ユニティ(Unity)は2026年3月26日、アイアンソース(ironSource)由来の広告ネットワーク「ironSource Ads Network」を同年4月30日で終了し、ゲームパブリッシング事業を売却する方針を発表しました。どちらも8月までに完了し、ユニティの広告事業は「アプリのインストール獲得をAIで最適化する仕組み」に絞り込まれたため、ブランド認知を目的とする日本の広告主は別の選択肢を検討することになると考えられます。

発表の内容

Unityのロゴ(キューブマークとUnityの文字)
出典: Unity Technologies(

Unity Software Inc.(ユニティ・ソフトウェア、NYSE: U、以下ユニティ)は2026年3月26日、2026年第1四半期(1〜3月)の速報値を前倒しで公表しました。同じリリースで、広告事業の整理を次のとおり発表しています(出典: ユニティ IRリリース、SEC提出 8-K)。

  1. ironSource Ads Network を4月30日付で終了する。第1四半期より後の売上寄与は「最小限」と見込む
  2. ゲームパブリッシング事業のスーパーソニック(Supersonic)の売却に向けて、ファイナンシャルアドバイザーを起用した。取引が成立する保証はないと明記
  3. 業績上振れの主因は、Unity Ads を動かす機械学習モデル「Unity Vector」。Vector の売上は第1四半期に前四半期比15%伸びる見込み
  4. この2事業を「非戦略(Non-Strategic)」と位置づけ、除いた数値を「Strategic」売上として新たに開示する

リリースの見出しは「非戦略の広告事業から撤退し、成長と収益性を高める」というものです。2つの施策が完了すれば、売上成長の加速、調整後EBITDAの増加、調整後EBITDAマージンの上昇を見込むとしています。

第1四半期の速報値

項目

速報値

前年同期比

補足

売上高

5.05〜5.08億ドル

+17%

ガイダンスは4.8〜4.9億ドル

Grow(広告などの成長支援)

約3.52億ドル

+24%

Create(制作ツール)

約1.55億ドル

+3%

調整後EBITDA

1.30〜1.35億ドル

+58%

マージン26%(ガイダンス22%)

Strategic Grow

2.79億ドル

+48%

ironSource Ads Network とスーパーソニックを除いた値

Strategic Create

1.52億ドル

+14%

Strategic 合計

4.31億ドル

+34%

出典: 2026年3月26日付リリース(PDF)。

Grow 全体が+24%だったのに対し、終了・売却する2事業を除いた Strategic Grow は+48%と2倍の伸びでした。会社が残す事業と手放す事業の成長率の差が、この表に出ています。

最高経営責任者(CEO)のマット・ブロムバーグ(Matt Bromberg)氏は、リリースで次のように述べています。

"Unity Vector continues to deliver robust growth each quarter, driving results meaningfully above our guidance. Today's actions will accelerate Vector's impact on our business, enhancing both revenue growth and profitability."

(訳)Unity Vectorは四半期ごとに力強い成長を続けており、業績をガイダンスを大きく上回る水準に押し上げています。今日の施策は、Vectorが当社の事業に与える効果を加速させ、売上成長と収益性の両方を高めるものです。

発表後に確定したこと

発表から7か月がたち、その後の決算資料で結果まで確定しています。

日付

出来事

出典

2026年4月30日

ironSource Ads Network 終了(効力発生日)

第1四半期 10-Q

2026年5月7日

第1四半期の確定決算。売上5億820万ドル。減損2億7,900万ドルを計上

第1四半期 8-K

2026年6月30日時点

スーパーソニックを売却目的保有に分類(資産5,600万ドル、負債1,990万ドル)

第2四半期 8-K

2026年第2四半期中

ironSource Ads Network の終了作業が「substantially completed(ほぼ完了)」

第2四半期 10-Q

2026年8月4日

スーパーソニックを Tripledot Group Holdings Limited(以下トリプルドット)へ売却完了。対価は現金4,000万ドル(事後調整あり)

第2四半期 10-Q

2026年8月6日

第2四半期決算。Strategic Grow 3億2,900万ドル(前年同期比+63%)、非戦略売上6,010万ドル(同-33%)

