ファンベースマーケティングとは、「自社の商品・サービスを深く支持するファンをベースに、中長期的に事業価値を高めるマーケティング活動」のことです(佐藤尚之著『ファンベース』ちくま新書、2018年)。新規顧客を広告で増やし続けるのではなく、既存ファンを深耕し、そのファンが口コミで新規顧客を連れてくる構造を設計します。

この記事では次のことを解説します。

  • ファンベースマーケティングの定義・背景・他手法との違い
  • スノーピーク・ヤッホーブルーイングが実践した具体的施策とその成功構造
  • ファン化施策の設計5ステップとKPI測定方法
  • 向いている企業・向いていない企業の判断基準
  • よくある失敗パターンと対策

対象読者: 既存顧客のLTV向上・ブランドロイヤルティ向上を検討している企業のマーケティング担当者・ブランド戦略室の方を想定しています。


ファンベースマーケティングとは何か

ファンコミュニティを象徴する人々のつながりのイメージ

ファンベースマーケティングとは、商品やサービスに強い愛着を持つ既存ファンを起点に、ブランドの持続的な成長を設計するマーケティング手法です。

一般的なマーケティングが「いかに多くの人に認知させ、購買させるか」を重視するのに対し、ファンベースマーケティングは「すでに好きでいてくれる人をどう大切にするか」から始めます。

ファン(ファンベースの定義)とは、単なるリピーターではありません。「ブランドや企業の価値を支持・共感し、他者に推奨する意欲を持つ人」が対象です。購入頻度が高いだけでなく、自発的に紹介・拡散・応援する行動を取ります。

この概念を日本に広めた佐藤尚之氏(ファンベースカンパニー代表)は、2018年に出版した著書『ファンベース』(ちくま新書、筑摩書房)の中で、「ファンを大切にすることこそが、長期的なビジネス成長の最も確かな方法である」と指摘しています。


なぜ今、ファンベースマーケティングが注目されるのか

マーケティング戦略を議論するビジネスチームのミーティング

理由1:新規獲得コストの限界

人口減少・少子高齢化が進む日本市場では、新規顧客の絶対数が年々減少しています。加えて、デジタル広告のCPAは上昇傾向にあり、広告費を増やしても以前ほどの新規顧客を確保できない状況が多くの業界で顕在化しています。

一方、既存ファンのLTV(顧客生涯価値)を高めることは、相対的に低コストかつ安定した売上基盤を作ります。一般的な経験則である「パレートの法則(売上の約80%は上位20%の顧客が生み出す)」が示すとおり、コアファンを維持・深耕することが収益の安定に直結します。

理由2:広告への不信・スキップが常態化

SNS広告・動画広告のスキップ率・広告ブロック利用は年々上昇しています。信頼できる個人(友人・家族・インフルエンサー)からの口コミの方が購買意思決定への影響力が大きいことは、各種消費者調査でも繰り返し指摘されています。

ファンが自発的に行う推薦・UGCは、企業が発信する広告メッセージよりも受け取り手に信頼されやすく、これがファンベースマーケティングの最大の強みとなります。

理由3:成熟市場での機能価値の同質化

食品・日用品・飲料・外食などの成熟市場では、品質・価格・スペックでの差別化が困難になっています。競合との機能価値の差がほとんどない状況で選ばれ続けるためには、「情緒価値(使うと嬉しい・誇りに思う)」や「未来価値(このブランドを応援したい)」の設計が重要です。


ファンが感じる3層の価値構造

ブランドロイヤルティとファン化を象徴するブランドイメージ

ファンベースカンパニーが整理するファンの価値構造は、3つの層で捉えられます。

価値の種類

内容

特徴

機能価値

品質・性能・コストパフォーマンス

比較されやすく、競合に代替されやすい

情緒価値

使うと「嬉しい・安心・誇りに思う」感情的体験

模倣されにくく、愛着・習慣化を生む

未来価値

ブランドのビジョン・活動への共感・応援意識

最も離反しにくい。ファン化の最終段階

ファンベース施策の設計は、機能価値ではなく「情緒価値・未来価値」の強化が中心です。スノーピークやヤッホーブルーイングの事例でも、後述するように、この2層への投資が競合と決定的に差別化された理由です。


