Robloxは2026年10月8日、ブランドや作品の権利者が自社のIPをクリエイターに許諾し、そのIPを使ったアバターアイテムが売れるたびに、自分で決めた料率の取り分を自動で受け取れる「マーケットプレイスライセンス(Marketplace License)」を始めた。日本の広告主から見ると、Robloxでの関わり方が「広告枠を買う」「自社のゲームを作る」「他社のゲームとコラボする」の3つに、「IPを許諾し、売れた分だけ受け取る」が加わったことになる。ただし権利者として登録するには全世界の独占的な権利が必要で、クリエイターが申請してこない限り何も起きないため、すでにファンがいるIPであることが前提の仕組みになる。

Robloxのアバターショップ画面。おすすめ欄のアイテムに「Licensed」バッジが付いている
告知に掲載されたアバターショップのデザイン見本。写っているアイテムは実在のIPではない。出典: Roblox Corporation(

発表の内容

Robloxは2026年10月8日、開発者フォーラム(DevForum)に「Create IP-Based Avatar Items With Marketplace Licenses」を公開した(Roblox DevForumの告知)。投稿したのはRobloxのスタッフで、経営陣や外部パートナーのコメントは載っていない。公式ニュースルームでのプレスリリースは、執筆時点で確認できていない。

告知の書き出しは「The Licensing catalog now supports Marketplace licenses to use approved IP」(ライセンスのカタログが、承認されたIPを使うためのマーケットプレイスライセンスに対応した)。告知とスレッド内のスタッフ回答から確認できた内容は次のとおり。

項目

内容

できるようになったこと

クリエイター(UGC制作者)が、権利者の承認したIP(作品・キャラクター・ブランド)を使ってアバターアイテムを作り、販売できる

対象のアイテム

体のパーツ(body items)、服(clothing)、アクセサリー(accessories)、アニメーション(animations)、メイク(makeup)

参加するかどうか

このライセンスを出すかどうかは、IPの権利者がそれぞれ決める

料率

権利者が決める。申請前にライセンス条件としてクリエイターに表示される

分配

販売のたびにRobloxが自動で分配する。リセール(二次流通)にも適用される

目印

ライセンスを受けたアイテムには「Licensed」バッジが付く。ゲーム内での表示は「coming soon」

1ライセンスあたりの上限

当初は最大100アイテム。今後は権利者が上限を決められるようになる可能性がある

1アイテムあたりのライセンス数

1つだけ。複数のIPを組み合わせたアイテムは作れない

ゲーム内で売る場合

自分のゲームでIPアイテムを売る場合も、ゲーム用のライセンスは別に要らない

ライセンスが終わったとき

期限切れや終了でアイテムは販売停止になる。購入済みのプレイヤーは持ち続けられる(アイテムが個別にモデレーションされた場合を除く)

今後の予定

ライセンス付きのアセットパックを「later this year」(2026年内)に提供予定。画像・モデル・メッシュ・音楽などを権限付きで共有する仕組みも検討中

ゲームの持ち主に入るアフィリエイト分について、スタッフはスレッドで「the affiliate share mechanics are not changing, it will still be 40%.」(アフィリエイト分の仕組みは変わらない。引き続き40%だ)と答えている(スレッド#12)。同じ投稿で、告知の画像の1つに誤りがあり差し替える予定だとも述べているが、どの画像かは示していない。

RobloxのIPライセンス制度の仕組み

Robloxのライセンス制度の創設パートナー。講談社、セガ、マテル、ライオンズゲート、Netflixのロゴ
ライセンス制度の公式ドキュメントに並ぶ権利者のロゴ。各ロゴの権利は各社に帰属する。出典: Roblox Corporation(

Roblox Corporation(NYSE: RBLX)は米カリフォルニア州サンマテオに本社を置き、創業者のデビッド・バズーキ(David Baszucki)がCEOを務める。2026年4〜6月期のDAU(1日あたりの利用者数)は1億2,300万(Roblox IR)。DAUは季節によって大きく変わるため、期間を添えて読む必要がある。

