業として定着しなかったと同記事は指摘している(詳細は後述)。
PlayStation Media Solutionsの広告事業

Sony Interactive Entertainment(ソニー・インタラクティブエンタテインメント、SIE)は、ソニーグループ株式会社の完全子会社で、PlayStation®シリーズのハードウェア(PS5、PS5 Pro)・ソフトウェア開発/販売、PlayStation Plus(サブスクリプション)、PlayStation Store、PlayStation Portal、DualSenseコントローラー、PlayStation VR2、および自社スタジオ(Horizon、God of War、The Last of Us、Gran Turismo、Uncharted等のフランチャイズ)を展開している。1993年11月16日にSony Computer Entertainment Inc.として設立され、現在の法人体制としては2010年4月1日に発足した(表記が資料によって分かれるため両方を記載)。グローバル本社は米カリフォルニア州サンマテオ、日本拠点は東京都港区(ソニーシティ)にあり、ロンドンにも拠点を持つ。代表者は西野秀明氏(President and CEO)。
求人票からわかる部門の輪郭
「PlayStation Media Solutions」という名称そのものを、SIEが公式プレスリリースで発表した事実は確認できていない。求人票上のチーム名は「Sony Interactive Media Solutions team」で、SIE公式採用ページでは「ゲーム・エンタテインメント領域における広告ビジネスを推進するグローバルな広告営業組織」と説明されている。ロンドンの求人票が「新設された広告組織」と表現している点から、比較的新しい組織で、正式なブランディングがまだ固まっていない段階にあると考えられる。
求人の職務範囲からは、プログラマティック広告・FAST・CTV・ad serving・オーディエンスターゲティング・計測・プライバシー起点のデータ活用への投資が読み取れる。これは配信ゲーム内の広告枠に限らず、PS5のホーム画面やメディアアプリを含む広範な「広告テクノロジースタック」構築を志向している可能性を示すが、広告がどのような形式(インタースティシャル、サイネージ、CTV広告等)でユーザーに表示されるかの具体的な仕様は、本リサーチ時点で未発表である。

規模感(SIE公式コーポレートページおよび決算開示より)
SIE公式コーポレートページの「Fast Facts」によれば、PlayStation Networkの月間アクティブユーザー(MAU)は約1億2,500万人、年間ゲームプレイ時間510億時間、PS5累計販売9,500万台以上とされる(概数)。2026年度第1四半期決算(2026年7月31日締め)でも、PlayStation Network MAUは125百万人(前年同期比+2%)、PS5累計出荷は世界93.7百万台(2026年3月末時点)と、決算報道で近い数値が示されている。同四半期のGame & Network Services事業の営業利益は前年同期比+37%の2,020億円で、うち約800億円は米関税還付要因とされ、ゲーム・機器販売の伸びそのものによるものではない点が報道で指摘されている(いずれも決算報道経由の確認で、Sony公式IR資料原本は本リサーチで直接確認できていない)。
対応プラットフォーム・主要パートナー
現時点でSIEは、広告付きサービスの提供やPS本体への広告掲載を公式には発表していない。DSP・計測ベンダー・広告代理店等の提携パートナーも、本リサーチ時点で公式発表はない。つまりPlayStation Media Solutionsは、広告商品として市場に出す段階ではなく、採用によって組織の骨格を組み立てている段階にある。
このような「配信面としてのゲーム内広告」の仕組み全体像は、ゲーム内広告とはで整理している。
ここまでの歩み
PlayStationの広告事業は、今回が初めての試みではない。Digiday記事は今回の動きを「4度目の試み」と位置づけ、過去3回はいずれも持続的な事業として定着しなかったと明記している。
時期 | 取り組み | 内容 |
|---|---|---|
2008年(1回目) | ダイナミック・イン・ゲーム広告(PS3向け) | 初対応タイトルは『Guitar Hero World Tour』(2008年10月発売)。プレイヤーの地域や時間帯に応じて広告クリエイティブが切り替わる仕組み |
2008年(2回目、並行) | PlayStation Home | ブランド向けの仮想空間としても機能する専用サービスを開設 |
2022年(3回目) | 非公開の広告挿入システム開発 | Bloomberg報道(Digiday記事内で言及)によれば、18ヶ月かけてゲーム内に直接広告を挿入するシステムを開発し、同年末までにプライベート・マーケットプレイスの立ち上げを目指していたとされる |
2026年(4回目、今回) | PlayStation Media Solutionsの採用拡大 | グローバル・ディレクター、広告オペレーション&テクノロジー・ディレクター、東京含む各拠点のクライアントパートナー(広告営業)など、複数の中核ポジションの採用が進行中 |
過去3回の試みが定着しなかったという事実は、他の日本語記事では十分に紹介されておらず、今回の動きを「発表」ではなく「採用活動という状況証拠」として、慎重に評価すべき理由になる。現時点で正式な広告商品・サービスのローンチには至っていない。
同時期に進む競合2社の動き
この文脈を理解するには、同じ「コンソール/大手パブリッシャー系広告事業」であるMicrosoftのXbox Media SolutionsとElectronic ArtsのEA Advertisingの状況と並べる必要がある。

