米ナスダック上場のゲーミング広告会社Super League(スーパーリーグ)が、2026年6月9日にPlay.Works(プレイワークス)の米国広告販売パートナーになったと発表した。販売するのは、Play.Worksがテレビ向けに配信するゲームと動画チャンネル上の「プレイアブル広告」と「リワード動画」で、販売地域は米国と明記されている。日本の広告主がこの枠組みで在庫を買えることは、公開情報からは確認できない。それでも、ゲームを遊ぶ時間に接触する広告がスマホやPCだけでなくリビングのテレビにも広がっていることを示す動きである。
発表の内容
Super League Enterprise, Inc.(Nasdaq: SLE、本社カリフォルニア州サンタモニカ)は、2026年6月9日午前9時(米国東部夏時間、日本時間同日22時)にプレスリリースを出した。Play.Worksとの「米国広告販売提携(U.S. advertising sales partnership)」を結んだという内容である(出典: Super League IR/GlobeNewswire配信版)。なお、superleague.com のニュース一覧では日付が「June 8, 2026」になっているが、本記事ではIRとGlobeNewswireに記載された6月9日を採用した。
この提携では、Play.Worksのネットワーク上にある「イマーシブなプレイアブル広告(playable ad)とリワード動画(rewarded video)」の在庫を、Super Leagueが大手ブランドに販売する。リリースに記載された数値は次のとおり。
項目 | 公表値 |
|---|---|
広告ネットワークのリーチ | 1億世帯超 |
ゲームの平均セッション時間 | ユーザー1人あたり19分超 |
月間広告インプレッション | 1億5,000万超 |
VTR(視聴完了率) | 95% |
在庫の構成 | ゲーム250本超、AVODアプリ150超、ライブTVチャンネル2つ |
対応プラットフォーム | サムスン(Samsung)、ビジオ(Vizio)、LG、ロク(Roku)、ファイアTV(Fire TV)、コムキャスト(Comcast)、スカイ(Sky)、コックス(Cox) |
※いずれもSuper Leagueのリリースに記載された数値。VTR 95%の定義(分母、どの広告フォーマットの数値か)と第三者による計測の有無は、公開情報では確認できなかった。「1億世帯超」の地域別の内訳も書かれていない。
契約期間、収益の分配率、独占契約かどうか、販売開始日は開示されていない。
Super LeagueのCEO兼社長マット・エデルマン(Matt Edelman)氏は、Play.Worksを「規模があり、ブランドセーフで、視聴者が遊び、操作するコネクテッドTVの一角」と表現し、「ターゲット層がコンテンツやメッセージとつながっていることを証明する、検証可能な行動」が得られる点を評価した。Play.WorksのCOOオズ・アヴニ(Oz Avni)氏は、Super Leagueが連れてくるのは「受け身で眺める(leaning back)のではなく、身を乗り出して関与する(leaning forward)環境でオーディエンスと出会いたいパートナー」だと述べている。両社はテレビを「眺める画面」ではなく「関与する画面」として打ち出している。

ゲーム内広告の種類や基本的な仕組みは、ゲーム内広告とはにまとめている。今回の在庫は、視聴すると見返りを得られる「リワード動画」と、広告自体を操作させる「プレイアブル広告」の組み合わせで、それをテレビ画面で配信する点に特徴がある。
Play.Worksとはどんな会社か

今回の在庫を持っているのはPlay.Worksである。Super Leagueのリリースでは「世界最大のコネクテッドTV(CTV)ゲーム・ゲーミング動画コンテンツ配信事業者」と紹介されている。同社の公式サイトは自社を「CTVゲームとオリジナルTVチャンネルのNo.1プロバイダー」と説明している。いずれも当事者による表現で、本記事では第三者による裏付けを確認していない。
基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