Robloxで取引の中心にあるのは、ユーザーが仮想通貨Robuxで買うアイテムだ。2026年9月の開発者会議RDC 2026では、クリエイターの収益は直近12か月で約17億ドル、Robuxを現金に換える制度(DevEx)が始まった2013年からの累計で50億ドル超と発表された。一方、2025年度の年次報告書(10-K)には「Bookings also include an insignificant amount from advertising and licensing arrangements.」とあり、広告とライセンスの売上はまだ小さいとRoblox自身が書いている。

今回の発表の中心にあるのは、権利者とクリエイターをつなぐIPライセンス制度だ。ここからはその仕組みを、権利者側のツール、権利者になる条件、ライセンスの種類、クリエイター側の手続き、お金の分かれ方の順に見ていく。

権利者側のツール「ライセンスマネージャー」

権利者はライセンスマネージャー(License Manager)で、IPの登録、ライセンス条件の設定、Roblox上でのIP使用のスキャン、収益の受け取りを行う(公式ドキュメント)。

  • スキャン: 公開中でよく遊ばれているゲームと販売中のアバターアイテムを、登録したキーワードと画像で自動照合する。照合には承認済みの画像が10枚以上必要で、結果は毎日更新される。対象は期間の定めのない永続ライセンスだけ
  • 料率: 0%〜95%の範囲で決める。一度でも契約に使われたライセンスは、料率と条件を変えられない
  • マーケットプレイス向けの設定: 販売場所(Collab > Marketplace)、リセールを許すかどうか、申請者の条件として直近90日のマーケットプレイスでの売上の下限(なし/1,000/10,000/100,000 Robux)
  • 期間: 永続か期間限定かを選ぶ。期間限定のライセンスは終了日に自動で終わり、アバターアイテムも販売停止になることがある
  • 収益の確認: クリエイターハブ(Creator Hub)の分析画面にある「License payments」に表示される。支払いの時期や方法はドキュメントに書かれていない

権利者になる条件

日本企業にとって最初の関門になるのが、権利者として登録する条件だ。ドキュメントには次のように書かれている。

  • IDと、確認済みのメールアドレス
  • 独占的な著作権、またはそれと同等の独占ライセンスと、全世界の権利を持っていること
  • 「商業化された5作品以上のポートフォリオ」か「定評あるRobloxクリエイターとの既存ライセンス」のどちらか
  • 所有の証明として、著作権・商標の登録証、権利譲渡契約、全世界の独占ライセンス契約などを最大3ファイル提出する
  • 代理人が登録する場合は、会社の公式レターヘッドに書いた委任状

対象外とされているのは、共有・非独占のライセンス、地域限定(per-territory)のライセンス、パブリックドメインを主張する人、特定のプラットフォームに限ったライセンシー、人間の作者が認められないAIだけで作った作品だ。

ライセンス収入はロイヤルティとして課税されるため、収益化しているゲームを公開していないアカウントで登録するよう求められている。

ライセンスの種類

ライセンスは現在3種類あり、今回のマーケットプレイスライセンスは3つ目にあたる。

種類

内容

開始

ゲーム全体(Full game license)

IPを使ってゲーム全体を作る。永続か期間限定。申請者の条件として最低DAU(なし/1,000/25,000)と年齢レーティングの上限を決められる

2025年7月15日

ゲーム内販売(In-game sales license)

特定のゲームの中で、IPを使ったゲームパスとデベロッパープロダクト(ゲーム内課金アイテム)を売る。ゲーム全体のライセンスは要らない

2026年9月12日

マーケットプレイス(Marketplace license)

IPを使ったアバターアイテムを売る。1ライセンスで1つの作品と1つの料率

2026年10月8日

スタッフはスレッドで、ゲーム単位のライセンスとマーケットプレイスライセンスは今は別々だが、統合する予定だと答えている。

クリエイター側の申請と出品

クリエイターは、クリエイターハブのLicensesページで「Request License」を押し、申請するアカウントかグループを選び、企画の説明(ピッチ)を書いて規約に同意する。承認は保証されず、権利者が公開しているコンテンツ基準とブランドガイドラインに照らして審査する。

