Roblox Corporation(以下、Roblox)は2026年9月11日、開発者向け年次カンファレンス「RDC 2026」に合わせて、ゲームをRobloxアプリの外——ブラウザ、独立したアプリ、オフライン——でも遊べるようにする構想「Roblox Everywhere(ロブロックス・エブリウェア)」を発表した。発表文に「広告」という語は一度も出てこないが、到達面が広がり、動画面Moments(モーメンツ)が2026年10月から購買と直結する以上、Roblox上のブランド在庫と計測の前提は動く——ただし今回の発表内容で、日本の広告主が2026年内に直接使えると確認できるものは現時点で一つもない。

RDC 2026で発表された内容
発表は、Robloxの公式ニュースルームに掲載された「RDC 2026: The World Needs More Play」という署名記事として公開された。署名者は創業者兼CEOのDavid Baszucki。記事は「Roblox at 20: More Play, More Building, More Growth」という見出しから始まり、More Playing(遊ぶ)/ More Building(作る)/ More Growth(伸ばす)の3章構成をとる(出典: Roblox公式ニュースルーム、2026年9月11日)。
確定している発表内容は次のとおり。
項目 | 内容 | 時期 |
|---|---|---|
Roblox Everywhere | クリエイターが自分のゲームをPC・モバイル・コンソール向けの独立したアプリとして配信できるようにする構想 | 提供開始時期は発表文に記載なし |
Webプレイヤー | まずChromeのブラウザ上でゲームに参加できるようにする。他ブラウザは順次 | 2026年末まで |
オフラインのソロプレイ | 回線がない状態でも遊べるようにする | 2027年半ばまで(アーリーアクセスは近日) |
Momentsの全面提供 | 動画を見てそのまま遊べるディスカバリー面を米国で全面提供 | 米国で提供済み |
Momentsのショッパブル化 | 動画に映るアバターをタップして、表示されているアイテムや背景をその場で購入できる | 2026年10月 |
Roblox Wallet | クリエイター報酬を実通貨で毎営業日支払う。米国在住・18歳以上の対象独立クリエイターから | 2026年内 |
Roblox Card | Walletの残高を直接使えるカード | 2027年 |
規模の前提として、同記事は「直近四半期だけでプレイヤーはRoblox上で290億時間を費やし、その範囲は180か国を超える」と記している。
制作側では、モバイルファーストの制作タブ「Build」がニュージーランドでのアルファ開始以降に約9,000本のゲームを生み出したこと、その制作者の71%はPC向けの「Roblox Studio」を使ったことがなかったことが公表された。Buildのパブリックアルファはセルビアとシンガポールへ拡大する。加えて、プロンプトから3Dシーンを生成する「Scene Generator」を2026年内にBuildとStudioの双方へ提供するとしている。

スライドが示しているのは、スマートフォンのホーム画面にRoblox本体アプリと、個別のゲームアプリが別アイコンとして並んでいる状態である。Baszuckiは構想の狙いをこう述べている。
Our vision for Roblox Everywhere is to enable creators to reach audiences where they already are.
