2026年10月22日、ロレアル・グループの皮膚科学ブランドであるラ ロッシュ ポゼ(La Roche-Posay)の米国法人が、ディスコード(Discord)のプレミアム広告「ミッションクエスト(Mission Quests)」を使い、人気配信者ニンジャ(Ninja)が出演するがん支援のチャリティ配信をディスコードの中で視聴・参加できるようにしました。ゲーマー向けの報酬型広告が、ゲーム会社や映画会社だけでなく、美容・ヘルスケアのブランドが社会的なテーマを伝える場としても使われ始めたことを示す事例です。日本の広告主がこの形をそのまま使えるかは現時点で確認できないため、本記事では仕組みと事例を整理したうえで、国内で取れる選択肢を比べます。
発表の内容

一次情報は2026年10月22日(米国東部時間9時、ニューヨーク発)に PR Newswire で配信されたラ ロッシュ ポゼのプレスリリースです(PR Newswire)。発表日は「ワールド・ゲーミング・デー(World Gaming Day)」に合わせています。
項目 | 内容 |
|---|---|
施策名 | ゲーミング・フォー・コーズ(Gaming For Cause)第2回 |
配信日 | 2026年10月22日(開始時刻の記載なし) |
形式 | ツイッチ(Twitch)での24時間ライブ配信 |
参加の仕方 | 寄付、ゲームプレイ、医師とのライブQ&A |
協力団体 | UICC(国際対がん連合) |
出演者 | タイラー・"ニンジャ"・ブレビンズ(2年連続)、皮膚科医ディラン・グリーニー(初参加。TikTokとInstagramのフォロワー合計53万人超)ほか |
ディスコードとの連携 | ラ ロッシュ ポゼとディスコードが共同でミッションクエストを制作。ユーザーはディスコード内でニンジャの配信を視聴し、コミュニティとリアルタイムで交流できる |
寄付の行き先 | 収益はすべて世界のがん関連団体へ寄付 |
リリースはミッションクエストを「ラ ロッシュ ポゼのようなブランドが体験の一部になる、ディスコードのプレミアム広告フォーマット」と説明しています。ディスコードのディレクター・オブ・エージェンシー・デベロップメントであるアンドリュー・アボット氏は「ミッションクエストは、受け身の視聴を、報酬のあるインタラクティブな体験に変えます」とコメントし、今回のミッションクエストはビューティー・コーラボ(Beauty Co-Lab)とロレアルと一緒に開発したと述べています。
2026年回はテーマも広げました。これまでの「皮膚がんの予防と早期発見」に加え、「がん治療に伴う皮膚の副作用のケア(サポーティブケア)」を扱います。リリースは根拠として、がん治療を受ける患者の80%超に皮膚の副作用が出ること、放射線治療を受ける患者の約50%に重い皮膚反応が出ることを挙げています。
一方で、今回のミッションクエストの具体的な仕様(報酬の中身、ミニゲームやクイズの有無、配信期間、対象国)と、視聴数・完了数などの結果は公表されていません。
ディスコードの広告事業とミッションクエスト

会社の基本情報
ディスコードはゲーマーを中心に使われているチャット・通話のコミュニティアプリです。運営会社の Discord Inc. は米カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置きます。2025年4月にはフマーム・サクニーニ(Humam Sakhnini)氏のCEO就任が発表されました(Discord公式)。
会社は未上場です。2026年1月に機密扱いでIPOを申請したとDigidayが報じましたが、ディスコードはコメントしておらず、その後の上場状況は確認できていません。設立年と、資金調達のラウンドごとの金額・投資家・累計調達額も一次情報で確認できていないため、本記事では扱いません。
ディスコード広告の公式ページが示す規模は次のとおりです(Discord Ads)。
- 1日あたりのアクティブユーザー(DAU): 9,000万人超(2025年第4四半期、社内データ)。2026年9月29日のDiscord公式リリースでも、2026年第2四半期の値として9,000万人超
- ユーザーの90%超がゲームをプレイ(2025年ユーザー調査)
- PCプレイヤーの約40%が、クエストを受けてから1時間以内にゲームを起動(2025年平均)
広告が表示される仕組み
ディスコードの広告は「クエスト(Quests)」という名前で提供されています。ユーザーはアプリ内の「クエストホーム」に並ぶクエストから、自分で選んで受けます(オプトイン)。動画を見る、ゲームをプレイする、ミッションを遊ぶといった指定のアクションを終えると、ディスコード内の通貨「オーブ(Orbs)」、アバターデコレーション、ゲーム内アイテムなどの報酬がもらえます。チャット欄やサーバーの会話に広告が割り込むことはありません。
リワード広告に近い発想ですが、ゲームの中ではなくコミュニティアプリの中に報酬の受け取り場所がある点が、スマホゲームの報酬型動画とは違います。報酬型広告の基本は「リワード広告ガイド」で整理しています。

