ニューロマーケティングとは、脳波・視線・心拍などの生体反応を測り、消費者が言葉にできない「本音の反応」を広告や商品開発に活かすマーケティング手法です。費用はアイトラッキングなら数万円から、fMRIでは数百万円規模まで幅があり、TVCMやパッケージのように「出したあとで直しにくい施策」の事前テストに使うと、費用に見合う成果を得やすくなります。

この記事では、主な手法と測り方の違い、費用相場、国内の事例、調査会社の選び方、導入の手順、倫理面の注意点までを比較表で整理します。広告の種類や効果の全体像を先に押さえたい方は、広告とは?意味・種類・効果・媒体選びをわかりやすく解説もあわせてご覧ください。

この記事でわかること

  • ニューロマーケティングの意味と、アンケート調査との違い
  • EEG・fMRI・fNIRS・アイトラッキングなど手法ごとの測り方と費用相場
  • NTTデータ・バンダイ・アース製薬など国内の事例
  • 調査会社・サービスの選び方と、中小企業の始め方
  • 食品・飲料メーカーが稟議で使える数値の揃え方

想定読者:食品・飲料・日用品・外食など、生活者との接点が多い企業で、広告効果の検証やブランド体験の設計を担当するマーケティング担当者・ブランドマネージャー

ニューロマーケティングの要点早見表

最初に、手法ごとの違いを1枚の表にまとめます。詳しい測り方と費用は後の章で説明します。

手法

わかること

費用の目安(1調査)

向いている用途

アイトラッキング(視線計測)

どこを何秒見たか

数万〜数十万円

パッケージ、売場、Webページ、広告のレイアウト

表情解析

喜び・驚きなど表情の変化

数万円〜(ツール次第)

動画広告の感情テスト

EEG(脳波計測)

秒単位の注意・感情の変化

数十万〜百万円規模

TVCM・動画広告のシーン評価

fNIRS(近赤外光による脳血流計測)

前頭部の活動(集中・負荷)

数十万〜百万円規模

売場や体験の評価、VR体験の評価

fMRI(脳の血流を画像化)

どの脳の部位が反応したか

数百万円〜

ブランドコンセプト・CM戦略の評価

GSR・心拍(皮膚電気反応・脈拍)

興奮・緊張の強さ

低(ほかの手法に追加)

ほかの手法の補助データ

費用は被験者数、調査の設計、分析の範囲によって大きく変わります。公開されている料金表は少ないため、上の金額はあくまで目安とし、実際は複数社から見積もりを取って比べてください。

ニューロマーケティングとは:意味をわかりやすく解説

脳の構造を抽象的に表現したイメージ:ニューロマーケティングで計測する脳の反応

「ニューロ(neuro)」は神経・脳を意味します。ニューロマーケティングは、神経科学(脳科学)の計測技術をマーケティング調査に応用したもので、「広告を見た瞬間に、脳や体がどう反応したか」をデータとして取り出します。

アンケート調査との違い

アンケートで「この広告は印象に残りましたか?」と聞いても、答えられるのは本人が意識できた印象だけです。さらに「よく見られたい」「無難に答えたい」という気持ちで回答がゆがむこともあります。ニューロマーケティングは、本人が意図して変えられない生体反応を測るため、こうしたズレを補えます。

比較ポイント

アンケート・インタビュー

ニューロマーケティング

測るもの

意識して言葉にできる評価

無意識の注意・感情の反応

時間の細かさ

見終わったあとの総合評価

1秒ごとの反応の変化

回答のゆがみ

起きやすい

起きにくい

人数

数百〜数千人でも実施しやすい

数十人規模が中心

費用

比較的安い

手法によっては高い

「なぜ」の説明

得意

苦手(アンケートで補う)

どちらかを選ぶものではなく、ニューロ計測で「どこで反応が動いたか」をつかみ、アンケートやインタビューで「なぜそう感じたか」を聞く組み合わせが基本です。

測るデータは3種類

  1. 生理データ(脳波、脳の血流、心拍、発汗):本人がコントロールできない反応
  2. 行動データ(視線の動き、反応までの時間):注意がどこに、どれだけ向いたか
  3. 主観データ(アンケート、インタビュー):反応の理由を言葉で補うためのデータ