社名 | PlayWorks Digital Limited(ブランド表記はPlay.Works)。LinkedInの記載で、登記上の正式名の一次情報は未確認 |
設立年 | 公開情報では確認できず |
本社 | LinkedInではイスラエル・ラマトガン(公式サイトでは未確認) |
拠点 | テルアビブ、ロンドン、キーウ、シアトル、ボルダー、ニューヨーク(公式チームページ) |
創業者 | ジョナサン・ボルタックス(Jonathan Boltax)氏(共同創業者兼CEO)、オズ・アヴニ氏(共同創業者兼COO) |
会長 | ジャスパー・スミス(Jasper Smith)氏 |
従業員規模 | LinkedInでは51〜200名、公式チームページには80名超が掲載(人数の公式開示はなし) |
資金調達 | 公開情報では確認できず |
経営陣の経歴を見ると、この会社の強みがわかる。CEOのボルタックス氏はエミー賞の受賞者で、コムキャスト、リバティ・グローバル(Liberty Global)、サムスン、フィリップス(Philips)、ビジオ、ディッシュ・ネットワーク(Dish Network)、ディッシュTVインディア(DishTV India)との配信提携をまとめてきた。ハーフブリック(Halfbrick)、『クロッシーロード』開発元のヒップスター・ホエール(Hipster Whale)、ハズブロ(Hasbro)、テトリス(Tetris)、エンデモル(Endemol)、ナショナルジオグラフィック(National Geographic)とのライセンス契約の交渉も手がけた。有料テレビ事業者やテレビメーカーとの配信契約と、有名IPのライセンスの両方を取ってきた経歴である。
COOのアヴニ氏は広告テクノロジー出身で、オンライン、モバイル、OTT向けのプロダクト開発を率いる。会長のスミス氏は、PlayJam、PlayStack、Static2358、Optimistic Entertainment Plc、Fantastic Corporationの創業に関わった人物だ。R&D担当VPのレオニード・フォイゲルマン(Leonid Foigelman)氏は「ゲーム開発15年超、50本超のタイトルをリリース」と紹介されており、ゲームを自社で開発・移植できる体制を持つ。
事業の3本柱
Play.Worksの事業は、次の3つで構成される(出典: play.works、Super Leagueリリース)。
- CTVゲーム: スマートTVやストリーミング端末で、リモコンで遊ぶカジュアルゲームを開発・配信する。一部のタイトルはスマホをコントローラーにして遊べる。主なIPは『パックマン(PAC-MAN)』『テトリス』『クロッシーロード(Crossy Road)』『トリビアクラック(Trivia Crack)』『ブレイクアウト(Breakout)』、アタリ(Atari)の名作群、『ドゥードゥルジャンプ(Doodle Jump)』『ホイール・オブ・フォーチュン(Wheel of Fortune)』『ファミリー・フュード(Family Feud – The Game)』『スペースインベーダー(Space Invaders)』など。『チェス・オンライン(Chess Online)』は家庭内でも、別の世帯とのあいだでも対戦できる。
- クリエイター主導のTVチャンネル: YouTubeクリエイターの動画を、テレビ向けのチャンネルとして編成・配信・収益化する。形態はAVOD、SVOD、FAST。YouTube登録者5,000万人のベン・アゼラート(Ben Azelart)氏や、ニンジャキッズTV(Ninja Kidz TV)などのチャンネルを扱う。
- 広告(アドバゲーミング): 上の2つ、つまりゲームと動画に広告を載せる。今回Super Leagueが米国で販売するのは、このうちプレイアブル広告とリワード動画である。

広告がテレビに表示される仕組み
リリースから確認できる範囲では、仕組みは次のとおり。
- 配信面: Play.Worksが各テレビプラットフォームで提供するゲームアプリ、AVODアプリ、ライブTVチャンネル。
- フォーマット: 視聴者がリモコンやスマホで操作するプレイアブル広告と、視聴するとゲーム内で見返りを得られるリワード動画。
