米国のゲーム広告企業Super League(スーパーリーグ)は2026年10月13日、超党派の非営利団体HeadCount(ヘッドカウント)と組み、Discordのゲームコミュニティでリワード動画を使った投票啓発キャンペーンを試験的に始めたと発表しました。日本の広告主にとっては、ゲーム広告が営利ブランドの販促だけでなく、若者に届きにくい公共・社会的メッセージを届ける手段として使われ始めた例と読めます。

発表の内容

Super League(Nasdaq: SLE)が2026年10月13日にIRサイトで公開したプレスリリース(Super League IR)によると、キャンペーンの概要は次のとおりです。

項目

内容

提携の当事者

HeadCount と Super League(リリースの表現は "HeadCount partnered with Super League to pilot")

運営

Super League と Virtual Vote(バーチャル・ボート。Justin W. Hochberg氏が共同創業した超党派の取り組み)

配信の場

Discord のゲームコミュニティ。Roblox・原神(Genshin Impact)・Rocket League のファンコミュニティを含む

目的

2026年11月3日の米中間選挙を前に、若年層に有権者登録の状況確認と投票計画づくりを促す

リーチ目標

ユーザー500万人("aiming to reach"。実績ではなく目標値)

仕組み

Discord Event と、見るかどうかを本人が選べるオプトイン型のリワード動画

報酬

HeadCount の短い動画を見ると Discord のアプリ内報酬がもらえる。2027年の GalaxyCon のイベントへの旅行が当たる懸賞にも応募できる

参加条件

購入・有権者登録・投票はいずれも参加の条件ではない

リリースでは、Discord は配信の「場」として登場するだけで、提携先としては書かれていません。報酬の種類、懸賞の応募条件(年齢・居住地)、キャンペーンの終了日も記載がありません。

今回の施策の効果について示された数値は1つだけです。Super League の Rhiannon Apple氏によると、Discord Event は通常のコミュニティ投稿と比べてエンゲージメントが175%高いとされます。ただし比較の期間や、エンゲージメントの定義は書かれていません。今回の施策のKPIや計測方法、計測会社も公表されていません。

Discordのチャット画面に表示されたクエストの進捗表示(リワード型広告の一般的な例)
Discordのリワード型広告の例(HeadCountキャンペーンの画面ではありません)。出典: Discord Inc.(
Discordで条件を満たすと表示される報酬獲得画面(アバターデコレーション)
Discordのアプリ内報酬の一例。今回のキャンペーンで配られる報酬の種類は公表されていません。出典: Discord Inc.(

発表者のコメントは次のとおりです(訳は筆者)。

  • HeadCount の Tappan Vickery氏(VP of Strategy & Programs)は「HeadCountは20年以上にわたり、若者がすでに集まっている場所に出向いてきた。今では、その場所に、若者が毎晩友人と過ごすDiscordのコミュニティも含まれる」と述べています。
  • Super League の Rhiannon Apple氏(EVP Commercial Operations)は、Discord を「Z世代ゲーマーの毎日の習慣」と表現し、「リワード動画は、若者に超党派の立場で情報を届けるうえで、抵抗が少なく、なじみのある広告フォーマットだ」と述べています。
  • Virtual Vote の Justin W. Hochberg氏は「民主主義をグループチャットの中に持ち込む」と述べ、2028年までにゲームを投票参加を後押しする最も強力な力の一つに育て続けると目標を語りました。2028年に向けた具体的な計画は発表されていません。

Super Leagueとはどんな会社か

Super Leagueの企業ロゴ
出典: Super League Enterprise, Inc.(

会社の基本情報

Super League Enterprise, Inc.(以下、Super League)は、RobloxやFortniteなどのゲームの中でブランドの広告や体験を展開する米国の上場企業です。今回のリリースでは自社を「プレイファースト(play-first)の広告とオーディエンス分析の会社」と説明しています。

項目

内容

正式社名

Super League Enterprise, Inc.(メタプラネットとの取引完了後は Superplanet, Inc. に変更予定)

設立

2014年10月1日(Nth Games, Inc. として設立。2015年に Super League Gaming、2023年に現社名)

本社

米カリフォルニア州サンタモニカ

上場

Nasdaq(2019年2月にIPO、ティッカーは SLE)

経営陣

Matt Edelman氏(会長兼CEO兼社長)