なぜ感情データが重要なのか

消費者の感情データを可視化するニューロマーケティングの概念イメージ

感情を伴う体験は記憶に残りやすいことが、認知科学・神経科学の分野で広く知られています。広告が「好きと答えられたのに覚えられていない」「嫌いではないのに買う候補に上がらない」といった状態に陥る原因は、アンケートの数字だけでは見えにくいものです。ニューロマーケティングは、この見えにくい部分を測るための手段として使われています。感情に訴える広告の設計については、エモーショナルマーケティングとは?感情訴求の手法・成功事例・実践ステップを解説で詳しく解説しています。

ニューロマーケティングの手法・種類と測り方

EEGヘッドセットを装着して脳波計測を行うニューロマーケティング調査の様子

同じ「ニューロ調査」でも、手法によって測り方と読み取れることが大きく違います。発注前に、次の表で自社の目的に合う手法を確認してください。

手法

測り方

被験者の負担

得られるデータ

読み取るときの注意

EEG(脳波)

電極の付いたヘッドセットを着け、広告を見ている間の脳波を記録する

中(装着に手間がかかる)

注意・感情の秒単位の変化

体の動きやまばたき、咀嚼(そしゃく)でデータが乱れる

fMRI

MRI装置に横になって映像を見てもらい、脳の血流の変化を画像で記録する

高(専用施設が必要、金属類は持ち込めない)

どの脳の部位が反応したか

実際の視聴環境とかけ離れた状態での反応になる

fNIRS

額にセンサーを当て、近赤外光で前頭部の血流の変化を記録する

低〜中(小型機器なら座ったまま・歩きながらでも測れる)

前頭部の活動(集中・負荷)

脳の表面に近い部分しか測れない

アイトラッキング

画面下のセンサーやメガネ型の機器で視線を記録する

低

見た場所と時間、見た順番(ヒートマップ)

「見た」が「好き」とは限らない

表情解析

Webカメラで表情を撮影し、ソフトで感情を分類する

低(自宅から参加できる)

喜び・驚き・困惑などの表情の変化

表情に出にくい感情は捉えにくい

GSR・心拍

指先や手首にセンサーを着け、発汗や脈拍を記録する

低

興奮・緊張の強さ

「快」か「不快」かは区別できない

市場全体で見ると、EEGが売上の約4割(2025年に40.28%)を占め、最も使われている手法です。近年はfNIRSの伸びが最も大きいとされています(出典: Mordor Intelligence「Neuromarketing Market」)。

手法の組み合わせ方の例

  • 15秒・30秒の動画広告を比べたい:EEG+表情解析+視聴後アンケート
  • パッケージ案を3つに絞りたい:アイトラッキング+好感度アンケート
  • 売場や体験イベントを評価したい:fNIRSやメガネ型アイトラッキングで、実際の場所で測る
  • ブランドの根本的なイメージを確かめたい:fMRI(予算と期間に余裕がある場合)

広告効果の指標全体の中でニューロ計測をどう位置づけるかは、広告効果とは|測定方法・KPI設計・ブランドリフト・主要指標の実践ガイドが参考になります。視線や注視時間を広告の評価に使う考え方は、アテンション指標(Attention Metrics)とはで解説しています。

ニューロマーケティングの費用相場

ニューロマーケティング導入の予算計画とコスト試算のイメージ

ニューロマーケティングには「大企業向けの高額な調査」という印象がありますが、手法を選べば少ない予算からでも始められます。

調査の規模

主な手法

費用の目安(1調査)

向いている用途

実施のハードル

大規模

fMRI

数百万円〜

ブランドコンセプト・CM戦略の評価

専門機関が必要。大企業向け

標準

EEG+アイトラッキング

数十万〜百万円規模

広告の構成・パッケージの評価

専門の調査会社に外注できる

小規模

アイトラッキングのみ

数万〜数十万円

パッケージ・売場・広告レイアウトの見やすさ評価

始めやすい。自社でも実施できる

ツール利用

表情解析

数万円〜(ツール次第)

