結論
ライブ配信広告のアドテク企業NexTide Media(ネクスタイド・メディア)と、ゲーム内広告大手Frameplay(フレームプレイ)が2026年6月9日、提携を発表した。ゲーム内に広告を組み込む技術と、Twitch・YouTube Live・Kickのライブ配信を広告枠として扱う技術を組み合わせ、AIによるリアルタイム・ブランドセーフティ監視を伴う形でスケールさせる取り組みであり、「ゲーム内広告はプレイヤーだけでなく配信視聴者にも届く」という前提を技術インフラとして具体化した事例といえる。
発表の内容
2026年6月9日、PR Newswireを通じて両社の提携が発表された(一次情報)。NexTideが保有するTwitch・YouTube Live・Kick上の700人以上のプレミアムクリエイターネットワークに、Frameplayが持つ5,000以上のモバイルゲームへの広告配信インフラを組み合わせ、ライブ配信広告を「スケーラブル」かつ「ブランドセーフ」に届ける仕組みを構築するという内容である。
第一弾の実施事例として紹介されているのが、芝生ケア用品ブランドScott's Lawn Care(スコッツ・ローンケア)による2ヶ月間のキャンペーンだ。JeromeASF、LEGIQN、Towelliee、Dorki、UpAndAdam、Dysfunction、BaileyGoatの7人のクリエイターを起用し、Twitch・YouTube Live・Kickを横断して展開している。キャンペーン開始から32日間で延べ330万ビュー、推定300万フォロワーへのリーチを記録し、エンゲージメント率は標準的なデジタルディスプレイ広告比で4倍という数値が公表されている。
NexTide Media CEOのAlexander Guerrero氏はこの提携について次のようにコメントしている。
「視聴者が『邪魔された』のではなく『エンゲージされた』と感じるとき、キャンペーンはブランド・クリエイター・視聴者のすべてにとってより良い成果を出す」(原文: "When audiences feel engaged rather than interrupted, campaigns perform better for brands, creators, and viewers alike.")
Frameplay側からはAmanda Rubin氏(プレスリリース上の肩書きは「SVP, Play」。ただし公式チームページでは「SVP, Revenue」と表記されており、どちらが最新かは本稿執筆時点で確認できていない)が次のようにコメントしている。
「ゲームとライブ配信はもはや『新興チャネル』ではない。そこはカルチャーが息づく場所だ」(原文: "Gaming and livestreaming aren't emerging channels anymore. They're where culture lives.")
事業者プロファイル
Frameplayのゲーム内広告事業

Frameplayは2018年に設立された「イントリンシック(内在的)ゲーム内広告」の専業企業である。イントリンシック広告とは、ゲームプレイを中断させるインタースティシャル広告やリワード広告とは異なり、ゲーム空間内の看板・モニター・スポンサーシップ枠などに、あたかもその世界に元から存在するかのような形で広告を表示する方式を指す。この概念はゲーム内広告とはで詳しく解説している。
Frameplay公式サイトによれば、創業のきっかけは2018年、人気バトルロイヤルゲーム内にエナジードリンクブランドの広告が一時的に表示されたものの、パッチ更新で削除されてしまった出来事にあるという。この「広告枠がゲームアップデートのたびに失われる」という課題を、専用のプラットフォームとして解決しようとしたのが同社の出発点である。
本社所在地は米カリフォルニア州サンフランシスコ(創業地をオーストラリアとする報道もあるが未確認)。共同創業者はJonathon Troughton氏(元CEO)とEric Rossi氏(CTO)で、現CEOはSandy Shanman氏である。ディスプレイ・動画・リワード型・スポンサーシップなど複数の広告フォーマットに対応し、対応SDKはUnity SDK(2019年ローンチ)とCocos SDK(2022年ローンチ)。本件提携の一次情報では「5,000以上のモバイルゲームのネットワーク」を持つと紹介されている。