従業員数

34名(2025年12月31日時点、10-K)

売上高

2023年度 2,508万ドル → 2024年度 1,618万ドル → 2025年度 1,134万ドル

主な提携・取引先

配信面は Roblox・Fortnite など。ペルソナ分析は Solsten社の心理学研究にもとづく。Panda Express の施策では Nielsen が効果を調査。資本面ではメタプラネットが出資

創業者は公式資料で確認できませんでした。公式の日本語表記もないため、本記事では「Super League(スーパーリーグ)」と表記しています。

Super Leagueはブランドを世界のゲーム人口35億人につなぐと説明しています(今回のリリース)。10-Kと2026年8月以降の一部リリースでは33億人と書かれており、時期によって数字が異なります。いずれもゲーム人口全体の数字で、Super Leagueが広告を配信できる在庫の規模を示すものではありません。

提供プロダクトと広告の仕組み

公式サイトでは事業を Audience Intelligence(オーディエンス分析)、Media Activation(広告配信)、Creative Relevance(クリエイティブ)の3つに分けています。中心にあるのは、独自の分析エンジン「Play Effect」と、ゲームでの遊び方からプレイヤーをAIで6つのプレイペルソナに分類する「Play Persona Engine」です。Play Persona Engine は Solsten社の心理学研究にもとづいています。

Super LeagueのAudience Intelligence(オーディエンス分析)のイメージ図
Audience Intelligenceのイメージ図(実際の管理画面ではありません)。出典: Super League Enterprise, Inc.(

10-Kに記載された広告フォーマットは、ミニゲーム、プレイアブル広告、リワード動画、ゲーム内ビルボード、CTV(コネクテッドTV)向けのゲーム、カスタムのゲーム内体験、インフルエンサー施策、ブランドリフト計測などです。ゲームの中に看板を出す方式から、ブランド専用のゲームを作る方式まで、1社で幅広く扱っています。リワード動画も10-Kに載っている既存のフォーマットの1つです。

対応プラットフォーム

公式サイトと10-Kに記載された配信面は次のとおりです。

  • ゲーム:Roblox、Fortnite、Minecraft(10-K)
  • モバイル・PC
  • ウェブ:CrazyGames、GameRant
  • CTV:Samsung、Vizio、LG、Roku

公式サイトの配信面に Discord は載っていません(2026年10月28日確認)。Super League と Discord の間に再販契約や公式パートナー認定があるかは、公開資料からは確認できませんでした。今回の施策で Super League が媒体の買い付け・制作・Discord との取引のどこを担ったのかも、リリースには書かれていません。

Super League の会社全体の解説は「Super League(スーパーリーグ)とは」で詳しく扱っています。

HeadCount・Virtual Vote・Discordの役割

HeadCountとVirtual Vote

今回のキャンペーンには、Super League のほかに2つの団体が関わっています。

HeadCount は2004年から米国で有権者登録の活動をしている超党派の非営利団体です。米国税法上の501(c)(3)団体で、共同創業者は Andy Bernstein氏と Marc Brownstein氏。コンサートや音楽フェス、スポーツ、地域のイベントで有権者登録を呼びかけるのが活動の中心で、2004年以降に170万人超の新規有権者を登録したとしています。公式サイトの About ページとトップページには、ゲームや Discord に関する記載はありません。音楽フェスなど若者が集まる場所で20年活動してきた団体が、新たな場所としてゲームコミュニティを選んだ、という位置づけになります。

Virtual Vote は、Justin W. Hochberg氏が共同創業した超党派の取り組みです。法人格やほかの共同創業者は確認できていません。2024年に Roblox で投票啓発の施策を行い、現在は新しいプラットフォームやデジタルコミュニティに活動を広げているとしています。

配信の場となったDiscordの広告商品

Discord はチャット・コミュニティアプリで、リリースでは1日のアクティブユーザー数(DAU)を9,000万人としています。Discord公式の広告ページでも、DAU 9,000万超(Discord社内データ、2025年第4四半期)と書かれています。

Discord は広告商品を「Quests(クエスト)」という名前でまとめて販売しています。ユーザーがクエストを受けて、指定された行動(動画の視聴、ゲームのプレイ、配信)を終えると、Discord 内で使える報酬(ゲーム内アイテムやアバターデコレーションなど)がもらえる仕組みです。クエストを受けると友達にも表示され、友達も参加できます。公式ページに載っている商品は次の4つです。

