米国のコスメ企業e.l.f. Beautyが、Roblox(ロブロックス)上で常設運営している自社のメイクゲーム「Glow Up!」に、サンリオのキャラクター「クロミ」を期間限定で招いた。日本の広告主にとっては、ゲームを単発の広告枠としてではなく自社で持ち続ける顧客接点として運営し、そこに外部のIPを重ねて再訪を生むという進め方の実例になる。

発表の内容
e.l.f. Beautyは2026年10月20日、Business Wireを通じてクロミとのコラボを発表した(e.l.f. Beautyの公式リリース、IR版)。主体は同社の主力ブランドe.l.f. Cosmeticsで、サンリオ側のコメントは米国法人Sanrio, Inc.の役員が出している。
Glow Up!に追加された内容は次の3つ。
- クロミ専用のロビー
- whimsigoth(ウィムジカル+ゴシック)調の新しいルック
- クロミをテーマにした限定のゲーム内アイテム
コラボは期間限定で、10月31日(ハロウィン)のクロミの誕生日と、毎年恒例の「Month of Mischief(いたずらの月)」に合わせている。ホリデーシーズンまで新しいコンテンツを追加していくとしており、終了日は書かれていない。
リリースには開始日の記載がない。ただしRobloxの体験ページの説明文には「Jump into e.l.f.'s Glow Up! on October 16」とあり、体験名もすでに「Glow Up! [KUROMI]」に変わっている。ゲーム内では発表より4日早い10月16日に始まったとみられる。
リリースの見出しは「サンリオの世界の外で初めてのRobloxコラボ」で、本文では「Robloxで他ブランドの体験の中に登場する初めてのコラボ」と説明している。これはサンリオ自身のRoblox体験にクロミが出ていないという意味ではなく、「他ブランドのRoblox体験に登場するのは初めて」という意味になる。
制作はイマーシブ・マーケティングのコンサルティング会社eGENと共同で行った。
発表で示された数値と、Robloxの公開データは次のとおり。
項目 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
Glow Up!の訪問数 | ローンチ以来1,200万回超 | e.l.f.公式リリース |
e.l.f.のRoblox体験全体の訪問数 | 4,500万回超 | e.l.f.公式リリース |
Glow Up!の訪問数(2026年10月28日時点) | 13,660,707回 | Roblox公開API |
e.l.f.の体験3本の合計訪問数(同上) | 51,814,568回 | Roblox公開API |
Roblox公開APIの値は、リリースの「1,200万回超」「4,500万回超」と矛盾しない。
e.l.f. Beautyとはどんな会社か

e.l.f. Beauty, Inc.はニューヨーク証券取引所に上場する米国のコスメ企業(ティッカーはELF)。2004年の設立で、社名の「e.l.f.」はeyes. lips. face.の頭文字をとっている。日本語の定訳はなく、「エルフ」「イー・エル・エフ」などと表記される。日本での知名度は低いが、米国では上場企業として大手に分類される。
項目 | 内容 |
|---|---|
正式社名 | e.l.f. Beauty, Inc.(NYSE: ELF) |
設立 | 2004年 |
所在地 | リリースのdatelineはカリフォルニア州オークランド(本社所在地の公式記載は確認できていない) |
CEO | タラン・アミン(Tarang Amin) |
業績 | FY2026(2026年3月期)の売上高は16億3,650万ドルで前年比25%増。FY2027の見通しは18億3,500万〜18億6,500万ドル(12〜14%増) |
主なブランド | e.l.f. Cosmetics、e.l.f. SKIN、e.l.f. Hair(2026年6月にヘアケアへ参入)、Well People、Naturium、rhode |
出典: e.l.f. Beauty IRリリース(FY2026決算ほか)
CEOのアミン氏はFY2026決算のコメントで、売上高と市場シェアが7年連続で伸びたと述べている。ブランドは「最高の美容を、すべての目・唇・顔に手の届くものに」を掲げ、ヴィーガン、Leaping BunnyとPETAのクルエルティフリー認証、Fair Trade認証工場での製造を打ち出す。手頃な価格でプレステージ級の品質を売りにしており、2022年に出したゲームテーマのコレクションは1点6〜15ドルだった。
マーケティングの特徴
e.l.f.のマーケティングは「コミュニティがいる場所に行く」という方針で一貫している。2026年10月12日のZEPETO(ゼペット)進出のリリースでは、イマーシブな世界への展開を「TwitchからRoblox、そしてZEPETOへ」と自ら説明している。
- Twitch: 自社チャンネル@elfYOUを持ち、「Twitchでナンバーワンのビューティーブランド」を自称している
- Roblox: 2023年から自社の体験を運営し、2026年10月時点で3本を公開している
- ゲーム以外: スーパーボウルCM(2023年以降)、米女子サッカーNWSLやトッテナム女子への協賛、インディ500、オリジナル音楽アルバム、Liquid Death・Dunkin'・Stanley・H&Mなどとのコラボ商品
ゲームは、こうしたカルチャーの中に入り込む施策の一つとして位置づけられている。
Glow Up!の仕組み
Glow Up!は、2025年12月18日に発表されたRoblox上のメイクゲームで、13歳以上が対象となっている(ローンチ時のIRリリース)。プレイヤーはメイクアップアーティストになり、キャラクターの「人生の大事な場面」に向けて準備をする。