第2四半期 8-K

2026年11月5日(予定)

第3四半期決算発表

ユニティ発表

減損2億7,900万ドルは ironSource Ads Network とスーパーソニックを含む資産グループに対するものです。割引前キャッシュフローが帳簿価額を下回ったことが理由で、2事業の内訳は開示されていません。終了に伴う人員削減数と、スーパーソニック売却の損益も非開示です。

Unity Grow Solutions と Unity Ads/Unity Vector の広告事業

ユニティはゲームエンジンの会社として知られていますが、2026年第1四半期の確定値では、売上5億820万ドルのうち3億5,160万ドル(約7割、本記事の計算値)を広告を中心とする「Grow Solutions」部門が占めています。今回の整理はこの部門の中の話です。

ユニティの基本情報

項目

内容

正式社名

Unity Software Inc.(事業ブランドは Unity Technologies)

設立

2004年、デンマークで Over the Edge Entertainment として創業

本社

米国カリフォルニア州サンフランシスコ

従業員

4,412人(2025年12月31日時点、25拠点・16か国)。前年は4,987人(34拠点・17か国)

CEO

マット・ブロムバーグ氏(2024年5月15日就任。前職はジンガ(Zynga)COO、EA、Major League Gaming CEO など)

事業セグメント

Create Solutions(ゲームエンジンなどの制作ツール)、Grow Solutions(広告などの成長支援)

2025年度売上

18億4,960万ドル(2024年度は18億1,330万ドル)

出典: ユニティの年次報告書(2025年度 10-K、2024年度 10-K)、CEO就任リリース、2026年2月11日付 8-K。

Grow Solutions の製品構成

2026年10月29日時点の Unity Grow 公式ページ に掲載されている製品と、今回の整理での扱いは次のとおりです。

製品

内容

今回の扱い

Unity Ads

ユーザー獲得(UA)と収益化の両方を担う広告ネットワーク。Vector で動く

存続・中核

Unity Vector

Unity Ads の背後にある自己学習型の機械学習モデル

存続・成長の柱

LevelPlay

広告メディエーション(25以上のアドネットワークを統合オークションにかける)、A/Bテスト、リアルタイムレポート

リリースに記載なし。製品ページは公開継続

Ad Quality

表示される広告の確認、問題のあるクリエイティブの検知

記載なし

Unity Programmatic Solutions

「ironSource and Unity Ads Exchange」経由のプログラマティック配信

記載なし(名称に ironSource が残る)

Tapjoy from Unity

ユーザーが自分で選ぶリワード型オファーウォール

記載なし

Aura from Unity

端末のOSに組み込まれたアプリ発見チャネル

記載なし

Unity CTV

コネクテッドTV広告とアプリのユーザー獲得の組み合わせ

記載なし

Supersonic from Unity

ゲームパブリッシング

売却済み(2026年8月4日)

ironSource Ads

アイアンソース由来の広告ネットワーク

終了(2026年4月30日)

公式サイトの Grow ページには、2026年10月29日時点でもスーパーソニックと ironSource Ads の記述や事例が残っています。ironSource Ads の製品ページも終了の告知なしで公開されたままです。公式サイトの更新が決算資料に追いついていない状態のため、製品ページだけを見て現行サービスと判断しないよう注意が必要です。

Unity Adsの製品カード画像(黒地にUnity Adsロゴ)
出典: Unity Technologies(

Unity Ads の仕組み

Unity Ads には2つの顧客がいます。1つはゲームに広告枠を出して収益を得るアプリ側(媒体)、もう1つは自社ゲームのインストールを増やしたい広告主側です。広告主の大半はゲーム会社で、目的はユーザー獲得です。

広告の表示形式は、リワード動画(視聴するとゲーム内アイテムなどがもらえる動画)、全画面のインタースティシャル(画面の切り替わりで表示)、バナーの3種類です(出典: Unity Ads 製品ページ)。いずれもゲームの進行をいったん止めるか、ゲーム画面の外枠に出す形式で、ゲーム空間の中の看板に広告を映す形式とは異なります。広告の種類の全体像は「ゲーム内広告とは」で整理しています。

