イスラエル発のゲーム内音声広告プラットフォーム「Odeeo」が2026年6月23日、フランスの大手メディアグループLagardère(ラガルデール)傘下の広告販売代理店Lagardère Publicité Newsと提携し、フランス国内の月間アクティブユーザー300万人以上・2,500タイトル・月間2,000万件超のインプレッションを持つ音声広告在庫を、同国の広告主・代理店に開放した。日本の広告主にとっての意味は、「ゲームプレイを止めない音声広告」という新しい広告接点が、海外の大手メディア代理店の取扱商品として組み込まれ始めているという点にある。同種の配信インフラは日本にも既に存在しており、認知・活用の遅れが今後の論点になる。

発表の内容
Odeeo(運営法人: Sonic Odeeo Ltd.、本社イスラエル・ヘルツリヤ)は2026年6月23日、公式ブログでLagardère Publicité Newsとの提携を発表した(Odeeo公式ブログ)。
発表の骨子は次のとおりである。
- Lagardère Publicité NewsがOdeeoの音声広告インベントリの独占販売代理店(exclusive sales house)となる
- 対象となる在庫規模は、フランス国内で月間アクティブユーザー300万人以上、統合タイトル数2,500、月間広告インプレッション2,000万件超
- Lagardère Publicité Newsは元々FM/DAB+ラジオ・ライブオーディオ・ポッドキャスト・ウェブラジオ・ストリーミングを扱う代理店であり、モバイルゲームが加わったことで「デジタルオーディオの全領域をカバーする唯一のラジオ販売代理店」になったと両社は位置づけている(Odeeo公式ブログの表現)
Lagardère Publicité News会長のMarie Renoir-Couteau氏は「モバイルゲーミングは音声表現にとって革新的な領域になった」とコメントし、Odeeo CEOのAmit Monheit氏は「アプリやモバイルゲームに自然に溶け込む、非侵襲的でブランドセーフな体験を通じて、フランスの広告主がエンゲージメントの高いオーディエンスにリーチできるようになる」と述べている(出典: Odeeo公式ブログ)。
なお、正式なサービス提供開始日、および取引条件・料金体系は本記事執筆時点で非開示である。

Odeeoとはどんな会社か

Odeeo(運営法人: Sonic Odeeo Ltd.)は2021年、イスラエル・テルアビブで設立された。創業者はAmit Monheit(CEO)とElad Stern(President)で、いずれもモバイル広告メディエーション大手IronSourceの出身。同社が2,000人規模に成長する過程でトップ50人材の一人に数えられていたと報じられている(GamesBeat報道)。本社はイスラエル・ヘルツリヤに置き、2024年9月にはニューヨークに米国オフィスを開設した。従業員規模は2024年9月時点で約40名(GamesBeat報道)とされ、現在の正確な人数は未確認である。
Odeeoが掲げるミッションは公式サイトで「The future sound of in-game advertising」と表現される。ブランドと世界中のゲームプレイヤーを、音声を通じてつなぐという事業である。
何を提供する会社か
Odeeoは、モバイルゲーム・モバイルアプリ向けのゲーム内音声広告プラットフォームである。ゲームプレイを中断させない「ノンインタラプティブ(non-interruptive)」な音声広告ユニットをSDK経由でパブリッシャー(ゲーム開発会社)に提供し、広告主・広告代理店・DSP側はプログラマティック取引または直接取引でその広告在庫を買い付ける仕組みになっている。
広告フォーマットは大きく2種類ある(Odeeo公式Developersページより)。
- スタンダード広告: ゲームプレイ中にバックグラウンドで自然に流れる音声広告。パブリッシャー側は最大10%の増分広告収益を見込めるとOdeeoは訴求している
- リワード広告: プレイヤーが音声広告を聴取するとゲーム内報酬を獲得できる形式

技術面では、iOS/Android対応の軽量SDKおよびUnityプラグインを提供し、AppsFlyer・Singular・Adjustといった主要MMP(モバイル計測パートナー)と連携する。在庫管理・レポーティング用の自社ダッシュボード「Odeeo Portal」も用意されている。ブランドセーフティに関しては、IAB(UK)、TAG(Trustworthy Accountability Group)、Oracle MOATの業界認証を取得している(Odeeo公式サイト表記)。

