Microsoftの特許出願 US 2026/0260258 A1 が公開され、ゲームの区切りでプレイを一時停止して広告を流し、見た人に「広告なしで遊べる時間(クレジット)」を渡す仕組みが2026年9月に海外で広く報じられた。日本の広告主にとっては、プラットフォーマーがPC・コンソールの「プレイ時間」を広告の対価にしようとしていることを示す材料になるが、製品化の発表はなく、この方式の広告は国内外のどこでも買えない。
この仕組みと同じ内容の出願は2023年にも出されており、その出願は審判を経て2026年5月に放棄された。以下ではその経緯も含めて今回の特許の位置づけを整理する。
発表の内容
何が公開されたか
公開されたのは、米国特許商標庁(USPTO)の特許出願公開 US 2026/0260258 A1 である(USPTO 公報PDF)。報道によれば、名称は「Contextually Aware Management of Interactive Software Application Access」、出願人はMicrosoftの知的財産を管理する子会社マイクロソフト・テクノロジー・ライセンシング(Microsoft Technology Licensing)である。公報PDFは画像のスキャンで、本文を読み取れなかったため、名称と出願人は報道ベースの情報になる。出願日、公開日、発明者、請求項も一次情報では確認できていない。
最初に報じたのはゲームメディアのRespawnFirstで、2026年9月17日の記事だった(RespawnFirst)。その後、9月18日から30日にかけて、Tom's Hardware、Polygon、Eurogamer、IGN、MediaPost、GamesIndustry.biz、Forbesなど50本以上の英語記事が続いた。
多くの報道は「2026年に出願(filed)」と書いているが、正確には2026年に「公開(published)」された出願である。出願日は確認できていない。
報道が伝える仕組み
RespawnFirst、PocketGamer.biz、Pure Xboxの記事を突き合わせると、仕組みは次の4段階になる。
- 区切りの検知: ゲーム側がロード画面、メニュー、クエストやラウンドの終了、ボス戦の後、カットシーンの終わりといった区切りを知らせる。報道が引用した要約では、これを「プロモーテッド・コンテンツ・トリガー・イベント(promoted content trigger event)」と呼んでいる
- 受付時間帯: 最初に広告なしの時間(例: 30分や1レベル)が与えられ、残りが少なくなると、広告を受け付ける短い時間帯が開く。この時間帯の外で区切りが来ても広告は出ない。RespawnFirstによれば、ボス戦や試合の最中にも出ない
- 一時停止と広告: 時間帯の中で区切りが来ると、ゲームの状態と操作を止め、動画か静止画の広告を表示する。ゲームの進行は失われない
- クレジットの付与: 視聴が終わるとクレジットが付き、次の広告なしの時間が始まる。長さは15分から1時間以上。「5ラウンド」「1レベル」「オンライン対戦3試合」「特定のNPCを倒す」のように、ゲームの進行で決めることもできる
Pure Xboxが引用した特許の文言は「ユーザー体験に悪影響を与えないように、コンテンツ内の予測可能なさまざまなタイミングに配置する(placed at a variety of predictable times in the content without adversely affecting the user experience)」である。
対象のプラットフォームは報道によって書き方が異なる。GamesIndustry.bizはPCとXbox、NotebookcheckはPC・コンソール・クラウド、Pure Xboxはコンソール・PC・スマートフォンと書いている。
Microsoft/Xboxはこの特許について公式に発表もコメントもしていない(2026年10月28日時点、当サイトで確認した範囲)。PocketGamer.biz、Pure Xbox、HotHardwareは、特許の出願が製品化を意味するわけではないと明記している。
2023年に出された同じ内容の出願
報道が伝える具体的な数字は、Microsoftが2023年5月1日に出願し、2024年11月7日に公開された米国特許出願 US 2024/0370894 A1「Contextually aware promoted content in interactive software application」の本文と一致する(Google Patents)。
報道が伝える内容(2026年9月) | 2023年出願(US 2024/0370894 A1)の記載 |
|---|---|
広告なしの時間は15分〜1時間以上 | "15 minutes, 30 minutes, 1 hour, or longer" |
5ラウンドをクリア | "5 rounds of gameplay" |
オンライン対戦を3試合 | "completing 3 online multiplayer matches" |
NPCを倒す | "defeating a particular non-playable character (NPC)" |
ロード画面・ラウンド終了画面 | "during a loading screen, a round end screen, a title screen, a save screen" |
トリガーイベント、クレジット | 要約と請求項で同じ用語を使用 |