アプリ側では、LevelPlay のメディエーションが Unity Ads を含む複数のアドネットワークを1つのオークションにかけ、表示する広告を決めます。広告主側は、次の3種類のキャンペーンから目的に合うものを選びます。

  • ROAS キャンペーン(広告費に対する収益を最大化)
  • イベントキャンペーン(指定したアプリ内行動を最大化)
  • クリエイティブテスト

Unity Vector の役割

Unity Vector は Unity Ads の ROAS キャンペーンでゲームとプレイヤーを組み合わせる機械学習モデルです(出典: Unity Vector 製品ページ)。ユニティの説明では、次の特徴があります。

  • ゲームを作る側と成長支援側の両方にまたがるユニティのデータを使い、ゲームの特徴と実際のプレイヤー行動を分析する
  • アプリ内課金(IAP)型、広告収益(IAA)型、両方を組み合わせたハイブリッド型に対応する。課金行動と広告視聴行動の相関も考慮する
  • 対応キャンペーンは Ad Revenue ROAS、IAP ROAS、Hybrid(IAA+IAP)ROAS の3種類

ユニティは2025年第1四半期に Vector の展開を発表しました。2025年第3四半期の決算では「Unity Ad Network, powered by Unity Vector」と表現し、ゲームの実行環境(Unity Runtime)から得られる行動データの活用を広げることにも触れています。2025年第4四半期には、Grow 売上3億3,800万ドルの56%を Vector が占めました(金額に直すと約1.89億ドル、本記事の計算値)。

Unity Vectorの効果を示す公式図:インストール数が約15〜20%増、獲得ユーザーのアプリ内課金額が最大20%増
出典: Unity Technologies(

ユニティが公表している効果は、旧モデルと比べてインストール約15〜20%増(iOS、2025年3月15〜28日)、獲得ユーザーのアプリ内課金額約15〜20%増(iOS、2025年2月6〜24日、IAP ROAS キャンペーン)です。図版では「UP TO 20%(最大20%)」と表記されています。どちらもユニティ社内データによる旧モデルとの比較で、広告主ごとの結果を保証するものではありません。自社の出稿で広告が純粋にどれだけ効いたかを確かめる方法は、ゲーム内広告 インクリメンタルリフト測定ガイドで解説しています。

終了した ironSource Ads Network とは何だったか

ironSource Ads Network は2022年にユニティと合併したイスラエル発のアイアンソースが運営していたモバイル広告ネットワークです。アプリ側には LevelPlay の SDK に同梱される形で提供されていました。LevelPlay の公式画面には「A bundled SDK that includes LevelPlay mediation and the ironSource Ads Network(LevelPlay メディエーションと ironSource Ads Network を含む同梱SDK)」と書かれています。

LevelPlay Network Managerの画面。LevelPlay SDKにLevelPlayメディエーションとironSource Adsがまとめて入っている
出典: Unity Technologies(

広告主(主にゲームのユーザー獲得担当)向けには、イベント最適化キャンペーンなどを提供していました。2025年第4四半期の時点で、Grow 売上に占める割合は11%(約3,700万ドル、本記事の計算値)で、減少傾向にありました。

終了したのはリワード動画やインタースティシャルを中心とするアドネットワークの1つで、ゲーム内広告全体がなくなったわけではありません。広告の種類ごとの相場は、ゲーム内広告 媒体別CPM比較ガイド 2026年版で比べています。

配信規模と主要パートナー

ユニティの広告リーチ(月間アクティブユーザー数や端末数)の最新値は、今回の資料では公式に確認できませんでした。参考として、2026年4月の提携で Index Exchange 側は「29億MAU」「トップ1,000のモバイルゲームの71%」と記載しています。Aura from Unity は2025年6月時点で23億台以上の端末に組み込まれているとしています。

今回の発表前後の主な提携は次のとおりです。

時期

相手

内容

2026年4月8日

メタ(Meta)

VR領域の複数年提携を延長

2026年4月22日

インデックス・エクスチェンジ(Index Exchange)

ゲーム内のオーディエンスデータをゲーム以外の広告チャネルへ開放(解説記事)

2026年10月7日

グーグル(Google)

