ミストプレイ(Mistplay)は、モバイルゲームを遊んだ時間や進み具合に応じてユーザーに報酬を払う「遊んで稼ぐ」型のリワード広告を手がける、カナダ・モントリオールの企業です。日本ではゲームアプリのユーザー獲得と、ポイントを持つアプリの収益化にはすでに使えますが、食品や日用品のようなゲーム以外のブランドが広告を出す媒体ではありません。認知を目的とするなら、別の手段と組み合わせて考えることになります。

発表の内容

スマートフォンでモバイルゲームのアプリを操作する男性

2026年、ミストプレイは買収と新サービスの発表を続けました。中心になったのは、2026年5月14日に発表した「ミストプレイ・オーディエンス・ネットワーク(Mistplay Audience Network)」です(出典: PR Newswire 2026年5月14日リリース)。

オーディエンス・ネットワークは、自社アプリの広告枠に、買収した2社の広告枠を合わせたものです。広告主のキャンペーンを、ミストプレイの外にある他社アプリにも配信します。

  • 配信先の地域: 北米・欧州・アジア
  • 配信先アプリの業種: 金融、ショッピング、燃料、コンビニ、飲食
  • リーチ: リリースでは「数千万MAU(月間アクティブユーザー)」、公式サイトでは「追加で4,000万MAU超」と書かれています。どちらも公式の表記で、正確な値は公表されていません(出典: 公式サイト)
  • お披露目: 業界イベント「MAU Vegas 2026」(2026年5月19〜21日)

CEOのトリシア・ハン(Tricia Han)氏は、リリースで「これらすべてを統合することで、プラットフォーム全体でより強い成果を出せるようになる」と述べています。

2026年の主な発表は次のとおりです。

日付

発表

出典

2026年1月20日

モビビティ(Mobivity)から「コネクテッド・リワーズ(Connected Rewards)」を買収することで最終合意。金額は非開示

PR Newswire

2026年3月4日

新しい報酬設計「プレイタイム・イベント(Playtime Events)」を発表

公式ブログ

2026年3月30日

コネクテッド・リワーズの買収が完了

Newswire.ca

2026年5月4日

MAFの子会社マイチップス(MyChips SRL)を買収。金額は非開示

PR Newswire

2026年5月14日

ミストプレイ・オーディエンス・ネットワークを発表

PR Newswire

2026年7月21日

iPhone版アプリの日本での提供開始を告知し、日本市場レポートを公開

公式ブログ

2026年8月20日

米ガソリンスタンドチェーンのシンクレア・オイル(Sinclair Oil)の事例を発表

公式事例

2026年9月8日

新しいCFO(最高財務責任者)の就任を発表(9月1日付)

PR Newswire

コネクテッド・リワーズは、ゲームを遊ぶと小売・飲食・コンビニの実店舗で使える特典がもらえる仕組みです。マイチップスは、プレイ時間に報酬を払うオファーウォール(報酬付きの案件を一覧で並べる画面)で、北米・アジア太平洋・欧州の「数百のアプリ」で動いています。マイチップスについてMAF側は「iOSで初めてプレイ時間報酬を取り入れたオファーウォール」「従来の手法より最大20%高いeCPM(1,000回表示あたりの収益)」と説明していますが、どちらもMAFの主張です。

Mistplayとはどんな会社か

Mistplayのロゴ(ドット状のシンボルと英字の社名)
出典: Mistplay(

基本情報

項目

内容

設立

2015年

本社

カナダ・ケベック州モントリオール

創業者

アンリ・マシャラニ(Henri Machalani)氏、ユージーン・ジョアニデス(Eugene Joannides)氏

アプリの提供開始

2017年(同社は「最初のplay-and-earnプラットフォーム」と称している)

出資者

グロース・カーブ・キャピタル(Growth Curve Capital)。2021年から

経営陣

CEO トリシア・ハン氏をはじめ、CFO・CCO・CPO・CTOなど9人

従業員数

非公開

展開市場

9つの主要市場(国名の一覧は非公開)