主要パートナーには、ブランドリフト調査を2021年から共同提供するComscore、同じくブランドリフト測定を行うHappydemics(同社の累計7,000件超のブランドリフト調査のうちFrameplayが約90件、2024年単年で40件超を実施)、Integral Ad Science(IAS)、Adverty、AdInMoなどが並ぶ。IAB(Interactive Advertising Bureau)の複数委員会に参加し、TAG(Trustworthy Accountability Group)の認証も取得している。
資金調達では、2021年12月8日にSeries A(800万ドル)を発表しており、Hiro Capitalがリード投資家、Razer(zVentures経由)とKona Venture Partnersが参加した。日本企業の参加は確認できなかった。累計調達額は公式には非開示で、二次情報(PitchBook)では「3ラウンドで約2,960万ドル」との記載があるが、Frameplay公式で裏付けが取れないため参考値にとどめる。
NexTide Mediaのライブ配信広告事業

NexTide Mediaとはどんな会社か。2024年に設立された、ライブ配信を「ブランドセーフで測定可能なメディア枠」に変換するアドテク企業である。本社所在地は公式サイトに記載がなく未確認(二次情報ではデラウェア州ニューアークとする記述もあるが未検証)。創業者兼CEOのAlexander J. Guerrero氏は、創業前にEnthusiast Gamingでパートナーシップ部門を統括し、「NFL Tuesday Night Gaming」やDisney・State Farm・Verizon向けキャンペーンを手がけた経歴を持つと報じられている。共同創業者にはJJ Liebig氏(CTO)、元Dota2プロ選手・キャスターのKyle Freedman氏、フォロワー900万人以上のYouTuber Jerome Aceti氏、Matt Goodman氏(COO)が名を連ねる。著名な個人投資家として、フォロワー2,800万人以上のYouTuber Ssundee氏、NFLオールプロCBのKerby Joseph氏(デトロイト・ライオンズ)、SCUF Gaming創業者のDuncan Ironmonger氏の名が挙がっているが、ラウンド名・金額は非公開である。
NexTideはストリーマーを「パブリッシャー」と位置づけ、ブランドとの取引を仲介する仕組みを持つ。クリエイターネットワーク規模は公式サイトで「700人以上のプレミアムクリエイター」とされており(一部報道では「783人」との記述もあり、時期による変動と見られる)、対応プラットフォームはTwitch・YouTube Live・Kickである。
主な製品は次の5つである。
- LiveGuard™(2025年10月29日発表): AIによるリアルタイム・ブランドセーフティ監視。配信音声を自動で文字起こしし、約1.5秒でブランドセーフティスコアを算出する。現時点では音声のみが対象で、映像コンテンツの監視は2026年のロードマップに含まれるとされる(未実装、報道ベース)
- OmniBanners: 配信画面上に常時表示され、測定可能なバナー広告枠
- ImmersiveFrames: 動的なリッチメディア広告枠
- Custom Activations: クリエイター主導のコラボレーション型施策
- Kraken(2026年6月30日発表): 配信中の会話をオーディエンスインサイトに変換するライブインテリジェンスツール

公式サイトに掲載されている主要クライアントロゴには、State Farm、Welch's、NFL、Scott's Lawn Care、USAA、BET(BET Awards)、PLAION、Weplay Studiosが並ぶ。資金調達については公式発表を確認できておらず、二次情報(PitchBook)に「約54.9万ドル調達、投資家にHotStart VC」との記載があるが未検証のため参考値扱いとする。日本の投資家の関与は確認できなかった。
ここまでの歩み
両社とも大企業ではなく、成長途上のアドテク企業である。それぞれの取り組みを時系列で振り返る。
Frameplayの歩み
時期 | 出来事 |
|---|---|
2018年 | 設立(PUBG内エナジードリンク広告の一時表示がきっかけと公式が説明) |
2019年 | Unity SDKローンチ |
2021年 | Comscoreとブランドリフト調査シリーズを共同開始 |
2021年12月8日 | Series A(800万ドル、Hiro Capitalリード、Razer・Kona Venture Partners参加)を発表 |
2022年 | Cocos SDKローンチ |
2024年 | Happydemicsとのブランドリフト測定実績が本格化(年間40件超) |
2025年12月 | ブランドリフレッシュ(新ロゴ・ビジュアルアイデンティティ刷新) |
2026年6月9日 | NexTide Mediaとの提携を発表(本件) |
過去の撤退・サービス終了に関する情報は調査範囲内では見つからなかった。2018年の創業以来、ゲーム内広告というニッチな領域を一貫して掘り下げ、SDK対応の拡大と計測パートナーとの提携によって信頼性を積み上げてきた企業といえる。
NexTide Mediaの歩み
時期 | 出来事 |
|---|---|
2024年 | Alexander Guerrero氏らにより設立 |
2025年10月29日 | ブランドセーフティ製品「LiveGuard™」を発表(自社は「ライブ配信向けとして初のリアルタイム・ブランドセーフティ・プラットフォーム」と説明) |
2026年6月9日 | Frameplayとの提携を発表(本件) |
2026年6月30日 | ライブインテリジェンスツール「Kraken」をローンチ |
NexTideは2024年設立とごく若い企業であり、資金調達の詳細な履歴は公式に開示されていない。ただし製品ローンチのペースは速く、LiveGuard発表から半年強でFrameplayとの提携、さらに3週間後にKrakenをローンチするなど、短期間でプロダクトラインを拡充している。
今回の提携は、NexTideが持つ「クリエイターネットワーク+AIブランドセーフティ(LiveGuard)」という武器に、Frameplayの「ゲーム内在型広告インフラ・5,000以上のゲームタイトルへの配信網」を組み合わせることで、ライブ配信広告の規模と、ゲーム内広告の非侵襲性(プレイ・視聴体験を邪魔しない)を両立させる狙いがあると読み取れる。
広告出稿事例
Frameplay単体の事例と、NexTide×Frameplay提携後の事例をそれぞれ紹介する。
事例1: Frank's RedHot(調味料ブランド)