AIゲーム制作プラットフォームで提携。リリースに広告・Vector の言及なし

2026年10月27日

ピーブイエックス(PvX)

成長段階のスタジオにユーザー獲得資金を提供し、対象ゲームには Unity Ads で使えるクレジットを付与

Unity CTVのインタラクティブ広告イメージ。テレビ画面のゲーム広告からリモコン操作でスマホのアプリストアへ誘導する
出典: Unity Technologies(

上の画像は、Grow ページに掲載されている Unity CTV のイメージで、テレビ画面に出したゲーム広告からスマートフォンのアプリストアへ誘導する流れを示しています。コネクテッドTVという新しい面でも、ゴールはアプリのインストールに置かれています。

ユニティの広告事業のこれまでの取り組み

今回の終了は、2022年のアイアンソース合併から続く再編の一部です。

時期

出来事

2004年

デンマークで創業

2020年2月

スーパーソニック(当時はアイアンソースの事業)がサービス開始

2022年5月10日

第1四半期決算で「収益化プロダクトの課題」を理由に通期ガイダンスを下方修正

2022年7月13日

アイアンソースとの合併を発表。全株式交換で評価額約44億ドル(30日平均の交換比率に74%のプレミアム)。合併後の持分はユニティ株主約73.5%、アイアンソース株主約26.5%。シルバーレイク(Silver Lake)とセコイア(Sequoia)が10億ドルの転換社債を引き受け

2022年11月7日

合併完了。LevelPlay とスーパーソニックを取り込む

2023年5月10日

株主レターで「ironSource ads network を Unity の機械学習モデルへ移行中」「Unity ad network が ironSource の入札モデルを導入」と説明

2024年5月15日

ブロムバーグ氏がCEOに就任

2024年9月12日

ゲーム向けランタイム料金(Runtime Fee)の撤回を発表

2024年度

Grow 売上11億9,900万ドル(前年比-10%)

2025年第1四半期

Vector の展開を発表。想定より早い切り替えで Grow は前年同期比-4%(2億8,500万ドル)

2025年第3四半期

Grow 3億1,800万ドル(+6%)に反転

2025年第4四半期

Grow 3億3,800万ドル(+11%)。Vector が56%、ironSource Ad Network は11%

2026年3月26日

ironSource Ads Network 終了とスーパーソニック売却検討を発表

2026年4月30日

ironSource Ads Network 終了

2026年8月4日

スーパーソニックをトリプルドットへ現金4,000万ドルで売却

出典: 合併発表リリース、合併完了 8-K、2022年第1四半期 8-K、2023年第1四半期 株主レター、ランタイム料金撤回の告知、各四半期の決算資料。

合併で描いた計画と、その後の撤退

合併発表時、ユニティは2024年末に調整後EBITDAを年10億ドルの水準に、合併3年目に年3億ドルのシナジーを生むことを目標に掲げていました。ところが合併完了から約半年後の2023年5月の株主レターでは、2つの広告ネットワークを機械学習モデルの側で統合する作業がすでに進んでいると説明しています。そして合併完了から約3年半で、アイアンソース側のネットワークは終了しました。

なお、合併発表の2か月前にあたる2022年5月の下方修正について、8-K に書かれている理由は「収益化プロダクトの課題」です。

Grow 売上は2024年度に前年比-10%まで落ち込みました。2025年に Vector へ切り替えた直後の第1四半期も-4%でしたが、その後は第3四半期+6%、第4四半期+11%と反転しています。ゲーム会社ブードゥー(Voodoo)の担当者は、この切り替えを「Vector rebuild(Vectorでの作り直し)」と表現しています(後述の事例1)。

Supersonic from Unityのロゴが入った製品カード画像(オレンジ地)
出典: Unity Technologies(

上の画像は Grow ページに掲載されている「Supersonic from Unity」のカードです(売却後も掲載が続いています)。スーパーソニックはハイブリッドカジュアル系のモバイルゲームのパブリッシャーで、独立系スタジオと組んでゲームを出し、収益化と成長を支援してきました。公表値は、累計インストール66億超(2020年2月のサービス開始以降、AppsFlyer 計測)、月間アクティブユーザー1.9億超(2024年1〜10月平均)、パブリッシュした作品130本超(2025年4月27日時点)です。代表作には「Unravel Master」「Screw Master 3D: Pin Puzzle」「Pick Me Up」があります(出典: Supersonic 公式サイト)。