出典: 公式サイト About、各リリースの会社概要

同社が「遊んで稼ぐ」の先駆けとした起点の年は、トップページでは2016年、シンクレア・オイルのリリースでは2015年、Aboutページではアプリを出した2017年と、公式の中でも書き方が分かれています。この記事では、設立を2015年、アプリの提供開始を2017年として扱います。

広告がユーザーに届く仕組み

ミストプレイの広告主は、主にゲームアプリの会社です。新しいプレイヤーを獲得する(UA: ユーザー獲得)ために出稿します。ゲーム内の看板に広告を出す形でも、ゲームの合間に動画を流す形でもありません。「このゲームを遊ぶと報酬がもらえる」という案件そのものが広告になります。

  1. 広告主が「レベル10到達」「7日目まで継続」などの到達イベントと単価を決める
  2. 案件が配信面に並ぶ。配信面はミストプレイのアプリ、ロイヤルティプレイ(後述)を組み込んだ他社アプリ、オーディエンス・ネットワークの3つ
  3. ユーザーはゲームをインストールして遊び、プレイ時間やイベントの達成に応じてポイントを受け取る。ミストプレイのアプリでは、ポイント(Units)をギフトカードなどに交換できる
  4. 広告主はインストール数ではなく、継続率やD7/D30 ROAS(インストールから7日目・30日目までの広告費用対効果)で成果を測る
ゲームのプレイ画面に「Zenflowを遊んで1.70ドル獲得(上限2.00ドル)」という報酬の進み具合が重なって表示されたMistplayのイメージ
出典: Mistplay(

プロダクト一覧

プロダクト

使う側

内容

主な公表値

ミストプレイ(Android/iPhone)

ゲームアプリの広告主

自社アプリでゲームを紹介し、プレイ時間とゲーム内イベントに報酬を払う。iPhone版は手動のCPI(インストール単価)入札から始まり、tROAS(目標ROAS)入札は「今後対応」

累計2,000万ダウンロード超、MAU 800万

ロイヤルティプレイ(LoyaltyPlay)

ポイントを持つアプリの運営会社、小売、ブランド

自社のアプリやポイントプログラムにゲームの報酬画面を組み込み、ユーザーは自社のポイント・クーポン・燃料割引を受け取る

燃料・コンビニの小売20社超。2025年にコンビニ客へのインプレッション10億超

オーディエンス・ネットワーク

ゲームアプリの広告主

他社アプリにも配信を広げる。キャンペーンは1本で運用でき、配信元ごとの入札も選べる。年齢・プラットフォーム・地域で絞り込める

追加リーチ4,000万MAU超(公式サイト。リリースでは「数千万MAU」)

HEX

ゲーム開発会社

ゲームに組み込むSDK。プレイヤーがそのゲーム内でポイントを貯め、ミストプレイをインストールすると交換できる。開発会社にはCPIで収益が入る

1ユーザーあたり最大200 Units

プレイタイム・イベント

ゲームアプリの広告主

プレイ時間の区切りとゲーム内イベントのボーナスを組み合わせる報酬設計

テストで平均プレイ時間が最大30%増、D30 ROASが最大20%増

出典: iPhone版、ロイヤルティプレイ、燃料・コンビニ向け、オーディエンス・ネットワーク、HEX、プレイタイム・イベント。累計ダウンロード数とMAUはGAME FUTURE SUMMIT 2026の記事による(時点の記載なし)

「あなたのゲームを遊んで200獲得」と表示されたMistplay Unitsの報酬画面
出典: Mistplay(

ロイヤルティプレイの位置づけ

日本の広告主にとって関係が深いのは、ロイヤルティプレイです。ポイントサイトや金融アプリ、ガソリンスタンドのアプリなど、他社のアプリにミストプレイのゲーム案件を組み込みます。公式の説明では、ユーザーに渡す報酬の原資はゲームの広告主が払う広告費でまかなわれ、組み込む側のアプリは原資を負担しません。導入の条件として挙げられているのは「アプリ内通貨(ポイント)があること」だけです。