Xbox Media Solutions(Microsoft)は、2023年のActivision Blizzard買収(680億ドル、2022年1月18日発表)を経て、旧Activision Blizzard Mediaの広告営業組織を統合した。2025年にはXboxコンソール向け広告営業を自社に取り込む動きが報じられている。2026年8月にはXbox事業で3,200人規模の人員削減があったと報じられる一方、広告事業には投資を継続している構図がDigiday記事内で言及されている。

EA Advertising(Electronic Arts)は2026年6月15日に正式ローンチした。自社開発の広告サーバーとFrostbiteエンジン向けSDKを基盤に、EA SPORTS FC・Madden NFL・College Football 26等でスタジアム看板・スコアボード・ジャンボトロン・放送風オーバーレイ形式の広告枠を販売する。IABの計測標準に準拠し、viewability(可視性)検証にIntegral Ad Science、ID連携にLiveRampと提携している(出典: EA公式プレスリリース news.ea.com、EA公式Advertisingページ ea.com/ea-advertising)。


3社を並べると、進捗の差が明確になる。
項目 | PlayStation Media Solutions(Sony) | Xbox Media Solutions(Microsoft) | EA Advertising(Electronic Arts) |
|---|---|---|---|
現在のステータス | 採用活動段階。広告商品・料金は未発表 | 旧Activision Blizzard Mediaを統合し稼働中 | 2026年6月15日に正式ローンチ済み |
広告枠の形式 | 未発表(求人からプログラマティック・FAST・CTV等の技術要素が読み取れる) | ゲーム内広告面を提供(公式サイトで紹介) | スタジアム看板・スコアボード・オーバーレイ等、具体的な枠を販売中 |
計測パートナー | 未確認 | 未確認(本リサーチでは非公表) | Integral Ad Science(viewability検証)、LiveRamp(ID連携) |
公表済みブランド事例 | なし | 未確認 | Visa、Red Bull、Xfinity、Lowe's、Peacock、Mountain Dew、Coach、State Farm、Vansがローンチパートナー |
広告出稿事例
PlayStation自体の広告出稿事例(ブランド名・実施内容・効果指標)は、広告事業がまだ商品として立ち上がっていないため、本リサーチ時点で存在しない。比較対象として、同じ枠組みで先行するEA Advertisingの公式事例を示す。

