食品・飲料のブランドリフト調査は、広告に接触した人と接触していない人の意識差を数値化し、認知度・好意度・購入意向の変化を可視化する手法です。本記事では、業界特有の設問設計、調査方法の比較、2026年の主流となったインクリメンタリティ重視の測定設計、そして調査結果を次の施策に活かす実務手順をまとめます。
ブランドリフト調査とは|食品・飲料業界で重要な理由
ブランドリフト調査は、広告やキャンペーンに接触した「テストグループ」と接触していない「コントロールグループ」に同一のアンケートを実施し、認知度・広告想起率・好意度・購入意向などの差分(リフト値)を算出する効果測定手法です。
クリック率や売上では捉えにくい「心理的な変化」を可視化できるため、テレビCM・デジタル広告・ゲーム内広告といった多様な媒体を横断して効果を比較できます。広告の基礎については「広告とは?意味・種類・効果・媒体選びをわかりやすく解説」もあわせてご確認ください。
食品・飲料の場合、購買サイクルは短いものの、購買決定は「いつも選びたい」「家族に安心して勧められる」といった情緒的な評価で決まる傾向が強い商材です。売上データだけでは見えない「次に買いたい」という心理段階を測定できる点に、ブランドリフト調査の価値があります。

調査の基本フロー(5ステップ)
ブランドリフト調査は次の5ステップで進めます。
- 調査設計:測定したい指標と質問項目を決定(認知度・想起率・好意度・購入意向など)
- サンプル抽出:広告接触者と非接触者をランダムに割付(バイアス排除が肝心)
- アンケート実施:インバナーサーベイ、モニタ調査、もしくは実験ベース設計で回答収集
- データ分析:リフト値の算出と統計的検証(信頼区間・有意差の確認)
- 施策改善:結果を次のキャンペーン・媒体配分・クリエイティブに反映
調査期間はキャンペーン規模により1〜4週間程度が一般的です。新商品ローンチでは、配信開始直後と終了後の2回測定で時系列変化を捉えるケースが増えています。
食品・飲料のブランドリフト調査で測る5つの指標
業界共通のリフト指標に加え、食品・飲料では「味」「安心」「定番性」を捉える設問の追加が欠かせません。指標を整理すると次の5つに集約できます。
指標 | 内容 | 主な設問例 |
|---|---|---|
広告想起率 | 広告を見たことを覚えているか | 「最近この商品の広告を見ましたか?」 |
ブランド認知度 | ブランド名を知っているか | 「次のブランドを知っていますか?」 |
好意度 | ブランドに好感を持つか | 「このブランドに好感を持ちますか?」 |
購入意向 | 次に買いたいと思うか | 「次回購入時にこのブランドを選びますか?」 |
推奨意向(NPS的指標) | 他者に勧めたいか | 「家族・友人に勧めたいですか?」 |
食品・飲料の場合、これに加えて「味への期待感」「品質・安全性への信頼」「定番性(いつも選ぶ位置づけ)」を測ることで、長期的なブランドロイヤルティに直結する設計になります。指標の使い分けについては「ゲーム内広告のブランドリフト効果|業種別の広告想起率・好感度・購買意向データと効果設計ガイド」でも業種別の参考値を解説しています。