ファンベースマーケティング vs ファンマーケティング:何が違うのか

混同されやすい2つの概念を整理します。

比較項目

ファンベースマーケティング

ファンマーケティング(広義)

起点

既存ファンの深耕

熱狂的ファンの新規拡大

方向性

内向き起点(ファンを大切にすることで輪が広がる)

外向き起点(ファン数の拡大を目的とする)

代表施策

コミュニティ運営・ファンイベント・参加型商品開発

インフルエンサー施策・K-POPファンダム設計

主な指標

NPS・LTV・リピート率・UGC量

フォロワー数・エンゲージメント率

投資回収

中長期(6ヶ月〜数年)

短〜中期(施策終了後も一定期間継続)

ファンマーケティングは外部への働きかけを重視し、新しいファンを「獲得」する方向に力点を置きます。ファンベースマーケティングは、すでにいるファンを「大切にする」ことで、そのファンが自然に新規を連れてくる構造を目指します。どちらが優れているかではなく、それぞれの目的と状況に応じて使い分けるのが実務上の判断です。


ファン化施策の設計5ステップ

上位記事の多くは「施策の種類の列挙」で終わっています。ここでは「どの順番で何をするか」の設計プロセスを整理します。

ステップ1:コアファンの特定と傾聴

まず「誰がファンか」を定義します。購入頻度・購入単価・SNSでの言及頻度などのデータから、上位5〜10%のロイヤルカスタマーを特定します。

次に、彼らがなぜ好きなのかを深掘りします。アンケートより定性インタビューが有効です。「他に似た商品はあるのに、なぜこれを選び続けるのか」という問いに対する答えが、施策設計の起点になります。

チェックポイント: ファン定義を「購入頻度が高い人」だけにしない。感情的な愛着を持ち、推薦行動を取る人を特定することが重要です。

ステップ2:情緒価値・未来価値の言語化

傾聴で得たインサイトをもとに、「このブランドを好きでいてくれる理由」を言語化します。多くの場合、ファンが感じている価値は自社が伝えているメッセージとズレていることがあります。

この段階で、伝えるべき情緒価値・未来価値のメッセージを再定義します。

ステップ3:ファンとの接点設計

どのチャネルでファンと関わるかを設計します。オンラインとオフラインを組み合わせるのが一般的です。

  • オンライン: 専用コミュニティサイト・会員プログラム・SNSグループ・ニュースレター
  • オフライン: ファンイベント・体験型ショールーム・工場見学・限定試食会

接点設計の重要原則は、「売り込まない場」を作ることです。商品紹介ではなく、ファン同士が交流し、ブランドのビジョンを共有できる場が有効です。

ステップ4:ファンが伝道者になる仕組み

ファンが自発的に推薦・拡散する仕組みを設計します。金銭的なインセンティブ(紹介報酬)より、情緒的なインセンティブ(限定コンテンツへのアクセス・スタッフとの対話・仲間との特別な体験)の方がファンの質を維持しやすいとされています。

UGC(ユーザー生成コンテンツ)の促進も効果的です。ハッシュタグ設計・体験共有の場づくり・公式アカウントでのファンコンテンツの積極的なリポストが基本施策です。

ステップ5:KPI測定とPDCAサイクル

ファン化の進行を定量的に把握します(詳細は後述のKPI設計セクションを参照)。測定タイミングは四半期ごとが一般的で、施策の優先順位と予算配分をデータで調整します。


成功事例①スノーピーク:三位一体のファン化構造

スノーピーク(Snow Peak)のファン化施策は、「商品力(機能価値)× 体験(Snow Peak Way)× コミュニティ(UGC基盤)」の三位一体構造として分析できます。

背景:経営危機からファン基盤への転換

1997年のキャンプブーム終焉後、スノーピークは深刻な経営危機に直面しました。この局面で選んだのが、「値引き・在庫処分で新規顧客を取りに行く」のではなく、「すでに好きでいてくれるユーザーとの関係を深める」方向への転換でした。