- 売り方: リリースは「インタラクティブなゲームプレイとプレミアム動画の組み合わせが、テレビでは他にない独自の広告環境をつくる」と説明している。
番組の合間に流れるテレビCMとの違いは、広告そのものを操作させる形式(プレイアブル広告)や、見返りと引き換えに自分から視聴する形式(リワード動画)を使う点にある。一方で、各フォーマットの詳しい仕様、ゲームや番組のどのタイミングで表示されるか、計測ベンダー、DSP(広告主側の買い付けシステム)との接続は公開情報では確認できなかった。公式サイトには広告向けのページ(/adverGaming)があるが、本記事の調査では本文を取得できていない。
リワード動画という形式そのものの特徴は、リワード広告とはで解説している。
在庫の規模:数字は文脈によって違う
Play.Worksの規模を示す数値は、出典によって異なる。今回の広告販売の話をするときは、リリース本文の数値を使うのが正確である。
指標 | 数値 | 出典と性質 |
|---|---|---|
リーチ | 1億世帯超 | Super Leagueリリース本文。今回の広告販売の対象ネットワーク |
リーチ | 4億世帯超 | Play.Works公式サイトと同社プレスリリース。全世界・全プラットフォームの配信先 |
ゲーム数 | 250本超 | Super Leagueリリース本文 |
ゲーム数 | 400本超 | Play.Works公式サイトと同社プレスリリース(最新の自社表記) |
公式サイトのパートナーロゴには、ロク、アマゾンファイアTV、プライムビデオ(Prime Video)、LG、サムスン、コムキャスト、ビジオ、トゥビ(Tubi)、AT&T、アップルTV(Apple TV)、ソニー(Sony)、ハイセンス(Hisense)、ドイツテレコム(Deutsche Telekom)、オレンジ(Orange)など、30を超えるロゴが並ぶ。ただし取引の種類や対象国は書かれていない。配信地域については、2026年9月1日のリリースに「北米、英国、その他世界」とある。
主要なコンテンツパートナーと日本のIP
リリースは、コンテンツパートナーとしてアタリ、バンダイナムコ、ニコロデオン(Nickelodeon)、ソニーなどの名前を挙げている。リリースがIP拡充の例として挙げた『スペースインベーダー』は、画像に「SPACE INVADERS™ & © TAITO」とあり、タイトーのIPである。Play.Worksが配信するゲームには、日本発のIPが含まれている。
リリースによると、『スペースインベーダー』と『ファミリー・フュード』は最近ローンチしたタイトルで、マルチプレイと、スマホをコントローラーにする機能を備える。リリースはこれを「より深いブランド統合を見据えたロードマップ」の一部と位置づけている。

販売を担うSuper Leagueの事業

在庫を売る側のSuper League Enterprise, Inc.(以下Super League)は、今回のリリースで自社を「ゲームをプレイする人々にリーチし、影響を与えるために、グローバルブランドから信頼されるオーディエンスインテリジェンス・メディアアクティベーション企業」と説明している。世界35億人のゲーム人口とブランドを、広告とブランデッドコンテンツでつなぐという。公式サイトには、ロブロックス(Roblox)、フォートナイト(Fortnite)、モバイル、PC、クレイジーゲームズ(CrazyGames)、ゲームラント(GameRant)に加えて、サムスン、ビジオ、LG、ロクの名前が展開面として並んでいる。
独自の分析エンジン「プレイ・インテリジェンス・エンジン(Play Intelligence Engine)」は、ゲーマーを6つのプレイペルソナに分類する(Change Makers/Progress-Driven/Strategic Minds/Bold Expressers/Risk Takers/Social Connectors)。公式サイトには「購入意向 +31%(ベースライン比)」「ROAS 13倍」という成果が載っているが、どのキャンペーンの数値かは書かれていない。