商品名

内容

Play Quests

新規や休眠中のプレイヤーにゲームを遊んでもらい、報酬を出す

Video Quest Reserve

保証型の動画広告。ユーザーがオプトインで視聴し、報酬を得る

Missions

ミニゲーム・インタラクティブ動画・クイズなど、Discord 内で遊べる参加型広告

HERO

クエストのホーム画面上部の大型アニメーション枠

今回の「オプトイン型のリワード動画」に最も近いのは Video Quest Reserve ですが、リリースには Quests という語が出てこないため、この商品が使われたかどうかは確認できません。Discord の広告商品と計測の動きは「Discord「Arena Quests」とは何か」でも解説しています。

Discordの画面内で遊べるインタラクティブ広告「Missions」の例(料理ゲーム)
Discordの参加型広告「Missions」の例(今回のキャンペーンとは関係ありません)。出典: Discord Inc.(

ここまでの歩み

スマートフォンに表示された株価チャート(上場企業の株価推移のイメージ)

Super Leagueの事業と資本の変遷

Super League は創業から10年あまりで、主軸の事業を何度も変えてきました。上場前の資金調達ラウンドは今回の資料では確認していないため、上場以降の資本の動きと事業の転換を時系列で整理します。

時期

出来事

そのときの主軸

2014年10月

Nth Games, Inc. として設立

―

2015年

Super League Gaming に社名変更

映画館でのアマチュアeスポーツ大会(2015〜2019年)

2019年2月

Nasdaq に上場

同上

2021年

Mobcrush を買収

ゲーム配信・クリエイター事業

2021年10月

Bloxbiz を買収

Roblox 中心のブランド体験事業

2023年

Super League Enterprise に社名変更。株式併合(20株を1株に)

同上

2024〜2025年

Minecraft 関連事業(Minehut、Mineville/InPvP)を少額で売却

同上

2024年10月

Infinite Reality による過半数株の取得案が出るが、成立せず

同上

2025年5月

Mobcrush を解散。従業員の35%を削減

―

2025年

株式併合(40株を1株に)

―

2025〜2026年

プレイアブル広告とオーディエンス分析に軸足を移す

プレイアブル広告とオーディエンス分析

2026年

株式併合(12株を1株に)

同上

2026年8月18日

メタプラネット(東証スタンダード 3350)が 2,100BTC と現金250万ドルの出資を発表

ビットコイン・トレジャリー事業が加わる

2026年10月13日

HeadCount との投票啓発キャンペーンを発表(本件)

―

2026年10月16日

株主総会でメタプラネット関連の全議案を承認(発表は10月19日)

―

2026年第4四半期(予定)

メタプラネットとの取引完了。社名を Superplanet, Inc. に変更予定

広告事業は独立したセグメントとして継続

eスポーツ、配信、Roblox のブランド体験、プレイアブル広告と主軸を移すあいだに、Mobcrush の解散や Minecraft 関連事業の売却といった撤退・縮小も重ねてきました。売上高は2023年度から3年続けて減っており、株式併合も3回行っています。メタプラネットとの取引が完了すれば、日本企業の傘下に入ることになります。メタプラネットによる出資の経緯は「メタプラネットのSuper League出資」、株主総会での承認は「Super League株主総会でメタプラネット関連議案を承認」で解説しています。

今回の発表の位置づけ

今回の発表は、メタプラネットの出資が株主総会で承認される3日前に出た、広告事業側の発表です。2024年の Roblox での投票啓発に続いて、Discord という配信面に公共団体の施策を広げた例と考えられます。ただし Super League 自身がそう説明しているわけではありません。

投票啓発×ゲームの流れ

HeadCount と Virtual Vote の側から見ると、今回の施策は次の流れの上にあります。

時期

出来事

2004年

HeadCount が有権者登録の活動を始める(音楽フェスなどが中心)

2024年(月はリリースに記載なし)

Virtual Vote が HeadCount・Super League とともに Roblox で投票啓発の施策を実施(30社超の企業連合)

2026年10月13日

HeadCount と Super League が Discord での投票啓発キャンペーンを発表(Virtual Vote が共同運営)