対応プラットフォームとインベントリ規模
Odeeoが公表するインベントリ規模は、発表時期・地域によって数値の粒度が異なる。
時期 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
2023年12月 | 世界で約1,000タイトルに統合(Otonal提携発表時) | Odeeo公式ブログ |
2026年3月 | グローバルMAU 300M以上(Amazon DSP提携発表時) | Odeeo公式ブログ |
時期未特定 | 800以上のモバイルゲームに統合、150カ国以上にリーチ、MAU 140M以上 | marketecture.tv等の業界メディア |
2026年6月 | フランス国内でMAU 300万以上、2,500タイトル、月間インプレッション2,000万件超(本件) | Odeeo公式ブログ |
グローバル全体の統合タイトル数・MAUの単一の最新確定値は、本記事執筆時点では確認できていない。Odeeoは成長を続けている企業であり、数値が随時更新されている可能性が高い。
主要パートナー
- DSP/広告買い付け: Amazon DSP(2026年3月〜)、Xandr、DAX
- 計測(MMP): AppsFlyer、Singular、Adjust
- パブリッシャー/ゲームスタジオ: Gameloft、Azerion、SayGames、SuperSonic 等(Odeeo公式サイトのパートナーロゴ掲載)
- 地域パートナー: Otonal(日本、2023年12月〜)、Verben Solutions(LATAM)、Wondercraft(多言語音声広告生成)、Lagardère Publicité News(フランス、本件)
資金調達履歴
Odeeoの調達履歴は、公式で裏取りできたものと報道ベースのものが混在する。
時期 | ラウンド | 調達額 | リード投資家 | 主要参加投資家 |
|---|---|---|---|---|
2021年9月 | プレシード | 100万ドル | Play Ventures | Eric Seufert(Memo Syndicate/Heracles Capital)、Michail Katkoff(Savage Game Studios) |
2022年6月 | シリーズA | 900万ドル(累計1,000万ドル) | Play Ventures、Global(欧州最大級のラジオ・メディア企業) | Eric Seufert、Anton Gauffin(Huuuge Games創業者)、Christian Calderon(GameJam創業者)、Lior Shiff(TripleDot Studios創業者) |
2024年9月 | 追加ラウンド | 500万ドル以上 | Atinum Investments(韓国のアーリーステージ投資ファンド) | Play Ventures、Anton Gauffin(既存投資家) |
シリーズA(900万ドル、累計1,000万ドル)はOdeeo公式ブログで確認できる一次情報である。2024年9月の追加ラウンドはCalcalist・GamesBeat・AdTech Daily等の報道ベースであり、Odeeo公式ブログでの発表記事は本記事執筆時点で見つかっていない。累計調達額を「約1,500万〜1,600万ドル」とする二次メディアの集計もあるが、これは参考値にとどめる。日本企業・日本の投資家がラウンドに参加している事実は確認できなかった。
各ラウンドの目的について、Odeeoは次のように説明している。シリーズA(2022年)は、ブランドとゲームスタジオを結びつけ、スタジオが音声広告という新しい収益化モデルを採用しやすくするための投資だった(Odeeo公式ブログ)。2024年の追加ラウンドは、報道ベースでは北米市場での事業拡大、ニューヨークオフィス開設、米国チームの広告オペレーション強化、MENA・アジア地域展開への投資とされている。
ここまでの歩み
Odeeoの事業拡大は、資金調達と並行して、地域の有力代理店・グローバルDSPと組んでインベントリの販売チャネルを面的に広げるという一貫したパターンで進んできた。
時期 | 出来事 |
|---|---|
2021年1月 | Amit Monheit・Elad Stern(共にIronSource出身)がOdeeo創業 |
2021年9月 | プレシード資金100万ドル調達 |
2022年6月 | シリーズA 900万ドル調達(Play Ventures・Global主導) |
2023年10月 | 日本のオトナルが「GainAds」(Odeeoの技術を活用したゲーム内音声広告)を国内向けに提供開始 |
2023年12月 | Odeeo公式ブログでオトナルとの日本市場提携を発表。「日本の7,000万人のモバイルゲーマー」を対象と明記 |
2024年9月 | 追加資金500万ドル以上を調達(Atinum Investments主導)。ニューヨークに米国オフィス開設 |
2025年10月 | オトナルがGainAdsの運用型(プログラマティック)広告メニューを提供開始。国内外3.3億人にリーチ可能と発表 |
2025年11月 | McDonald's×Admerasiaのケーススタディを公式サイトで公開 |
2026年3月 | Amazon Adsとの提携を発表。Odeeoのアプリ内音声広告インベントリがAmazon DSP経由で購入可能に(グローバルMAU 300M以上と表記) |
2026年6月23日 | 本件: フランスのLagardère Publicité Newsとの提携発表 |
今回のフランス市場での提携は、2023年末の日本(オトナル)、2026年3月のAmazon DSP(グローバルのプログラマティック買い付け経路)に続く動きである。単発の提携ではなく、地域ごとの有力な広告販売代理店とグローバルDSPの双方を押さえることで、インベントリの販売網を面的に広げてきた延長線上に位置づけられる。
広告出稿事例
Odeeo公式サイトのケーススタディページには、McDonald's、Costa Coffee、英国政府機関(Department for Work and Pensions)など9事例が掲載されている。うち著名ブランドの事例は以下の2件である。
事例1: McDonald's(米国、Admerasia経由)
McDonald'sと広告代理店Admerasiaは、Odeeoのアプリ内音声広告を活用し、アジア系アメリカ人(AAPI)層向けに「McValue」メッセージを配信した。第三者検証機関Claritasによる効果測定結果として、以下の数値が公表されている。
- インクリメンタル注文(増分オーダー): 15%増
- アプリインストール: 50%増
- 会員登録数: 50%増
ケーススタディの公開日は2025年11月4日(出典: Odeeo公式ケーススタディ)。