項目 | 内容 |
|---|---|
遊び方 | セッションごとにテーマを選び、リアルな操作でバーチャルコスメを塗り、リアル寄りから空想的なものまでルックを作る |
メイクの仕組み | レイヤー式で、組み合わせは「数百万通り」。実物に近い質感と手順を再現している |
ソーシャル要素 | 「ライブストリーム・モード」でほかのプレイヤーの作品を見て反応できる。テーマとの合致・創造性・全体の雰囲気で評価し合う。テーマ別のコミュニティチャレンジもある |
キャラクター | スポーツ、ビジネス、音楽、ゲームで活躍する女性を体現する4キャラクターでスタートし、毎月追加すると発表した |
ゲーム内の報酬 | 「いいね」とお気に入り登録でRainbow Ponytailがもらえる(Roblox体験ページの記載) |
サーバー | 1サーバー最大8人(Roblox公開API) |
お気に入り登録数 | 94,905(Roblox公開API、2026年10月28日時点) |
開発 | eGEN(長年のパートナー)と、Exclusible(ゲーム性を重視した高品質な体験で知られるスタジオで、e.l.f.とは初めての協業) |
広告がプレイヤーに届く仕組みは、一般的なゲーム内広告と異なる。他社のゲームに広告枠を買うのではなく、自社の体験そのものが媒体になっている。プレイヤーは自分から訪れ、ブランドの世界観の中で時間を過ごす。e.l.f.製品を模したバーチャルアイテムを身につけて遊ぶことで、Roblox内でブランドが目に触れる機会も増えると考えられる。