新商品のバッファローウイングソースを訴求するため、Frameplayのゲームエコシステム全体でスナック好きの多様な層にリーチするキャンペーンを展開した。公表されている効果指標は、インプレッション1,600万以上、ブランドへの好意度+56.2ポイント、「ゲームスポンサーとして適切」との評価+44.2ポイント、「行きつけのホットソース」認識+43.7ポイントである(出典)。

事例2: 金融機関(ブランド名非公開)

銀行・投資・住宅ローン・自動車ローンなど幅広い金融サービスの認知拡大を目的に、ロゴ・ブランドカラー・スローガンをゲーム内クリエイティブに統合し、米国のFrameplayネットワーク全体で展開した事例である。総インプレッションは37,816,880、リーチは約190万ユニークユーザー。Comscoreが実施したブランドリフト調査では、スローガン理解度+47.7ポイント、スポンサーシップ好意度+42.8ポイント、広告想起+25.7ポイントという結果が公表されている(出典)。

事例3: Scott's Lawn Care(NexTide×Frameplay提携後の初事例)
芝生ケア用品ブランドScott's Lawn Careによる2ヶ月間のキャンペーン。JeromeASFら7人のクリエイターを起用し、Twitch・YouTube Live・Kickを横断して展開した。開始から32日間で延べ330万ビュー、推定300万フォロワーへのリーチを記録し、エンゲージメント率は標準的なデジタルディスプレイ広告比で4倍。加えて、リアルタイムのコミュニティセンチメント(視聴者の反応)トラッキングも実施されている(詳細は「発表の内容」章を参照)。
なぜこの動きが起きたのか
ライブ配信は視聴者との一体感が強く広告効果が出やすい一方、配信者の発言は生放送であるがゆえに予測不能で、ブランドがスポンサーとして関与する際の「炎上リスク」が課題になりやすい媒体である。NexTideのLiveGuardは、この課題にAIによるリアルタイム監視という技術的解決策で応えようとするプロダクトだ。
一方でFrameplayが得意とするのは、ゲームというコンテンツの中に広告を「元からそこにあるもの」として溶け込ませる技術であり、プレイヤー・視聴者の体験を中断しない点が強みである。両社の提携は、「ライブ配信のリーチとエンゲージメントの高さ」と「ゲーム内広告の非侵襲性・ブランドセーフティ」という、それぞれ単独では弱点になりうる要素を補完し合う組み合わせと解釈できる。
日本市場ではどうか
「ゲーム内広告」と「ゲーム実況・配信(Twitch、YouTube Live、ニコニコ生放送等)」を技術的に統合し、AIブランドセーフティ技術とセットで提供する取り組みは、調査範囲内では日本国内の事例を確認できなかった。NexTide Mediaのクリエイターネットワークも、公式サイト掲載クライアント(State Farm、NFL等)から見て米国中心と見られ、日本語配信者や国内プラットフォームへの対応は確認できていない。したがって、日本の広告主が現時点でNexTide×Frameplayのサービスを直接利用できるかどうかは不明である。
日本は世界有数のゲーム実況・配信文化を持つ市場であり、ゲーム実況者やVTuberを軸にした視聴文化が強い一方、「ゲーム内広告×配信同時波及×AIブランドセーフティ」を一体で提供する専業プレイヤーは、国内ではまだ確立されていないと見られる。市場規模で見ると、グローバルのゲーム内広告市場は2026年に約120〜125億ドル規模、2029〜2030年には180〜207億ドル規模まで拡大すると予測されており(年平均成長率11.0〜13.5%、出典: ゲーム内広告の市場規模・成長率)、日本のモバイルゲーム広告市場も2025年時点で約4,400億円規模とされる。