動画広告の感情テスト

無料・有料のツールがある

費用が変わる5つの要因

  1. 被験者の人数と条件:対象者が珍しい条件(特定の商品の購入者など)ほど、集めるのに費用がかかる
  2. 比べる素材の数:比べる広告やパッケージの案が増えると、1人あたりの計測時間が延びる
  3. 会場か自宅か:会場で機器を使う調査は高く、Webカメラを使った自宅からの調査は安い
  4. 分析とレポートの範囲:秒単位の分析や改善提案まで頼むと高くなる
  5. アンケートとの組み合わせ:大人数のアンケートを同時に行う場合は、その分の費用が加わる

中小企業・予算が少ない場合の始め方

年間の広告費が少ない企業は、まずアイトラッキングか表情解析のツールで、2〜3案を比べる調査から始めるのが現実的です。社内で素材を用意でき、結果もヒートマップなどでわかりやすく出るため、調査に慣れていないチームでも判断に使いやすくなります。

広告予算全体の中で調査費をどのくらい確保するかは、広告費用の相場と決め方|媒体別比較・ROI試算・予算配分ガイドで考え方を整理しています。

ニューロマーケティングの会社・サービスの選び方

調査レポートの資料を見ながらニューロマーケティング調査会社を比較検討する担当者

ニューロマーケティングを扱う会社は、「独自の技術を持つ専門企業」「機器・ソフトの提供会社」「アンケートと組み合わせて提供する調査会社」の3つに分かれます。世界では30社以上が参入しており、1社で15%を超えるシェアを持つ企業はないとされています(出典: Mordor Intelligence)。

事業者の種類

主な事業者

主な手法

特徴

向いている企業

大手の研究開発型

NTTデータ(NeuroAI)

fMRI+AIによる予測モデル

20〜60代の一般生活者の脳活動データから、広告やコンテンツへの反応を予測。パートナー企業を通じた動画広告の評価サービスもある

TVCM・動画広告を大量に出稿する企業

脳計測の専門企業

株式会社NeU

fNIRS(携帯型の脳計測機器)、VR視聴中の視線計測

実験の計画から実施まで支援する

商品・広告の好感度を実際に近い環境で測りたい企業

広告会社系

電通グループ(感性アナライザ)

脳波

ウェアラブル機器で、店舗など実際の場所で計測する

店舗・体験型施策を評価したい企業

機器・ソフトの提供会社

Tobii、iMotions、Emotiv、Affectivaなど

視線、脳波、表情解析

機器やソフトを購入・契約し、自社で調査する

社内に調査チームを持ち、継続的にテストする企業

総合調査会社

ニューロ調査の解説を公開している調査会社(クロス・マーケティング、GMOリサーチ&AIなど)

アンケート+計測

大人数のアンケートと、少人数の計測をまとめて相談できる

まず小規模に試したい企業

(出典: NTTデータ NeuroAI公式サイト、株式会社NeU公式サイト、Mordor Intelligence、Geekly Media。サービス内容は変わることがあるため、発注前に各社の公式サイトで確認してください)

調査会社を選ぶときの5つの確認項目

  1. 目的に合う手法を提案してくれるか:どの案件にも同じ手法を勧める会社より、目的を聞いて手法を組み合わせる会社のほうが安心です
  2. 自社の業界での実績があるか:食品・飲料なら、パッケージ・売場・CMのどれで実績があるかを確認します
  3. 結果を施策の改善まで落とし込めるか:「脳波が上がった」で終わらず、「このシーンを削る」「このコピーを先に出す」まで提案できるか
  4. 被験者の同意とデータ管理の体制:同意書の内容、データの保管期間、個人が特定されない形での納品かどうか
  5. アンケートとの組み合わせ方:少人数の結果を、大人数のアンケートでどう確かめるかの設計があるか

ニューロマーケティングの導入方法:6つのステップ

初めて導入する場合は、次の順番で進めると、調査が「データを取っただけ」で終わるのを防げます。

  1. 判断したいことを決める:「A案とB案のどちらで出稿するか」「CMのどのシーンを削るか」など、調査結果で決めることを先に1つに絞る
  2. 比べる素材を用意する:比べる案は2〜3つに絞る。最終版に近い状態の素材ほど、結果を判断に使いやすい
  3. 手法と被験者の条件を決める:前の章の表を参考に手法を選び、ターゲットに合う被験者の条件(年代・購入経験など)を決める
  4. 調査会社に見積もりを依頼する:2〜3社に同じ条件で依頼し、手法の提案内容と費用を比べる
  5. 計測とアンケートを行う:計測のあとに短いインタビューやアンケートを入れ、反応の理由を聞く
  6. 結果を施策に反映し、出稿後に確かめる:修正した広告を出稿し、ブランドリフト調査などで実際の効果を確認する