2023年出願の本文と請求項から、報道にない点も読み取れる。
- 区切りを判断する材料は3種類ある。開発者がAPIで知らせるヒント、ユーザーの操作、マシンビジョンや機械学習でゲーム内の出来事を検知するモデルである
- 広告中はアプリの一時停止、中断、入力のブロックのいずれかを行う。止めると危ない場面の例として、レースゲームで車がクラッシュする場面が、止めても安全な場面の例として、チームの拠点にいるアバターが挙げられている
- 受付時間帯は、クレジット期間の終わりの10〜20%、または最後の2分や5分などと書かれている
- クレジットの長さはゲームモードや時間帯によって変えられる
- 請求項は全21項(うち5項は取り下げ)。請求項1の要旨は「受付時間帯を設定し、その前に来たトリガーは無視する。時間帯の中ではユーザーの操作を中断して広告を表示し、操作を再開させたうえで、その後の中断をクレジット期間のあいだ遅らせる」というもの
- 請求項19はアプリをリモートの機器で動かし、映像をクライアントに送る構成を対象にしている。クラウドゲーミングに当たる構成である
- クライアント機器の例として、ビデオゲーム機、ノートPC、デスクトップPCを挙げている

今回の US 2026/0260258 A1 は名称が変わっているが、報道が伝える出願人と仕組み、具体値は同じである。同じ技術を別の請求範囲で出し直した後続の出願である可能性があるものの、今回の公報の出願日や優先日、2023年出願との関係は確認できていない。
Xboxの広告事業とクラウドゲーミング
特許の出願人はMicrosoftの知的財産管理会社だが、この仕組みが実際に使われるとすれば、関わるのはXboxの2つの事業である。広告を売る「Xbox Media Solutions」と、広告付きの無料枠をテストしている「Xboxクラウドゲーミング(Xbox Cloud Gaming)」だ。
特許の出願人と発明者
2023年出願の出願人はMicrosoft Technology Licensing, LLCで、Microsoftの特許を保有・管理する子会社である。発明者はジャレッド・E・ヘンダーソン(Jared E. Henderson)、ダニエル・G・ケネット(Daniel G. Kennett)、モーガン・アッシャー・ブラウン(Morgan Asher Brown)、ショーン・ファーカス(Shawn Farkas)、ジョセフ・ウィーラー(Joseph Wheeler)、スティリアノス・ツィナログル(Stylianos Tsinaroglou)、イーアン・チエン(Yi-An Chien)の7人と記載されている。
発明者がXbox部門の所属かどうかは、公式情報では確認できていない。今回の US 2026/0260258 A1 の発明者も確認できていない。
Xbox Media Solutionsの広告メニュー
Xbox Media Solutionsは、マイクロソフト・アドバタイジング(Microsoft Advertising)の傘下で、Xbox・PC・モバイルをまたいでゲーム広告を販売する部門である。モバイルの在庫には2023年に買収したActivision Blizzard傘下のKing(『キャンディークラッシュ・サーガ』の開発元)のゲームが含まれる。
Microsoft Advertisingの公式サイトに掲載されている主な商品は次の3つである。
商品 | 内容 |
|---|---|
リワード・インゲーム・ビデオ(Rewarded In-Game Video) | 視聴するとゲーム内の報酬がもらえる、任意視聴の動画広告 |
プレイアブル(Playables) | ブランドが提供するミニゲーム型の広告 |
リワード・ポータル(Rewarded Portal) | レベル選択画面などに組み込む新しいフォーマット。ハーシーズの事例で初めて公表された |
公式サイトが示す効果指標は、ビューアビリティ98%、購入意向2.3倍、ブランド認知4.4倍などである。比較対象は「他のデジタルパブリッシャー」とされている。
今回の特許とつながりが深いのはリワード・インゲーム・ビデオだ。見返りの中身(ゲーム内のアイテムか、広告なしで遊べる時間か)は違うが、「広告を見た人に見返りを渡す」構造は共通している。
Xboxクラウドゲーミングと「時間」の課金