営業体制も今回の提携の直前に強化された。2026年6月3日の発表で、アンソニー・アレキサンダー(Anthony Alexander)氏が6月8日付でEVP of Revenue(収益部門の執行副社長)に就いた。前職はLivewireのCROで、その前はPlaywireに10年以上在籍し、グローバル営業担当のEVPを務めた人物である(出典: Super League IR)。
Super Leagueの会社の成り立ちとMisfits Adsの買収は、Super LeagueによるMisfits Ads Division買収の解説で詳しく扱っている。
ここまでの歩み
Play.Works:資金調達は公開情報で確認できない
Play.Worksの資金調達ラウンド(時期、金額、投資家)は、公式ニュースルームとプレスリリースでは確認できなかった。日本企業が出資しているかどうかも不明である。そのため、同社については「市場からどう評価されてきたか」を調達履歴からたどることができない。代わりに、公開されている事業上の動きを並べる。時期を確認できなかった出来事は表の先頭にまとめた。
時期 | 出来事 | その段階で進めていたこと(本記事の読み取り) |
|---|---|---|
時期不明 | CEOのボルタックス氏が、コムキャスト、サムスン、ビジオなどとの配信提携と、テトリスやハズブロなどとのライセンス契約をまとめる | テレビ側の配信先と、遊ばれるための有名IPを確保する |
時期不明 | 『スペースインベーダー』をCTVでローンチ(スマホ操作に対応)。テンプル・メイズ(Temple Maze)とネオン・ダンク(Neon Dunk)、中南米のクリエイター4組のチャンネルも追加 | 日本発の有名IPと新しい操作方法でタイトルを増やす |
2025年12月15日 | フォーブス(Forbes)が「Samsung と Play.Works のスマートTVゲームがオーディエンスのエンゲージメントを押し上げる」と題した記事を掲載(本文は本記事の調査では未確認) | — |
2025年末〜2026年初(日付は未確認) | 『ファミリー・フュード』をCTVでローンチ。スマホをコントローラーにした対戦型。『チェス・オンライン』もあわせて紹介 | 家族や複数人で遊べるタイトルを増やす |
2026年2月3日 | エスケープ・ドットエーアイ(Escape.ai)と提携し、AIを活用したクリエイター主導の映像作品「Escape: Neo Cinema and Beyond」を、ロク、ファイアTV、LG、サムスンに配信(出典: PR Newswire) | ゲーム以外の映像チャンネルを増やす |
2026年6月9日 | Super Leagueを米国のアドバゲーミング在庫の販売パートナーに指名(本件) | 積み上げた在庫の米国での広告営業を外部に任せる |
2026年9月1日 | ベン・アゼラート氏のFASTチャンネルを、プライムビデオとビジオのWatchFree+に拡大(出典: PR Newswire) | クリエイターチャンネルの配信先を広げる |
流れとしては、配信先とIPを増やして在庫を積み上げ、その在庫を米国で売る営業を外部に任せた、と読める。撤退・終了したサービスの記録は確認できなかった。

Super League:事業転換と資金の動き
Super Leagueは上場企業なので、資金の出入りと業績は公式IRで追える。こちらはゲーム広告の「売る側」が市場からどう評価されてきたかを示す。
時期 | 出来事 | そのとき会社がしようとしていたこと |
|---|---|---|
2014年 | Super League Gaming, Inc.として設立(報道ベース) | — |
〜2020年代前半 | esports放送・アマチュア大会運営が事業の中心(報道ベース) | esportsを軸にしたメディア事業 |
その後(時期は未確認) | ロブロックスやマインクラフト(Minecraft)向けのブランド広告に軸足を移し、社名をSuper League Enterpriseに変更(報道ベース) | esports中心の事業を縮小し、ブランド広告会社へ転換する |
2025年10月 | エボ・ファンド(Evo Fund)が主導したPIPE(上場企業が特定の投資家に株式を割り当てる私募増資)で、総額1,790万ドルを調達。負債を解消(出典: GlobeNewswire) | 財務基盤を立て直す |