施策①:「Snow Peak Way」イベント(1998年〜)

1998年にスタートしたファンイベント「Snow Peak Way」は、スタッフとユーザーが全国各地で共にキャンプをするイベントです。累計参加者数は約12万人に達し、2026年時点でも継続しています(スノーピーク公式サイト、2026年4月確認)。

単なる体験イベントとの違いは、「参加者の声を商品開発に直接反映する」仕組みを持っていた点です。ユーザーが実際に使いながらフィードバックし、それが次の製品に反映されることで、「このブランドと一緒に作っている」という当事者意識がファンの中に育まれました。

施策②:会員制度とロイヤルカスタマー設計

2014年時点のデータでは、会員総数10万人のうち、ロイヤルカスタマー(プラチナ会員+ブラックカード会員)は約6,000人(全体の6%)が、全売上の約1/4を生み出していました(出典:nakaeshogo.com取材記事、2020年)。

この数字は、一部のコアファンを丁寧に育てることが、全体売上に対して不均衡なほど大きな影響を持つことを示しています。

施策③:UGCを起点にした売上設計

2015年にFacebookグループへ移行したオンラインコミュニティは、12万人超に成長しました。2018年以降はUGCマーケティングツールを導入し、売上の約2割がUGC経由になったとされています(出典:martechlab.gaprise.jp 取材記事)。

ECサイトのレビュー数は競合の約10倍に達し、検索からの購入検討段階でUGCが強力な説得材料として機能しています。

成長軌跡(1988〜2014年)

指標

1988年

2014年

変化

社員数

15名

160名

約10.7倍

売上高

5億円

45億円

9倍

粗利率

約50%(業界内高水準)

出典:nakaeshogo.com、MarkeZine取材記事(2020〜2024年)

なぜ機能したか: 機能価値(本格的なキャンプギア)を土台に、情緒価値(共にキャンプするスタッフとの関係)と未来価値(製品開発への参加意識)を積み重ねる構造が、3層の価値すべてを育てたことが成功の核心です。


成功事例②ヤッホーブルーイング:赤字覚悟の投資とKGI「ぞっこん度」

ヤッホーブルーイング(よなよなエール)の事例は、「採算度外視のイベント投資」と「独自KGIの設計」という、一見非合理に見える意思決定がどのように機能するかを示しています。

背景:大手独占市場でのクラフトビール文化普及

大手ビールメーカーが圧倒的なシェアを持つ日本のビール市場において、ヤッホーブルーイングはクラフトビール文化の普及を企業ミッションとして掲げました。このミッションが、施策設計全体の軸になっています。

施策①:「超宴(ちょうえん)」イベント

2010年に約40人規模でスタートしたファンイベント「超宴」は、2017年に明治神宮外苑軟式球場で4,000人、2018年にはお台場で5,000人規模に成長しました(出典:advertimes.com、coorum.jp 取材記事)。

注目すべきは、このイベントが「超赤字」運営であることを経営陣が公言している点です。井手直行社長(当時)は「ファンとの関係構築が目的。収益化しない」と明言しており、イベント単体でのROIは追わない方針を社内外に宣言することで、担当者が長期的視野で施策設計できる組織を作りました(出典:advertimes.com、2017年記事)。

コロナ禍には「おうち超宴」(オンライン)に転換し、2日間で1万人が参加・最高同時視聴約1,000人を記録。2024年の北軽井沢開催では約1,000人が参加するなど、形を変えながら継続しています。

施策②:独自KGI「ぞっこん度」の設計

ヤッホーブルーイングが2020年から年1回の顧客調査で測定している「ぞっこん度」は、NPSとは異なる独自指標です。「お客さまとクラフトビール文化を広げる仲間・友人になること」の達成度を測り、売上目標と紐づけて中期計画に組み込んでいます(出典:日経Xtrend 取材記事)。