6つ目の「出稿後に確かめる」方法は、ブランドリフト測定とは?評価指標・手法・費用を実務で使える形で解説で詳しくまとめています。

国内外のニューロマーケティング成功事例

日本企業によるニューロマーケティング活用事例のイメージ

企業

使い方

手法

結果・ポイント

NTTデータ

動画広告の事前評価

fMRI+AI

SNS広告で再生率23.6%、いいね・リツイート率35.3%の向上を確認

バンダイ × NeU

赤ちゃん向け知育玩具の開発

心拍・表情

音を聞いた赤ちゃんの反応をデータにして、商品開発に活用

アース製薬

消臭芳香剤の研究

脳波

商品を使ったときの気分の安定度が21%向上したことを確認

電通

店舗・広告の評価

脳波

ウェアラブル機器で実際の店舗の体験を評価

博報堂

TVCMの評価

脳波

2009年に米国企業と提携し、CMへの共感の反応を測定

コカ・コーラ(海外)

動画広告の構成見直し

脳波

最も反応が強かったシーンをもとに広告を再構成

ネスレ(海外)

パッケージデザインの選定

脳波+視線

好感度の高いデザインを事前に特定

NTTデータ:脳活動データとAIで広告への反応を予測

NTTデータは、fMRIで撮影した一般生活者(20〜60代の男女)の脳活動データをもとにAIの予測モデルを作る「NeuroAI」を展開しています。Twitter(現X)広告での検証では、従来と比べて再生率が23.6%、いいね・リツイート率が35.3%向上したと公表しています。CMの好感度予測やテレビショッピングの問い合わせ数の増加などにも使われています(出典: NTTデータ NeuroAI公式サイト)。

バンダイ × NeU:赤ちゃん向け知育玩具「BabyLabo」

バンダイは、東北大学と日立ハイテクの合弁会社である株式会社NeUと共同で、赤ちゃん向け知育玩具「BabyLabo」の「脳科学メロディ」シリーズを開発しました。音を聞いたときの赤ちゃんの心拍数や表情の変化を測り、リラックスや興味といった反応をデータにしています。言葉で感想を聞けない相手の反応を測れる点は、ニューロマーケティングならではの使い方です(出典: マクニカ、NeUプレスリリース)。

アース製薬:香りによる気分の変化を脳波で確認

アース製薬は消臭芳香剤の研究で脳波を測り、商品を使ったときの気分の安定度が21%向上したことを確認しています(出典: クロス・マーケティング)。香りや味のように言葉で説明しにくい価値を、データで示した例です。

電通・博報堂:広告会社の取り組み

電通は脳波を使ったウェアラブルツール「感性アナライザ」を、飲食店などの実際の店舗の評価に使ったことが報告されています(出典: Geekly Media)。博報堂は2009年に米国企業と提携して「ブレイン・ブリッジ・プログラム」を始め、TVCMを見たときの共感に関わる脳の反応を測る取り組みを行いました(出典: MarkeZine)。

海外:コカ・コーラ、ネスレ

コカ・コーラは脳波で動画広告への反応を測り、最も反応が強かったシーンをもとに広告を組み直した事例が紹介されています。ネスレは脳波と視線計測を組み合わせて、好感度の高いパッケージデザインを事前に特定しました(出典: NeuroTech Magazine by VIE)。

食品メーカーのブランド体験施策をさらに比べたい方は、食品メーカーのブランド体験施策事例10選も参考になります。

ニューロマーケティングの市場規模と注目される背景

ニューロマーケティング市場の成長とデータ分析の広がりを示すイメージ

世界のニューロマーケティング市場は、2026年に18.3億ドル、2031年に25.3億ドルに達し、年平均6.76%で成長すると予測されています(出典: Mordor Intelligence)。

項目

データ(2025年)