2026年11月3日

米中間選挙

今回のリリースによると、2024年の Roblox の施策は Virtual Vote が HeadCount・Super League とともに作ったもので、HeadCount の懸賞キャンペーン「Good to Vote」を広げる取り組みとして、Livetopia などの人気体験から参加できる形でした。一方、Super League の2024年9〜11月のプレスリリースには、Virtual Vote や選挙に関する発表はありませんでした。

広告出稿事例

今回のキャンペーンについては、HeadCount が媒体費を払ったのか、Super League や Discord が無償で協力したのかが公表されていません。そのため以下では「出稿」と断定せず、施策の事例として紹介します。

事例1:HeadCount×Discord(2026年10月〜、本件)

  • 目的:若年層の有権者登録の確認と投票計画づくり
  • 方式:Discord Event とオプトイン型のリワード動画。視聴者には Discord のアプリ内報酬と、2027年の GalaxyCon への旅行が当たる懸賞を用意
  • 目標リーチ:500万人
  • 公表されている指標:Discord Event のエンゲージメントが通常のコミュニティ投稿より175%高い(Super League の発言。比較条件は不明)
  • 出典:Super League IR

実績値はまだ出ていません。現時点で読み取れるのは「どういう設計で届けようとしているか」までです。

事例2:Virtual Vote×Roblox(2024年、今回の前身)

  • 方式:30社超の企業連合を組み、ゲーム・バーチャルファッション・投票教育を組み合わせた。超党派の選挙人団(Electoral College)ゲームも用意
  • 公表されている指標:訪問300万回、メディアインプレッション1億、有権者登録と登録状況の確認が約4,000件、選挙人団ゲームの参加者50万人
  • 出典:Super League IR(今回のリリース内の記述)

選挙人団ゲームの参加者50万人に対し、登録・確認は約4,000件で、比率にすると約0.8%です(4,000÷500,000、筆者計算)。参加者には投票年齢に達していないプレイヤーも含まれているとみられますが、Roblox の年齢構成はリリースに書かれていません。接触の数は大きく、行動の数は小さいという結果で、公共の施策で効果をどう測るかの難しさがよく表れています。

事例3:Super Leagueの営利ブランド施策

Super League はふだん、営利ブランドの施策を Roblox や Fortnite で行っています。今回の投票啓発は同じ手法を公共の啓発に使った例です。

Roblox内に作られたメイベリン「Sunkisser Blush」のポップアップストア
Super League公式サイトに掲載されている、Roblox内のメイベリンのポップアップストア(実施時期・効果は未公表)。出典: Super League Enterprise, Inc.(

ブランド

時期・場所

公表されている成果

Panda Express

2025年7月〜、Fortnite・Roblox

Nielsen の調査でキャンペーン想起+9ポイント、ブランド認知+3ポイント、来店+5%など。2026年後半から常時展開に移り、Fortnite のゲーム内ビルボードを6か月掲出

Chipotle

2025年3月、Roblox

先着5万人分の無料メイン料理のコードが1時間でなくなった

HI-CHEW(Morinaga America)

2024年11〜12月、Fortnite

効果指標は未公表。森永製菓の米国子会社による施策

Panda Express は第三者の Nielsen が想起や来店を測っていますが、今回の HeadCount の施策は計測方法が書かれていません。営利ブランドの施策と比べると、効果の示し方の差がはっきりします。Panda Express の事例は「Super LeagueとPanda ExpressのNielsenブランドリフト調査」で詳しく解説しています。

事例4:Discordのリワード型広告を使ったブランド

Discord の公式広告ページには、ゲーム以外のブランドを含む事例が並んでいます。

  • Mountain Dew×World of Warcraft:食品・飲料ブランドとして初めての Quest
  • Dune: Prophecy:TVシリーズとして初めての Video Quest
  • Walmart:Video Quest で自社のカスタム Discord サーバーにユーザーを誘導した最初のブランド
  • Wendy's:ファストフード(QSR)として初めての Quest

同じページで数値が公表されている事例は次のとおりです(いずれも Discord の公表値)。

広告主

公表されている成果

Marvel Snap(Second Dinner)

Video Quests でモバイルの800万人超にリーチ

Mission: Impossible(Paramount)

100万人超が参加し、うち48.5万人が Quest 経由

Brawl Stars(Supercell)

トレーラーを最後まで見たユーザーが約100万人

Mouse P.I. For Hire(PlaySide Studios)