公式サイトは効果として「特典利用率が最大35倍」「初回利用後の来店頻度が最大2.5倍」「収益が最大2倍」を挙げています。いずれも「最大」の値です。

組み込む側から見ると、ゲーム会社の広告費を自社ポイントに変えてユーザーに渡し、自社アプリの利用や来店を増やす仕組みと言えます。2026年に買収したコネクテッド・リワーズも、このロイヤルティプレイに統合されました。

規模と業界での評価

公表されている規模の数値は、時点や数え方がそろっていません。GAME FUTURE SUMMIT 2026の記事では「ミストプレイのアプリとロイヤルティプレイの導入先アプリを合わせて、全世界で4,000万人のアクティブユーザー」とされています。2024年10月の事例記事には「全世界のMAU 200万人超」とありますが、数え方が違うため、今の数値と並べて伸び率を出すことはできません。

同社がAboutページとトップページに載せている外部の評価は次のとおりです。

  • 2019年: マクリーンズ(Maclean's)によるカナダの急成長スタートアップで36位
  • 2025年: デロイトの「Technology Fast 50」で5位
  • 2025年: アップスフライヤー(AppsFlyer)の「Performance Index」でゲーム総合10位。シンギュラー(Singular)の「Top media source」
  • 2026年: アップスフライヤーのiOS版指標でゲーム北米7位、Android版指標でゲーム日本・韓国8位

主要パートナーと計測

トップページには顧客として、ブリザード(Blizzard)、ロビオ(Rovio)、センチュリー・ゲームズ(Century Games)、タップネーション(TapNation)などのゲーム会社と、シェブロン(Chevron)、ゴーマート(GoMart)、チェッカーズ・アンド・ラリーズ(Checkers and Rally's)、モッピー、ANA Xなどの小売・ポイント事業者のロゴが並びます。公式サイトの事例はおよそ60件あります。

計測については、iPhone版のページに「広告主がトラッキングリンクを提出する」とだけ書かれています。アップスフライヤーやシンギュラーの指標に載っていることから、これらの計測ツールで成果が測られていることは分かりますが、公式の計測パートナーとしての記載はありません。

ここまでの歩み

ミストプレイが本社を置くカナダ・モントリオールの街並み

資金調達の振り返り

ミストプレイは資金調達をほとんど公表していない会社です。公式情報で確認できるのは1件だけです。

時期

ラウンド

金額

出資者

確認状況

2021年

非公表

非公開

グロース・カーブ・キャピタル

公式サイトとリリースの会社概要に「backed by Growth Curve Capital」とある。ラウンド名・持分は記載なし

公式のニュースルームに資金調達のリリースはなく、2021年より前の調達、累計調達額は確認できませんでした。日本企業が出資者に入っているという情報も見当たりません。「backed by」という表記だけでは、少数出資なのか過半数の取得なのかも判断できません。

調達額が公表されていないため、市場からの評価は、外部のランキングと事業の動きから読むことになります。2021年の出資のあと、2025年にデロイトの急成長企業ランキングで5位に入り、2026年には金額非開示で2社を買収しました。買収の資金をどう用意したかは公表されていません。

事業の歩み

時期

出来事

2015年

マシャラニ氏とジョアニデス氏がモントリオールで創業

2017年

Android版アプリを提供開始。ゲームのプレイに報酬を払う自社アプリが事業の起点になる

2019年

マクリーンズの急成長スタートアップ36位

2021年

グロース・カーブ・キャピタルが出資

2025年

ロイヤルティプレイの製品群をそろえる。自社アプリの外へ仕組みを貸し出し始める

2025年5月

ANA Xが「ANA Pocket」にロイヤルティプレイを導入(日本で確認できる最初の導入例)

