この記事でわかること

自動車・モビリティ業界で若年層へのブランド体験を設計する上で有効な施策は、テレビCMに依存しないデジタル接点の確保にある。特に都内Z世代の約4人に3人がクルマ離れを自覚している現状では、認知・好感度・想起率を高める新しいアプローチが必要になっている。

  • 若者のクルマ離れの現状と、施策設計への影響
  • 主要7施策の特徴・費用感・若年層リーチ力の比較
  • トヨタ・レクサス・日産などの国内成功事例
  • ゲーム内広告・メタバース広告が自動車ブランドに適合する理由
  • 施策選定の評価指標と、自社に合った施策の選び方

自動車・モビリティ業界のマーケティング担当者・ブランド戦略室向けの解説記事です。

自動車・モビリティ業界が直面するブランド課題

若者のクルマ離れと自動車・モビリティ業界のブランド課題

若者のクルマ離れ、2025年に加速

自動車業界が若年層へのブランド体験設計を急ぐ背景には、クルマ離れの深刻化がある。株式会社KINTOが2025年2月に実施した「Z世代のクルマ離れ調査」(対象:都内・地方在住609名・18〜25歳・普通免許保有者)によると、都内Z世代の72.8%が「クルマ離れを感じる」と回答した。これは前年(2024年)比でなんと21.5ポイント増である。

(出典: 株式会社KINTO「2025年版 Z世代のクルマ離れ調査」、実施: 2025年2月18日〜21日)

項目

都内Z世代

地方Z世代

「クルマ離れを感じる」(2025年)

72.8%

46.7%

前年比増減

+21.5pt

+12.7pt

自分名義でクルマ所有(2025年)

42.1%

63.7%

サブスク検討意向(2025年)

92.0%(全体83.7%)

注目すべきは、クルマを「所有」することへの関心は下がる一方で、サブスクなど「体験・利用」への意向は9割超という逆転現象が起きている点だ。若年層は「クルマが嫌い」なのではなく、「所有形態が変わっている」と読むべきであり、これはブランド体験設計の大きなヒントになる。

テレビCMの若年層リーチ限界

自動車業界が長年使ってきたテレビCMは、中高年層には依然として有効だが、若年層へのリーチ効率は低下している。株式会社D2C「docomo data square」のデータ(2020年公開)によると、テレビCMの来店率増加効果は35歳以上が35歳未満の約2.6倍にのぼる。つまり若年層には届きにくい。

一方、デジタルOOH(屋外デジタルサイネージ)は35歳未満への来店率増加効果がテレビCM比で約5倍というデータもある。さらにテレビCMとデジタルOOHを組み合わせると、テレビCM単体比で約2.6倍の来店率向上が確認されている。

「テレビCMを打ちながら若年層認知も取る」という従来の発想から、「テレビCM + Z世代の可処分時間に入り込む施策」への転換が、現在の自動車・モビリティブランドに求められている。

主要施策7種の比較:費用・ターゲット・ブランド効果

自動車・モビリティ業界のブランド体験施策7種の費用・ターゲット比較

まず施策の全体像を俯瞰する。自動車・モビリティ業界でのブランド体験施策は大きく7タイプに分類できる。

施策タイプ

若年層リーチ

ブランド体験の深さ

費用感

継続性

向いている目的

テレビCM

△(35歳以上中心)

浅(一方向)

高(数千万〜)

単発

マス認知(中高年)

デジタルOOH

◎(若年層5倍効果)

中〜高

継続可

都市部若年層認知

ゲーム内広告

◎(Z世代の可処分時間17%)

中(没入体験中に接触)

低〜中(10万円〜)

継続可

嫌われない自然な認知形成

メタバース/バーチャル体験

◎(Z世代・α世代)

高(体験・参加型)

中(数百万〜)

単発〜

話題性・体験記憶の醸成

体験型施設

△〜○(立地次第)

最高(五感体験)

高(数千万〜)

継続

ライフスタイル訴求・非オーナー接触

SNSキャンペーン

◎(若年層)

中(UGC拡散)

低〜中

単発〜継続

エンゲージメント・バイラル

モビリティサービス連動

◎(カーシェア・サブスク利用層)

高(実際の利用体験)