Xboxクラウドゲーミングは日本を含む29か国で提供されている(2025年11月、Xbox公式)。2026年11月から、Game Passのクラウド利用に月間の時間上限(Essential 5時間/Premium 10時間/Ultimate 15時間)が導入される。
Game Passのほかに、Xboxはクラウドで遊ぶ方法を2つ用意しつつある。1つは広告なしの時間パック「クラウドプレイタイム(Cloud Playtime)」で、導入価格は10時間3.99ドル、25時間7.99ドル、50時間11.99ドル。もう1つは広告付きの無料プレイで、Xbox Insider(プレビュー版の参加者)限定でテスト中である(2026年9月3日・10月21日、Xbox Wire)。
特許の「広告を見ると広告なしの時間がもらえる」仕組みは、既存のリワード広告と、クラウドの時間課金の両方に近い。ただし、どちらかの製品にこの特許を使うという公式発表はない。
ここまでの歩み
Microsoftのゲーム広告と、今回の特許に関わる出来事を古い順に並べる。
時期 | 出来事 |
|---|---|
2006年5月4日 | ゲーム内の看板などに広告を差し込むMassive Inc.の買収を発表。金額は非開示(報道では約2〜4億ドル) |
2010年10月 | Massiveを閉鎖し、ゲーム内広告から撤退(報道ベース) |
2022年6月 | 広告テクノロジーのXandrの買収を完了。金額は非開示(報道では約10億ドル) |
2022年12月 | ゲーム内でパーソナライズ広告を表示するMicrosoftの特許出願が報じられる(PCMag。今回の特許との関係は未確認) |
2023年5月1日 | 今回と同じ仕組みの特許を出願(US 18/141,905) |
2023年10月13日 | Activision Blizzardの買収を完了し、Kingの広告在庫を得る |
2024年11月7日 | 2023年出願が公開(US 2024/0370894 A1) |
2024年11月11日 | 2023年出願について審判を請求 |
2026年2月19日 | 2023年出願の審決(内容は未確認) |
2026年2月28日 | Xandr由来のDSP「Invest」を終了(報道ベース) |
2026年4月21日 | Game Pass Ultimateを29.99ドルから22.99ドルに値下げ。この時点ではクラウドは「無制限」と明記 |
2026年5月13日 | 2023年出願を放棄(Google Patentsの表示。Googleは推定と注記) |
2026年7月23日 | 広告付きクラウドストリーミングのテストを開始(Insider限定)。「ゲームプレイの流れを中断しない」を含む広告の5原則を公表 |
2026年9月3日 | Game Passのクラウドに月間時間上限を導入すると発表 |
2026年9月(日付未確認) | US 2026/0260258 A1 が公開 |
2026年9月17日 | RespawnFirstが最初に報道 |
2026年10月21日 | 広告なしの時間パック「クラウドプレイタイム」をInsider向けにテスト開始 |
2026年11月(予定) | 時間パックの一般提供と、Game Passの時間上限の適用 |
Massiveの撤退
Microsoftがゲーム内広告に取り組むのは初めてではない。2006年に買収を発表したMassiveは、ゲームの世界の中にある看板などに広告を差し込む会社だったが、2010年に閉鎖されたと報じられている。
Massiveの広告はゲームの世界に溶け込ませる方式で、プレイは止めない。今回の特許はプレイを止めて広告を見せる方式で、考え方が逆になっている。
2023年出願の放棄
同じ構想の最初の出願は、2024年11月に審判が請求され、2026年2月の審決を経て、同年5月に放棄された(Google Patentsの表示)。審決の内容は確認できていないが、放棄の表示どおりであれば、最初の出願は特許として成立していない。今回の公報は同じ技術の権利化に向けた2回目の試みとみられる。
2023年5月の出願は広告付きクラウドストリーミングのテスト(2026年7月)より3年以上前である。今回の仕組みは2026年のクラウドの方針転換を受けて考えられたものではなく、Microsoftが2023年から権利化を目指してきた構想と考えられる。
Xandr DSPの終了
2022年に買収したXandr由来のDSP「Invest」は、2026年2月に終了したと報じられている。広告技術を自前で抱える戦略を見直した動きとみられる。
広告付き枠から時間パックへ