2026年3月18日 | Misfits Ads Division(ロブロックス上のプログラマティック広告とリワード動画の事業)の買収で最終契約(出典: Super League IR) | 自社制作のブランド体験に加え、広告在庫を持つ |
2026年5月6日 | Misfits Adsの買収完了を発表。資産取得は5月1日(出典: Super League IR) | 同上 |
2026年5月15日 | 第1四半期決算。グロス売上300万ドル、ネット売上108万ドル、粗利率36%、現金・投資1,140万ドル、年初からの新規クライアント23社(出典: Super League IR) | — |
2026年6月3日 | アレキサンダー氏をEVP of Revenueに任命 | 営業体制の強化 |
2026年6月9日 | Play.Worksの米国広告販売パートナーに就任(本件) | 他社の在庫(CTV)を販売する |
2026年8月14日 | 第2四半期決算。ネット売上約124万ドル(前四半期比+16%)、粗利率41%(前四半期の36%から5ポイント改善)、調整後EBITDA約▲170万ドル、現金・投資約670万ドル。キッズセーフなメディアの一括窓口「Youth and Family Marketplace」を開始。第4四半期の調整後EBITDA黒字化を目標に掲げる(出典: Super League IR) | 収益性の改善 |
2026年8月18日 | 日本のメタプラネット(東証スタンダード: 3350)が、2,100 BTC(2026年8月18日の発表資料の記載で約1億3,210万ドル相当)と現金250万ドルを出資する計画を発表。1株3.00ドルで普通株44,859,400株などを取得し、クロージング後の持分は普通株の約95.7%になる。米国のビットコイン・トレジャリー・プラットフォーム「Superplanet」を立ち上げる計画で、ゲーミングメディア事業は独立した事業セグメントとして残るとしている(出典: Super League IR) | ビットコイン・トレジャリー事業への転換 |
メタプラネットの出資は、クロージングが2026年第4四半期の見込みで、株主承認と日米の規制手続きが条件になっている。2026年9月13日の確認時点では完了していない。広告事業の文脈とは別の話で、Play.Worksとの提携への影響について公式の言及はない。なお、8月14日の第2四半期決算リリースには、Play.Works、CTV、アドバゲーミングへの言及がなかった。提携後の米国での販売実績も、本記事の調査では確認できなかった。
Super Leagueの動きを並べると、ロブロックスの広告事業の買収、営業トップの招聘、CTV在庫の販売代理、キッズセーフ在庫の一括窓口と続いている。複数の在庫を束ねて一つの窓口で売る「ゲーミング広告のセールスハウス」に近づいている、というのが本記事の整理である(同社はこの表現を使っていない)。
広告出稿事例
今回の提携にもとづく、ブランド名つきのCTV広告事例は、発表から約3か月の時点で見つからなかった。以下は、Super Leagueがこれまでロブロックス、フォートナイトなどのゲーム上で手がけたブランド施策である。テレビ上の事例ではないが、同社がブランドに何を売ってきたか、どの指標で成果を報告する会社かがわかる(出典: Super League ケーススタディ)。
チポトレ(Chipotle):ロブロックスのハロウィーン体験「Boorito Maze」
チポトレのハロウィーン体験「Boorito Maze」を、ロブロックス上でゲーム化したブランド体験。公表されている成果は、ユニークプレイヤー350万人超。同社史上最高のモバイル売上日を記録し、1日あたりのアプリダウンロード数とデジタル取引数でも記録を更新したとされる(具体的な数値は非開示)。

メイベリン(Maybelline):人気ワールドをジャックしたバーチャル試用
ロブロックスの人気ロールプレイワールドを期間限定でジャックし、「Sunkisser Blush」をバーチャルで試せる体験を用意した。公表されている成果は、バーチャルアイテムの試用2,500万回超、ブランドインプレッション3,850万、平均エンゲージメント時間9分。