最大の地域

北米(シェア41.20%)

最も伸びる地域

アジア太平洋(2031年まで年平均7.83%)

最も使われている用途

広告・メディアのテスト(シェア51.45%)

最大の利用者

小売・消費財ブランド(シェア37.12%)

最も使われている手法

EEG(シェア40.28%)

(出典: Mordor Intelligence「Neuromarketing Market」)

用途の半分以上が広告のテストで、利用者の4割近くが小売・消費財ブランドです。食品・飲料・日用品のメーカーにとって、特に使われている分野だといえます。

注目が続く3つの理由

  1. 機器の小型化:ヘッドセット型・メガネ型の機器が増え、研究施設ではなく店舗や自宅でも測れるようになった
  2. AIによる分析の自動化:専門家が時間をかけていた脳波や視線データの解析が速くなり、広告の制作期間の中で結果を使えるようになった
  3. 広告の効果が見えにくくなった:クッキー規制などで配信後の行動を追いにくくなり、「出稿前に広告の質を確かめる」ことの価値が高まった

ニューロマーケティングの効果と問題点

効果(メリット)

  • 言葉にできない反応を数値にできる:「好きと答えたのに覚えていない広告」と「記憶に残る広告」の違いを、出稿前に見分けられる
  • 広告費のムダを減らせる:大きく出稿する前に少人数でテストし、反応の弱い案を外せる
  • 社内の説明に使える根拠になる:「こちらのデザインの方が視線が長く止まり、反応も強かった」と、クリエイティブを選んだ理由を数字で示せる
  • 言葉で聞けない相手を調べられる:赤ちゃんや、香り・味のように説明しにくい体験も評価できる

問題点(限界と注意点)

  • 結果の読み取りが難しい:脳科学はまだ発展中で、「この脳波の形=買いたい気持ち」と言い切れるわけではない。専門家の解釈とアンケートでの確認が欠かせない
  • 少人数の結果を広げすぎる危険:数十人の結果を「ターゲット全体の反応」と見なすのは適切ではない
  • 実際の視聴環境との違い:特にfMRIは装置の中で映像を見るため、スマホで流し見するときの反応とは違う
  • 費用と期間:本格的な調査は数十万円以上かかり、準備から結果が出るまで一定の期間が必要になる

倫理とプライバシーで注意すべきこと

脳波や視線などのデータは、本人も自覚していない反応を含むため、扱いには特に配慮が必要です。海外では、脳や神経の活動データを特別に保護する法律がすでにできています。

地域

法律

内容

米国コロラド州

HB24-1058(2024年4月17日署名、同年8月7日施行)

神経データを含む生体データを、州のプライバシー法で「センシティブデータ」として保護

米国カリフォルニア州

SB 1223(2024年9月28日成立)

神経データを消費者プライバシー法(CCPA)の「センシティブな個人情報」に追加。消費者は企業による利用を制限できる

(出典: コロラド州議会、カリフォルニア州議会の公式サイト)

日本でも、脳波や心拍のデータを氏名などと結びつけて管理すれば、個人情報として扱う必要があります。調査を発注・実施するときは、次の点を確認してください。

  • 同意を得る:調査の目的、測るデータ、保管期間、第三者に渡すかどうかを説明し、書面で同意を得る
  • 目的以外に使わない:広告評価のために集めたデータを、個人へのターゲティングなど別の目的に使わない
  • 個人が特定されない形で受け取る:調査会社からは、統計処理した結果を受け取るようにする
  • 海外の被験者を含む場合は現地の法律を確認する:米国の一部の州では、神経データの扱いに追加のルールがある

こんな企業におすすめ / おすすめしない企業

ニューロマーケティングがおすすめの企業

  • 年間の広告費が大きいブランド:クリエイティブの小さな改善でも、広告費全体への影響が大きい
  • 感情への訴えがブランドの価値に直結する商材:食品・飲料・日用品・化粧品・エンターテインメントなど
  • TVCMや動画広告を多く使う企業:どのシーンで反応が落ちるかを出稿前に直せる
  • パッケージやロゴの刷新を控えている企業:大きな投資の前に、失敗のリスクを下げられる
  • 香り・味・使い心地など、言葉で説明しにくい価値を持つ商品:データで違いを示せる