今回はどこが違うのか

2023年の段階では、2つのネットワークを並べたまま中身の機械学習モデルを寄せる統合でした。今回は、ネットワークそのものを閉じて Unity Ads(Vector)の1本にしています。第1四半期の10-Qは、2026年末までに Grow は「主に Unity Ad Network(主力の収益化ネットワーク)」で構成される見込みと書いています。

もう1つの違いは、売上が減ることを受け入れた点です。非戦略売上は第1四半期が約7,600万ドル、第2四半期が6,010万ドルで、上期の合計は約1億3,600万ドル(前年上期は約2億400万ドル)でした。第3四半期のガイダンスでは約2,000万ドル(スーパーソニックの約1か月分を含む)まで下がります。ユニティはこの分を手放し、成長率と利益率を取る判断をしたと考えられます。

広告出稿事例

Unity Ads の広告主は、主に「自社アプリのインストールを増やしたいゲーム会社」です。食品や日用品のブランドが認知を目的に出稿する事例ではない点を前提に読んでください。

事例1: ブードゥー「Mob Control」× Unity Ads(Vector)

ゲーム会社のブードゥーは、モバイルゲーム「Mob Control」のユーザー獲得に Vector の IAP ROAS キャンペーンを使いました。ユニティ側の提案で米国から始め、その後 Tier2・Tier3 の地域へ広げています。隔週の定例会議、ROAS 目標の提案、プレイアブル広告(遊べる広告)やクリエイティブパックの追加といった運用支援も受けました(出典: ユニティ公式事例ページ、2025年5月7日掲載)。

効果の具体的な数値は公表されていません。公表されているのは、Android と iOS の両方で ROAS が大きく上がったこと、ARPU(ユーザー1人あたり売上)・課金率・ROAS を保ったまま出稿額を増やせたこと、Unity Ads 上でのハイブリッド型の成長が過去最高になったこと、という定性的な結果です。ユーザー獲得担当のオウズ・アヤル(Oguz Ayar)氏は「It's clear the Vector rebuild has changed the game for Unity.(Vectorでの作り直しがユニティを一変させたのは明らか)」と述べています。

VoodooのモバイルゲームMob Controlのプレイ画面
出典: Unity Technologies(ゲーム画面の権利はVoodoo)(

事例2: 31ゲームズ「Magic Paper Dolls」「Mix Master」× ironSource Ads

終了した ironSource Ads 側の事例です。31ゲームズ(31 Games)は広告収益で稼ぐゲームを運営しているため、「動画視聴」を最適化するイベントに設定したイベント最適化キャンペーンを使いました。手動で運用していた時期の獲得単価(eCPA)を起点に目標を引き上げ、米国から全世界へ広げています(出典: ユニティ公式事例ページ、2025年1月22日掲載)。

タイトル

期間・地域

公表された効果

Magic Paper Dolls

2024年4〜6月、iOS米国

インストール単価(CPI)を保ったままインストール2倍、ARPU +143%

Mix Master

2024年4〜7月

ARPU +72%、インストール +193%

ユーザー獲得責任者のシエンマン・トゥ(Xianman Tu)氏は「Event optimization dynamically adjusted our bids(イベント最適化が入札を自動で調整してくれた)」と述べています。

ironSource Adsのイベント最適化で31 Gamesのインストール数が2倍、ARPUが143%伸びたことを示す公式グラフ(iOS米国、2024年4〜6月)
出典: Unity Technologies(