パンダエクスプレス(Panda Express):カットシーン視聴と報酬の組み合わせ
「Hot Orange Chicken」の復活を記念して、フォートナイト・クリエイティブとロブロックスを横断したストーリー×報酬型の施策を実施した。26.5万人超がブランドのカットシーンを視聴してゲーム内報酬を獲得し、エンゲージメント時間は合計65日、プレイヤーのインタラクションは18.5万件超だった。
ランチャブルズ(Lunchables):バーチャルワールドでの収集型報酬
プレイアブルズ(Playables)のバーチャルワールドで、アバター、ARゲーム、収集型の報酬を展開した。エンゲージメント1,000万時間、ユーザーが獲得したポイントは合計74億、バーチャルペットの交換は730万、購入率は+6.3%だった。
事例から読み取れること
パンダエクスプレスの「映像を見たら報酬を得る」施策は、今回販売するリワード動画に近い設計といえる。4件とも、「プレイヤー数」「試用回数」「報酬獲得者数」「エンゲージメント時間」「購入率」など、プレイヤーが実際にとった行動にかかわる数値を成果として示している(インプレッション数を示しているのはメイベリンの1件のみ)。エデルマン氏が今回のコメントで「検証可能な行動」を強調したことと方向は同じだが、CTVでどの指標をレポートするかは公表されていない。ロブロックスで出た数値がテレビでも再現されるという根拠もない。
なぜこの動きが起きたのか
テレビ広告費の移動
Super Leagueのリリースは、eMarketerの予測として「リニアTVの広告費は総広告費の12%まで縮小し、CTVは2030年までに40%超のシェアを占め、米国CTV市場は2029年に510億ドル規模になる」と引用している(本記事ではリリース経由で確認しており、eMarketerの原典は未確認)。広告費がCTVへ移るなかで、CTVの在庫を「番組の合間の動画CM」以外の形で売る動きが出ている。

テレビ側でゲーム面が増えている
Play.Works以外にもテレビで無料ゲームを遊ばせ、広告で収益化する事業者がある。2026年7月24日、米PHYND(本社コネチカット州スタンフォード)は、無料・広告モデルのゲームストリーミングサービスを米国のLGスマートTV(webOS 6.0以上、2021年以降のモデル)でベータ公開すると発表した(出典: Yahoo Finance掲載のGlobeNewswire配信)。創業者兼CEOのアンドレ・スワンストン(André Swanston)氏は「ゲームをテレビ視聴のように簡単で身近なものにするために作った」とコメントしている。
Play.Worksはゲームアプリをテレビに配信し、PHYNDはクラウドでストリーミングする。技術の方式は違うが、「テレビで無料ゲーム、収益は広告」という点は共通している。クラウド型のゲームに載る広告はクラウドゲーミング広告とはで整理している。
在庫を持つ会社と売る会社の分業
Play.Worksは配信提携とIPの獲得を積み重ねてきた会社で、今回、米国の大手ブランドへの営業を専門会社に任せた。提携の理由について両社は、コメント以上の説明をしていない。Super League側から見ると、ロブロックス中心だった売り物にテレビの在庫が加わる。同社は2026年6月に営業トップを迎え、第2四半期決算では営業1人あたりの加重パイプラインが280万ドル(7月31日時点、第1四半期後の178万ドルから+57%)になったと報告した。第4四半期の調整後EBITDA黒字化を掲げる同社にとって、自社にない在庫で商材を増やす動きと位置づけられる。
日本市場ではどうか
日本の広告主は今この在庫を使えるか
現時点の公開情報からは、使えない可能性が高い。理由は3つある。
- Super Leagueの販売範囲は「米国」と明記されている。
- Play.Worksのゲームや広告在庫が、日本のテレビプラットフォームで配信されているかを確認できなかった。パートナーロゴにはソニーやハイセンスなどがあるが、対象国の記載はない。
- 日本語へのローカライズと、日本での広告販売窓口の有無も確認できなかった。
米国向けのキャンペーンであれば、Play.Worksが米国の販売パートナーに指名したSuper Leagueが問い合わせ先の候補になる(独占販売かどうかは開示されていない)。