2025年11月

韓国のカカオペイ(Kakao Pay)が導入。シンクレア・オイルも運用を始める

2026年1〜5月

コネクテッド・リワーズとマイチップスを買収し、オーディエンス・ネットワークにまとめる

2026年7月

iPhone版の日本提供を告知

2026年9月

新CFOが就任

2026年10月

東京のGAME FUTURE SUMMIT 2026(主催: MOTTO)に出展・登壇

自社アプリだけの広告媒体だった時期から、2025年に他社アプリへ仕組みを貸し出す形に広がり、2026年に買収で配信先と実店舗の特典を取り込んだ、という順序です。オーディエンス・ネットワークは、この広がりを広告主が一つの窓口で使えるようにしたものにあたります。

新CFOのコリン・ルーシル(Colin Roussil)氏は、前職のリフトオフ・モバイル(Liftoff Mobile)で4年以上にわたり戦略財務を担い、2025年のジェネラル・アトランティック(General Atlantic)からの出資と上場準備に関わった人物です。その前はアクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)に6年在籍していました。ハン氏は就任発表で「ミストプレイはこの1年で大きく成長し、事業の規模も複雑さも増した」とコメントしています。ミストプレイ自身が上場を予定しているかどうかは公表されていません。

撤退やサービス終了は、公式情報では確認できませんでした。Aboutページの経営陣一覧には創業者2人の名前がありませんが、退任の時期は公表されていません。

広告出稿事例

以下の効果の数値は、どれもミストプレイが公表したものです。何と比べた数値かが明示されていないものもあります。

シンクレア・オイル(米国・ガソリンスタンド)

シンクレア・オイルは、米国30州以上に1,900か所超のスタンドを持つ燃料ブランドです。決済とポイントのアプリ「ダイノペイ(DINOPAY)」にロイヤルティプレイを組み込みました。会員は来店と来店のあいだにゲームを遊んで燃料の割引を貯め、スタンドで使います。給油などの購入をしなくても、初日から割引を貯められます。

  • 期間: 2025年11月〜2026年6月
  • 高エンゲージ会員の来店: 42%増
  • 特典の利用に紐づく給油購入: 9.7%増
  • ゲームに参加した顧客の再来店: 1.7%早まった
  • 最初の6か月で、月間アクティブ会員の13%が参加

シンクレア・オイルのロイヤルティ・マーケティング担当マネージャー、ニック・ゴーガー(Nick Gauger)氏は「ロイヤルティプレイは、再来店とエンゲージメントを高める説得力のある手段になった」とコメントしています(出典: 公式事例)。

シンクレア・オイルの決済アプリ「DINOPAY」に「モノポリーGOを遊んで1ガロンあたり10セント割引」の特典が表示された画面
出典: Mistplay(

燃料・コンビニ向けのページには「ゲームを遊んだ顧客は最大44%早く再来店」という別の数値もあります。こちらは2025〜2026年の燃料・コンビニ全体のデータで、シンクレア・オイルの1.7%とは別の指標です。

ANA X(日本・ANA Pocket)

ANAグループのANA Xが運営する「ANA Pocket」は、移動でポイントが貯まり、ガチャで「ANAのマイル」などに交換できるアプリです。2025年5月からロイヤルティプレイを導入し、ユーザー向けには「ゲームボーナス」という名前で提供しています。導入していた他社のオファーウォールと並べて運用しています。

効果は「目標収益に対する進捗率145%」でした。ANA X ライフバリュー事業部 ANA Pocketチームの入内島さくら氏は「目標収益に対して、145%の進捗率を生み出すことができ、当社の新たな収益源として大きく貢献いただいております」とコメントしています(出典: 公式事例・日本語版)。

ANA Xのロゴと「ANA Pocket」アプリのポイント画面を並べた事例バナー
出典: Mistplay(

モッピー(日本・株式会社セレス)

ポイントサイト「モッピー」は2005年に始まり、累計会員1,200万人、アプリのダウンロード数470万以上です(いずれも事例ページの記載)。複数のオファーウォールに加えてロイヤルティプレイを導入し、導入の決め手は「プレイミッション広告(プレイタイムリワード広告)」だったとしています。