2026年7月23日に始まった広告付きクラウドストリーミングのテストでは、広告はセッションの開始前に流れる。このときXboxは広告の原則として「ゲームプレイの流れを中断しない(We do not interrupt the flow of gameplay.)」を掲げ、ブランドに向けては「ここに登場することが体験を損なうのではなく、体験に何かを加えるものでなければ成り立たない」と書いた。テストの詳細はXbox「広告付きゲームストリーミング」テスト開始の解説にまとめている。

9月3日には時間上限の導入が発表され、残りのプレイ時間を表示する画面のイメージも公開された。10月21日には、広告なしの時間をお金で買う時間パックのテストが始まった(Xbox Cloud Playtimeの価格と仕組みの解説)。
今回の特許の位置づけ
Xboxのクラウドで遊ぶための手段を並べると、次のようになる。
手段 | 何と引き換えに遊ぶか | 状況 |
|---|---|---|
Game Pass | 月額料金(月5〜15時間) | 2026年11月から上限を適用 |
時間パック | 購入代金(10〜50時間) | Insider向けテスト、11月に一般提供予定 |
広告付き無料 | セッション開始前の広告 | Insider限定のテスト |
ad-credit(特許) | 区切りごとの広告視聴で得る時間 | 特許出願の段階。製品化の発表なし |
お金で時間を買う方法、開始前に広告を見る方法に加えて、プレイの区切りで広告を見て時間を得る方法が、特許の形で示されたことになる。ただし、2023年出願はクライアント機器の例にゲーム機やPCを挙げ、リモートで動かして映像を送る構成は請求項19で扱っている。クラウド専用の仕組みと決めつけることはできない。
広告出稿事例
特許の仕組み(区切りでプレイを止める広告とクレジット)は製品化されておらず、出稿事例は存在しない。ここでは、Xboxの広告事業で公表されている事例を2件紹介する。どちらもKingのモバイルゲーム内の広告で、PC・コンソールでプレイを止める広告の事例ではない。
Hershey's KISSES × キャンディークラッシュ・サーガ「Holiday Bells」
ハーシーズ(Hershey's)のチョコレート「KISSES」が、Kingのパズルゲーム『キャンディークラッシュ・サーガ(Candy Crush Saga)』でホリデーキャンペーン「Holiday Bells」を実施した事例で、2026年5月26日にMicrosoft Advertisingの公式ケーススタディとして公開された(Microsoft Advertising)。
組み合わせたフォーマットは、スポンサー付きのギフト(Sponsored Gift)、リワード動画(Rewarded Video)、プレイアブル、リワード・ポータルの4つ。公表された結果は次のとおりである。
指標 | 結果 |
|---|---|
インプレッション | 4,000万以上 |
クリック | 167万 |
クリック率(CTR) | 4.3% |
広告想起 | +55ポイント(2.3倍) |
購買意向 | +7ポイント(2.5倍) |

視聴の対価としてゲーム内の報酬を渡すリワード型の広告を組み込んだ施策で、特許の「対価として広告なしの時間を渡す」発想と並べて見ると、見返りの中身の違いが分かる。
リワード・インゲーム・ビデオの掲載ブランド
Microsoft Advertisingのリワード・インゲーム・ビデオの製品ページには、メイベリン(Maybelline)などのブランドの広告がゲーム内でどう表示されるかの実装イメージが掲載されている(Microsoft Advertising)。このページに個別の効果指標は書かれていない。商品全体の指標としては、前章で触れたビューアビリティ98%などが公式サイトに示されている。

2件ともスマートフォン向けのゲームの広告である。特許が想定するPC・コンソールで、プレイの区切りに止めて流す広告に同じ効果が出るとは限らない。
なぜこの動きが起きたのか