国内で同じ動きはあるか
「CTV上のゲームに広告を載せる」在庫を国内で販売している事例は、本記事の調査の範囲では見つからなかった。調査の制約もあるため、「存在しない」とは言い切れない。
国内のCTV広告自体は伸びている。サイバーエージェントとデジタルインファクトの共同調査(2026年3月9日発表)によると、2025年の国内動画広告市場は8,855億円(前年比122.2%)で、そのうちコネクテッドテレビの動画広告需要は1,295億円(前年比127%)だった。CTVは2026年に1,550億円、2029年に2,445億円まで伸びると予測されている(出典: サイバーエージェント)。この数値はCTV上の「動画広告」の需要額で、ゲーム内広告やプレイアブル広告は内訳に含まれていない。

日本との接点は、在庫の供給側と資本の面にある。前者は、バンダイナムコがPlay.Worksのコンテンツパートナーに名を連ね、タイトーの『スペースインベーダー』が配信されていること。後者は、メタプラネットによるSuper Leagueへの出資計画である。後者の目的はビットコイン・トレジャリー事業で、広告事業との関係は公式に説明されていない。
日本で同じ広告を実施する選択肢
「テレビ画面でゲームを遊ぶ時間に広告を当てる」形そのものを国内で買う窓口は、公開情報では確認できなかった。そのため国内では、目的を分けて手段を選ぶことになる。テレビの大画面で世帯に届けたいならCTVの動画広告、ゲームを遊んでいる時間に嫌われにくい形で接触したいならゲーム内広告、という分け方である。
後者の選択肢の一つが、Ad-Virtuaのモバイルゲーム内サイネージ広告である。ゲーム空間の中にある看板やモニターに動画広告を配信し、プレイを中断させない。対応タイトルは400以上、料金は1週間300,000円のプランがある。公表値は広告想起率約1.8倍、注目度約1.7倍、CPM約300円(いずれもAd-Virtua公表値)。
比較ポイントを表にまとめる。指標の定義がそれぞれ違うため、数値を横に並べて優劣を比べることはできない。
比較ポイント | Play.WorksのCTVアドバゲーミング(Super League販売) | Super Leagueのゲーム内ブランド施策(Robloxなど) | Ad-Virtua(モバイルゲーム内サイネージ) |
|---|---|---|---|
画面 | テレビ | ロブロックス、フォートナイトなどのゲーム | スマホ |
広告の形 | プレイアブル広告、リワード動画 | ブランド専用の体験、報酬型の施策 | ゲーム空間内の看板・モニターに動画 |
視聴者の関わり方 | 操作する、または見返りのために視聴する | ブランドの世界で遊ぶ | プレイを続けながら目に入る |
公表されている指標 | VTR 95%、平均セッション19分超、月間インプレッション1.5億超 | 試用回数、報酬獲得者数、エンゲージメント時間など | 広告想起率約1.8倍、注目度約1.7倍、CPM約300円 |
販売地域 | 米国 | 公開情報では未確認 | 日本国内 |
広告フォーマットの仕様 | 公開情報では未確認 | 施策ごとに体験を制作 | 動画素材を配信 |
こんな企業にAd-Virtuaはおすすめ
- 国内の生活者に、ゲームを遊んでいる時間を使って認知や想起を取りたい
- 手持ちの動画素材を、別の接点で使いたい
- 大規模な体験の制作ではなく、1週間単位のプランから試したい
Ad-Virtuaをおすすめしない企業
- テレビの大画面での接触を必ず取りたい(この場合はCTVの動画広告を検討するほうが合う)
- 広告そのものを操作させたい、ブランドの世界で遊ばせたい(サイネージは操作型ではない)
- 販売の対象が米国市場である(Super League経由の在庫が直接の選択肢になる)
テレビCMを補う施策を全体から選びたい場合は、テレビCMの代替・補完施策で手段を並べて比べている。
広告主が取るべき判断
問い合わせを検討してよい企業
- 米国で消費者向けの商品を売っている日本企業: 米国の世帯にテレビ上のゲームで接触したいなら、Super Leagueに問い合わせる理由がある。販売開始日や出稿条件は公開されていないため、まずは条件を聞くことになる。