事例2: Costa Coffee(英国)
英国最大級のコーヒーチェーンCosta Coffeeは、モバイルゲーム内音声広告を通じて「数百万人のゲーマー」にリーチした。公式ページ上では「ブランド信頼度と認知度の向上に貢献」という定性的な表現にとどまり、具体的なKPI数値はダウンロード資料内に限定されているため、Web公開ページ上では確認できなかった(出典: Odeeo公式ケーススタディ)。

McDonald'sの事例は数値による裏付けが明確な一方、Costa Coffeeの事例は定性評価にとどまっている。事例を検討する際は、公表されている指標の粒度が案件によって異なる点に留意したい。
なぜこの動きが起きたのか
Lagardère Publicité News会長のRenoir-Couteau氏のコメントにあるとおり、同社はもともとFM/DAB+ラジオ・ライブオーディオ・ポッドキャスト・ウェブラジオ・ストリーミングというデジタルオーディオ領域を扱ってきた代理店である。取り扱いメディアブランドはEurope 1、Paris Match、Le Journal du Dimanche、Radio Nova、SoundCloudなど20以上に及び、デジタルオーディオ在庫は直近1年で倍増し、週間ユニークリスナー500万人以上にリーチしていると報じられている(The Media Leader FR、2026年戦略発表より)。
こうした背景の中で、モバイルゲームという新しい音声接点を自社のカタログに加えることは、Lagardère Publicité Newsにとって「デジタルオーディオの全領域をカバーする」という戦略上の欠けていたピースを埋める動きだったと考えられる。Odeeo側にとっても、フランスという大規模市場において、既存のオーディオ広告のバイヤー(広告主・代理店)に音声広告在庫を直接つなぐ販売網を獲得できる利点がある。
日本市場ではどうか
ゲーム内音声広告というフォーマット自体の配信インフラは、既に日本にも存在する。Odeeoは2023年12月、日本の音声広告専業代理店オトナル(東京都中央区)と提携し、オトナルは「GainAds」という名称でOdeeoの技術を用いたゲーム内音声広告を日本市場向けに提供開始した(オトナル公式PR TIMES、2023年10月25日付リリース。Odeeo公式ブログでの提携発表は2023年12月20日)。
2025年10月には、GainAdsは運用型(プログラマティック)広告メニューの提供を開始し、「国内外3.3億人」にリーチ可能と公表している(オトナル公式サイト)。ただし、この3.3億人はグローバル在庫の合算値であり、日本国内のみのユーザー数・タイトル数は確認できていない。