Roblox上の運営主体は、認証バッジ付きの公式グループ「e.l.f. UP!」。ゲーム内課金やアイテム販売があるかは、リリースに記載がない。
主要パートナー
パートナー | 役割 | e.l.f.との関係 |
|---|---|---|
Sanrio, Inc. | 今回のコラボでコメントを出したサンリオ側の会社。株式会社サンリオの米国法人 | 今回のクロミコラボ |
eGEN | 今回のコラボとGlow Up!の開発 | 2023年のe.l.f. UP!にもコメントを寄せた長年のパートナー |
Exclusible | Glow Up!の開発 | Glow Up!で初めて協業 |
Supersocial | e.l.f. UP!の開発・パブリッシュ | 2023年から |
Karta | Fortune Islandの開発 | 2025年 |
eGENは、e.l.f.の2023年のリリースでは「ゲーム・eスポーツのコンサルティング会社」、2026年のリリースでは「グローバルなイマーシブ・マーケティングのコンサルティング会社」と紹介されている。創業者兼CEOのブラッド・ティミンズ(Brad Timmins)氏は2023年に「e.l.f.はゲームコミュニティに参入して以来、常に目的を持って取り組んできた」とコメントした。設立年や規模など、eGENの会社概要は公式に確認できていない。
サンリオ側について、リリースの会社概要は、ハローキティ(1974年誕生)で知られるグローバルなライフスタイルブランドで、製品は130か国以上で販売されていると紹介している。クロミはリリースで「サンリオキャラクター大賞で4位(2025年)」とされている。
資金調達と投資
e.l.f. Beautyは上場企業で、スタートアップのような資金調達ラウンドの履歴はない。事業拡大は買収で進めており、2023年8月29日にNaturiumの買収合意を、2025年5月28日にrhodeの買収合意(リリースの表現は「10億ドルの取引」)を発表した。Roblox関連の開発費や運用費は、どの体験についても公表されていない。
ここまでの歩み
e.l.f.のゲーム施策は、2022年のコスメコレクションに始まり、Roblox上の3本の体験、ZEPETO進出へと続いてきた。同じ時期には、ブランドの買収や新カテゴリーへの参入で事業も広げている。
時期 | 出来事 | 公表された数値 |
|---|---|---|
2022年7月7日 | ゲームテーマの限定コスメ「Game Up」コレクション(8品)を発売。LAでアーケードイベントを開き、Twitchで配信 | 1点6〜15ドル |
2023年8月29日 | Naturiumの買収合意を発表 | — |
2023年11月9日 | 初のRoblox体験「e.l.f. UP!」を発表。開発・パブリッシュはSupersocial | UGCアイテム100万点超の無料配布を計画 |
2024年2月2日 | Apple Vision Pro向けの没入型ショッピングアプリを公開(開発はObsess) | 公表なし |
2024年6月27日 | e.l.f. UP!でRobloxのリアルワールドコマースをテスト(ウォルマートと連携) | Robloxコミュニティへの累計訪問1,200万回超 |
2024年11月13日 | Beekman 1802とコラボし、e.l.f. UP!にイベントを追加 | 公表なし |
2025年4月24日 | 金融リテラシーゲーム「Fortune Island」を公開(Chimeと協業、開発はKarta) | e.l.f. UP!の累計訪問2,210万回 |
2025年5月28日 | rhodeの買収合意を発表 | リリースの表現は「10億ドルの取引」 |
2025年12月18日 | Glow Up!のローンチを発表(eGEN+Exclusible) | 公表なし |
2026年6月 | e.l.f. Hairでヘアケアに参入 | — |
2026年10月12日 | ZEPETOでe.l.f.初のバーチャルスタイリング体験「Express Your e.l.f.」を開始 | ZEPETO側の数値のみ(後述) |
2026年10月16日 | Glow Up!でクロミコラボがゲーム内で始まる(Roblox体験ページの記載) | 公表なし |
2026年10月20日 | クロミとのコラボを発表 | Glow Up! 1,200万回超、Roblox全体4,500万回超 |
出典: e.l.f. Beauty IRリリース各種、Roblox体験ページ
2023年: e.l.f. UP!で起業をテーマにしたゲームから始める
最初の体験e.l.f. UP!は、起業をテーマにしたタイクーンゲームだった。プレイヤーはBig Mood、Holy Hydration!、Halo Glow、Power Gripという4つの店舗を経営する。店名はいずれも実在するe.l.f.商品の名前になっている。
2026年10月時点の名称は「Makeup Store Simulator 💄 e.l.f. UP!」で、Robloxの体験ページの説明文によれば、最新の更新はヘアケア製品の製造の追加となっている。ローンチ時に掲げた「起業家精神」「文化を変える人たち」といった社会的なメッセージより、ゲーム性を前に出す方向へ寄せたとみられる。改名の時期と理由は確認できていない。
体験ごとに開発会社を選び直している
e.l.f. UP!はSupersocial、Fortune IslandはKarta、Glow Up!はeGENとExclusibleが開発した。新しい体験を出すたびに、開発会社を選び直していることになる。Supersocialとの関係がその後どうなったかは確認できていない。
うまくいかなかった点、結果が出ていない点
e.l.f.の発表は訪問数などの数値が中心だが、成果が公表されていないものや、伸びが小さかったものもある。
- 2024年のウォルマート連携は「テスト」と明言されていた。その後の売上や継続の有無は、確認できたリリースに出てこない
- Fortune Islandの累計訪問は4,042,135回(Roblox公開API、2026年10月28日時点)。約10か月で1,366万回のGlow Up!、約3年で3,411万回のe.l.f. UP!と比べると小さい。教育テーマの体験は伸びにくかった可能性があるが、e.l.f.自身はこの点に触れていない
- Glow Up!のローンチ時に発表した「毎月新しいキャラクターを追加」が実際に続いたかは確認できていない
今回の発表の位置づけ
e.l.f.は2023年から約3年、Roblox上に自社の体験を持ち続けている。自社の体験に他社を招くコラボは、2024年のBeekman 1802から始めていた。今回はそのゲストが同業のブランドから世界的なキャラクターIPに変わった。クロミにとっても、サンリオ以外のブランドのRoblox体験に出るのは今回が初めてになる。
同じ10月にはZEPETOにも進出しており、e.l.f.はどの仮想空間を常設の接点にするかを広げている段階にあると考えられる。