NPSが「薦めたいか」を問うのに対し、「ぞっこん度」は「純粋に好きか」を問います。KPIを自社のミッションと直結させた設計が、施策の方向性を一貫させています。

ヤッホーブルーイングのファン価値3段階モデル

段階

内容

顧客の状態

機能価値

味・香りの品質

気に入った製品を購入

情緒価値

癒し・親近感・スタッフへの評価

商品ではなくブランドが好きな状態

企業理念への共感

ミッション・活動への共鳴

離反しにくい「仲間」状態

出典:xtrend.nikkei.com 取材記事(2020〜2024年)

コアファンほどこの3段階目まで到達しているため、価格競争や競合の新製品投入で離れにくくなります。ヤッホーの楽天市場での10年連続ショップ・オブ・ザ・イヤー受賞(取材記事記載)もこのロイヤルティの強さを示すデータのひとつです。


その他の国内成功事例

企業

施策

主な成果(確認範囲)

森永製菓

ファンコミュニティ「エンゼルPLUS」(2013年〜)

約75万会員、月平均PV110万(複数メディア記事より)

コメダ珈琲

コミュニティサイト「さんかく屋根の下」

オープン1週間で7,000人登録

カゴメ

「&KAGOME」コミュニティ運営

ユーザーレシピ投稿等UGCの活性化

やおきん(うまい棒)

診断コンテンツ型企画「うまい棒の日を守れ!」(2023年)

5.5万人参加、UGC3.2万件以上

これらの事例に共通しているのは、コミュニティ設計に「売り込まない場」を意識的に作っている点です。製品情報を一方的に発信するのではなく、ファン同士が交流できる空間を提供することで、ブランドへの愛着が深まります。


KPIの測定方法:何をどのタイミングで測るか

ファンベースマーケティングの効果を「感覚」ではなく「データ」で追うための指標設計です。

KPI

内容

測定タイミング

改善の判断基準

NPS(ネットプロモータースコア)

「友人・知人に薦めたいか」10点満点で測定。0〜6点は批判者、9〜10点がプロモーター

四半期〜半年に1回の顧客調査

NPS値が上昇 or 批判者比率が減少

LTV(顧客生涯価値)

リピート回数×平均購入単価×継続期間で算出

月次・四半期でコホート分析

コアファン層のLTVが非コアファン比で高水準

コミュニティ参加率・投稿率

コミュニティ内の月次アクティブユーザー率・投稿数

月次モニタリング

投稿率5%以上が活性コミュニティの目安(Commune社調査参考)

UGC発生量

ブランドハッシュタグ付き投稿数・口コミ件数

月次集計

施策実施前後で比較

ぞっこん度(独自KGI例)

「このブランドが好きか」を純粋に問う独自設問

年1〜2回の顧客調査

スコアの経年推移

測定の注意点: KPIを増やしすぎると優先順位が見えにくくなります。まず「LTV」か「NPS」のどちらか1つを主KGIに選び、他を補助指標として運用するのが実務上の一般的なアプローチです。


ファンベースマーケティングと従来型マーケティングの比較

比較項目

ファンベースマーケティング

従来型(新規獲得中心)

主な対象顧客

既存ロイヤルカスタマー

潜在顧客・非認知層

主な施策

コミュニティ・イベント・UGC促進

広告・SEO・プロモーション

投資回収期間

中長期(6ヶ月〜数年)

短〜中期(広告停止で効果減)

売上安定性

高い(ファンが基盤として残る)

施策依存(広告費と連動)

口コミ効果

高い(ファンが自発的に推薦)

限定的(広告メッセージへの信頼度低)

向いている商材

繰り返し購買・ライフスタイル系

認知拡大・新製品ローンチ

主なKPI

NPS・LTV・コミュニティ参加率

CPM・CPA・CVR

2つのアプローチは対立するものではありません。新規獲得施策で認知を広げ、ファンベース施策でLTVを高め、ファンが新規を連れてくるという循環を設計するのが、中長期的に強いブランドの基本構造です。


こんな企業に向いている / こんな企業には向かない

ファンベースマーケティングが機能しやすい企業

  • 繰り返し購買が発生する商材(食品・飲料・日用品・アウトドアギア等):LTV設計とファン深耕が両立する
  • ブランドストーリーが語れる商品・企業:創業背景・こだわり・ミッションがファンの情緒価値・未来価値に直結しやすい
  • 趣味・ライフスタイルとの親和性が高い商材(アウトドア・食・ビール・スポーツ等):ファン同士のコミュニティが形成されやすい
  • 中長期投資を社内で承認できる体制がある企業:短期ROIの圧力が強い場合は実施困難