承認されたら、アバターアイテムの設定画面でプルダウンからライセンスを選ぶ。販売場所と収益の欄(Sale Location and Revenue)に、権利者の取り分(IP Holder Share)が表示される。

Creator Hubのアイテム設定画面。License agreementのプルダウンで「20% of creator share」のライセンスを選んでいる
アイテム設定画面でライセンスを選ぶところ。「20% of creator share」は、クリエイター取り分の20%が権利者に入るという意味。出典: Roblox Corporation(

お金の分かれ方

権利者の取り分は「売上の何%」ではなく、「クリエイター取り分の何%」で決まる。ここを読み違えると、収入の見込みが大きくずれる。

公式ドキュメントには、料率10%で100 Robuxのアバターアイテムが売れた場合の計算例が載っている(クリエイター向けドキュメント)。

受取先

割合

100 Robuxの場合

販売者(ゲーム内で売れた場合はゲームの持ち主=アフィリエイト)

40%

40 Robux

アイテムの持ち主

30%

30 Robux(うち権利者3、クリエイター27)

Robloxの手数料

30%

30 Robux

料率10%は売上の3%、料率20%は売上の6%にあたる。告知に載っている画面例(料率20%)も同じ計算になっている。

販売場所

権利者

クリエイター

ゲームの持ち主

Roblox

マーケットプレイスで販売

6%

24%

なし

70%

ゲーム内で販売

6%

24%

40%

30%

販売場所ごとの分配表示。マーケットプレイス販売は権利者6%・クリエイター24%・Roblox70%、体験内販売は権利者6%・クリエイター24%・体験40%・Roblox30%
告知に掲載された分配の画面例(料率20%)。スタッフが告知内の画像の1つを差し替えると述べており、この画像が対象かどうかは示されていない。出典: Roblox Corporation(

告知の画面例では、権利者の取り分はクリエイターの取り分から差し引かれ、Robloxの手数料と販売者分は変わらない。

一方で、公式情報どうしに食い違いが残っている。告知と画面例は、マーケットプレイスで直接売れた場合にも権利者の取り分が発生すると示している。ところがドキュメントには「Items purchased outside of the game on the Marketplace are not subject to an IP license's revenue share rate.」(ゲームの外のマーケットプレイスで買われたアイテムには料率がかからない)という記述が残っている。ゲーム用ライセンス向けに書かれた古い記述が残っている可能性があるが、Robloxからの説明は確認できていない。スレッドでもユーザーが「説明が食い違っている」と質問しており、スタッフの回答は「アフィリエイトの40%は変わらない」「画像を差し替える」までにとどまる。

もう1つ未確認の点がある。マーケットプレイスでは、価格が下限価格の6倍以上ならクリエイターの取り分が最大70%まで段階的に上がる(手数料のドキュメント)。画面の説明にも「Your share depends on how your item is priced」とあるが、この段階的な取り分とIPの取り分がどう組み合わさるかは書かれていない。

Robloxのライセンス制度のこれまでの取り組み

今回の発表は単独の新機能ではなく、2025年7月に始まったライセンス制度の4段階目にあたる。

2025年7月の開始当時のLicensesカタログ。ダイバージェント、龍が如く、ストレンジャー・シングス、イカゲームなど7作品
2025年7月の開始時のカタログ。各作品の権利は各社に帰属する。出典: Roblox Corporation(

時期

出来事

2025年7月15日

ライセンスマネージャーとライセンスのカタログを開始。ライオンズゲート(Lionsgate)、ネットフリックス(Netflix)、セガのIPで始まり、講談社は「近く追加」とされた。最初のライセンスはゲーム全体への翻案だけ。「より多くのライセンスの種類」と、条件を満たす全ての権利者への開放を予告した。告知の著者はCPO(最高製品責任者)のマヌエル・ブロンスタイン(Manuel Bronstein)(公式ニュースルーム)

2025年9月5日

RDC 2025で、講談社の「ブルーロック」と「転生したらスライムだった件」の提供開始を発表。ライオンズゲートの追加作品、スキビディ・トイレ(Skibidi Toilet)、マテル(Mattel)の参加も発表した(公式ニュースルーム)