継続

所有→体験転換、ファン化

このように、各施策は「ブランド体験の深さ」と「若年層リーチ力」「費用感」のバランスが異なる。次節から各施策の特徴と事例を詳しく見ていく。

施策別解説と国内成功事例

メタバース・バーチャル体験やゲーム内広告を活用した自動車ブランドの施策事例

1. メタバース・バーチャル空間:トヨタ・カローラの事例

バーチャル空間を活用したブランド体験は、リアルな試乗コストをかけずに若年層との接点をつくれる施策として自動車業界で注目されている。

トヨタ・カローラ × バーチャル渋谷(2022年10月)

カローラの主要所有者は50〜60代に偏っており、若年層へのリブランディングが急務だった。そこで2022年のバーチャル渋谷ハロウィーンイベントに出展。メタバース内に等身大の「カローラ スポーツ」3Dモデルを設置し、5種のフォトパネルでアバター撮影を提供。SNSシェア機能も実装した。

  • イベント参加者:32万人(全体)
  • 特設ワールド入場:約8,000人
  • コンテンツ満足度:74%が「満足」
  • カローラへの関心度:72%が「上がった」と回答

(出典: 電通デジタル ケーススタディ https://www.dentsudigital.co.jp/cases/1204-toyotaconiq-pro、実施: 2022年10月)

「試乗」という行動のハードルを下げ、「まず存在を知ってもらう・好きになってもらう」段階のブランド接点として設計した点が特徴的だ。SNSとの組み合わせで、クルマに興味を持ち始めたZ世代への第一印象形成に成功した事例と言える。

2. ゲーム内広告:Z世代の「可処分時間」に入り込む

Z世代の1日の可処分時間のうち17%がゲームに費やされている(生活者データドリブン、seikatsusha-ddm.com)。α世代ではさらに高く21%にのぼる。この時間帯に自然な形でブランドに接触できるのがゲーム内広告(サイネージ型)である。

ゲーム内広告は、ゲームのプレイ中断を求めるインタースティシャル型ではなく、ゲーム空間の看板・モニターに動画広告を表示するサイネージ型が主流になりつつある。プレイ体験を阻害しないため、好感度が高く保たれる。

同データによると、メタバースゲーム内広告への好感度は約7割。通常のWeb広告が強制視聴や中断を伴うものとは根本的に体験が異なる。

自動車ブランドの観点では、以下のような特性がある。

  • テレビCMの動画素材を流用できる:制作コストを抑えて若年層チャネルに転換できる
  • Z世代・α世代に継続的に接触できる:1週間単位での出稿が可能で認知を積み上げやすい
  • 「クルマに興味がない」若年層に自然にリーチできる:強制視聴ではなく体験の中での接触

自動車業界向けのゲーム内広告の具体的な効果事例は現時点で公式確認中だが、業界横断データとして広告想起率がWeb広告比約180%、視認率約140%(業界平均67%比)というデータが広告主の参考になる。(出典: Ad-Virtua公式サイト、確認日: 2026-04-10)

3. 体験型施設:レクサス「INTERSECT BY LEXUS」

課題:「レクサスはすごいけど、つまらないブランド」というイメージの変革

2013年、レクサスは青山にレストラン・ライフスタイルショップを備えた体験型施設「INTERSECT BY LEXUS」を開設した。「クルマを売る場所ではなく、ライフスタイルを売る場所」として設計した体験施設は、非オーナーへのブランド接点として機能した。

その後にスタートしたキャンペーン「AMAZING IN MOTION」開始後、「レクサスは格好良い」というネット言及が4倍に増加したとされる。(出典: amana insights https://insights.amana.jp/event/report/23098/)

体験型施設は初期投資が大きく、運営コストも発生するため、大手ブランドの施策として位置付けられる。一方でブランドの世界観を深く伝えられる点では他の施策に代えがたい価値がある。

4. モビリティサービス連動:KINTO・カーシェアでの体験化

「所有」よりも「利用・体験」へシフトするZ世代に対し、サブスクやカーシェアを通じた体験接点の提供が有効な施策になりつつある。

KINTOのサブスクサービスへの検討意向は都内Z世代で92.0%、全体で83.7%にのぼる(前掲KINTO調査、2025年)。「クルマを持つことへの第一歩」として、試乗よりも低いハードルでブランド体験を提供できるのがモビリティサービス連動の強みだ。

5. 共創・コラボ型施策:日産「DRIVE MYSELF PROJECT」

日産が2023年に実施した「DRIVE MYSELF PROJECT」は、Z世代とのブランドプロミス共創を目指した施策だ。「暮らし方のプロトタイピング」「移動体験アイデアソン」「身近な発明チャレンジ」の3施策を通じ、若者の創造性を活かした体験設計を行った。