広告の対価が「時間」になる
Xboxはクラウドの課金の単位を「時間」に変えつつある。特許のクレジットはその時間を広告の視聴で手に入れる仕組みと読める。テレビや動画配信の「広告付きプラン」では、広告を見る代わりに料金が安くなるか無料になる。ad-creditはその考え方を、ゲームのプレイ時間に当てはめたものと考えられる。
中断型とリワード型の組み合わせ
特許の仕組みは2つの既存の広告を組み合わせた形になっている。ゲームの区切りで全画面の広告を出す点はインタースティシャル広告に、見た人に見返りを渡す点はリワード広告に近い。この2つの違いはゲーム広告の種類一覧で整理している。
特許で特徴的なのは、区切りを判断する材料に開発者のAPIや機械学習を使い、受付時間帯とクレジットで「いつ広告を出してよいか」を制御する点である。ラウンドやレベル、NPCの撃破といったゲームの進行と広告を結びつける考え方は、広告ゲームの仕組みで扱っているゲームの設計にも通じる。
「中断しない」原則との食い違い
Xboxは2026年7月に「ゲームプレイの流れを中断しない」という原則を掲げた。特許は「自然な区切りで止める」ことで体験を損なわないとしているが、プレイを止めて広告を見せる点は変わらない。報道とゲーマーの反応は「結局は中断する広告だ」というもので、ComicBook.comは「史上最悪のゲームのアイデアのひとつになりかねない」、Creative Bloqは「ゲーマーにとって悪夢」といった見出しを付けた。
ただし、Xboxはこの特許を製品に使うとは発表していない。7月の原則と特許のどちらが今後の製品に反映されるかは、現時点では分からない。
他のプラットフォーマーの動き
2026年5月には、ソニー(PlayStation)がロード画面に広告や生成AIのコンテンツを表示する特許を出していたと、MP1stやInsider Gamingなどが報じた。公報番号と内容は一次情報で確認できていない。報道どおりであれば、ロード画面のような「待ち時間」を広告に使う発想は、Microsoftだけのものではないことになる。
日本市場ではどうか

日本で使えるか
使えない。特許は製品化されておらず、Microsoftも計画を発表していない。関連する広告付きクラウドストリーミングのテストもInsider限定で、日本が対象かどうかは確認できていない。Xbox Media Solutionsの日本向けの販売体制も確認できていない。
国内で同じ動きはあるか
区切りでゲームを止めて広告を流す形は、日本のスマートフォンゲームではインタースティシャル広告として以前から一般的にある。広告を見たら報酬がもらえる形も、リワード広告として普及している。広告を見る代わりに無料で遊ぶ収益モデルは、広告付きゲームの仕組みで解説している。
今回新しいのは、プラットフォーマー自身がPC・コンソール・クラウドの「プレイ時間」を広告と結びつけようとしている点である。日本の大手コンソールで同じ形が出た例は、今回の調査範囲では確認できなかった(網羅的な調査ではない)。
日本語の報道
日本語では、Gadget Gate、XenoSpectrum(2026年9月21日)、Forbes JAPAN(10月6日)などが報じている。当サイトが確認したのは見出しだけで、2023年出願との関係に触れた記事は確認できていない。
日本の広告主が今使える選択肢
この特許が広告主に示しているのは、ゲームのプレイ時間を広告の接点にするという考え方である。国内でこの考え方の施策を今実施する場合、選択肢は次のように分けられる。
比較ポイント | ad-credit方式(特許) | モバイルのインタースティシャル・リワード広告 | ゲーム内サイネージ広告(Ad-Virtua) |
|---|---|---|---|
広告が出る場所 | 区切りでゲームを止めた画面 | 画面の切り替わり、または報酬と引き換えの動画 | ゲーム空間の看板・モニター |
プレイの中断 | 止める(区切りに限る) | 止める(リワードは任意視聴) | 止めない |
プレイヤーへの見返り | 広告なしの時間 | リワードはアイテムなど | なし |
日本での出稿 | 不可(製品化の発表なし) | 可能 | 可能(対応400タイトル以上) |
公表されている料金・効果 | なし | 媒体による | 1週間300,000円プラン、CPM約300円、広告想起率約1.8倍 |
アド・バーチャ(Ad-Virtua)は、ゲーム空間の看板やモニターに動画広告を配信する国内のアドネットワークで、日本国内でプレイ時間を広告の接点にする場合の選択肢の一つになる。公表値は対応タイトル400以上、累計再生数8,000万回(2025年後半時点)、注目度約1.7倍、好感度約85%である(いずれもAd-Virtua公表値)。特許の方式がプレイを止めて広告を見せるのに対し、Ad-Virtuaの広告はプレイ中の画面の中に表示され、プレイを止めない。
なお、Microsoft自身も2006〜2010年にゲームの世界に溶け込ませる方式(Massive)に取り組み、撤退している。溶け込み型の広告であれば成果が出るとは限らず、商材や目的に合うかを確かめてから使う必要がある。国内外のサービスの違いはゲーム内広告プラットフォーム比較【2026年版】で比べている。
こんな企業におすすめ
- 「ゲームの広告は嫌われる」という懸念があり、プレイを止めない形で試したい食品・飲料、日用品メーカー
- TVCMやSNS広告で届きにくい若年層に、手持ちの動画素材で接触したい企業
- 1週間単位の予算で、広告想起率などの指標を測ってみたい企業
おすすめしない企業
- PC・コンソールのゲーマーに絞って届けたい企業。Ad-Virtuaの在庫はXboxの広告枠とは別物である
- 広告を最後まで確実に見せたい、またはクリックや購入といった直後の成果を主な指標にしたい企業。全画面で見せる形ならインタースティシャルやリワード広告が向いている
- 海外市場を中心に出稿したい企業
広告主が取るべき判断