導入から半年で売上は4倍になり、ほかのオファーウォールの売上は下がっていません。セレス ポイントメディア事業部 マネージャーの坂下昌範氏は「導入初月から期待を超える売上が出ました」と述べています(出典: 公式事例・日本語版)。

セレスのロゴサインの前に並ぶ2人(モッピー事例の公式バナー)
出典: Mistplay(

ANA Xとモッピーは、どちらも広告を出す側ではなく、ゲーム案件を自社アプリに載せて収益を得る側です。

カカオペイ(韓国・金融アプリ)

カカオペイは2025年11月、アプリの特典タブにロイヤルティプレイのオファーウォールを入れました。その後、特典のメイン画面、歩数計、毎日のチェックインの3画面にも、アプリの画面になじむ形式で広げています(出典: 公式事例)。

  • ロイヤルティプレイのオファーウォール収益(全配置の合計): 2か月で474%増
  • 中心となるオファーウォールの収益: 84.8%増
  • eCPM: 37.7%増
  • 12月の収益のうち、新しく足した配置が占めた割合: 67.8%
Kakao Payのロゴと、アプリ内の「お金を稼ぐゲームミッション」にLoyaltyPlayのゲーム案件が並ぶスマートフォン画面
出典: Mistplay(

ビットマンゴー(パズルゲーム・iPhone版)

ビットマンゴー(BitMango)は「Bubble Pop Origin!」のiOS向けキャンペーンで、インストール数ではなくゲーム内のイベントで配信を最適化しました。ほかの主要なiOS向けユーザー獲得ネットワークの平均と比べ、7日目までにレベル100に到達した割合は4.3倍、D7 ROASは2.5倍でした(出典: 公式事例)。

ツリープラ(ゲーム会社・Android版)

ツリープラ(Treeplla)は韓国のネプチューン(Neptune)の子会社で、「Cat Snack Bar」の米国でのユーザー獲得にミストプレイを使いました。AIによるtROAS入札で、2024年上半期にほかの媒体と比べてD7のARPU(1ユーザーあたりの売上)が20%増、7日目の継続率が100%増、30日目の継続率が70%増でした(出典: 公式事例)。

Treepllaのモバイルゲーム「Cat Snack Bar」のゲーム画面にTREEPLLAの文字を重ねた事例バナー
出典: Mistplay(

そのほかの公表事例

企業

使った製品

公表されている効果

ネットマーブル「Seven Knights Re:BIRTH」(日本を含むグローバル展開)

ミストプレイ(tROAS)

展開から1か月で継続プレイヤーが約10%増

ケイブダック(Caveduck、AIキャラクターとのチャット。米・韓・日で80万ユーザー超)

ロイヤルティプレイ(Web版)

収益134%増、ARPDAU(1日のアクティブユーザーあたり収益)66%増

ゴーマート(米国のコンビニ)

ロイヤルティプレイ

特典利用率85%、月間アクティブユーザーの34%に到達

チェッカーズ・アンド・ラリーズ(米国のファストフード)

ロイヤルティプレイ

離れていた客の再エンゲージメント54%

タップネーション(3タイトル)/ミッドナイト・ゲームズ(Midnite Games)

オーディエンス・ネットワーク

ROAS 130%/ROAS 170%

なぜこの動きが起きたのか

ミストプレイが重視している指標は、一貫してプレイ時間です。成長プロダクト担当VPのフランチェスカ・レダヴィッド(Francesca ReDavid)氏は、プレイタイム・イベントの発表で「リワード型プラットフォームでは、プレイ時間が今もゲーム会社の成功を示す先行指標だ」と述べています。インストールしてすぐやめるユーザーではなく、長く遊んで課金するユーザーを集めたいゲーム会社にとって、プレイ時間に報酬を払う設計は成果と結びつけやすいと考えられます。

ただ、自社アプリだけでは、届くユーザーの数に上限があります。そこで、ポイントを持つ他社アプリに仕組みを貸し出し(ロイヤルティプレイ)、オファーウォールの配信先(マイチップス)を買い足して、広告主が使える配信先を増やした、という流れと読めます。