2025年10月15日

ライオンズゲートの3作品を追加し、申請時の企画書(ピッチ、1,000字まで)の機能を改善。スタッフがコメント欄で「アバターアイテムへのライセンス対応の要望が多い」と答えた(DevForum)

2026年6月24日

期間限定ライセンスを開始(3日〜3か月)。開始日に自動で収益化され、72時間前までキャンセルでき、終了後3日以内にIPを外したことを自己申告する。ちぃたん☆やピングー(Pingu)など8つのIPを追加した(DevForum)

2026年9月12日

ゲーム内販売ライセンスを開始。講談社の「FAIRY TAIL」「シドニアの騎士」「おばけずかん」を追加し、権限付きでアセットを共有する構想を初めて示した(DevForum)

2026年9月18日

2026年秋版のクリエイターロードマップで、期間限定ライセンスを提供済みと記載。アバターアイテムのライセンスはロードマップに書かれていなかった(DevForum)

2026年10月8日

マーケットプレイスライセンスを開始(今回)

2026年内(予定)

ライセンス付きのアセットパック

ライセンスの対象は、ゲーム全体(2025年7月)、期間限定(2026年6月)、ゲーム内の課金アイテム(2026年9月)、アバターアイテム(2026年10月)と、1年3か月で少しずつ細かくなってきた。権利者から見ると、ゲームを丸ごと任せるという大きな判断をしなくても、服1着やアクセサリー1つの単位からIPを出せるようになった。1年前にスタッフが「要望が多い」と答えていた機能が、ここで形になったことになる。

RobloxのLicensesカタログ画面。おばけずかん、シドニアの騎士、FAIRY TAIL、ポプテピピック、ブルーロックなど日本のIPが並ぶ
公式ドキュメントに掲載されたライセンスのカタログ(撮影日の記載なし)。各作品の権利は各社に帰属する。この画像からは、どの作品がマーケットプレイスライセンスを出しているかは分からない。出典: Roblox Corporation(

IPを出している主な権利者

公式に確認できた権利者とIPは次のとおり。ただし、このうちどれがマーケットプレイスライセンスを出しているかは確認できていない。告知にもIP名は書かれていない。

権利者

公式に確認できたIP(作品名は原題)

ライオンズゲート

Twilight、Saw、Now You See Me、Divergent、The Strangers: Chapters 1 & 2、Blair Witch、Fall

ネットフリックス

ストレンジャー・シングス(Stranger Things)、イカゲーム(Squid Game)

セガ

龍が如く(Like a Dragon)

講談社

ブルーロック、転生したらスライムだった件(2025年9月時点で提供中)、FAIRY TAIL、シドニアの騎士、おばけずかん(2026年9月に追加)

マテル

Polly Pocket、Street Sharks、Rock 'Em Sock 'Em Robots、Matchbox(RDC 2025で「近く提供」)、ピングー(2026年6月時点で追加済み)

インビジブル・ナラティブズ(Invisible Narratives)

スキビディ・トイレ

2026年6月に追加されたIP

Oddbods、ピングー、Fleak、The Moon Woke Up、Supa Strikas、Pocoyo、ちぃたん☆、Latina Superheroes

カタログの画像には、GUNGRAVE、OSHIZUSHI、ポプテピピック、Cosmic Princess Kaguya!も写っている。これらの権利者名とカタログへの追加日は確認できていない。

撤退や変更の例

ライセンス制度で撤退した機能は、執筆時点で確認できていない。ただし2026年9月12日の告知では、講談社の当初のラインナップが「さらなる検討の結果」差し替えられている。権利者側の判断で提供するIPが変わることがある、という例になる。

IPライセンスとRobloxの広告出稿事例

マーケットプレイスライセンスを使ったブランドの公式の事例は、開始から3週間の時点では見つかっていない。告知にもIP名は書かれていない。ここでは、ライセンス制度の活用例、制度を使わない個別のIPコラボ、Robloxの広告枠の3つを並べ、手段ごとに何が公表されているかを比べる。