- State Farm × EA SPORTS FC 25: 米保険会社State FarmがカスタムキットをEA SPORTS FC 25内で提供するパートナーシップ。EA公式ページに事例画像は掲載されているが、インプレッション数・ブランドリフト等の数値効果指標は本リサーチ時点で公表されていない。
- Coach × The Sims 4: ファッションブランドCoachのバッグ・レディトゥウェアラインが『The Sims 4』内にブランド統合された事例。効果指標は同様に未公表。
このほかVisa、Red Bull、Xfinity、Lowe's、Peacock、Mountain Dew、Vansが、EA Advertisingのローンチパートナーとして公式発表されている。効果指標の数値開示がない点は、コンソール/パブリッシャー系広告事業がまだ「実績を外部公表する段階」に達していないことの表れでもある。
なぜこの動きが起きたのか
Digiday記事内で、eMarketerアナリストのJacob Bourne氏は次のように述べている。
"Consumer spending on games has become more price sensitive. Publishers need a monetization lever that doesn't add to player costs, and advertising is the obvious one. The remaining barrier is ad infrastructure, and that's slowly getting built."
(訳: 「ゲームへの消費者支出は価格に対してより敏感になっている。パブリッシャーはプレイヤーのコストを増やさない収益化のレバーを必要としており、広告はその明白な選択肢だ。残る障壁は広告インフラであり、それは徐々に構築されつつある」)
同氏はさらに、eMarketerのデータを引きながら次のように指摘している。
"Gaming's case largely rests on sheer time spent. Our eMarketer data shows gaming captures roughly as much time as social video but earns about one-tenth the ad dollars per minute, and it will account for just 2.4% of US digital ad spend in 2026. The gap is the opportunity."
(訳: 「ゲーミングの強みは、ひとえに費やされる時間の長さにある。eMarketerのデータでは、ゲーミングはソーシャル動画とほぼ同等の視聴時間を獲得しているにもかかわらず、分あたりの広告収益は約10分の1にとどまり、2026年の米国デジタル広告支出に占める割合はわずか2.4%にとどまる見通しだ。このギャップこそが機会である」)
つまり、ゲーム開発コストの高騰とユーザーの価格感応度上昇を背景に、パブリッシャー各社は「プレイヤーの追加負担にならない高利益率の収益源」として広告に注目している。視聴時間シェアに対して広告費シェアが著しく低いという構造的なギャップが、業界内で「伸びしろ」として語られており、これがSony・Microsoft・EAが同時期に自社広告組織を本格構築する背景にあると考えられる。
日本市場ではどうか
今回の求人のうち、東京拠点のクライアントパートナー(広告営業)ポジションは、SIE公式採用サイト(careers.playstation.com 日本語ページ)で現在も掲載が確認できる。これは、PlayStationの広告営業体制が日本市場担当者を含めて組成されつつあることを示す一次情報である。
一方で、日本国内でPlayStation向けの広告商品・広告枠が具体的にどう提供されるか(時期・形式・料金)は未発表・未確認であり、東京求人は「グローバル戦略の一環としての日本拠点の営業要員確保」段階にとどまる。今すぐ日本の広告主がPlayStationの広告枠に出稿できる状態ではない。
日本のモバイルゲーム広告市場は2025年時点で約4,400億円と推計され、グローバルのゲーム内広告市場は2026年に約1.2兆円規模、年平均成長率約11%と見られる(Ad-Virtua社内データ参照値)。ゲーム内広告市場全体の広がりについてはゲーム内広告とはで解説している。媒体全体の中でゲーム内広告がどう位置づくかは広告媒体とは?主要17種類の特徴・費用・選び方を徹底比較【2026年版】を参照してほしい。また、コンソール向けとモバイルゲームアプリ向けでは広告の枠組みが異なる点はゲームアプリ広告 媒体選定ガイド【2026年版】で整理している。
日本で同じ広告を実施する選択肢