これは終了前の数値です。個別の広告主で成果が出ていたネットワークでも、運営会社の全体戦略によって閉じられることがある、という例として読めます。

補足: Unity Ads・Vector の製品ページに掲載された事例

広告主・媒体

公表された効果

出典

Lihuhu

インストールCVR 15%増、ARPDAU(1日あたりアクティブユーザー1人の売上)10%増

Unity Ads 製品ページ

Qcplay「Super Snail」

Unity Ads の入札(bidder)導入で ARPDAU 29%増

同上

Unico Studio

スケール(規模)4倍超

Unity Vector 製品ページ

ZephyrMobile

iOSでインストール約50%増、CPI 7%減

同上

いずれの指標も、インストール数、獲得単価、アプリ内の売上です。ブランド認知や広告想起を測った事例は掲載されていません。

なぜこの動きが起きたのか

机に並んだ売上グラフの資料と電卓、ノートパソコン
写真: Unsplash

ユニティが公式に示した理由は「非戦略事業からの撤退で成長と収益性を高める」までで、ironSource Ads Network を選んで閉じた具体的な理由は書かれていません。以下は決算資料の数値から読み取れる背景です。

1つ目は2つの広告ネットワークの勢いの差です。2025年第4四半期の Grow 売上は、Vector が56%、ironSource Ad Network が11%で、後者は減少していました。Vector は3四半期連続で前四半期比10%台半ばの成長を続けており、予算と開発の力を伸びている側に寄せる判断は自然だと考えられます。

2つ目は Vector の設計です。ユニティは Vector をエコシステム全体のデータを使うモデルと説明しており、ネットワークを1本にすれば、配信の判断が1つのモデルにまとまります。ブードゥーの「作り直し」という表現も、ユニティが広告事業の中心をモデルの性能に置いていることを示していると考えられます。

3つ目は開示の見え方です。2事業を除いた Strategic Grow を別に開示したことで、伸びている部分の成長率(確定値で第1四半期+49%、第2四半期+63%)がそのまま見えるようになりました。2事業の売上を抱えたままでは、Grow 全体の成長率が低く見えます。

同業でも似た動きがあります。トリプルドットの公式サイトによると、同社は2025年にアップラビン(AppLovin)のゲーム事業(10スタジオ)を8億ドルで買収しています。モバイル広告の大手2社が同じ買い手に自社のゲーム事業を手放し、広告技術に集中する流れが続いた形です。アップラビン側の売却理由は、本記事では一次資料で確認していません。

日本市場ではどうか

大型の屋外看板やビジョンが並ぶ東京・新宿の街並み
写真: Unsplash

今回のリリースにも、2022年の合併リリースにも、日本市場への言及はありません。Unity Ads には日本語の製品ページがありますが、機械翻訳である旨の注記付きで、掲載事例に日本企業はなく、日本向けの独自サポート情報も見当たりません。日本での提供条件と出稿実績は確認できていません。

影響を受ける可能性があるのは、ironSource Ads を LevelPlay 経由の収益源にしていた国内のアプリ(媒体側)です。広告の需要元が1つ減ったことになりますが、国内の利用社数や影響の規模は公表されていません。ゲームアプリの媒体側でネットワークの組み替えが起きると、同じタイトルでも配信される広告の顔ぶれが変わります。広告主が配信先の質をどう確かめるかは、ゲーム内広告 ブランドセーフティ スコアリングガイドで解説しています。

国内のアドネットワークで同じような撤退や統合が起きた事例は、本記事の調査では確認できませんでした。

市場全体では、電通「2025年 日本の広告費」によると、総広告費は8兆623億円(前年比105.1%、4年連続で過去最高)、インターネット広告費は4兆459億円(同110.8%)でした。インターネット広告費が初めて4兆円を超え、総広告費の50.2%と初めて半分を超えています。同調査は成長要因に縦型動画広告やコネクテッドTVを挙げていますが、ゲーム内広告の区分はありません。

日本でゲーム内広告を実施する選択肢

テレビ画面の前でゲームのコントローラーを操作する手元
写真: Unsplash

日本の広告主がまず決めるのは、ゲームの中で何を達成したいかです。ユニティの事業整理から分かるとおり、Unity Ads は自社アプリのインストールやアプリ内売上を増やすための仕組みです。認知や想起を目的にする場合は、目的と評価指標の違う別の選択肢が必要になります。

比較ポイント

Unity Ads(Vector)

ゲーム空間内のサイネージ型広告(Ad-Virtua)