ZEPETO進出のリリースには、ZEPETO側の数値として登録アカウント4億超、月間アクティブユーザー1,500万〜2,000万人、利用者の約70%がZ世代と記載されている。
広告出稿事例
e.l.f.のRoblox体験は、他社が参加する場としても使われてきた。ここでは、e.l.f.の体験の中で行われた他社との協業を事例として取り上げる。どの事例も、ブランドリフトや売上への寄与は公表されていない。公表されている数値は、e.l.f.の体験全体の訪問数や評価にとどまる。
事例1: サンリオ(クロミ)×Glow Up!(2026年10月)
今回の事例。Glow Up!に専用ロビー、限定ルック、限定アイテムを期間限定で追加し、ホリデーシーズンまでコンテンツを追加していく。
- 公表された指標: Glow Up!の訪問はローンチ以来1,200万回超(リリース)。Roblox公開APIでは2026年10月28日時点で13,660,707回
- 注意点: コラボの効果として切り出せるデータは公表されていない
![クロミ柄のニット帽と衣装を身につけたアバターがクロミのフィギュアを手に乗せる「Glow Up! [KUROMI]」のサムネイル](https://images.microcms-assets.io/assets/63032420799b4171830fd4b7aa2aee52/52a5ecc866ad40ad87c88ca48ec88216/news-news-elf-kuromi-roblox-glow-up-02.webp)
事例2: ウォルマート(Walmart)×e.l.f. UP!(2024年6月)
Robloxの「リアルワールドコマース」のテストとして、e.l.f. UP!内のバーチャル売店で、米国の13歳以上が実物の商品を買えるようにした。決済の裏側はウォルマートが担った(IRリリース)。
- 対象商品を買うと、Robloxで使えるバーチャルの「ツイン」アイテムが無料でもらえる(例: Squeeze Me Lip Balmを買うとSqueeze Me Grape Hairstyleがもらえる)
- RobloxクリエイターのSimplyALemonがデザインしたパーカーも販売した
- 公表された指標: e.l.f.のRobloxコミュニティへの累計訪問1,200万回超、e.l.f. UP!の好評価率96%(2024年6月24日時点)、無料バーチャルアイテム100万点超を配布
- 注意点: 売上や購買数は公表されていない

画像は現在の名称(Makeup Store Simulator)になってからのサムネイルで、2024年のテスト当時のものではない。
事例3: Chime×Fortune Island(2025年4月)
フィンテック企業のChimeと組み、金融リテラシーを学ぶゲーム「Fortune Island: Earn Learn Flex」を公開した。貯蓄、予算、資産の防衛、投資の4段階で構成され、開発はKartaが担当した(IRリリース)。e.l.f.は「Robloxで金融リテラシーゲームを出した初のビューティーブランド」と説明している。
- 公表された指標: e.l.f. UP!の累計訪問2,210万回、月平均訪問129万回、好評価率96%(いずれも2025年4月11日時点)
- Fortune Island自体の訪問数: 4,042,135回(Roblox公開API、2026年10月28日時点)