現在の広告メニュー
2026年10月時点で、公式ページと発表から確認できる商品は次のとおりです。
商品 | 内容 | 買い方 |
|---|---|---|
プレイクエスト(Play Quests) | 対象ゲームをプレイすると報酬。新規・休眠プレイヤーの呼び込み向け | 営業経由 |
ビデオクエスト・リザーブ(Video Quest Reserve) | 予約型・保証型の動画広告。最後まで見ると報酬。2026年9月に旧ビデオクエストから名称変更 | 営業経由 |
ビデオクエスト(新、Video Quests) | モバイル中心のオークション型。約15秒の視聴でオーブを獲得。目的はインプレッションとクリック | 広告管理ツール「Ads Manager」。現在は一部の広告主に限定 |
ミッションズ(Missions/Mission Quests) | ミニゲーム、インタラクティブ動画、クイズなど、ディスコード内で完結する作り込み型の広告。完了するとディスコード内の報酬 | 営業経由、共同制作 |
ヒーロー(Hero) | クエストホーム最上部の大型アニメーション枠 | 営業経由 |
料金はどの商品も公開されていません。ミッションクエストの料金、最低出稿額、制作期間も非公開です。CPMで単価を比べるディスプレイ広告とは、評価の基準が違います。ディスプレイ広告の相場観は「ディスプレイ広告 費用 料金」を参照してください。
ミッションクエストの位置づけ
ミッションクエストは2026年7月22日に初めて発表された商品です。広告事業のバイス・プレジデントであるアダム・バウアー氏は、これを「報酬型広告であるクエストのシリーズに新しく加わる商品」と位置づけました。ディスコードの定義では、ユーザーはオプトインしたうえで、ストーリー仕立てのチャレンジなどブランド専用の体験を最後まで進めます(Discord公式)。

ディスコードが公表しているミッションクエスト独自の指標は2つです。
- 1回のミッションあたりのエンゲージメント時間の中央値: 7分
- ミッションクエスト完了者の平均ブランド想起率: 90%(ディスコード社内調査、約2,500人、2025年12月)
クエスト全体の広告完了率の中央値は、2026年3月31日時点で96%、6月30日時点で97%です(いずれもディスコード社内データ)。どれも自社調査の数値で、第三者が同じ条件で測ったものではない点に注意が必要です。
体験の中にブランドを入れ込むという意味では、プロダクトプレイスメントの発想に近い商品です。ただしプロダクトプレイスメントが既存の作品にブランドを置くのに対し、ミッションクエストはブランド専用の体験そのものを作り、ユーザーが自分で選んで遊ぶ点が違います。
主要パートナー
効果の計測では、カンター(Kantar)がブランドリフト(2025年5月から)、アップスフライヤー(AppsFlyer)がモバイルアプリ(2025年10月から)、ゲームサイト(Gamesight)がPC・コンソール(2025年10月からベータ)を担当しています。日本国内では、2026年5月に博報堂DYグループのARROVAがビデオクエストとプレイクエストの取り扱いを始め、CARTA ZEROが日本初のディスコード代理店パートナーに選ばれました。
広告主側: ラ ロッシュ ポゼ

ラ ロッシュ ポゼはロレアル・グループのデルマトロジカル・ビューティー事業部に属するブランドです。同じ事業部には CeraVe、Vichy、SkinCeuticals、Skinbetter Science があります。ロレアル公式では「世界No.1の皮膚科学スキンケアブランド」「世界で10万人の皮膚科医が推奨」「800件超の臨床試験」「医療界と50年以上協働」と紹介されていますが、いずれもブランド側の自己申告です。
主な製品は CICAPLAST BAUME B5+、ANTHELIOS UVMUNE 400、MELA B3 SERUM です。2019年からはAIの肌分析ツール SPOTSCAN+ を41か国超で無料提供しています。