(Roblox Everywhereで私たちが目指しているのは、クリエイターが、すでに人々がいる場所でオーディエンスに届けられるようにすることだ)
エンジン面では、正射影カメラ、アニメーション対応のイメージコンテナ、スプライトシートのインポートといった2D・パズル向け機能も発表された。Robloxが3Dアバター空間以外のゲームジャンルへ範囲を広げようとしていることを示す変更である。

なお、本発表に含まれていない事項も明確にしておく。広告フォーマットの新規発表はなく、Webプレイヤーやスタンドアロンアプリ上で広告在庫と計測をどう扱うかについての記載もない。Momentsのショッパブル化がブランド(サードパーティ)のアイテムに適用されるかも、発表文からは確認できない。発表文が明記しているのは「アバターのアイテムまたは背景」の購入までである。
Robloxの事業構造と、広告在庫がどこにあるか

会社の基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
正式社名 | Roblox Corporation |
本社 | 米カリフォルニア州サンマテオ(3150 South Delaware Street, San Mateo, CA 94403) |
設立法域 | ネバダ州 |
上場 | ニューヨーク証券取引所、ティッカー RBLX(Class A普通株式) |
創業者 | David Baszucki(現・Founder and CEO) |
直近の年次報告 | FY2025 Form 10-K(期末2025年12月31日、2026年2月11日提出) |
出典: 米SEC EDGAR(CIK 0001315098)およびFY2025 Form 10-K。
創業年について、RDC 2026の見出しは「Roblox at 20」と記しており20年の節目であることは確認できるが、起点となる西暦は同記事で明示されておらず、本稿では断定しない。従業員の総数も、FY2025 Form 10-Kの確認範囲では把握できなかった(同書には「従業員の75%が維持・改善・拡張に従事している」という記述のみが見られる)。
Robloxはゲームを作る会社ではない
日本の広告主が最初に押さえるべきは、Robloxが自社でゲームを作って売る会社ではなく、ゲームが作られ、遊ばれる場そのものを運営する会社だという点である。構造は3層に分かれる。
1. 制作層(Roblox Studio / Build)
クリエイターが3D体験(Roblox社は「experience」または「game」と呼ぶ)を制作するツール。従来はPC向けのRoblox Studioのみだったが、2026年にモバイルファーストのBuildタブが加わった。RDC 2026のScene Generatorは、この制作層の入口をさらに下げる位置づけにある。

2. 配信・発見層(Robloxプラットフォーム)
制作された体験は、ホーム画面、検索、レコメンド、そして2026年に加わった動画面Momentsを通じて発見される。ブランドの広告在庫が置かれているのもこの層である。ホーム画面上の枠、体験内に置かれるイマーシブ広告、動画リワード広告は、いずれもここに属する。
3. 収益層(Robux経済)
ユーザーはプラットフォーム内通貨Robux(ロバックス)を購入し、ゲーム内アイテムやアクセス権を買う。クリエイターは受け取ったRobuxを、2013年開始のDevEx(Developer Exchange)で現金化する。RDC 2026で発表されたRoblox Walletは、この現金化を「毎営業日・実通貨」に置き換えるものである。
ゲーム空間の中に広告が表示される仕組みそのものを整理したい場合は、ゲーム内広告とはを先に読むと、以降の話が追いやすい。
規模
指標 | 値 | 対象期間 | 出典 |
|---|---|---|---|
DAU(デイリーアクティブユーザー) | 1億2,300万 | 2026年4-6月期 | Roblox IR |
エンゲージ時間 | 290億時間 | 2026年4-6月期 | Roblox IR / RDC 2026リリース |
売上 | 15億ドル | 2026年4-6月期 | Roblox IR |
ブッキング | 16億ドル | 2026年4-6月期 | Roblox IR |
営業キャッシュフロー | 3億1,800万ドル | 2026年4-6月期 | Roblox IR |
平均DAU | 1億2,700万(180か国超) | FY2025通期 | FY2025 Form 10-K |
エンゲージ時間 | 1,239億時間 | FY2025通期 | FY2025 Form 10-K |
Robloxの公表するDAUは資料によって1億5,100万(2025年7-9月期)、1億3,200万(2026年6月・7月のリリースで使用。対象四半期の記載は確認できていない)、1億2,700万(FY2025通期平均)、1億2,300万(2026年4-6月期)と幅がある。これは数値の不一致ではなく対象四半期の違いで、RobloxのDAUは北半球の夏休みにあたる7-9月期に大きく伸びる季節性がある。社内資料や提案書でこの数字を引くときは、必ず対象四半期を併記したい。
広告事業の実際の大きさ
ここは温度を正確にしておく必要がある。FY2025 Form 10-Kは、ブッキングの内訳についてこう記している。
Bookings also include an insignificant amount from advertising and licensing arrangements.