主な目的

アプリのインストール獲得、アプリ内課金・広告収益の最大化

ブランドの認知・想起

想定する広告主

ゲーム会社などアプリ事業者

認知を目的とするブランド(食品・飲料、日用品など)

表示形式

リワード動画、インタースティシャル、バナー

ゲーム空間内の看板・モニターに動画を表示

プレイとの関係

進行の合間に表示するか、画面の外枠に表示

プレイを止めずに表示

最適化・評価の指標

ROAS、インストール数、アプリ内イベント

広告想起率、注目度などの認知指標

必要なもの

誘導先のアプリ

動画素材

Ad-Virtua は国内のゲームタイトルの空間内にある看板やモニターに動画広告を配信するアドネットワークです。日本国内で「ゲームの中で広告を見せる」施策を実施する場合の選択肢の1つになります。

こんな企業におすすめです。

  • テレビCMやSNS広告の補完として、ゲームを長時間遊ぶ層への認知を広げたい
  • すでにある動画素材を使い回したい
  • インストール数ではなく、想起や好感度で効果を評価したい

おすすめしない企業もあります。

  • 自社アプリのインストールを獲得単価で最適化したい(Unity Ads のようなユーザー獲得向けネットワークが向いています)
  • クリック後の購入など、直接の獲得成果を短期で求めている

少額の予算から継続して認知を積み上げる配信の考え方は、ゲーム内広告 ロングテール配信設計ガイドで解説しています。料金や対応タイトル数などの最新の条件は、Ad-Virtua の公式サイトで確認してください。

広告主が取るべき判断

今動くべき企業の条件は次のとおりです。

  • ironSource Ads でユーザー獲得の出稿をしていたゲーム会社。ネットワークはすでに終了しているため、Unity Ads(Vector)を含む出稿先の組み直しが必要です
  • LevelPlay 経由で ironSource Ads を収益源にしていたアプリ事業者。需要元の構成と収益の変化を確認する時期です
  • ゲームを遊ぶ層への認知施策を検討していて、海外ネットワークの動向を待っていたブランド。今回の整理で、ユニティの広告ネットワークがアプリのインストール獲得向けの商品であり、認知目的の商品ではないことがはっきりしました

様子見でよい企業の条件は次のとおりです。

  • ゲーム内広告を使っておらず、ゲームを遊ぶ層への接点も当面の課題ではない
  • ユニティの広告製品を、ブランド広告の文脈(インデックス・エクスチェンジ経由の配信など)で日本から使えるかを見極めたい。日本での提供状況は確認できていないため、公式の発表を待つ段階です

関連する基礎知識

よくある質問

公式サイトに ironSource Ads の製品ページが残っていますが、まだ出稿できますか?

決算資料では、ironSource Ads Network は2026年4月30日に終了し、終了作業は2026年第2四半期中にほぼ完了したとされています。2026年10月29日時点で製品ページは終了の告知なしで公開されていますが、これは公式サイトの更新が追いついていない状態と考えられます。出稿先の判断には、製品ページではなく決算資料(10-Q)の記載を使ってください。

ironSource の名前はすべて消えたのですか?

消えていません。2026年10月29日時点で、プログラマティック配信の「Unity Programmatic Solutions」は「ironSource and Unity Ads Exchange」経由と説明されており、名称に ironSource が残っています。スーパーソニックの公式サイトのフッターも「2026 ironSource」のままです。今回終了したのは ironSource Ads Network という1つの広告ネットワークです。

スーパーソニックの売却額4,000万ドルは、合併時の約44億ドルと比べて大幅な目減りですか?

この2つの数字は比べられません。約44億ドルはアイアンソース全体(LevelPlay や ironSource Ads Network などを含む)の評価額で、4,000万ドルはその一部であるスーパーソニック事業の売却額です。対象の範囲が違います。

今後どの情報を見れば、この再編の結果が分かりますか?

ユニティは2026年11月5日(米国市場の開場前)に第3四半期決算を発表する予定です。ガイダンスでは Strategic Grow を3.80〜3.85億ドル(前年同期比+68〜70%)、非戦略売上を約2,000万ドルとしています。非戦略売上が縮小していくため、Grow 全体の数値に Vector 集中の結果が表れやすくなると考えられます。