おすすめしない企業

  • 年間の広告費が数百万円以下の企業:調査費が広告費に対して大きくなりすぎる。まずは実配信のA/Bテストが現実的
  • そもそも認知が足りない段階の企業:広告の質を磨く前に、ターゲットに届く接点を増やすことが先
  • 広告を短い周期で差し替える企業:計測から改善までの期間が、差し替えの速さに追いつかないことがある
  • BtoBで、購入の判断に複数の人と長い期間がかかる商材:感情の反応より、提案内容の比較が決め手になりやすい

よくある失敗パターン

  • 測ること自体が目的になる:「何を判断するための調査か」が決まっていないと、データを取っても施策が変わらない
  • fMRIにこだわり予算を使いすぎる:目的によっては、アイトラッキングとEEGの組み合わせで十分に判断できる
  • 少人数の結果を広げすぎる:20人の反応を「ターゲット全体の反応」と見なしてしまう
  • アンケートの結果と対立させる:「脳波が反応したからアンケートは関係ない」とすると、反応の理由がわからないまま判断することになる
  • 同意の取得が不十分:データの使い道や保管期間を説明しないまま調査すると、法的なリスクや信用の低下につながる

食品・飲料メーカーが稟議で使える数値の揃え方

食品・飲料メーカーでは、ニューロ調査も広告出稿も「いくら使って、どれだけ効果が上がるか」を他の施策と同じ物差しで示す必要があります。次の2つの考え方で数値を揃えると、社内で説明しやすくなります。

1. 事前テストの費用は「出稿費の保険」として示す

事前テストの費用は、単独の調査費ではなく、出稿費に対する割合で示すと判断してもらいやすくなります。

試算例(数値は説明用の仮定です)

  • TVCMの出稿費:1億円
  • 事前のニューロ調査(EEG+アンケート、2案比較):300万円(出稿費の3%)
  • 調査の結果をもとに反応の弱いシーンを差し替え、広告を覚えている人の数が5%増えたと仮定
  • 同じ人数に覚えてもらうには、差し替え前の広告なら出稿費を約500万円(1億円の5%)上乗せする必要がある

つまり、出稿費の3%にあたる調査費で、出稿費5%分の上乗せと同じ効果が得られる計算です。この形で示すと、調査費を上回る価値があると説明しやすくなります。実際の上がり幅は、出稿後のブランドリフト調査で確かめてください。NTTデータが公表しているSNS広告の検証結果(再生率23.6%向上など)は、事前評価で成果が変わりうることを示す参考データになります。

2. 媒体の比較はCPM・想起率・好感度で揃える

確認したいこと

使う指標

求め方

ゲーム内サイネージ広告の場合

費用に対してどれだけ届くか

CPM(1,000回表示あたりの費用)

費用 ÷ 表示回数 × 1,000

30万円/週・約100万回再生で約300円(Ad-Virtua公式プランより算出)

他の動画広告より割安か

CPMの比較

同じ期間・目的の見積もりで比べる

一般的な動画広告の約500円に対し約300円(Ad-Virtua調べ)

記憶に残ったか

広告想起率のリフト

ブランドリフト調査(接触した人としていない人の差)

広告想起率約1.8倍、注目度約1.7倍(Ad-Virtua調べ)

ブランドの印象を損なわないか

広告への好感度

接触した人へのアンケート

約85%が好意的に受け止めた(Ad-Virtua調べ)

ニューロ調査で磨いた動画素材を、CPMが低く好感度の高い媒体で配信すれば、「素材の質」と「届け方」の両方で費用対効果を高められます。食品・日用品メーカー向けの詳しい試算方法は、食品・日用品メーカーのゲーム内広告ROIガイドにまとめています。

没入型の広告環境とニューロマーケティングの接点

VRヘッドセットを装着して没入型ゲーム体験をするユーザー:集中状態と広告記憶のイメージ

ニューロマーケティングの知見は、「どの素材が良いか」だけでなく、「どんな状態のときに広告に触れてもらうか」を考えるときにも役立ちます。特に、ゲームやメタバースのような没入型の環境での広告接触には、次の3つの特徴があります。