事例1: 講談社「ブルーロック」のゲーム

Robloxの公式ドキュメントは、ライセンス制度の紹介ページに、講談社の「ブルーロック」を題材にしたRobloxのゲーム「Blue Lock: Rivals」のビジュアルを「For creators: unleash your creations」という説明とともに載せている。

講談社「ブルーロック」を題材にしたRobloxのゲーム「Blue Lock: Rivals」のキービジュアル
公式ドキュメントにライセンス制度の活用イメージとして掲載されたビジュアル。作品の権利は講談社に帰属する。出典: Roblox Corporation(
  • 実施内容: 漫画のIPを題材にしたRobloxのゲーム
  • 公表されている効果指標: なし。このゲームが正式にライセンスを受けた作品だという明記も、今回は確認できていない

日本の出版社のIPが、Robloxのライセンス制度を紹介するページの見本として使われている。日本の権利者にとっては、制度の中での自社IPの扱われ方を考える材料になる。

事例2: e.l.f.コスメティックス×サンリオ「クロミ」

米国のコスメブランドであるe.l.f.コスメティックス(e.l.f. Cosmetics)は2026年10月20日、Robloxで運営する自社のゲーム「Glow Up!」に、サンリオのクロミ専用ロビーと限定アイテムを期間限定で追加したと発表した。詳しくはe.l.f.×クロミのRobloxコラボの解説記事で扱っている。

クロミ柄のニット帽と衣装を身につけたアバターがクロミのフィギュアを手に乗せる「Glow Up! [KUROMI]」のサムネイル
e.l.f.のRobloxゲーム「Glow Up!」のクロミコラボ版のサムネイル。キャラクターの権利はサンリオに帰属する。出典: Roblox(
  • 実施内容: 自社のゲームに外部のIPを期間限定で招き、限定アイテムを用意した
  • 公表されている効果指標: Glow Up!はローンチ以来1,200万回超の訪問、e.l.f.のRobloxのゲーム全体で4,500万回超の訪問(e.l.f.公式発表)

発表にはライセンス制度を使ったかどうかが書かれておらず、企業どうしの個別契約とみられる(未確認)。今回の制度と比べると、ブランドが自社の場で個別に交渉して進めるIPコラボの例になる。

事例3(参考): ユニバーサル・ピクチャーズの広告出稿

Robloxは2026年1月のCESに合わせた公式リリースで、ユニバーサル・ピクチャーズ(Universal Pictures)の映画プロモーションが「Wicked: For Good」で80億インプレッション、「Jurassic World Rebirth」で20億インプレッションに達したと公表している(Roblox公式ニュースルーム)。

  • 実施内容: Roblox上での映画のプロモーション
  • 公表されている効果指標: 上記のインプレッション数

3つの事例を並べると、手段によって公表される指標が違う。広告はインプレッション、自社のゲームは訪問数で成果が示される。ライセンスの成果を販売数以外で示す指標は、Robloxからまだ出ていない。

マーケットプレイスライセンスが始まった背景

ソファでゲームコントローラーを握り、一緒にゲームを楽しむ親子

事実から言える背景は3つある。

1つ目は、以前から要望の多かった機能だという点だ。2025年10月の時点で、スタッフはアバターアイテムへのライセンス対応の要望が多いとコメント欄で答えていた。

2つ目は、アバターアイテムがRobloxで最大の商流だという点だ。これまでのライセンスはゲーム単位で、アバターアイテムにはIPライセンスが入っていなかった。今回の制度では、権利者が設定した料率に沿って販売のたびに自動で分配される。権利者とクリエイターが1件ずつ契約を交わさなくても、IPを使ったアイテムを売れるようにする狙いがあると考えられる。

3つ目は、Robloxがブランドとクリエイターの間のお金の流れにルールと取り分を入れてきている点だ。2026年3月には広告統合のポリシーを改定し、2027年1月1日からブランド提携の収益にRobloxの取り分を設けると発表している(広告収益の分配ルールの解説記事)。広告統合はCPM課金、IPライセンスは料率と、仕組みは違う。それでも、これまで当事者どうしの契約に任されていた取引をRobloxの仕組みの中に取り込む動きとして、両者は共通している。