事例4: Beekman 1802×e.l.f. UP!(2024年11月)
世界親切デーに合わせ、Beekman 1802とコラボした(IRリリース)。e.l.f. UP!にテーマルームと「親切」がテーマのクエストを追加し、Beekman 1802の共同創業者2人がNPCとして登場した。プレイヤーは親切な行動をしながら5匹のヤギを探し、クリアするとUGCのファッションアイテムが手に入る。ペット施設には子ヤギを追加し、同日にTwitchでライブ配信も行った。
効果指標は公表されていない。同じコスメ業界のブランドを自社の体験にゲストとして迎えた例で、他社を期間限定イベントとして常設体験に重ねる進め方は、クロミより前から始まっていた。
なぜこの動きが起きたのか
Glow Up!ローンチ時、e.l.f. Brandsの最高統合マーケティング責任者パトリック・オキーフ(Patrick O'Keefe)氏は次のように述べている。
"Our community doesn't want to be marketed to—they want to be invited in to play, create, and express themselves."
(私たちのコミュニティはマーケティングされることを望んでいない。遊び、つくり、自分を表現する場に招かれたいのだ)
今回のリリースでも同氏は「ビューティーとゲームには共通する力がある。自分が何者であるかを表現する自由だ」とコメントした。e.l.f.は、広告を見せることより、遊びに招き入れる場を作ることを優先していると考えられる。
背景として、リリースは「Z世代の90%、α世代の94%が、プレイ・視聴・所有・ソーシャルのいずれかの形でゲームに関わっている」という数値を挙げている。ただし調査名と出典は書かれていない。

自社の体験を常設していると、新しい話題を足すたびにプレイヤーが戻ってくるきっかけを作りやすい。今回のクロミは、誕生日のハロウィンと「Month of Mischief」という時期がはっきりしたIPで、期間限定イベントの題材に向いていたと考えられる。
サンリオ側では、Sanrio, Inc.の最高ブランド責任者ジル・コッホ(Jill Koch)氏が「クロミはいつも、自分らしくあること、自分の個性を大切にすることを体現してきた」とコメントし、自己表現を重んじるGlow Up!の考え方とクロミが重なると説明している。IP側から見ると、自社の世界観に近い他社の体験を新しい露出先として使えることになる。
日本市場ではどうか

現時点で確認できる日本との接点は、クロミが日本の株式会社サンリオのIPだという点にある。今回のコメントは米国法人Sanrio, Inc.の役員が出しているが、ライセンス契約の主体がどちらかは公表されていない。日本発のキャラクターIPが、海外ブランドの常設ゲーム体験の中でコラボ素材として使われた例といえる。
一方、日本企業が同じようにRobloxに自社の体験を常設しているか、日本国内のRoblox利用者数がどの程度か、Robloxの広告商品が日本の広告主にどの条件で提供されているかについては、本記事の執筆時点で公式情報を確認できていない。Robloxがゲーム内のブランド提携から収益分配を取る新ルールについては、Roblox収益分配ルール発表の解説で扱っている。
e.l.f.と同じ方式を日本の広告主が実施する場合、次の壁があると考えられる。
- Robloxの国内ユーザー規模が米国と同じとは限らず、事前に規模を確かめる必要がある
- 体験の開発費に加え、コンテンツを追加し続ける運用費がかかる。e.l.f.はどちらも公表していない
- Glow Up!は13歳以上が対象で、年齢設計と未成年向け広告の規制への対応が必要になる
- IPコラボを重ねる場合は、ライセンス料と監修の工程が加わる
日本で取れる選択肢とAd-Virtua
e.l.f.の施策は、「ブランド専用のゲームを持つ」と「すでにプレイヤーがいるゲームの中でブランドに触れてもらう」の2つの要素に分けられる。日本国内で取れる選択肢の一つとして、Ad-Virtuaには両方に対応するサービスがある。ただし、どちらも公式サイトにRobloxへの対応の記載はなく、Roblox上で同じ施策を行うサービスとしては案内されていない。
比較項目 | e.l.f.型(Robloxに自社体験を常設) | Ad-Virtuaのゲーム内広告 | ゲームバズ(Ad-Virtua) |
|---|---|---|---|
形式 | 自社のゲーム体験を運営し、IPやイベントを重ねる | 既存ゲームや3Dメタバース空間の看板・モニターに動画広告を配信 | ブランド専用のPRゲームを制作 |
集客 | 自社で行う(UGCアイテム配布、Twitch配信など) | 配信先ゲームの既存プレイヤーに届く | LP埋め込みや既存モバイルゲームとのタイアップ |
費用 | 非開示(開発+運用、IPコラボならライセンス料) | 1週間30万円〜、初期費用なし | 企画立案は無料、ランニングコストは原則不要 |
期間の目安 | 年単位の運営 | 週単位(ゲーム内100万回再生が目安、週2枠限定) | 制作期間は2か月が目安 |
対応環境 | Roblox | ブラウザゲーム、iOS/Androidアプリ、一部のMeta QuestなどVRアプリ | LPに埋め込むPCゲーム、既存モバイルゲームとのタイアップなど |
ブランドとの関わり方 | アバターがブランドのアイテムを身につける | 動画広告を見てもらう(アイテム化はしない) | ゲームを遊んでもらう |
出典: e.l.f. Beauty IRリリース、Ad-Virtua公式サイト(2026年10月28日確認)
ゲームバズは、常時接続のオンライン・メタバースゲームではサーバー費用がかかる場合がある。事例には、既存モバイルゲームとタイアップした日本リユースシステムがある(ゲームバズ公式ページ)。
Ad-Virtuaのゲーム内広告が合う企業
- 自社でゲームを運営する体制はないが、若年層がゲームで過ごす時間に動画広告で接点を持ちたい企業
- 手持ちのTVCMやSNS用の動画素材を使い、週単位で試したい企業
ゲームバズが合う企業
- e.l.f.のように「ブランドの世界観を遊んでもらう」体験を、まず一本作って反応を確かめたい企業
- 継続的な運用費を抑えたい企業
どちらも合わない企業
- Robloxという特定のプラットフォーム上で体験を常設したい企業。この場合はRobloxでの開発実績がある制作会社を探すことになる
- アバターにブランドのアイテムを身につけてもらう形の施策を主目的にする企業
広告主が取るべき判断