1. 集中している状態での接触

ゲームに深く集中している状態(フロー状態)では、注意と感情の動きが高まっています。この状態での体験は記憶に残りやすいとされ、ゲーム空間の中でブランドに触れることが記憶に影響するという研究も発表されています(MDPI 2024年のアドゲームの視線計測研究、Springer 2025年のゲームを使った広告に関する論文レビューなど)。

2. 頭の負担を増やさない広告の出し方

ニューロマーケティングの研究では、頭の負担が大きい状態では広告の内容が処理されにくいことが知られています。画面全体をふさぐインタースティシャル広告はプレイを止めてしまいますが、ゲーム空間の看板やモニターに表示されるサイネージ型の広告は、プレイを邪魔せずにブランドを見せられます。上記のMDPIの研究では、ゲームの主な操作に関係する位置に置かれた広告の想起率が最も高かったと報告されています。

3. 繰り返しの接触による記憶の定着

同じブランドに繰り返し触れることで記憶が強まることも知られています。1週間の配信期間中に、複数のゲームで何度もブランドに触れる仕組みは、この性質と相性がよい形です。

ただし、これらは「没入型の環境での広告接触が記憶に影響しうる」という視点であり、すべての広告で同じ効果が出ると確かめられたわけではありません。実際の効果は、ゲーム内広告のインクリメンタルリフト測定ガイドのような方法で、自社のキャンペーンごとに確かめることが大切です。

ブランドの記憶に働きかける施策の比較

施策

感情の動き

記憶への残りやすさ

頭の負担への配慮

費用の目安

特徴

TVCM

中〜高(番組の内容で変わる)

高い(広く・繰り返し届く)

中(番組が中断される)

高

幅広く届くが、年代などの絞り込みは弱い

SNS動画広告

低〜中(スクロール中の接触)

低め(流し見が多い)

低(じっくり見られにくい)

中

細かく絞り込めるが、記憶への影響は限られる

OOH(屋外広告)

低(接触時間が短い)

繰り返し見られると徐々に高まる

低(自分から注目されにくい)

中〜高

生活の動線で目に入る

イベント・体験型施策

非常に高い(自分で参加)

高い(体験として残る)

高い(自分で選んで参加)

高

体験の質は高いが、届く人数に限りがある

ゲーム内サイネージ広告

高(集中している状態で接触)

高め(没入環境で繰り返し接触)

高い(プレイを邪魔しない)

中(30万円〜/週)

若年層・Z世代に届きやすい

ニューロマーケティングの知見を施策に活かす:Ad-Virtuaが合う企業

ヘッドセットを着けてゲームに集中するプレイヤー:ゲーム空間内の広告に触れる場面のイメージ

ニューロ調査を自社で行わなくても、「集中している状態での接触」「プレイを邪魔しない出し方」「繰り返しの接触」という考え方を取り入れた媒体を選ぶことはできます。その選択肢の一つが、ゲーム空間の看板やモニターに動画広告を配信するゲーム内サイネージ広告です。

Ad-Virtua(アドバーチャ)は、この領域の国内アドネットワークで、次の特徴があります(出典: Ad-Virtua公式サイト、数値の一部はAd-Virtua調べ)。

  • 600以上のゲームに広告を掲載でき、年齢層・性別・ゲームジャンルなどで配信先を絞り込める
  • 1週間30万円(約100万回再生)から出稿でき、CPMは約300円(一般的な動画広告は約500円)
  • 広告想起率約1.8倍、注目度約1.7倍、好感度約85%と、嫌われずに記憶に残りやすい
  • Z世代の約80%がゲームをプレイしており、TVCMが届きにくい若年層に接触しやすい
  • ブシロードの事例では、配信期間中に公式サイトへの流入が26%増、平均滞在時間が167%増えた

次の条件に当てはまる企業に合います。

  • Z世代・20〜30代など、TVCMが届きにくい若年層にブランドを覚えてもらいたい
  • 好感度を保ちながら、繰り返しブランドに触れてもらいたい
  • すでに動画素材があり、ニューロ調査などで磨いた素材を別の媒体でも活かしたい
  • 1週間30万円程度から、新しい接点を試したい