Quest 経由のゲーム販売でネットROAS 4.5倍

DiscordのビデオクエストでWalmartが実施した「Walmart Skyward」の事例画像
WalmartがDiscordのVideo Questで実施した「Walmart Skyward」の事例画像。出典: Discord Inc.(

なぜこの動きが起きたのか

Discordのクエスト一覧画面と上部の大型広告枠の例(Discord公式の広告商品紹介ページより)

背景には、若者が集まる場所の変化があると考えられます。HeadCount は20年間、音楽フェスやスポーツ会場で活動してきました。Vickery氏の「若者がすでに集まっている場所に出向いてきた」という発言どおり、今回はその場所として Discord のゲームコミュニティを選んでいます。Virtual Vote も2024年の Roblox から2026年の Discord へと場所を移しました。

フォーマットにオプトイン型のリワード動画を選んだ点も特徴です。Apple氏はリワード動画を「抵抗が少なく、なじみのある広告フォーマット」と説明しています。見るかどうかを本人が選べて、見れば報酬がもらえる形式にすることで、押しつけにならずに見てもらおうという狙いと読めます。ただし、この形式が投票行動につながるかは実証されていません。

Discord の側を見ると、広告商品を Quests としてまとめ、ゲーム会社だけでなく、Mountain Dew や Wendy's、Walmart のようなゲーム以外のブランドの事例も公開しています。今回の公共団体の施策も、ゲーム以外の広告主が Discord を使う例の1つに数えられます。

日本市場ではどうか

投票所で投票箱に票を入れる有権者(イメージ)

若年層に公共メッセージが届きにくい状況は日本も同じ

総務省の年代別投票率によると、日本でも若年層の投票率は全体より低い水準です(総務省)。

選挙

10代

20代

全体

第51回衆議院議員総選挙

43.45%

39.01%

56.26%

第27回参議院議員通常選挙

45.29%

47.30%

58.51%

20代の投票率は全体より11〜17ポイント低くなっています。選挙に限らず、若者に公共・社会的なメッセージを届ける課題は日本にもあります。

国内の公開事例

日本の選挙管理委員会・自治体・官公庁が、ゲーム内広告や Roblox・Fortnite・Discord を使って選挙啓発をした公開事例は、今回の調査では見つかりませんでした。若者向けの選挙啓発サイトを作る例(京都市選挙管理委員会の「知っテル! 選挙」など)はありますが、ゲームとは結びついていません。国内での公開事例は多くないと考えられます。

今回と同じ方法を日本で使えるか

現時点では、今回の方法をそのまま日本で使える状況は確認できていません。

  • Super League:日本法人、日本語の窓口、日本の広告主向けの販売は確認できません。親会社は日本企業になる予定ですが、広告事業を日本で展開する計画は発表されていません。
  • Discord の広告:日本の広告主が日本のユーザー向けに Quests を買えるか(配信地域・日本語対応)は、公式ページに記載がありません。

日本で同じような施策をする場合、次の点を事前に確認する必要があります。法令の条文や運用までは本記事で調べていないため、実施の可否は専門家への確認が前提になります。

  1. 選挙啓発の場合、公職選挙法上の扱い(選挙運動との区別、啓発の主体)
  2. 懸賞を組み合わせる場合、景品表示法の懸賞規制と、公共機関として懸賞を使うことの是非
  3. 配信先のゲームやコミュニティが、日本の対象年齢層にどれだけ届くか(年齢構成のデータ)
  4. 「接触は大きいが行動は小さい」結果になった場合に、どう評価するかの設計

日本で同じ広告を実施する選択肢

Discord のリワード動画やゲーム内広告を日本で使う場合の選択肢を、比較ポイントごとに整理します。リワード動画はゲームの外に表示される「ゲーム外広告」、看板やモニターに表示されるサイネージ広告は「ゲーム内広告」に分類されます。ゲーム内広告の種類の全体像は「ゲーム内広告とは」、リワード動画広告の仕組みは「リワード動画広告とは」で解説しています。

比較ポイント

Discordのリワード型広告(Quests)

Super LeagueのRoblox・Fortnite施策

ゲーム内サイネージ広告(Ad-Virtua)

表示される場所

Discord のアプリ内(ゲームの外)