PlayStation Media Solutionsは、コンソール向け・グローバル大型ブランド向けのプログラマティック広告基盤を志向していると考えられるが、出稿のハードル(最低出稿額、対応言語、国内代理店経由の有無など)は本リサーチ時点で不明であり、商品化されていない以上、今すぐ検討対象にすることはできない。
日本国内で「ゲーム空間内に広告を出す」という発想を今すぐ試したい広告主にとって、選択肢の一つになるのがAd-Virtuaのようなモバイルゲーム向けアドネットワークである。Ad-Virtuaはゲーム空間内の看板・モニターに動画広告を配信するサイネージ広告に特化し、国内400タイトル以上に対応、累計再生数8,000万回を超える実績を持つ(2025年後半時点)。料金は1週間300,000円プランから、広告想起率は通常比約1.8倍、注目度は約1.7倍、CPMは約300円(通常500円比)という指標が公表されている。
この選択肢が合うかどうかは、企業が置かれた状況で分かれる。
- 合う条件: 国内のモバイルゲームユーザー(若年層・ファミリー層含む)にまず接点を作りたい、TVCM・SNS広告の補完として比較的低コストで動画クリエイティブを試したい、大型プラットフォームの商品化を待たずに先行して実績を作りたい
- 合わない条件: コンソールゲーム(PS5)ユーザーへの限定的なリーチが必須要件になっている、グローバル一括での大型プログラマティック出稿を前提にしている
なお、広告出稿の効果をチャネル横断で評価する場合はクロスメディア効果測定・アトリビューション分析ガイド|統合KPI設計と予算最適配分【2026年版】、リテールメディアとの違いを比較する場合はリテールメディア vs ゲーム内広告 比較ガイド|費用・ターゲット・ブランド体験設計の選び方を参考にしてほしい。
広告主が取るべき判断
今動くべき企業: 若年層・ゲームユーザーへの接点をすでに検討課題として持っており、海外プラットフォームの商品化を待たずに国内で先行実績を作りたい企業。第一想起の獲得手段を模索している段階の企業は、コンソール大手の動きが「市場が本格拡大局面に入ったシグナル」であることを念頭に、国内で実施可能な施策から着手する価値がある。第一想起獲得のための媒体選定全体像は第一想起を獲得するための媒体選定ガイド|TVCM・SNS・ゲーム内広告・OOHを徹底比較で整理している。
様子見でよい企業: PS5ユーザーへの直接リーチが必須要件の企業、グローバル一括契約でしか広告出稿を行わない企業は、PlayStation Media Solutionsの商品化・料金体系が発表されるまで動く材料がない。過去3回の試みが定着しなかった経緯を踏まえると、今回の求人段階だけで投資判断を急ぐ必要はない。
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FAQ
Q. PlayStation Media Solutionsはいつから広告出稿ができますか。
A. 本リサーチ時点でサービス開始時期は発表されていない。現在は複数の中核ポジションの採用段階であり、広告商品・料金体系の公表は確認できていない。
Q. PlayStationはこれまで広告事業をやったことがないのですか。
A. 過去に3回試みている。2008年のPS3向けダイナミック広告(『Guitar Hero World Tour』が第1弾対応タイトル)、同年開設のPlayStation Home、2022年の非公開の広告挿入システム開発(Bloomberg報道)である。いずれも持続的な事業としては定着しなかったとDigiday記事は指摘している。
Q. Xbox Media SolutionsやEA Advertisingと何が違いますか。
A. Xbox Media Solutionsは旧Activision Blizzard Mediaを統合して既に稼働しており、EA Advertisingは2026年6月15日に広告商品を正式ローンチ済みである。これに対しPlayStation Media Solutionsは、本リサーチ時点で広告商品・料金体系が未発表であり、採用活動の段階にとどまる点が異なる。
Q. なぜコンソール大手が今そろって広告事業に力を入れているのですか。
A. eMarketerのデータによれば、ゲーミングは視聴時間ではソーシャル動画に匹敵する一方、分あたりの広告収益は約10分の1、2026年の米国デジタル広告支出シェアはわずか2.4%にとどまる。この時間シェアと広告費シェアのギャップが「伸びしろ」として認識されており、ゲーム価格への感応度上昇を背景に、プレイヤー負担を増やさない収益源として広告が注目されている。
Q. 日本の広告主は今の時点で何をすればよいですか。
A. PlayStation向けの広告商品はまだ存在しないため、今すぐ出稿を検討できる段階ではない。国内で先行してゲーム内広告の実績を作りたい場合は、既に稼働している国内アドネットワークを使う選択肢がある。


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