今動くべき企業は次の条件に当てはまる企業である。
- 若年層の認知を今期中に取りたく、ゲーム内広告をまだ試していない
- プレイを止めない広告と、止めて見せる広告のどちらが自社の商材に合うかを、自社のデータで比べておきたい
- 海外プラットフォーマーの動きを、社内でゲーム広告の予算を説明する材料に使いたい
様子見でよい企業は次の条件に当てはまる企業である。
- Xboxのプラットフォームの広告枠そのものに出稿したい。特許は製品計画とは別物で、広告付きストリーミングの対象国やXbox Media Solutionsの日本向け販売体制が公表されてから判断すれば足りる
- すでにモバイルのリワード広告で成果が出ており、新しい接点を急いで足す理由がない
特許については今回の公報の請求項と、特許として成立するかどうかが次の判断材料になる。最初の出願は審判を経て放棄されており、公開されたことだけで実用化が近いとは判断できない。
関連する基礎知識
- ゲーム内広告の種類や費用の全体像は、ゲーム内広告とはで解説している
- 区切りで出す広告、報酬を渡す広告、背景に溶け込む広告の違いはゲーム広告の種類一覧で整理している
- コンテンツの流れの中に広告を差し込む考え方は、SNSやニュースアプリのインフィード広告にも見られる。プレイを止める特許の方式と比べると、「流れに沿わせる」広告の設計が分かる
- Xboxの広告付きクラウドストリーミングはXbox「広告付きゲームストリーミング」テスト開始の解説、時間パックはXbox Cloud Playtimeの解説にまとめた
よくある質問
特許出願が公開されたら、Microsoftはこの方式を独占できるのか
公開は、出願の内容が公表されたという意味で、特許として成立したことを示すものではない。同じ構想の2023年出願は2024年11月に公開されたが、審判を経て2026年5月に放棄された(Google Patentsの表示)。今回の出願も、審査の結果がまだ分からない段階である。
特許の文書は「広告」だけを対象にしているのか
2023年出願の本文で使われている語は「プロモーテッド・コンテンツ(promoted content)」で、公告や通知も含む広い概念として書かれている。本文に「advertisement」という語があるかどうかは確認できていない。報道は広告の仕組みとして伝えているが、文書上は広告に限らない書き方になっている。
広告を見たときに残っていたクレジットはどうなるのか
2023年出願の本文では使い残したクレジットを次に繰り越せるとしている。例えば、残り0.1クレジットの時点で広告を見ると、1.1クレジットになる。
「機械学習で広告のタイミングを決める」という報道は本当か
Rock Paper Shotgunは、プレイ時間から学習して広告が最も嫌がられないタイミングを割り出す機械学習の仕組み、という見出しで報じた。2023年出願には区切りを判断する材料の一つとして、マシンビジョンや機械学習でゲーム内の出来事を検知するモデルが書かれており、見出しはこの部分を指していると考えられる。開発者のAPIによるヒントやユーザーの操作も判断材料とされており、機械学習だけで決める仕組みではない。
今回の特許の全文はどこで読めるのか
米国特許商標庁が公開している公報PDF(USPTO)が一次情報になる。ただし画像をスキャンしたPDFで、文字としては読み取れない。2026年10月28日時点では、本文を検索できるGoogle Patentsにも今回の公報は収録されていなかった。仕組みの細部を確かめたい場合は、内容が一致する2023年出願(US 2024/0370894 A1)の全文がGoogle Patentsで読める。


.jpg)