ファンベースマーケティングが機能しにくい企業

  • 単発購買・高関与品(不動産・保険・自動車):購買頻度が低くLTV設計が難しい(ただし紹介施策は有効)
  • 差別化要素のない完全コモディティ商品:情緒価値・未来価値が語りにくい
  • 3〜6ヶ月以内の売上改善が最優先の組織:ファンベース施策単体では短期の数字は出にくい
  • ファン定義・顧客データの整備ができていない企業:誰がファンかわからないとステップ1が機能しない

判断の目安: 現在のリピート率が20〜30%以上あり、「このブランドが好き」と明確に言ってくれる顧客が一定数いる企業は、ファンベース施策を開始する基盤が整っているといえます。


よくある失敗パターンと対策

失敗1:コアファンに閉じた「閉鎖性の罠」

熱心なコアファンに寄り添いすぎることで、コミュニティや施策が外部から入りにくくなるケースです。新規ファンが「自分には関係ない」と感じてしまうと、コミュニティが縮小・老齢化していきます。

対策: 「ビギナー歓迎」のオンボーディング設計と、コアファンが新規を迎え入れる文化の醸成を同時に行います。スノーピークの「Starter Camp」(入門者向けイベント)はこの問題への対策例です。

失敗2:ファン定義の曖昧さ

「誰がファンか」を定義せずに施策を開始すると、施策ターゲットが拡散し、コアファンに刺さらないコンテンツが増えます。購入頻度だけでなく、推薦行動・感情的愛着を組み合わせた定義が必要です。

失敗3:コミュニティでの過度なセールス

ファンコミュニティで商品紹介・販促を頻繁に行うと、「ただの広告場所」と感じたファンが離れます。コミュニティの主役は企業ではなくファンです。

対策: 投稿内容の7〜8割はファン同士の交流・情報共有・ブランドストーリーとし、商品紹介は2〜3割に抑えることが一般的な目安です。

失敗4:短期ROIの圧力に負けて撤退

6ヶ月〜1年間は顕著な数字が出ないことが多いため、経営・上司への説明材料が不足すると予算が削られます。ヤッホーブルーイングが「超宴は超赤字」と公言することで社内の短期ROI圧力をコントロールしたのは、このリスクへの対処例といえます。

対策: 開始前に「測定するKPI・測定タイミング・評価基準」を合意した上でスタートし、中間指標(コミュニティ参加者数・NPS推移)で進捗を可視化します。


よくある質問

Q1. ファンベースマーケティングに必要な予算はどのくらいですか?

施策の規模によって大きく異なります。コミュニティ構築ツール(Commune、CXin等)を使う場合は数十万〜数百万円/年が一般的です。オフラインイベントは規模により数十万〜数千万円になりますが、ヤッホーブルーイングの超宴のように採算を度外視して継続することがコアファンへの強いメッセージになるケースもあります。まず既存ファンへのインタビューや小規模なコミュニティ発足から始めることは、大きな初期投資なしで可能です。

Q2. 効果が出るまでどのくらいかかりますか?

コミュニティ活性化・NPSの有意な改善が確認できるまでに6ヶ月〜1年以上かかるのが一般的です。LTVへの影響が明確になるには1〜3年の視野が必要なケースもあります。短期の売上改善を主目的とする場合はミスマッチになります。

Q3. B2B企業でもファンベースマーケティングは有効ですか?

有効な企業と難しい企業があります。IT・SaaS・コンサルのように繰り返し契約更新があり「担当者が推薦することで社内決裁が進みやすい」業態は相性が良いです。サイボウズの「キンコミ」のように、ユーザーコミュニティを起点にした製品改善と顧客ロイヤルティ向上の両立は代表的なB2Bのファンベース実践例です。

Q4. ファン化施策はSNS運用と何が違いますか?