今動いてよい企業
- 10代以上の若年層が主要顧客で、ゲームを継続的な顧客接点にする予算と体制を年単位で確保できる企業
- 自社や提携先に季節イベントと相性のよいキャラクターIPがあり、期間限定イベントを重ねて再訪を生む設計を描ける企業
- まず既存ゲーム内の広告で若年層の反応を確かめ、その結果を見て自社体験に進むかを決めたい企業
様子見でよい企業
- 主要顧客が13歳未満の企業。Glow Up!は13歳以上が対象で、年齢設計と規制への対応を先に整理する必要がある
- 売上への寄与を数値で確かめてから投資したい企業。e.l.f.の施策はどれも売上やブランドリフトが公表されておらず、判断材料が少ない
- 体験を一度作って終わりにする想定の企業。e.l.f.は体験を更新しながら運営しており、今回のクロミも常設の体験に後から重ねた施策になっている
関連する基礎知識
- ゲーム内広告とは(既存ゲームに広告を出す方式の仕組みと導入手順)
- メタバース広告とは
- ブランド体験とは
- 体験型マーケティングとは
- キャラクターIPを使ったブランド体験
- 化粧品ブランドのブランド体験施策
- Roblox×SuperAwesome提携で13歳未満向け広告が解禁
よくある質問
クロミの限定アイテムは無料で手に入るのか
リリースには、アイテムの個別名と、無料かRobux(Robloxの仮想通貨)での有料かが書かれていない。Glow Up!では「いいね」とお気に入り登録でRainbow Ponytailがもらえる仕組みがあるが、クロミのアイテムの入手条件は公表されていない。
「Robloxでナンバーワンのブランドメイクゲーム」は第三者の評価か
e.l.f.はリリースでGlow Up!を「Robloxでナンバーワンのブランドメイクゲーム」と紹介しているが、これはe.l.f.自身の主張で、何を基準にした順位かは書かれていない。比較の材料にする場合は、Roblox上で公開されている訪問数やお気に入り登録数を自分で確かめる必要がある。
1サーバー最大8人という規模は、ブランド体験として小さくないか
Roblox公開APIでは、Glow Up!の最大人数は1サーバー8人となっている。一方で累計の訪問数は1,300万回を超えている。1つのサーバーで同時に遊べる人数と累計の到達は、別の数値として見る必要がある。
ブランドがRobloxに自社の体験を出すには、何を用意する必要があるか
Robloxの体験は誰でも公開できる。e.l.f.の場合は、3本の体験を、Supersocial、eGEN、Karta、Exclusibleの少なくとも4社の外部スタジオ・コンサルティング会社と作ってきた。開発費は公表されていないため、費用の目安は制作会社に個別に確かめることになる。Glow Up!のように13歳以上を対象にする場合は、年齢設計も最初に決めておく必要がある。


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