Roblox・Fortnite などのゲーム内体験

日本のゲーム空間内の看板・モニター

ユーザーの関わり方

本人が選んで視聴し、報酬を得る

遊んで体験する

プレイ中に目に入る。操作や報酬は不要

報酬・懸賞の設計

必要(報酬が見る動機になる)

施策による

不要

日本での購入

日本向けの提供は未確認。購入は Discord の営業チーム経由

日本向けの販売は未確認

国内400タイトル以上に配信

素材

動画、ミニゲームなど

ゲーム内体験の制作から、ゲーム内ビルボードまで

既存の動画素材を使える

公表されている指標

事例ごとのリーチ・ROAS など

Nielsen の想起・認知・来店など(Panda Express)

広告想起率約1.8倍、注目度約1.7倍、CPM約300円(Ad-Virtua公表値)

Ad-Virtua は国内のゲーム空間の看板やモニターに動画広告を配信するアドネットワークです。1週間300,000円のプランがあり、累計再生数は8,000万回を超えています(2025年後半時点)。日本国内で、ゲームをしている若年層に動画のメッセージを届けたい場合の選択肢の1つになります。

今回の HeadCount の施策とは方式が異なります。Discord のリワード動画は、報酬と引き換えに本人が選んで見る形式です。Ad-Virtua はプレイの流れを止めずに、ゲームの風景の一部として動画を見せる形式で、報酬で見る動機を作ることはできません。上の表の数値は条件がそれぞれ異なるため、横に並べて優劣を比べることはできません。Ad-Virtua の公共機関・非営利団体での利用実績は、本記事では確認していません。

こんな企業におすすめ

  • 日本国内のゲームプレイヤーに、動画素材を使って認知を広げたい企業
  • 社会貢献やCSRのメッセージを、押しつけにならない形で若年層に見せたい企業
  • 懸賞や報酬の設計・法務確認の手間をかけずに始めたい企業
  • テレビCMやSNS広告の補完として、別の接点を試したい企業

おすすめしない企業

  • 有権者登録や会員登録など、その場での行動(コンバージョン)を主な目的にする企業
  • 本人に選んで見てもらう形式や、報酬を使った参加型の施策をしたい企業(Discord のリワード型広告などのほうが近い)
  • 米国など海外の若年層に届けたい企業

国内のゲーム内サイネージ広告の配信条件や料金は、お問い合わせから相談できます。

広告主が取るべき判断

今動くべき企業

  • 若年層向けに社会的なメッセージ(安全啓発、環境、健康など)を発信する予定があり、テレビやSNS以外の接点を探している企業
  • 交通・インフラ・金融など、好感度や信頼が事業に直結し、押しつけない広告接触を重視する企業
  • 米国で Discord や Roblox への出稿を検討しており、ゲーム以外のブランドがどう使っているかを参考にしたい企業

様子見でよい企業

  • 選挙や政治に関わるテーマを扱う団体・企業。日本での法令上の扱いを確認できるまでは、海外の事例を参考にするだけにとどめるのが現実的です
  • 効果をKPIで説明する必要があり、今回の施策の実績値を待ちたい企業。今回のリーチ500万人は目標値で、実績は公表されていません

判断の前に、何をKPIにするかを決めておく必要があります。2024年の Roblox の施策が示したとおり、訪問やインプレッションの数と、登録などの行動の数には大きな差が出ます。認知や想起を目的にするのか、行動を目的にするのかで、選ぶ方式も評価の仕方も変わります。

関連する基礎知識

よくある質問

HeadCountは特定の政党や候補者を支持していますか?

支持していません。HeadCount の公式サイトによると、501(c)(3)の超党派の非営利団体で、政党や候補者を支持したり連携したりせず、住民投票の議題についても立場をとらないと説明しています。

Discordの広告はセルフサーブで出稿できますか?

できません。Discord の公式広告ページには「Discord の広告は営業チーム経由でのみ購入できる」と書かれています。管理画面から自分で予算を入れて配信する形式ではありません。

Discordのユーザーは、どのくらいゲームをしていますか?

Discord の公式広告ページによると、ユーザーの90%超がゲームをしています(2025年のユーザー調査)。

Super Leagueはメタプラネットの傘下に入った後も広告事業を続けますか?

続ける予定です。発表によると、メタプラネットとの取引完了後も広告事業は独立したセグメントとして継続します。取引の完了は2026年第4四半期の予定で、社名は Superplanet, Inc.、ティッカーは SUPA に変わる予定です。