(ブッキングには、広告およびライセンス契約によるごくわずかな額も含まれる)
つまり2025年通期の時点で、Robloxの広告収益は財務上「重要でない」と自己申告される規模にとどまる。売上の大半は依然としてRobuxの販売である。一方で同じ10-Kは、クリエイターの収益源として「自分の体験へのイマーシブ広告の組み込み」を明記しており、広告が制度としてプラットフォームに組み込まれていること自体は確認できる。
制度は整っているが、売上比率はまだ小さい。このギャップが、Robloxを広告媒体として検討する際の実像である。Robloxにとっての主戦場は、現時点では広告ではなくコマース(アイテム販売)側にあると考えられる。
主要パートナー
区分 | パートナー | 内容 | 時期 |
|---|---|---|---|
DSP | Amazon DSP、Liftoff | プログラマティック接続 | 2026年1月 |
SSP | Index Exchange、Magnite、PubMatic | 同上 | 2026年1月 |
調査 | Ipsos | Z世代・アルファ世代の行動研究、イマーシブ広告の効果測定 | 2026年6月 |
効果測定 | EDO | テレビ・ストリーミングと同じエンゲージメント基準での測定。EDOにとって初のゲーミング領域パートナー | 2026年6月 |
13歳未満向け広告 | SuperAwesome | 13歳未満ユーザー向けコンテクスチュアル広告の第三者パートナー(報道ベース) | 2026年6月 |
地域リセラー | Venatus | 英・仏・独におけるRewarded Videoの公式リセラー(報道ベース) | 2026年4月 |
DSP・SSPおよびIpsos・EDOはRoblox公式リリースで確認できる。SuperAwesomeとVenatusの2件は各社側の発表・報道に基づくもので、Roblox公式リリースは確認できていない。
ここまでの歩み——2026年のRobloxは「広告主を呼ぶ条件」を順に潰してきた
今回の発表を単発の機能追加として読むと、意味を取り違える。2026年のRobloxの動きを時系列に並べると、9月のRDCがどこに位置づくかが見える。
時期 | 出来事 | 数値・条件 |
|---|---|---|
2013年 | DevEx開始。クリエイターがRobuxを現金化できるように | 以降の累計報酬は50億ドル超 |
2021年 | ニューヨーク証券取引所に上場(RBLX) | 上場の事実はFY2025 Form 10-K表紙で確認。正確な上場日は本稿の確認範囲では未取得 |
2025年12月期 | FY2025: 平均DAU 1億2,700万、エンゲージ時間1,239億時間、180か国超 | 広告収益は「insignificant」と自己記載 |
2026年1月6日 | CES 2026で広告プラットフォームを拡張。新フォーマット「Homepage Feature」を発表し、Rewarded Videoを400体験超へ拡大。Amazon DSP・Liftoff・Index Exchange・Magnite・PubMaticとの接続を発表 | ホーム画面はDAU 1億5,100万超(2025年7-9月期)が起点 |
2026年3月20日 | 広告ポリシー/基準を刷新。クリエイター登録と価格の透明化を求め、2027年1月1日からブランド提携収益のレベニューシェアを適用 | |
2026年4月21日 | Venatusが英・仏・独におけるRewarded Videoの公式リセラーに(報道ベース) | — |
2026年6月4日 | SuperAwesomeを13歳未満向けコンテクスチュアル広告の第三者パートナーに指定(報道ベース)。動画ビルボード/ブランドポータル/ホームページ広告/スポンサードタイルの4形式、COPPA準拠 | — |
2026年6月18日 | カンヌライオンズでIpsos・EDOとの効果測定パートナーシップを発表 | 自社調査「Immersive Is Effective」を同時公表 |
2026年7月28日 | Momentsをカナダ・ニュージーランド・シンガポールで提供開始。アプリにMoments / Chat / Meのタブを新設。対象は年齢確認済みの16歳以上 | 「1日平均1億3,200万人がRobloxを訪れる」 |
2026年8月 | 年齢推定システム(Age-Assurance)に関する技術記事を公開 | — |