- 米国でファミリー層に届けたい企業: Play.Worksが扱うチャンネルには、ニンジャキッズTVのような家族向けのクリエイターチャンネルもある。ただし、今回販売されるプレイアブル広告とリワード動画がどのゲームやチャンネルに載るかは公表されていない。Super Leagueは2026年8月の第2四半期決算でキッズセーフなメディアの一括窓口「Youth and Family Marketplace」の開始を発表したが、この窓口にPlay.Worksの在庫が含まれるかも公表されていないため、あわせて確認が必要である。
様子見でよい企業
- 国内の生活者だけが対象の企業: 在庫は米国向けで、日本での販売窓口は確認できない。国内CTVの動画広告かゲーム内広告で、目的に合う手段を選ぶ段階である。
- 第三者計測による検証を出稿の条件にしている企業: VTR 95%の定義と計測方法が公開されていない。CTVでのブランド名つき事例も見つかっていないため、成果が公開されてから判断しても遅くない。
出稿を検討する前に確認すること
- VTR 95%の分母と、プレイアブル広告・リワード動画のどちらの数値か
- 「1億世帯超」のうち米国の世帯がどれだけあるか
- 計測ベンダーと、使っているDSPから買えるか
- 契約期間と、Super Leagueが独占販売権を持つか(いずれも非開示)
- メタプラネットによる出資が完了した後も、広告事業と今回の提携が続くか(現時点で公式の言及はない)
関連する基礎知識
- ゲーム内広告とは:ゲーム内広告の種類と仕組みの全体像
- リワード広告とは:今回の販売在庫の一つであるリワード動画の特徴
- クラウドゲーミング広告とは:PHYNDのようなストリーミング型ゲームと広告
- テレビCMの代替・補完施策:テレビCMを補う手段の比較
- Super LeagueによるMisfits Ads Division買収の解説:今回の提携の前段にあたるロブロックス広告事業の買収
よくある質問
「アドバゲーミング」と「ゲーム内広告」は同じ意味ですか?
言葉の範囲は使う会社によって違う。今回のリリースでは、Play.Worksのゲームと動画チャンネルに載るプレイアブル広告とリワード動画を「アドバゲーミング在庫」と呼んでいる。一方、本記事で紹介したSuper Leagueの過去の事例は、ブランド専用の体験を作る施策である。提案資料でこの言葉を見かけたら、「既存のゲームや動画に広告を載せる話」なのか「ブランドのためにゲーム体験を作る話」なのかを確認すると、費用と制作期間の見積もりを取り違えにくい。
テレビのリモコンで広告を「遊ぶ」のは、視聴者にとって面倒ではありませんか?
操作の負担を示すデータは公開されていない。Play.Worksは、スマホをコントローラーにできるタイトルや、家庭内でのマルチプレイに対応したタイトルを増やしている。リビングのテレビは複数人で見ることもある画面なので、1人が操作し、ほかの家族がそれを見る状況もありうる。スマホ向けのプレイアブル広告の素材をそのまま流用するのではなく、テレビ用にクリエイティブを分けて考えるのが安全である。
日本でも、テレビ上のゲームに広告を出せるようになりますか?
国内で始まるという公式な発表は確認できていない。Play.Worksが公表している配信地域は北米、英国などで、日本での配信は確認できていない。日本企業のIPがPlay.Worksで配信されていることも、国内での配信や広告販売を意味するものではない。国内の動きを追うなら、米国のPHYNDのように、スマートTVで広告モデルの無料ゲームを始める事業者が国内に出てくるかどうかが目安になる。そうしたサービスが出てきたら、広告フォーマット、計測方法、販売窓口の3点を最初に確認するとよい。
米国向けに出稿した場合、日本の本社で成果を評価できますか?
CTVでどの指標がレポートされるかは公開されていない。国内施策と比べたい場合は、広告想起率のように国内で使っている指標を別途調査で取るのか、Super Leagueが出す行動指標をそのまま使うのかを、出稿前に決めておく必要がある。後者を選ぶ場合、VTRやセッション時間は国内の動画広告の指標と定義がそろわない可能性があるため、社内での比較には注意が必要である。


.jpg)