RDC 2026で発表された「Moments」では、2026年10月から米国で、アバターをタップしてアイテムを買える導線が始まっている(RDC 2026の解説記事)。ライセンス付きのアイテムが売れる場所は、今後広がっていく可能性がある。

日本市場ではどうか

日本の権利者はすでに制度の中心にいる

ライセンス制度の立ち上げに参加した4社のうち、講談社とセガの2社は日本企業だ。講談社は2026年9月までに少なくとも5作品をカタログに出しており、カタログの画像にはちぃたん☆やポプテピピックなど、日本のIPがほかにも並ぶ。

制度の開始時に、講談社の代表取締役社長の野間省伸氏は「The creativity of the Roblox community is truly inspiring」(Robloxコミュニティの創造性には本当に刺激を受ける)とコメントしている(2025年7月15日の公式ニュースルーム。英語版からの訳で、日本語の原文は確認できていない)。

ただし、日本のIPがマーケットプレイスライセンスを出しているかは確認できていない。講談社とセガの日本語での発表も確認できていない。

日本の広告主がすぐ使えるか

論点

状況

利用できる地域

告知とドキュメントに地域の制限は書かれておらず、日本企業が登録できないという記述もない。ただし、使えると明記されているわけでもない

権利の条件

全世界の独占的な権利が必要で、地域限定のライセンスは対象外。日本国内向けの権利しか持たない企業(海外IPの国内代理店や、地域ごとに権利を分けているキャラクターなど)は、自社では登録できない可能性が高い

実績の条件

商業化された5作品以上か、Robloxクリエイターとの既存ライセンスが必要。商品ブランドが1つだけの消費財メーカーがこの条件を満たすかは、ドキュメントからは判断できない

運用の負担

申請ごとの審査、ブランドガイドラインの用意、変更できない料率の決定、スキャン結果の確認。英語の画面と英語での審査が前提になる

収入の規模

料率20%でも売上の6%。100 Robuxのアイテムなら6 Robuxになる。まとまった収入にするには、大量に売れる必要がある

税務

ライセンス収入はロイヤルティとして扱われる。日本企業の源泉徴収などの扱いは確認できていない

国内に同じ仕組みはあるか

日本国内のゲームやメタバースのプラットフォームで、権利者が料率を決め、クリエイターがアイテムにし、販売のたびに自動で分配される仕組みがあるかは、今回の調査では確認できていない。国内のIP活用は企業どうしの個別契約によるコラボが中心と考えられるが、それを裏づける調査データはない。日本のRobloxのユーザー数も公表値を確認できていない。

参考までに、2025年の日本の総広告費は8兆623億円、そのうちインターネット広告費は4兆459億円だった(電通「2025年 日本の広告費」)。

日本で検討できる選択肢

ノートパソコンを囲んで施策を話し合うマーケティング担当者たち

マーケットプレイスライセンスは、クリエイターが「このIPでアイテムを作りたい」と申請してこない限り何も起きない。すでにファンがいることが前提の仕組みで、まだ知られていないブランドの認知を広げる手段にはならない。日本の広告主が検討する場合は、Robloxでの4つの関わり方を役割で分けて考えるとよい。

比較ポイント

広告枠を買う

自社のゲームを作る

既存ゲームとコラボ

IPを許諾する(今回)

ブランド側の制作

広告素材を用意する

ゲームを企画・制作・運営する

相手のゲームに合わせて企画する

制作しない。審査とガイドラインを用意する

表現の管理

用意した素材がそのまま出る

自社で決められる

相手と調整する

クリエイターに任せたうえで審査する

お金の流れ

ブランドが支払う

ブランドが支払う

個別契約による

アイテムが売れるとブランドが受け取る

前提

予算

予算と運営体制

相手との合意

全世界の独占権とファンのいるIP

公表されている成果指標

インプレッション

訪問数

訪問数など

販売数以外は示されていない

日本国内の生活者に、日本語で、期間と予算を決めて広告を届けたい場合は、国内のゲームタイトルを横断する広告ネットワークも選択肢になる。その一つがAd-Virtuaで、国内400タイトル以上のゲーム空間にある看板やモニターに、既存の動画素材を配信できる。ゲーム内広告の種類や仕組みはゲーム内広告とはで整理している。