親会社ロレアルの2025年度の売上高は440.5億ユーロ(成長率4.0%)、デルマトロジカル・ビューティー事業部は72億ユーロ(同5.5%)でした(L'Oréal 2025年度アニュアルレポート)。ラ ロッシュ ポゼ単体の売上は公表されていません。ブランドの設立年とロレアル傘下に入った年は、一次情報で確認できていません。
がん支援は「キャンサー・サポート(Cancer Support)」として2本の柱で進めています。皮膚がんの予防と早期発見を扱う「セーブ・ユア・スキン(Save Your Skin)」と、治療中の患者の生活の質を支える「ファイト・ウィズ・ケア(Fight With Care)」です。2026年のゲーミング・フォー・コーズが治療中のケアにテーマを広げたのは、2本目の柱に沿った動きです。PR Newswire のブランド紹介によると、キャンサー・サポートの取り組みで支援した人は150万人を超えます。
日本では、日本ロレアル株式会社のデルマトロジカル・ビューティー事業部のブランド一覧に掲載されています。
ここまでの歩み
ディスコード広告事業の時系列
ディスコードの広告は2024年に始まってから短い期間で商品を増やしてきました。
時期 | 出来事 |
|---|---|
2024年3月 | プレイクエスト開始(ディスコード初の広告商品。報道ベース) |
2024年10月 | ビデオクエスト開始(報道ベース) |
2024年11月 | HBO『Dune: Prophecy』のビデオクエスト。映画・TVの広告主に広がる |
2025年3月20日 | 初のモバイル広告フォーマットを発表 |
2025年5月28日 | カンターとブランドリフト計測で提携。オーブのテストを開始 |
2025年7月14日 | オーブをグローバルで開始 |
2025年10月2日 | アリーナクエスト(アルファ版)を発表。アップスフライヤー、ゲームサイトと計測で提携 |
2026年3月9日 | インスタント・プレイクエストなどを追加。完了率の中央値96%を公表 |
2026年5月 | ARROVA、CARTA ZEROが日本での取り扱いを開始 |
2026年7月22日 | ミッションクエストを発表(ソニー・ピクチャーズの映画『Resident Evil』) |
2026年8月20日 | プレイクエストプラスを発表(EA『バトルフィールド6』が第1弾) |
2026年9月29日 | Ads Manager とオークション型の新ビデオクエストを発表。旧ビデオクエストは「ビデオクエスト・リザーブ」に |
2026年10月22日 | ラ ロッシュ ポゼがミッションクエストでゲーミング・フォー・コーズを実施(今回) |
アリーナクエストと計測パートナーについては「Discord Arena Questsと計測提携」、プレイクエストプラスについては「Discord Play Quest+」で詳しく扱っています。