日本で同じ広告を実施する選択肢
NexTide×Frameplayが示す「ゲーム内広告をプレイヤー接触で終わらせず、配信を通じて視聴者にも波及させる」という発想自体は、日本の広告主にも参考になる視点である。ただし、NexTideが提供するようなAIブランドセーフティ監視や配信者マネタイズの専業プラットフォームは、現時点で国内に同等のものが確立されているとは言えない。
国内でゲーム内広告を検討する場合の現実的な選択肢の一つが、ゲーム空間内の看板・モニターに動画広告を配信するアドネットワークであるAd-Virtuaのようなサービスだ。Ad-Virtuaは対応タイトル400以上、累計再生数8,000万回超という規模を持ち、広告想起率約1.8倍・注目度約1.7倍といった効果指標を公表している。
ただし、Ad-VirtuaはNexTideのようなライブ配信連動機能やAIによるリアルタイム・ブランドセーフティスコアリングを独自機能として明示的に訴求しているわけではない。したがって「配信者を起用したライブ配信広告」を主眼に置く企業には現時点では選択肢として弱く、あくまで「ゲーム空間内への広告出稿によって若年層に非侵襲的にリーチしたい」という目的に対する国内の選択肢の一つと位置づけるのが実態に近い。
広告主が取るべき判断
今動くべき企業の条件
- 若年層・ゲーマー層への新しい接点を、TVCMやSNS広告の補完として探している
- 「広告に邪魔されない」体験を重視し、プレイ・視聴体験を中断しない広告フォーマットに関心がある
- 効果測定(広告想起・ブランドリフト等)を重視し、数値で成果を追いたい
様子見でよい企業の条件
- ライブ配信者(インフルエンサー)起用と配信連動を軸にした施策を国内で今すぐ実施したい企業。NexTideのような専業プレイヤーの日本語対応・国内展開は未確認であり、現時点では時期尚早と考えられる
- AIによるリアルタイム・ブランドセーフティ監視そのものを国内でも同等の精度で求める企業。LiveGuardのような専業技術が日本市場に投入されているかは未確認
関連する基礎知識への導線
ゲーム内広告の仕組みや種類を体系的に理解したい場合は、ゲーム内広告とはを参照してほしい。イントリンシック広告とインタースティシャル広告・リワード広告との違い、市場規模の推移など基礎的な内容を解説している。また、グローバル・国内のゲーム内広告市場の数値的な裏付けについてはゲーム内広告の市場規模・成長率にまとめている。
FAQ
Q. NexTideとFrameplayの提携によって、広告主は具体的に何を発注できるようになるのか。
A. 一次情報からは、ライブ配信クリエイター起用によるキャンペーン(Scott's Lawn Careの事例のような形式)が第一弾として示されているのみで、広告主が選べるメニューの全体像(料金体系や最小出稿単位など)は公表されていない。
Q. NexTideとFrameplayの提携における契約金額や取引条件は公表されているのか。
A. 一次情報のプレスリリースには、提携の対価や契約規模といった金銭的な条件についての記載はなく、非公開である。
Q. Frameplayは日本のゲームタイトルにも広告を配信しているのか。
A. 本件のリサーチ範囲では、Frameplayのインベントリ規模(5,000以上のモバイルゲーム)の内訳や日本タイトルの有無は確認できておらず、不明である。
Q. NexTideの「700人以上のクリエイター」は日本の配信者を含むのか。
A. 公式サイト掲載の主要クライアント(State Farm、NFL、USAAなど)から見て米国中心のネットワークと見られるが、クリエイターの国籍別内訳は公表されておらず断定はできない。


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