もう一つの流れは、実店舗への広がりです。コネクテッド・リワーズの売り手、モビビティのCRO(最高収益責任者)キム・カールソン(Kim Carlson)氏は「デジタル上の接点をリアルな行動につなげることに注力してきた」と述べ、ハン氏は買収完了時に「デジタル上の行動を、測定できるロイヤルティと成長に変えるまったく新しい道が開ける」とコメントしています。ゲーム会社の広告費を、ガソリンスタンドや飲食店の来店につなげる形です。

日本市場ではどうか

日本の駅のホームに停車する通勤電車

ミストプレイは、すでに日本で事業をしています。

  • iPhone版アプリは米国・カナダ・日本で提供中。2026年7月21日の公式ブログで日本での提供を告知した(正式な開始日は記載なし)
  • ロイヤルティプレイは、モッピーとANA Pocketで動いている
  • Android版は、2026年のアップスフライヤーの指標でゲーム日本・韓国8位に入っており、日本での配信実績がある
  • 日本担当の営業責任者とアカウントエグゼクティブを置いている。日本法人の有無は公表されていない

同社の日本市場レポート(2026年7月21日、同社調べ)では、日本のプレイヤーの79%が「同じようなゲームなら報酬のある方を選ぶ」、81%が「報酬の価値が同じなら、タスク型のポイントアプリよりゲームで稼ぐ方を好む」と答えています。アジア太平洋地域のゼネラルマネージャー、スージー・キム(Suzie Kim)氏は「日本は、APACにとっても世界の業界にとっても、最優先の成長エンジンであり続けている」と述べています。

一方で、食品・日用品・外食のように、ゲーム以外の商品を売るブランドがミストプレイに広告を出す形は用意されていません。ブランドがこの仕組みを使うなら、自社アプリにロイヤルティプレイを組み込んで、配信先の側になる形になります。シンクレア・オイルのような実店舗向けの特典(コネクテッド・リワーズ)を日本で提供しているかは公表されていません。また、公表されている指標は来店、再訪、アプリの収益で、認知やブランドリフトの数値は出ていません。

日本で同じ広告を実施する選択肢

日本の広告主がゲームの接点を使う場合、目的によって選ぶ手段が分かれます。

  • 自社のゲームアプリのユーザーを増やしたい: ミストプレイ(iPhone版・Android版)をそのまま使える
  • ポイントのある自社アプリの利用や来店を増やしたい: ロイヤルティプレイの導入を検討できる
  • 自社アプリがなく、ゲームを遊ぶ人に商品やブランドを知ってもらいたい: ゲーム空間の看板やモニターに広告を出す、ゲーム内広告が選択肢になる

3つ目の選択肢の一つが、Ad-Virtua(アドバーチャ)です。ゲーム空間内の看板・モニターに動画広告を配信するアドネットワークで、国内400タイトル以上に配信し、累計再生数は8,000万回を超えています(2025年後半時点、Ad-Virtua公表値)。報酬を付けず、プレイを止めずに目に入る形の広告です。

比較ポイント

リワード型(ミストプレイ)

ゲーム内広告(Ad-Virtua)

広告に触れる理由

報酬(ギフトカード、ポイント、燃料割引)

プレイ中に自然に目に入る(報酬なし)

主な広告主

ゲームアプリの会社。ロイヤルティプレイはアプリを持つ企業

食品・日用品・外食など一般のブランド

主な指標

D7/D30 ROAS、継続率、来店率、特典利用率

広告想起率(約1.8倍)、注目度(約1.7倍)、CPM(約300円)

料金の決まり方

インストール単価・イベント単価、tROAS

期間・CPM(1週間30万円のプラン)

必要な準備

到達イベントの設計。組み込む側ならアプリ内通貨

動画素材

日本での提供

iPhone版は2026年7月から。ロイヤルティプレイはモッピー、ANA Pocketで稼働

国内400タイトル以上

不向きと考えられる用途

ブランドの世界観を伝える用途。報酬に反応する層に届き方が偏る可能性がある(当社の見方)