つまり、「ゲーム内音声広告というフォーマット自体の認知がほぼゼロ」という見立ては正確ではない。配信インフラ自体は2023年末から日本国内に存在している。一方で、この分野を扱った日本語の詳しい解説記事や導入事例の報道はほぼ見当たらず、広告主側の認知度・活用実績が薄いという点は課題として残る。McDonald'sの事例のような数値開示は英語圏中心であり、日本語の第三者検証データはほぼ存在しない。オトナル側も、ブランド名を明示した国内出稿事例を公式サイト上で確認できなかった。
日本のモバイルゲーム広告市場は2025年に約4,400億円(31.2億ドル)という規模の数値があるが、一次情報の出典は本記事の執筆過程では再確認できておらず、参考値として扱う。
なお、ゲーム内広告全体の類型(インタースティシャル・リワード広告・サイネージ広告・コラボ型広告など)については、より広い視点でゲーム内広告とはで整理している。音声広告はこうしたゲーム内広告フォーマットの一つとして位置づけられる。
日本で同じ広告を実施する選択肢
日本国内でゲーム内音声広告そのものを試したい場合、GainAds(Odeeo×オトナル)が選択肢になる。運用型メニューが2025年10月から提供されており、海外の音声広告フォーマットを国内で試せる環境は既に整っている。ただし、国内でのブランド活用事例が公開情報として見当たらないため、初めて出稿する企業は効果の見立てを英語圏の事例(McDonald'sなど)から類推する必要がある。
一方、「プレイ体験を阻害しない」「ゲーム空間そのものに広告接点を作る」という発想を、音声ではなく視覚的な広告接点で実現したい企業には、Ad-Virtuaのようなゲーム内サイネージ広告(ゲーム空間内の看板・モニターに動画広告を配信する仕組み)が選択肢になる。Ad-Virtuaは国内400タイトル以上に対応し、累計再生数8,000万回超という国内での活用実績を持つ。音声広告と異なり、動画クリエイティブをそのまま活用できる点、国内の効果指標(広告想起率・注目度・CPM等)が公表されている点が異なる特徴である。
どちらを選ぶかは、「新しい音声接点を試したいか」「国内実績のある視覚接点を優先したいか」という優先順位で決まる。両者は競合するフォーマットというより、ゲーム内という同じ生活者接点の中で異なる感覚チャネル(聴覚・視覚)を使う手段だと捉えるのが実態に近い。
広告主が取るべき判断
今動くべき企業の条件
- 若年層向けにTVCM・SNS広告以外の新しい接点を積極的に試したいブランドで、音声フォーマットへの興味がある企業
- 英語圏でのフォーマット効果検証(McDonald's事例など)を判断材料として許容できる企業
- グローバル展開しており、フランス市場での認知拡大を検討している企業(この場合はLagardère Publicité News経由の出稿が直接の選択肢になる)
様子見でよい企業の条件
- 国内での第三者検証データや同業種の出稿事例が揃うまで待ちたい企業
- 既に視覚的なゲーム内広告(サイネージ・動画広告)で一定の成果指標を持っており、フォーマットを増やす優先度が高くない企業
- 音声広告特有の測定・計測環境(MMP連携等)を新たに構築するコストをかけられない企業
関連する基礎知識への導線
ゲーム内広告の全体像やフォーマットの種類について詳しく知りたい場合は、ゲーム内広告とはを参照してほしい。ゲーム内音声広告は、この記事で扱うゲーム内広告フォーマットの一つとして位置づけられる。音声広告を含む広告フォーマット全体の分類については、広告の種類でも整理している。
FAQ
Q. Odeeoの音声広告は日本の広告主でも今すぐ出稿できるのか。
A. 直接契約ではなく、日本市場向けにはオトナルが提供する「GainAds」を通じて出稿する形になる。GainAdsは2025年10月から運用型メニューも提供している。
Q. フランスのLagardère Publicité Newsとの提携は、日本の広告主に直接関係するのか。
A. 直接の関係はない。今回の提携はフランス国内の広告主・代理店向けにOdeeoの在庫を開放するものであり、日本市場の窓口はオトナルのGainAdsである。ただし、Odeeoが地域ごとの有力代理店と提携を重ねている事業拡大のパターンを理解する材料にはなる。
Q. ゲーム内音声広告とゲーム内サイネージ広告(看板型)は何が違うのか。
A. 音声広告はプレイ中にバックグラウンドで流れる、または報酬と引き換えに聴取する聴覚的な広告接点である。サイネージ広告はゲーム空間内の看板・モニターに動画を表示する視覚的な広告接点である。どちらも「プレイ体験を止めない」ことを重視する点は共通するが、使う感覚チャネルと必要なクリエイティブ素材(音声 vs 動画)が異なる。
Q. Odeeoの効果指標はどこまで信頼できるのか。
A. 案件によって開示レベルにばらつきがある。McDonald'sの事例は第三者検証機関Claritasによる数値が公開されている一方、Costa Coffeeなど他の事例は定性的な説明にとどまり、具体的な数値は非公開のものが多い。効果を厳密に比較検討したい場合は、案件ごとに検証の粒度が異なる点を踏まえたうえで、個別に開示データを確認する必要がある。


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