商品の変遷から読み取れること
報酬を受け取る条件はプレイ時間(プレイクエスト)、動画の視聴(ビデオクエスト)、ブランドが選んだゲーム群(アリーナクエスト)、ブランド専用の体験(ミッションクエスト)、ゲーム内の行動達成(プレイクエストプラス)と、少しずつ深くなってきました。同時に、Ads Manager でオークション型の枠を売る方向にも広げています。現時点では、作り込み型のプレミアム商品(ミッション、リザーブ、ヒーロー)と、量を取るオークション型(新ビデオクエスト)の二層に分かれつつあると考えられます。
今回の発表はこの上の層にあたります。これまで公式に公表されたクエスト広告の事例は、ゲーム、映画・TV、食品・飲料、外食、小売が中心でした。今回はそこに美容・ヘルスケアのブランドが加わった形です。
撤退・再編と今回の違い
今回の調査範囲では、クエスト広告事業そのものの撤退やサービス終了は見つかりませんでした。一方で再編はあります。
- 旧ビデオクエストは2026年9月に「ビデオクエスト・リザーブ」へ名前が変わり、新しいビデオクエストはオークション型の別商品になりました。
- 2025年10月に発表されたアリーナクエストは、現在の広告ページに独立した商品として載っていません。終了したのか、ほかの商品に統合されたのかは公表されていません。
- 2025年10月3日には、外部のカスタマーサービス業者が関わるセキュリティインシデントを公式に報告しています。広告事業と直接の関係はありませんが、媒体の信頼性を確かめるうえで把握しておきたい出来事です。
今回の施策はツイッチという他社プラットフォームのライブ配信をディスコード内の体験に取り込んだ点が、これまで公表された事例と違います。動画素材を流すだけでも、ゲームを起動させるだけでもない使い方です。その技術的な方式は公表されていません。
ゲーミング・フォー・コーズの歩み
時期 | 出来事 |
|---|---|
2025年9月19日 | 第1回。24時間超の配信、10か国13人のクリエイターが出演。視聴回数170万回超、総視聴時間28万時間、23万ドル超を集める。テーマは皮膚がんの予防と早期発見 |
2026年4〜6月 | 寄付先のスキン・キャンサー・ファウンデーション(The Skin Cancer Foundation)のプログラム「Destination Health Skin 2026」で、がんの疑い500件超(うちメラノーマ27件)を発見 |
2026年10月19日 | UICCが第2回の開催を告知 |
2026年10月22日 | 第2回。治療中のケアにテーマを広げ、ディスコードのミッションクエストを追加 |
数値の出典は第1回がUICC公式、寄付の使い道の成果がPR Newswireのリリースです。がんの疑い500件超は配信当日の成果ではなく、前年の寄付で支えたプログラムの成果です。第1回にディスコードが関わっていたかどうかは、UICCの記事に記述がなく確認できていません。
広告出稿事例
事例1: ラ ロッシュ ポゼ「ゲーミング・フォー・コーズ」(2026年10月)
- 実施内容: ディスコード内でニンジャのツイッチ配信を視聴し、コミュニティと交流できるミッションクエストを共同制作
- 広告主の業種: 皮膚科学スキンケア(美容・ヘルスケア)
- 効果指標: 今回の施策単体の結果は未公表。前年の第1回(ディスコード連携の有無は未確認)は視聴回数170万回超、総視聴時間28万時間、寄付23万ドル超
事例2: ソニー・ピクチャーズ 映画『Resident Evil』(2026年7月)
ミッションクエストの最初の事例です。ザック・クレガー監督の映画『Resident Evil』(2026年9月18日劇場公開)の予告編を、報酬付きの体験に変えたミッションクエストを7月23日からクエストホームで配信し、その後グローバルに広げました。
サンディエゴ・コミコンの期間中(7月23〜25日)には会場イベントも開き、予告編の上映、限定コンテンツ、景品、ディスコード・ショップのグッズ配布を行いました。ディスコードはこれを「クエストとリアル会場を組み合わせた初めての施策」と説明しています。
- 効果指標: 施策単体の結果は未公表。同じリリースで、フォーマット全体の指標としてエンゲージメント中央値7分、ブランド想起率90%を公表

事例3: パラマウント『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』
パズル型のプレイクエストを実施し、100万人超が参加しました。そのうち48.5万人はクエストから流入しています(Discord Ads)。ミッションクエストではありませんが、ゲーム会社以外の広告主が数値を出している数少ない事例です。
事例4: 食品・飲料、外食、小売のクエスト
ディスコードの広告ページには、ゲーム以外の業種の事例も載っています。表の下2行は、参考として載せたゲーム会社の事例です。
広告主 | 内容 | 公表されている指標 |
|---|---|---|
ウェンディーズ(Wendy's) | ディスコードでクエストを出した初のクイックサービスレストランのブランド | なし |
マウンテンデュー × ワールド・オブ・ウォークラフト | 食品・飲料ブランドとして初のディスコード・クエスト | なし |
ウォルマート(Walmart Skyward) | ビデオクエストで自社のディスコードサーバーにプレイヤーを呼び込んだ初のブランド | なし |
セカンド・ディナー『マーベル・スナップ』 | モバイルのビデオクエスト | 800万人超にリーチ |
プレイサイド『Mouse P.I. For Hire』 | ゲームのプロモーション | 純ROAS 4.5倍 |
参考として、2025年4月には美容ブランドのイー・エル・エフ・ビューティー(e.l.f. Beauty)が、ウィキッド・セインツ・スタジオのゲーム『ワールド・リボーン(World Reborn)』に独占ブランドパートナーとして参加し、ディスコードもコミュニケーションプラットフォームとして加わりました。これはゲームスタジオが主導したパートナー施策で、クエスト広告の出稿ではありません。
なぜこの動きが起きたのか