2026年9月11日 | RDC 2026。Roblox Everywhere、Webプレイヤー、オフライン対応、Momentsのショッパブル化、Roblox Wallet/Card | 本件 |
並べ直すと、それぞれの動きが広告主にとって何を解決したかがはっきりする。
- 1月(CES)=在庫を増やした。 Homepage Featureという最上位の露出面を開き、主要DSP/SSPと接続した
- 3月(ポリシー刷新)=分配のルールを決めた。 ブランド提携の収益をプラットフォームと分け合う仕組みを2027年から適用することにした
- 6月(SuperAwesome)=最大の障壁だった年齢を扱えるようにした。 13歳未満へのコンテクスチュアル広告に第三者の管理を入れた
- 6月(カンヌ)=計測の通貨を揃えた。 EDO・Ipsosと組み、テレビ・ストリーミングと同じ土俵で効果を語れるようにした
- 9月(RDC)=器そのものを広げた。 Web、オフライン、独立アプリ
そして9月のRDCだけが、広告の話を一言もしていない。Robloxは広告フォーマットを増やす段階をいったん離れ、「誰が、どこで、どれだけの時間Robloxに触れるか」という母数のほうを作り替えにきたと読める。Webプレイヤーは「アプリをインストールしていない人」を、オフライン対応は「回線がない時間」を、スタンドアロンアプリは「Robloxというプラットフォーム名を知らない人」を取りにいく施策である。
計測の整備がこの動きの前段にあったことは、RobloxがIpsos・EDOと効果測定で提携した件を合わせて読むと理解しやすい。到達面をいくら広げても、測る仕組みが先になければ広告主は動けない。順序として、6月に通貨を揃え、9月に器を広げている。
同時に、Momentsのショッパブル化は別の含意を持つ。

Momentsの縦型動画には、すでに「Roblox Partner Content」というラベルが入っている。この面が、2026年10月からは「動画を見る → 映っているものをタップして買う」という導線を持つ。これは広告在庫の話ではなく、コマース面の話である。Robloxが広告主に対して次に売るものが、インプレッションではなく「購買につながった動画枠」になりうる予兆として扱える。ただし現時点で購買対象として明記されているのはアバターのアイテムと背景までで、ブランド商品への適用は確認できていない。

もう一つ、クリエイター側の金銭フローも2027年に向けて変わる。Roblox Walletは、開設後は保留が解除され次第、収益を毎営業日、実通貨で支払う。対象は2026年内に米国在住・18歳以上の対象独立クリエイターで、国際展開は「翌年」とだけ示されている。2027年にはRoblox Cardが接続され、残高を直接使えるようになる。

Creator Hubのダッシュボードでは、収支がRobux建てではなく米ドル建てで表示されている。クリエイター報酬は、2013年のDevEx開始以降の累計で50億ドル超、直近12か月で約17億ドルに達する(本稿では換算基準日のレートを確定できていないため、円換算は行わない)。この日次入金と、2027年1月1日から適用されるブランド提携収益のレベニューシェアは同じ時期に重なる。ブランドがRobloxのクリエイターと直接組む場合の条件がどう変わるかは、Robloxの広告レベニューシェア2027年適用で整理している。
広告出稿事例

Roblox公式リリースで、ブランド名と数値が併記されている事例を挙げる。いずれも出典は2026年1月6日の広告プラットフォーム拡張に関するリリース。
Universal Pictures「Jurassic World Rebirth」
映画プロモーションとしてRoblox上で実施され、20億インプレッションを記録した。
Universal Pictures「Wicked: For Good」
同じく映画プロモーションで、80億インプレッション。単一プラットフォーム上のキャンペーンとして桁の大きい数字だが、公表されているのはインプレッション(露出回数)であり、ユニークリーチではない。何人に届いたのかを示す数値はリリースに記載がないため、到達人数として読み替えないほうがよい。
e.l.f. Beauty / Sam's Club / Universal Pictures — Homepage Feature初期テスト