ゲーム内広告の費用の考え方は、ゲーム内広告の費用・料金相場【2026年版】課金モデル別の目安と予算設計のポイントで詳しく解説しています。

次に読むべき記事

ニューロマーケティングの知見を広告施策に活かす場合は、次の順番で読むと、全体像から自社の施策設計まで迷わず進めます。

  1. 広告とは?意味・種類・効果・媒体選びをわかりやすく解説:広告全体の種類と役割を整理する
  2. ゲーム内広告とは?仕組み・種類・効果・費用を徹底解説:プレイを邪魔しない広告の仕組みを理解する
  3. 食品・飲料の若年層リーチを増やす施策7選:食品・飲料業界ならではの課題と施策の選び方を知る
  4. Ad-Virtuaへの相談・資料請求:自社商材に合う配信先や予算を相談する

感情や体験に働きかける施策をさらに比べたい方は、次の記事も参考になります。

よくある質問(FAQ)

Q1. ニューロマーケティングは、消費者を操る手法ではないのですか? A. ニューロマーケティングが測るのは、広告や商品に対する「反応」です。脳に直接働きかけて購買させる技術ではありません。ただし、測ったデータを使って不安をあおる表現を強めるなど、使い方次第では消費者の信頼を損ねます。調査の目的を被験者に説明し、表現は通常の広告のルールの範囲で改善するのが基本です。

Q2. 被験者は何人くらい必要ですか? A. 2〜3案を比べる調査では、数十人規模で行うことが多いです。人数が少ないほど個人差の影響を受けやすいため、「どの案が良いか」の判断はニューロ調査で行い、「ターゲット全体でも同じ傾向か」は大人数のアンケートで確かめる、という役割分担が現実的です。

Q3. 計測機器を自社で買うべきですか?外注すべきですか? A. 調査が年に数回なら外注が向いています。機器の購入費に加えて、データを解析できる人材が必要になるためです。動画素材を毎月のように作り、継続的にテストしたい企業は、アイトラッキングや表情解析のツールを契約して社内で回す方法もあります。

Q4. AIで広告への反応を予測するツールとは何が違いますか? A. AIの予測ツールは、過去のデータから反応を推定します。ニューロマーケティングは、実際の人の反応を測ります。NTTデータのNeuroAIのように、測った脳活動データでAIを学習させ、測らなくても反応を予測できるようにする組み合わせも出てきています。

Q5. ニューロ調査をせず、実際に配信してA/Bテストするだけで十分な場合は? A. 配信後にすぐ差し替えられ、クリック数などで結果を比べられるWeb広告なら、実際の配信でのA/Bテストの方が安く速く判断できます。一方、TVCMやパッケージのように、出したあとで直すと費用が大きい施策は、事前のニューロ調査の価値が高くなります。

Q6. 食品・飲料の場合、味や香りへの反応も測れますか? A. 測れます。アース製薬の消臭芳香剤の研究のように、香りを嗅いだときの気分の変化を脳波で確かめた例があります。ただし、脳波は咀嚼などの口の動きでデータが乱れやすいため、試食の調査では、食べた直後の反応を測る、心拍や表情のデータを組み合わせるなどの工夫が必要です。

まとめ

ニューロマーケティングは、脳波・視線・心拍などの生体反応から、アンケートでは捉えきれない消費者の反応を測る手法です。

  • 手法は、始めやすいアイトラッキング・表情解析から、本格的なEEG・fNIRS・fMRIまであり、費用は数万円から数百万円規模まで幅がある
  • 世界市場は2026年に18.3億ドルと予測され、用途の半分以上が広告のテスト、利用者の4割近くが小売・消費財ブランド
  • 国内でもNTTデータ、バンダイ×NeU、アース製薬などが広告評価や商品開発に使っている
  • 成果につなげるには、判断したいことを先に決め、アンケートとの組み合わせと出稿後の効果確認までを設計する
  • 神経データを保護する法律が海外で広がっており、同意の取得とデータ管理が欠かせない

ニューロ調査で得た「集中している状態で、邪魔をせず、繰り返し触れてもらう」という考え方は、媒体選びにも活かせます。若年層にブランドを覚えてもらう施策を検討している方は、ゲーム内広告とは?仕組み・種類・効果・費用を徹底解説から確認してみてください。