ディスコード側の理由として、広告主の業種を広げる流れがあります。最初の広告主はゲーム会社で、次に映画・TV、食品・飲料と外食、小売へと広がりました。ユーザーの90%超がゲームをプレイする場を、ゲームの集客以外にも売れる媒体にすることが、プレミアム商品を増やしている背景にあると考えられます。今回のアボット氏のコメントも「美容ブランドがゲーミングコミュニティとつながれることを示す」という言い方で、美容業界に向けた発信になっています。
ラ ロッシュ ポゼ側の理由は、がん支援をゲーマーに届けるための接点づくりです。2025年の第1回の配信が170万回超視聴されたことを受け、2026年は配信の外にあるゲーマーのコミュニティにも入口を作ったと読めます。ブランドの世界統括であるアレクサンドラ・レニ=カトリーヌ氏は「腫瘍学の専門家と影響力の大きいコンテンツクリエイターの世界を橋渡ししている」と述べています。医師と配信者とコミュニティを組み合わせ、ブランドが自分で語るより信頼されている人と場を借りる設計です。
ニンジャ本人がメラノーマ(皮膚がんの一種)の経験を公にしていることも、配信の説得力を支えています。リリースで本人は「メラノーマとの闘いは、早期発見がどれほど大事かをいつも思い出させてくれます」と語っています。
日本市場ではどうか