2026年1月に発表されたホーム画面の新フォーマット「Homepage Feature」の初期テストには、この3ブランドが参加した。Sam's Clubは「オーディエンスが最も長く時間を過ごす場所に出ていくことが非常に重要だ」とコメントしている。
H&R Block
税務サービスを提供するH&R Blockが、税務情報をゲーマー向けにRobloxへ統合した事例。「ゲーマー向けの税務情報をRobloxに統合することで、経験の浅い顧客層にリーチできる」としている。食品・日用品以外の業種、しかも「若年層に金融・制度の情報を届ける器」としてゲーム空間を使った例として参考になる。
参考: Roblox自社調査「Immersive Is Effective」
2026年6月18日のカンヌライオンズで公表された調査では、13〜34歳の回答者のうち、
- 52% がストリーミングよりRobloxの広告に注意を向ける時間が長いと回答(ストリーミングを13ポイント上回る)
- 54% が他プラットフォームよりRobloxの広告に関与していると感じた
- 63% がRobloxで見た商品情報は記憶に残ると回答(ストリーミング/ソーシャルを14ポイント上回る)
実施主体はRoblox自身であり、第三者調査ではない。社内稟議で引用する場合はその前提を添えるべき数値である。
Rewarded Videoについては、2026年1月時点で400以上の体験に提供され、完了率90%超、ビューアビリティ95%超、1,000社超のブランドが利用という実績が公表されている。
なぜこの動きが起きたのか
Robloxが到達面を外へ広げる理由は、発表文の「where they already are(すでに人々がいる場所)」という表現に集約されている。これまでのRobloxは、ユーザーがRobloxアプリをダウンロードし、起動し、その中で体験を探すという前提の上に成り立っていた。この前提は、アプリを入れていない層——たとえば保護者、あるいはゲーム習慣のない成人層——に対しては働かない。
Webプレイヤーはインストールという段差を外し、スタンドアロンアプリは「Robloxを知らないがそのゲームは知っている」という入り方を可能にする。オフライン対応は、移動中や回線のない時間帯という、これまで在庫がゼロだった時間を埋める。いずれも新しい広告フォーマットではないが、在庫が置ける場所と時間の総量を増やす変更である。
制作側の変更も同じ方向を向いている。Buildアプリの制作者の71%がRoblox Studio未経験だったという数字は、これまでRobloxで作ることができなかった層が作り始めていることを意味する。2D・パズル向けのエンジン機能追加も、3Dアバター空間という単一のフォーマットから外へ出る動きにあたる。作り手の裾野とジャンルが広がれば、その先にある体験の種類も、そこに接する人の属性も変わる。
年齢の扱いも並行して変わっている。ディスカバリーのランキングは年齢に応じた挙動へ移行しており、発表文は「若年のプレイヤーは短い尺のゲームに最もよく反応する傾向がある」と述べる。Robloxが年齢を軸にプロダクトと広告の両方を設計し直していることは、SuperAwesomeとの13歳未満向け広告の取り組みと合わせて見ると輪郭がはっきりする。
日本市場ではどうか

結論から書くと、今回発表された機能群のうち、日本の広告主が2026年内に直接活用できるものは現時点で確認できない。
機能 | 提供地域 | 日本での扱い |
|---|---|---|
Moments(動画ディスカバリー面) | 米国で全面提供。初期展開はカナダ・ニュージーランド・シンガポール | 対象外 |
Momentsのアバターアイテム購入(2026年10月) | Momentsが提供済みの地域が前提 | 2026年内に使える見込みは薄い |
Roblox Wallet | 米国在住・18歳以上の対象独立クリエイター。国際展開は「翌年」 | 未提供 |
Roblox Card | 2027年開始 | 地域未確認 |
Buildアプリ | ニュージーランド → セルビア・シンガポール | 対象に含まれず |
Webプレイヤー/オフライン/Roblox Everywhere | 地域の明示なし | 提供時期未確認 |
発表文に日本への言及は確認できない。Roblox公式の「The Global Impact of Creation on Roblox」(2026年9月)でも、日本については定量データが示されず、ブラジル・インドネシア・日本でオフラインイベントを開催したという記述のみが確認できた。日本のユーザー数・クリエイター数・経済効果の公表値は未確認である。