インストールや来店を直接計測する用途

Ad-Virtuaの数値はAd-Virtuaの公表値です。ミストプレイ側の「不向きと考えられる用途」は当社の見方で、ミストプレイが公表しているものではありません。

Ad-Virtuaが合うのは、自社アプリを持たない、または持っていてもポイントの仕組みがないブランドで、若い世代やゲームを遊ぶ層への認知や想起を目的とする企業です。TVCMやSNS広告で手持ちの動画素材を、別の接点でも見せたい場合にも使いやすい形です。

合わないのは、インストール数や来店数を広告ごとに直接計測したい企業と、すでにポイントを持つアプリがあり、その利用を増やすことが目的の企業です。後者は、ロイヤルティプレイのようなリワード型のほうが目的に近いと考えられます。

広告主が取るべき判断

今動くべき企業

  • iPhone向けのゲームを日本で出しているゲーム会社。iPhone版は日本で提供が始まったばかりで、手動のCPI入札から試せる。tROAS入札は「今後対応」とされているので、対応した時点で配信の設計を見直す前提で始めるとよい
  • ポイントを持つアプリを運営している企業(ポイントサイト、金融、交通、小売)。モッピーとANA Pocketの事例は、既存のオファーウォールと並べて導入できることを示している
  • 自社アプリを持たず、ゲームを遊ぶ層への認知を作りたいブランド。リワード型はこの目的に使える形が日本では用意されていないため、ゲーム内広告など認知向けの手段から検討するとよい

様子見でよい企業

  • 自社アプリにポイントの仕組みがなく、作る予定もない企業。ロイヤルティプレイは導入の条件を満たさない
  • 実店舗の来店を増やしたいが、アプリを持たない小売・外食。シンクレア・オイルのような使い方を日本でできるかは、現時点では公表されていない
  • 第三者による効果検証を出稿の条件にしている企業。公表されている効果はどれもミストプレイ側の発表で、比較の基準が明示されていないものもある

関連する基礎知識

よくある質問

報酬目当てで遊ぶユーザーは、ゲームに定着するのですか?

ミストプレイの日本市場レポート(同社調べ)では、セッション中ずっとポイントを意識しているのは22%で、残りの78%は早い段階でゲームそのものに関心が移るとされています。また、報酬目当てのプレイヤーの53%が定期的にゲーム内課金をしており、課金ユーザーの約5人に1人が月1万円以上を使うとしています。第三者の調査ではない点には注意が必要です。

日本のポイントサイトにある「ゲーム案件」と何が違うのですか?

日本のポイントサイトには、インストールやレベル到達でポイントがもらえるゲーム案件が以前からあります。ミストプレイの特徴は、到達だけでなく遊んだ時間にも報酬を払う点です。モッピーの担当者は事例で「(プレイタイム報酬型は)日本ではLoyaltyPlayしかありません」と述べていますが、これは事業者の発言で、市場で唯一であることを当社が確認したものではありません。

HEX SDKは日本のゲーム会社でも使えますか?

公式ページでは、HEXの提供地域は米国・カナダ・英国・オーストラリア・ニュージーランドのAndroidとiOSとされており、日本は対象に入っていません。

日本で相談する窓口はありますか?

日本担当の営業責任者とアカウントエグゼクティブがおり、2026年10月には東京のGAME FUTURE SUMMIT 2026に出展し、ブシロード、DIGIMERCEとのパネルに登壇しています。日本法人があるか、所在地がどこかは公表されていません。

公表されている効果の数値は、どう読めばよいですか?

事例の数値はミストプレイの発表に基づき、「最大」の値や、何と比べたかが書かれていない値が含まれます。比較の基準が示されているのは、ビットマンゴー(ほかの主要なiOS向けネットワークの平均)やツリープラ(ほかの媒体)などに限られます。自社で検討する際は、同じ期間・同じ指標で既存の配信先と比べるテストを組むと判断しやすくなります。