日本では、2026年5月からARROVAとCARTA ZEROがディスコード広告の取り扱いを始めています。ただし国内代理店の発表で触れられているのはビデオクエストとプレイクエストで、ミッションクエストが日本で買えるかは確認できていません。Ads Manager も現在は一部の広告主に限られ、セルフサーブの開始は2027年初頭の予定で、対象国は示されていません。
日本の広告主が今回と同じ施策を検討する場合、次の点が壁になります。
- 料金が公開されておらず、営業経由でしか買えない
- ミッションクエストはディスコードとの共同制作が前提で、制作期間と費用がわからない
- ディスコードの日本国内のユーザー数が公式に開示されていない
- 今回の施策は英語圏の配信者と米国の医師が中心で、日本向けの展開は確認できない
化粧品・ヘルスケアのブランドの場合は、表現の制約も考える必要があります。化粧品の広告が皮膚がんや治療の副作用に触れると、薬機法上の効能表現との関係が論点になります。法的な判断は個別に専門家へ確認すべきですが、今回のようながん支援の配信を日本でそのまま再現するのは簡単ではないと考えられます。
化粧品・ヘルスケアのブランドがディスコードのクエストを使った国内事例は、今回の調査では見つかりませんでした。
日本で同じ広告を実施する選択肢
ゲーマーにブランドを届ける手段は、ディスコードのクエスト以外にもあります。全体像は「ゲーム内広告とは」、国内外のサービスの違いは「ゲーム内広告プラットフォーム比較【2026年版】Ad-Virtua・Anzu・海外DSP・国内サービスの費用・実績・特徴を徹底比較」で整理しています。下の表では、ディスコードのミッションクエストと、日本国内で使えるゲーム内広告の選択肢の一つであるAd-Virtua(アドバーチャ)を比べています。
比較ポイント | ディスコード ミッションクエスト | Ad-Virtua |
|---|---|---|
広告の形 | ユーザーが自分で選んで遊ぶ作り込み型の体験。完了で報酬 | ゲーム空間内の看板・モニターに動画を配信するサイネージ型。報酬なし |
接触の深さと広さ | 1回の接触が深い(エンゲージメント中央値7分) | プレイ中に自然に目に入る接触を広く積み上げる |
素材 | ブランド専用の体験を共同制作 | 既存の動画素材を流せる |
料金 | 非公開 | 1週間30万円のプランを公開 |
国内での利用 | ミッションクエストは未確認(ビデオ・プレイクエストは国内代理店が取り扱い) | 国内400タイトル以上に配信 |
公表指標 | 完了者のブランド想起率90%(ディスコード社内調査) | 広告想起率約1.8倍、注目度約1.7倍、好感度約85%、CPM約300円(いずれもAd-Virtua公表値) |
公表指標の行は、測り方がまったく違うため数字同士を比べられません。ディスコードの90%はミッションを最後まで遊んだ人の想起率で、Ad-Virtuaの約1.8倍は倍率で示した値です。
Ad-Virtuaが合うのは、日本のゲーマーに今ある動画素材で早く届けたい企業、料金を先に確かめて予算を組みたい企業、医療的なメッセージより「ブランドを知ってもらい、思い出してもらう」ことを目的にする企業です。化粧品やヘルスケアの場合、表現の制約がある中でブランドの存在を知ってもらう施策としては、サイネージ型のほうが設計しやすいと考えられます。
合わないのは、配信者やコミュニティと組んだ参加型の体験そのものを作りたい企業、英語圏のゲーマーを主な対象にする企業、1人あたりの接触時間を最も重視する企業です。その場合は、ディスコードの国内代理店に、ミッションクエストの日本での提供状況を問い合わせるのが先になります。
食品・飲料の企業がゲームの記念日や新商品の発売に合わせて配信する場合は、「食品・飲料の新商品ローンチ×ゲーム内広告|タイミング設計ガイド【フェーズ別配信戦略】」も参考になります。
広告主が取るべき判断
こんな企業におすすめ
- 北米・欧州のゲーマーを対象にしたブランド施策の予算があり、ディスコードの営業と共同制作の体制を組める企業
- 社会貢献やブランドの姿勢を、若いゲーマーに参加型で伝えたい企業
- 日本国内では、ディスコードのビデオクエストやプレイクエストを代理店経由で試し、上位商品への足がかりを作りたい企業
おすすめしない企業
- 料金や効果の見込みを事前に数字で確かめないと稟議が通らない企業。ミッションクエストは料金も個別事例の結果も公表されていません
- 日本国内だけで完結する施策を考えている企業。ミッションクエストが日本で使えるかは未確認で、Ads Manager のセルフサーブも2027年初頭の予定です
- 化粧品・医薬部外品で、医療に関わるメッセージを広告に入れたい企業。国内の表現の制約を先に確認する必要があります
ミッションクエストの導入を見送る場合でも、World Gaming Dayのようなゲーム業界の記念日に施策を合わせるという発想は、国内の年間計画に取り入れられます。季節やキャンペーンに合わせた配信の組み方は「食品メーカー向けゲーム内広告 年間計画ガイド|季節・キャンペーン・新商品ローンチに合わせた配信設計」で解説しています。
関連する基礎知識
- ゲーム内広告とは: 種類、仕組み、効果指標の全体像
- リワード広告ガイド: ディスコードのクエストと同じ報酬型広告の基本
- プロダクトプレイスメント: コンテンツの中にブランドを入れ込む手法
- ディスプレイ広告 費用 料金: CPMで買う広告の相場
- ゲーム内広告プラットフォーム比較【2026年版】: 国内外のサービスの費用と特徴
- Discord Arena Questsと計測提携 / Discord Play Quest+: ディスコード広告のほかの商品
よくある質問
配信で集まった寄付金はラ ロッシュ ポゼの収入になるのですか?
なりません。告知画像の注記によると、寄付金はストリームラボ・チャリティ(Streamlabs Charity)を通じてUICCと参加している各国の団体に直接送られ、ラ ロッシュ ポゼは受け取りません。2026年回の寄付対象は、ブラジル、カナダ、フランス、メキシコ、スペイン(新規)、英国、米国のUICC会員団体のプログラムです。
「ミッションクエスト」と「ミッションズ」は別の商品ですか?
2026年7月の発表と今回のリリースでは「Mission Quests」、現在のディスコード広告ページでは「Missions」と書かれています。内容から同じ商品と見てよいと考えられますが、名前を変えたという公式の説明はありません。代理店に問い合わせる際は、両方の名前を伝えると話が早く進みます。
2025年回の最終的な成果はわかっていますか?
まだ全体は公表されていません。リリースでは「年内に公表予定」とされています。現在わかっているのは、UICCが公表した視聴回数170万回超、総視聴時間28万時間、寄付23万ドル超と、寄付先のプログラムの成果(皮膚がん検診1,400件超など)です。
ディスコードのクエストは、ゲームをしない人にも表示されますか?
クエストはアプリ内のクエストホームに並び、ユーザーが自分で選んで受ける仕組みです。ゲームを起動しなくても進められるビデオクエストやミッションもあります。ただしディスコードのユーザーの90%超はゲームをプレイしており、媒体の性格としてはゲーマーが中心です。
ディスコード広告の代理店はどう選べばよいですか?
国内では、2026年5月からARROVA(博報堂DYグループ)とCARTA ZEROがディスコード広告を取り扱っています。どちらも発表で触れているのはビデオクエストとプレイクエストなので、ミッションクエストやヒーロー枠を検討する場合は、提供できる商品の範囲を最初に確かめてください。


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