実務上の障壁は地域だけではない。
- 言語と運用 — Robloxでの広告出稿やブランド体験の制作は英語ベースで進む。日本語での企画・実装・運用を担える受け皿が国内にほとんどない
- 効果検証 — EDO・IpsosはいずれもRobloxとの提携であり、日本の広告主が国内向けに使える形になっているかは確認できていない。国内のブランドリフト調査基盤との接続も未確認
- 分配ルールの変更 — 2027年1月1日からブランド提携収益のレベニューシェアが適用される。日本のブランドがRobloxのクリエイターと直接組む場合、2027年以降は条件が変わる
- 対象年齢 — Momentsは年齢確認済みの16歳以上が対象。13歳未満への広告はSuperAwesome経由という別建てであり、日本の親子向け施策とは前提が異なる
Roblox上の広告在庫が地域ごとに現地のリセラーを介して売られていることは、Venatusが英仏独のRewarded Video公式リセラーになった件に表れている。日本にその受け皿が置かれたという公表は、現時点で確認できていない。
一方で、日本の広告市場そのものは、この種の接点を受け入れる方向に動いている。電通「2025年 日本の広告費」によれば、2025年の総広告費は8兆623億円(前年比105.1%)で4年連続の過去最高更新、うちインターネット広告費は4兆459億円(同110.8%)となり、構成比が初めて半数を超える50.2%に達した。可処分時間の移動先に広告費が付いていく流れは、日本でも起きている。
日本で同じ広告を実施する選択肢
Robloxが米国で解こうとしている問題——「アプリの中にしかいない若年層に、遊びを止めずにどう触れるか」——そのものは、日本の広告主にとっても同じ形で存在する。違うのは、解き方の選択肢である。
日本国内でこの目的を果たす手段としては、大きく2つの型がある。
比較ポイント | プラットフォーム型(Roblox等) | ネットワーク型(国内ゲーム内広告) |
|---|---|---|
面の確保 | 単一プラットフォーム内。提供地域・年齢要件・仕様はその企業の意思決定に従属する | 複数タイトルを横断して面を確保。1社の提供時期を待たない |
クリエイティブ | ブランド体験を自作するか、既存クリエイターと組むか。制作リスクはブランド側が負う | 既存のTVCM・Web動画素材を流用しやすい |
制作リードタイム | 体験設計から実装まで数か月規模になりやすい | 素材入稿ベースで短い |
言語・運用 | 英語ベースが前提 | 日本語での企画・実装・運用 |
到達の広がり | グローバル。ただし日本単独での配信可否は要確認 | 国内の若年層・ファミリー層に絞って配信 |
購買への接続 | Moments経由の購買はアバターアイテムが対象。リアル商材への接続は未確認 | 認知・想起の獲得が主目的。購買はゲームの外にある |
Ad-Virtuaは後者にあたる。国内400タイトル以上のゲーム空間内の看板・モニターに動画広告を配信するネットワーク型で、累計再生数は8,000万回を超えている(2025年後半時点)。1週間300,000円のプランがあり、公表しているKPIは広告想起率約1.8倍、注目度約1.7倍、CPM約300円(通常500円比)。動画素材を流用できるため、ブランド体験を新規に作り込む前提の施策と比べると、着手の段差が低い。
こんな企業におすすめ
- 日本国内の若年層・ファミリー層への認知獲得が目的で、配信開始時期を自社都合で決めたい
- すでにTVCMやWeb動画の素材があり、それを別の接点で回したい
- ゲーム内接点を初めて試すため、まず小さく検証してから判断したい
おすすめしない企業
- グローバル同時展開が要件で、海外市場のRobloxユーザーへの到達が目的に含まれる
- ブランド独自の世界観を3D空間として構築し、その中で滞在時間を作ることが施策の中心にある
- 広告接触からその場での購買完了までを一続きで設計したい
Robloxが向いている企業と、国内ネットワーク型が向いている企業は、目的が違う。プラットフォーム型とネットワーク型の構造的な差についてはメタバース広告とゲーム内広告の比較で整理している。
広告主が取るべき判断
今回の発表を受けて、すぐ動くべき企業と、様子見でよい企業の条件は分かれる。
今動く理由がある企業