SNS運用は「投稿→エンゲージメント→フォロワー増」を繰り返す行為です。ファン化施策は「特定のコアファンの愛着と信頼を深める」が目的で、フォロワー数より質の高い少数のファンを育てることを重視します。SNSはファン化施策の接点・ツールとして活用できますが、SNS運用=ファンベースマーケティングではありません。

Q5. ファン化施策の「最初の一歩」は何ですか?

最も効果的な最初の一歩は「コアファンへのインタビュー(10人でも可)」です。購入頻度や金額でコアファンを特定し、「なぜ使い続けているのか」「このブランドの何が好きか」を深掘りすることで、情緒価値・未来価値の輪郭が見えてきます。この傾聴から得たインサイトが、以降のすべての施策設計の根拠になります。


若年層・Z世代へのファン化施策:新しい接点の可能性

ここまで解説したファン化施策の多くは、EC・実店舗・SNS・リアルイベントを接点とするものでした。

一方、現在の若年層(Z世代・α世代)にとってのリアルな生活接点は、ゲーム空間・仮想空間にも広がっています。彼らはゲームの世界で数時間を過ごし、ゲーム内のブランド接触が現実の認知・好感度・購買意欲に影響することが、複数の調査で確認されています。

従来のファン化施策が「リアルまたはWebの接点でファンを深耕する」ものだとすれば、若年層に対しては「ゲーム空間での初期接触 → 認知・好感度形成 → ファン化の起点」という新しいジャーニーが存在します。

特に、広告だと気づかれにくい形でブランドを認知させ、好感度を高めることが若年層ファン化の入口として機能しやすいとされています。ゲーム空間内のサイネージ型広告は、プレイを阻害せずにブランドを記憶させる接触形態として、この役割を担います。

ゲーム内広告を活用したブランド認知の設計については、こちらの記事も参考にしてください。
ゲーム内広告とは|種類・仕組み・効果を解説
ゲーム内広告・メタバース広告の費用・料金相場


Ad-Virtuaのゲーム内広告が合う企業の条件

ファンベースマーケティングの文脈でAd-Virtuaのゲーム内広告(ゲーム空間内の看板・モニターに動画を配信するサイネージ型広告)が適合しやすい企業の条件を整理します。

このような企業・状況に向いています

  • 若年層・Z世代へのブランド認知を広げたい:ゲームユーザーの可処分時間にリーチし、ファン化の起点となる初期認知を形成
  • プレイを邪魔しない形で接触したい:インタースティシャル(全画面強制広告)のような離脱リスクなしに、ゲーム空間内でブランドを自然に露出
  • テレビCM・SNS広告の補完施策を探している:広告ブロック・スキップが使えないゲーム空間での接触を追加
  • 広告想起率・注目度の向上を重視している:Ad-Virtuaのゲーム内広告は他のWeb広告と比較して広告想起率約180%・注目度約170%(Ad-Virtua公式データ)

詳細はAd-Virtua公式サービスページをご覧いただくか、まずはブランド体験設計に関するコラムも合わせてご参照ください。


まとめ

ファンベースマーケティングは、新規顧客獲得の限界・広告への不信・成熟市場での差別化困難という3つの課題を背景に、今後も重要度が高まり続けます。

スノーピーク・ヤッホーブルーイングの事例が示すのは、「効果が出るまでに時間がかかっても、コアファンへの誠実な投資を続けた企業が長期的に強くなる」という構造です。

実践するうえでの3つのポイントを最後に整理します。

  1. 傾聴から始める:コアファンが「なぜ好きか」を語るインタビューが施策設計の起点
  2. 情緒価値・未来価値を設計する:機能価値だけで差別化できないなら、ブランドストーリーとビジョンへの共感を育てる
  3. KGIを自社ミッションと紐づける:「ぞっこん度」のように、自社の目指す顧客との関係性を測る指標を持つことで、短期ROI圧力に負けない施策継続が可能になる

ブランド体験設計・第一想起獲得のアプローチについては、以下の記事も合わせてご参照ください。
ブランド体験とは|設計方法・成功事例を解説
第一想起を獲得する方法|施策・事例を解説