製品を売るのではなく、ブランドの世界観・価値観への共感を引き出す体験として設計された点が特徴的。共創型施策は「ブランドに参加している」という当事者感を醸成し、長期的なロイヤルティ向上に寄与する。

6. SNS・デジタルコンテンツ:トヨタイムズの事例

自動車ブランドのオウンドメディアの中で、トヨタのコンテンツプラットフォーム「トヨタイムズ」は代表的な事例だ。クルマの機能訴求ではなく、「移動の価値・物語」を発信するオウンドメディアは、ブランドのファン化とSNSでの自発的な言及増加に貢献している。

7. デジタルOOH:若年層の通勤・外出時接点

デジタル屋外広告(DOOH)は、テレビCMと組み合わせることで若年層の来店率をテレビCM単体比約2.6倍に高めるというデータがある(前掲D2C調査、2020年)。都市部の駅・ショッピングモール・交通機関での露出は、スマートフォン利用が多い若年層の「移動中」という接触タイミングを捉えられる。

施策選定の評価指標

自動車・モビリティ業界でブランド体験施策を評価する際は、以下の指標を活用したい。

評価指標

施策タイプ

測定方法

広告想起率

ゲーム内広告・メタバース・TV

施策前後のブランドリフト調査

ブランドへの関心度変化

メタバース体験・施設

施策参加者アンケート(72%上昇の事例あり)

ネット言及量・ポジティブ率

施設・コラボ施策

ソーシャルリスニングツール(4倍増の事例あり)

若年層リーチ数・CTR

デジタルOOH・ゲーム内広告

媒体データ・アトリビューション分析

サブスク/試乗申込転換率

モビリティサービス連動

CVRトラッキング

エンゲージメント率(UGC)

SNS・共創施策

プラットフォーム分析

自動車ブランドにおけるブランド体験施策の成果は「即時の販売転換」よりも、「若年層との最初の感情的接点を作る」段階の指標で測るのが適切だ。関心度・好感度・想起率の変化を追うことで、将来的な購買・利用につながる基盤を評価できる。

こんな企業・ブランドに向いている施策

モビリティサービス・サブスクを活用したZ世代へのブランド体験施策に向いている企業タイプ

メタバース/バーチャル体験が向いている企業

  • 数百万円以上の予算を持つナショナルブランド(国内大手自動車メーカー・輸入車ブランド)
  • 若年層リブランディングに取り組んでいるブランド(40〜60代に偏ったオーナー層の若返りを目指している)
  • 話題性・PR効果を重視しているキャンペーン予算がある企業
  • SNSと組み合わせた拡散設計が可能な広報・マーケチームがある企業

メタバース/バーチャル体験が向いていない企業・ケース

  • 即時の商談・試乗予約獲得を主目的としているキャンペーン
  • デジタル施策に不慣れで運用リソースが不足している企業
  • 地域ディーラーレベルの予算感(数百万円未満)での施策検討

ゲーム内広告が向いている企業

  • 動画素材(テレビCMなど)をすでに持っているブランド(素材流用で追加制作費を抑えられる)
  • Z世代・α世代への継続的な認知形成を目指している企業
  • 「嫌われない広告接触」を重視しているブランド(好感度重視)
  • メタバースイベントよりも低コストでデジタル施策を試したい企業
  • 月次・週次で出稿管理できる運用体制がある担当者

ゲーム内広告が向いていない企業・ケース

  • 高齢層(50代以上)へのアプローチが主目的のキャンペーン
  • 今すぐ試乗・商談への直接転換を求めている短期施策
  • 動画素材が一切なく、クリエイティブ制作から始める必要があるケース

体験型施設・モビリティサービスが向いている企業

  • ライフスタイルブランドとしての認知を高めたい大手ブランド
  • オーナー以外への接点を長期的に確保したいプレミアムブランド
  • KINTOのようなサブスク・カーシェアサービスを運営または検討している企業

Ad-Virtuaが合う自動車・モビリティ企業の条件

自動車・モビリティ業界の施策選定において、ゲーム内広告(Ad-Virtua)が特に適合しやすい企業には、以下の共通点がある。

以下に当てはまる企業に適合しやすい:

  • テレビCMの動画素材を持っており、若年層チャネルへの横展開を検討している
  • Z世代(18〜25歳)・α世代(10代前半)への認知を積み上げたいが、強制視聴型広告では好感度が下がることを懸念している
  • 「モビリティの楽しさ・ブランドの存在」を若年層に自然に知ってもらう第一接点の設計として予算を割きたい
  • 最低10万円〜という出稿ハードルで試験的に若年層デジタル施策を始めたい
  • TVCM・OOHと並行して、ゲーム時間(Z世代の可処分時間17%)への露出を確保したい

Ad-Virtuaは国内400タイトル以上のゲームに広告配信ネットワークを持ち、ゲーム空間のサイネージ型広告として広告想起率はWebバナー比約180%(出典: Ad-Virtua公式サイト、確認日: 2026-04-10)のデータがある。テレビCMや大規模メタバースイベントと比べて初期コストを抑えつつ、Z世代の可処分時間に入り込む施策として機能する。

詳しくは ゲーム内広告とは?仕組み・種類・活用法を解説 をご覧ください。自動車・モビリティブランドでの活用イメージを相談したい場合は Ad-Virtuaへのお問い合わせ からどうぞ。

よくある疑問

Q1. テレビCMがある自動車ブランドでも、ゲーム内広告は必要ですか?

テレビCMは35歳以上への認知形成には有効ですが、Z世代・α世代へのリーチは弱い傾向があります。同じ動画素材をゲーム内広告に転用することで、追加のクリエイティブ制作なしにZ世代チャネルへの露出を確保できます。補完的に使うことで、ブランドの年齢層裾野を広げる施策になります。

Q2. メタバースイベントとゲーム内広告はどちらが先に取り組むべきですか?

メタバースイベントは費用規模が大きい(数百万円〜)のに対し、ゲーム内広告は10万円〜の少額から継続的に試せます。まずゲーム内広告で「Z世代に嫌われない形で継続接触を積み上げる」ことを基礎として、年間イベント施策としてメタバース体験を組み合わせる設計が現実的です。

Q3. 自動車ブランドのゲーム内広告の実績事例はありますか?

現時点(2026年4月)で自動車業界向けのAd-Virtua公式導入事例は公開情報として確認できていません。業界横断の広告効果データ(広告想起率180%・視認率140%等)はAd-Virtua公式サイトで公開されています。詳細な業界別事例については直接お問い合わせください。

Q4. 若者のクルマ離れに対してブランド体験施策は本当に効果がありますか?

「クルマ離れ」は「クルマへの興味がなくなった」わけではなく、「所有形態が変化した」と解釈するのが現在の調査データの示すところです(KINTO 2025年調査:サブスク検討意向83.7%)。ブランドへの関心度・好感度を高めておくことで、利用検討時の第一想起につながります。今すぐ買わない層への継続的なブランド体験設計が、将来の購買・利用を準備します。

Q5. 体験型施設やメタバースイベントは大手メーカーにしかできませんか?

規模の大きな施策は大手向けです。一方、ゲーム内広告・SNSキャンペーン・デジタルOOHはリーズナブルな予算から始められます。地域ディーラーや輸入車ブランドでも、デジタル施策の組み合わせで若年層へのブランド接触を設計できます。

まとめ

自動車・モビリティ業界のブランド体験施策は、「テレビCM一本足」から脱却し、Z世代の可処分時間に合わせた複数のデジタル接点を組み合わせる設計が現状の課題です。

都内Z世代の72.8%がクルマ離れを自覚し、サブスク利用意向は92%という現在のデータは、若年層が「クルマに関心がない」のではなく「接触方法・所有形態が変わった」ことを示しています。

施策の組み合わせとしては:

  1. 継続的なブランド接触の基礎:ゲーム内広告(低コスト・Z世代の可処分時間17%に自然接触)
  2. 年間イベント施策:メタバース/バーチャル体験(話題性・深いブランド体験)
  3. ライフスタイル訴求の拠点:体験型施設(大手ブランドの長期投資)
  4. 利用体験への転換:モビリティサービス連動(サブスク・カーシェア)

という階層設計が有効です。

まずは自社ブランドのターゲット年齢層と予算規模に合わせて、「どの施策から試すか」を決めることが第一歩です。

ゲーム内広告・メタバース広告の費用感と効果を詳しく知りたい方は ゲーム内広告の費用・料金相場 をご覧ください。施策設計の相談は Ad-Virtua お問い合わせフォーム よりお気軽にどうぞ。