- 北米市場を主戦場にしており、現地の若年層への到達が事業KPIに直結する。Momentsは米国で全面提供されており、2026年10月のショッパブル化もこの面から始まる
- 自社のブランドアイテム・バーチャルグッズをすでにRoblox上で展開している。Momentsが購買導線を持つことで、既存資産の回り方が変わる可能性がある
- Robloxクリエイターとのブランド提携を2027年以降も継続する前提で予算を組んでいる。2027年1月1日からレベニューシェアが適用されるため、契約条件の見直しは前倒しで検討する必要がある
様子見でよい企業
- 日本国内のみを対象としている。今回の機能群に日本での提供時期は示されていない
- 主要ターゲットが13歳未満。Momentsは16歳以上が対象で、13歳未満への広告はSuperAwesome経由の別建てになる
- 国内の調査基盤でブランドリフトを測る必要がある。EDO・Ipsosの枠組みが日本向けに使える形になっているかは確認できていない
いずれの場合も、今回の発表を「Robloxで広告が新しく買えるようになった」と読むのは誤りである。買えるものは増えていない。増えたのは、これから在庫が置かれうる場所と時間である。そのうえで、Roblox開発者フォーラムが示している2027年1月1日のレベニューシェア適用だけは、日程として押さえておく価値がある。
関連する基礎知識
- ゲーム内広告とは — ゲーム空間に広告が表示される仕組み、種類、費用感の全体像
- メタバース広告とは — Robloxのようなプラットフォーム上の広告を、メタバース広告の文脈で捉える
- メタバース広告の効果測定 — EDO・Ipsosが持ち込もうとしている「テレビ基準の測定」を、国内の実務に落とすときの考え方
- メタバース広告の国内事例 — 日本国内で実施された事例
- ブランド体験とは — 動画から購買までが一続きになる設計を、ブランド体験の枠組みで考える
FAQ
Q. Roblox Everywhereで配信されるスタンドアロンアプリの中に、広告は入るのか。
RDC 2026の発表文には、スタンドアロンアプリやWebプレイヤー上での広告在庫・計測の扱いに関する記載がない。現時点では未確認であり、判断材料が公開されるのを待つ必要がある。
Q. RDC 2026で、既存の広告フォーマットに変更はあったか。
発表文にRewarded VideoやHomepage Featureといった既存フォーマットへの言及はなく、仕様変更に関する記載も確認できない。広告商品についての最後の公式更新は、2026年1月のCES 2026で公表された内容である。
Q. Robloxの広告は、日本の代理店経由で買えるのか。
日本での販売体制について、Roblox公式の公表は確認できていない。英・仏・独についてはVenatusがRewarded Videoの公式リセラーになったという発表があるが(報道ベース)、日本に同様の受け皿が置かれたという公表はない。
Q. Roblox WalletやBuildアプリは、日本のクリエイターも使えるのか。
Walletの対象は2026年内に米国在住・18歳以上の対象独立クリエイターで、国際展開の時期は「翌年」とのみ示されている。Buildのパブリックアルファはニュージーランドに続きセルビアとシンガポールへ拡大する段階で、いずれも日本は対象として名指しされていない。
Q. Momentsのショッパブル化で、ブランドの実商品は売れるようになるのか。
発表文が購入対象として明記しているのは「アバターのアイテムまたは背景」までである。サードパーティのブランドアイテムやリアル商材が対象になるかは記載がなく、未確認である。
Q. Robloxで広告を出す場合、日本のCPM水準はどれくらいか。
日本が「Tier 2」区分で0.20ドルのCPMに当たるとする報道があるが、Roblox公式の開示は確認できていない。報道ベースの数値であり、予算計画の根拠として使うには裏取りが必要である。
Q. 広告フォーマットの発表がないのに、なぜ広告担当者がこのニュースを読む必要があるのか。
プラットフォーム側の「広告以外の発表」が、広告の前提条件を先に動かすためである。在庫がどこに何面あるか、誰がどれだけの時間そこにいるか、接触の後に何が起きるか——この3つはいずれもプロダクト側の変更で決まる。フォーマットの発表を待ってから読み始めると、条件が決まった後に追いつく形になる。


.jpg)