Robloxのライセンスとは役割が違う。ライセンスは、すでにファンのいるIPを世界のRobloxユーザーに身につけてもらう仕組みで、Ad-Virtuaは、まだ知られていない段階から国内の生活者との接点を作る手段にあたる。順序としては、広告で知ってもらい、ファンが生まれたあとにIPとして身につけてもらう流れになる。日本のRobloxユーザー数の公表値は確認できていないため、両者のリーチの大きさは比べられない。

Ad-Virtuaが合う企業

  • 国内の若年層に、ブランドや新商品をまず知ってもらいたい企業
  • TVCMやSNS用に作った動画素材を、ゲーム空間でも使いたい企業
  • 配信期間と予算を決めて、広告として出稿したい企業

Ad-Virtuaが合わない企業

  • 全世界の権利を持つキャラクターIPを、海外のRobloxユーザーに商品として広げたい企業。この場合はRobloxのライセンス制度が直接の選択肢になる
  • アバターアイテムの販売収入そのものを目的にしている企業

国内での出稿条件はAd-Virtuaへのお問い合わせから確認できる。

広告主が取るべき判断

今動いてよい企業

  • 全世界の独占的な権利を持ち、海外にもファンがいるキャラクターやブランドを持つ企業
  • Roblox上で自社IPがどう使われているかを把握したい企業。登録したIPは、スキャンで人気のゲームと販売中のアバターアイテムを照合できる
  • 英語での審査と、ブランドガイドラインの整備を担当できる人がいる企業

様子見でよい企業

  • 日本国内向けなど、地域限定の権利しか持たない企業。制度の条件から外れる可能性が高い
  • 商品ブランドが中心で、キャラクターや作品としてのファンがまだいない企業。申請が来なければ、ライセンスを用意しても何も起きない
  • 料率を決める根拠がまだない企業。一度契約に使われた料率は変えられないため、マーケットプレイスで直接売れた場合の取り分などの説明が整うのを待ってもよい

判断の前に確かめること

  • マーケットプレイスで直接売れた場合に権利者の取り分が発生するか。告知とドキュメントで説明が食い違っている
  • 期間限定にするか、永続にするか。スキャンの対象は永続ライセンスだけ
  • ライセンスが終わったときの扱い。販売は止まるが、購入済みのアイテムはプレイヤーの手元に残る

関連する基礎知識

よくある質問

Robloxの開発者が、自分のゲームのIPをほかのクリエイターに許諾することもできるか

できる。人気ゲームの開発者からの質問に、スタッフは「Yes! This is possible today if a Roblox developer onboards to use License Manager.」(Robloxの開発者がライセンスマネージャーに登録すれば、今日から可能だ)と答えている(スレッド#16)。IPを所有している証明などが必要で、今後もっと簡単にしていく予定だという。日本の企業がRobloxで自社のゲームを運営している場合、そのゲームのキャラクターをほかのクリエイターに使ってもらう道もあることになる。

ゲームパスやゲーム内課金アイテムでは、権利者の取り分はどう計算されるか

アバターアイテムと同じく、アイテムの持ち主の取り分に料率をかける。公式ドキュメントの料率10%の例では、ゲームパスの場合、持ち主の60%のうち6が権利者、54が持ち主に入り、アフィリエイト分10%のうち1が権利者に入る。Robloxの手数料は30%。サブスクリプションとデベロッパープロダクトの場合は、持ち主の70%のうち7が権利者、63が持ち主で、Robloxは30%になる。

権利者の取り分を日本円に換算するといくらになるか

分配はRobux建てで行われる。Robuxを現金に換える際のレートは今回確認していないため、本記事では円に換算していない。支払いの時期と方法も、公式ドキュメントには書かれていない。収入を見積もる場合は、Robloxに直接確認する必要がある。