設問設計のポイント|業界特有の3つの心理を捉える
食品・飲料のブランドリフト調査では、業界特有の購買決定要因に踏み込んだ設問設計が成果を分けます。ここでは「味への期待感」「安心・信頼感」「定番感・習慣化」の3軸でテンプレートを示します。
1. 「味への期待感」を測る設問例
味は食品・飲料の最大の購買決定要因です。広告クリエイティブが視覚・聴覚を通じて味覚的な魅力を伝えられたかを検証します。
- 「この商品はおいしそうだと思いますか?」(5段階評価)
- 「この商品の味を試してみたいと思いますか?」(はい/いいえ/わからない)
- 「この商品にどのような味を期待しますか?」(選択肢または自由記述)
2. 「安心・信頼感」を測る設問例
健康志向の高まりで、原材料・製造プロセス・企業姿勢への関心が強まっています。特に子ども向け・家族向け商材では、安心感の指標が購買に直結します。
- 「このブランドは安心できると思いますか?」(5段階評価)
- 「このブランドの品質を信頼していますか?」(5段階評価)
- 「このブランドは家族に安心して勧められますか?」(はい/いいえ/わからない)
3. 「定番感・習慣化」を測る設問例
食品・飲料は反復購買が前提の商材です。「いつも選ぶブランド」として定着できているかを測ることで、第一想起獲得とロイヤルティ強化の打ち手を判断できます。
- 「このブランドを日常的に選びたいと思いますか?」(5段階評価)
- 「このブランドは定番として信頼できると思いますか?」(5段階評価)
- 「このブランドを家族や友人に勧めたいと思いますか?」(5段階評価)
調査方法の比較|インバナーサーベイ/モニタ調査/実験ベース設計
2026年現在、食品・飲料メーカーが採用する調査方法は大きく3系統に分かれます。それぞれの特徴を比較します。
調査手法 | 主な実施場所 | 設計の自由度 | サンプル規模 | 費用感 | 強み | 弱み |
|---|---|---|---|---|---|---|
インバナーサーベイ | YouTube/Meta/LINE等の広告配信面 | 低(プラットフォーム規定) | 中(数千) | 数十万円〜 | 接触直後の回答でリアルタイム測定 | 設問数・分岐が限定的 |
モニタ調査 | リサーチ会社の登録モニタ | 高(自由設計) | 大(数千〜数万) | 数十〜数百万円 | 詳細分析・業界特化設問が可能 | 期間1〜2週間、想起バイアスに注意 |
実験ベース(テスト/コントロール) | 配信プラットフォームのランダム割付 | 中 | 大 | プラットフォーム機能に準ずる | 因果性が担保されゴールドスタンダードに近い | 媒体側が機能提供している必要 |
実験ベース設計は、広告業界団体IABが「因果関係を示すための望ましい設計」として位置付けており、2026年に入り採用が広がっています。広告主が同一の対象集団をランダムに分割するため、季節要因・属性偏りの影響を最小化できる点が支持されています。
どの方法を選ぶか
- 新商品の認知拡大を素早く把握したい → インバナーサーベイ
- 業界特有の深い消費者心理を読み解きたい → モニタ調査
- 稟議・経営報告で因果性を示したい → 実験ベース(テスト/コントロール)
ゲーム内広告では実験ベースに近い設計を組みやすく、配信タイトルや時間帯で接触群・非接触群を切り分けてリフト値を算出できます。詳しくは「ゲーム内広告のブランドリフト効果測定ガイド|広告想起率・好感度を第三者調査で証明する方法」をご覧ください。

2026年の最新トレンド|インクリメンタリティ重視への移行
2026年の食品・飲料広告では、ブランドリフト調査の「次の段階」としてインクリメンタリティ(増分効果)の測定が標準化しつつあります。Digiday × Circanaの2025年調査では、CPGマーケターの52%が「インクリメンタル売上/セールスリフトを重要KPI」に挙げています(出典:Digiday × Circana, 2025)。
ブランドリフトとインクリメンタリティの違い
観点 | ブランドリフト調査 | インクリメンタリティ測定 |
|---|---|---|
測る対象 | 認知・想起・好意・購入意向の心理変化 | 売上・来店・指名検索などの行動変化 |
必要なデータ | アンケート回答 | 売上・POS・検索ログ・行動ログ |
評価のしやすさ | 短期で測れる | 中期で因果性まで含めて測れる |
経営報告での説得力 | 中(心理指標は理解されにくい場合あり) | 高(売上貢献を金額換算可能) |
両者は対立する手法ではなく、心理変化(ブランドリフト)→行動変化(インクリメンタリティ)→売上という連鎖を捉える「層構造」として組み合わせて使うのが2026年の主流です。実務手順は「ゲーム内広告のインクリメンタルリフト測定ガイド|食品・飲料メーカーの実験設計と稟議根拠の作り方」で詳しく解説しています。
接触回数・タイミングの設計
調査精度は接触回数(フリークエンシー)と調査タイミングに大きく左右されます。
- フリークエンシー別の効果差:1回接触では認知止まり、3〜5回で好意度・購入意向が伸びる傾向。商材により最適点は異なるため、接触回数別グループで分析するのが鉄則
- 調査タイミング:キャンペーン開始直後と終了後の2回測定で時系列変化を追跡
- 競合動向・季節要因:飲料の夏商戦・冬商戦など、外部要因を考慮した期間設定

調査結果を活かす次の施策|ゲーム内広告との連携
ブランドリフト調査で「認知は取れたが、若年層・特にZ世代男性の想起率が伸びない」という結果が出るケースは食品・飲料で頻発します。テレビCMで広く取りに行きやすい一方、ゲーム視聴・配信視聴に時間が流れた若年男性層には届きにくい構造です。
このギャップを埋める追加接触として有効なのが、ゲーム空間内の看板・モニターに動画広告を流す「ゲーム内広告」です。ゲーム内広告の仕組みや種類は「ゲーム内広告とは?仕組み・種類・効果・費用を徹底解説【2026年版】」をご参照ください。
Ad-Virtuaの主な特長
指標 | Ad-Virtuaの実績 | 他Web広告平均 |
|---|---|---|
広告想起率 | 48%(誘導想起58%) | 33% |
視認率 | 最大96% | 67% |
注目度(1,000imp当たり) | 約29分 | 17.5分 |
好感度 | 約85% | — |
CPM | 約300円 | 約500円 |
※出典:Ad-Virtua公式
Z世代のゲームプレイ率は約80%、1日のプレイ時間は約100分にのぼり、可処分時間の中心にゲームがあります。男女比は男性64%・女性36%で、男性リーチに課題を持つ食品・飲料商材と相性が良い設計です。食品・飲料での具体的な使い方は「食品・飲料メーカーのゲーム内広告 活用ガイド|若年層リーチ・ブランドリフト・ROI設計の実践法」、プレイブック型の総合資料は「FMCGメーカーのゲーム内広告活用プレイブック」で整理しています。

こんな企業におすすめ/おすすめしない企業
ブランドリフト調査の実施をおすすめする企業
- TVCMやデジタル広告に年間1,000万円以上を投じているが、効果が売上指標だけでしか語れない食品・飲料メーカー
- 新商品ローンチに向け、認知・好意度の積み上がりを稟議に示したいマーケティング部門
- 若年層・ファミリー層への接点強化を検討しているナショナルブランド
- TVCMから一段踏み込んで、媒体別の貢献度を可視化したい広告主
必ずしも適さない企業
- 月間広告予算が数十万円規模で、調査費用がROIを圧迫する規模感の企業
- 認知度がすでに飽和しており、リフト幅を取りにくいシェアトップブランド(→ロイヤルティ・LTV指標の方が示唆を得やすい)
- 短期売上のみを評価指標としており、心理指標を意思決定に組み込まない営業主導型の組織
リフト調査が予算的に重い場合は、まず媒体KPI(視認率・想起率の媒体側ベンチマーク)から効果を推定し、本調査は主要キャンペーンに絞る進め方が現実的です。
よくある質問(FAQ)
Q. ブランドリフト調査の費用感は? A. インバナーサーベイで数十万円〜、リサーチ会社のモニタ調査で数十万〜数百万円が一般的です。サンプル数・設問数・期間で変動します。
Q. テレビCMでもブランドリフト調査はできますか? A. 可能です。TVCM接触者・非接触者をモニタ調査でスクリーニングして比較する方法が主流で、視聴ログとパネル調査を組み合わせるサービスも増えています。詳しくは「テレビCMのブランドリフト測定:調査設計と読み解き」をご覧ください。
Q. ブランドリフト調査とインクリメンタリティ測定はどちらを優先すべきですか? A. 認知・好意度を取りに行くキャンペーンならブランドリフト調査、売上・指名検索などの行動成果まで含めて評価したいならインクリメンタリティ測定です。実務では両方を組み合わせ、心理→行動→売上の連鎖で評価するのが2026年の主流です。
Q. リフト値はどのくらいあれば「成功」と判断できますか? A. 一般的には統計的に有意(信頼区間が0を跨がない)であることが第一条件です。指標別の目安としては、広告想起率+5pt、ブランド認知度+3pt、購入意向+2ptあたりが食品・飲料の参考水準として語られることが多いですが、商材・既知度・予算規模によって大きく変動します。
Q. ゲーム内広告でもブランドリフト調査はできますか? A. はい、第三者調査会社経由でテスト群・コントロール群を分けたリフト測定が可能です。配信タイトル・配信時間で接触群を切り分けやすい媒体特性があるため、実験ベース設計と相性が良い手法です。
まとめ
食品・飲料業界のブランドリフト調査は、広告投資の効果を可視化し、次の打ち手につなげるための基盤です。業界特有の「味への期待感」「安心・信頼感」「定番感」を捉えた設問設計、目的に合った調査方法の選択、そして2026年の主流である実験ベース×インクリメンタリティの組み合わせを押さえることで、稟議に耐えうる効果検証が可能になります。
調査結果を踏まえて「若年層・男性層への接触不足」が課題として浮かんだ場合、ゲーム内広告は補完媒体として有力な選択肢です。アドバーチャでは、調査設計から広告配信、効果測定までを一気通貫で支援しています。設問設計・媒体選定にお悩みの方は、アドバーチャまでお気軽にご相談ください。


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