ポップアップストアや体験型イベントを「単独の施策」として設計しているうちは、ブランドの認知効果は一時的なものに留まります。リアル体験の前後にゲーム内広告やSNSを連動させた「統合設計」を組むことで、一過性のイベントが継続的な第一想起獲得へとつながります。
この記事でわかること:
- ポップアップストア・体験型イベントがブランド体験として機能する仕組みと背景
- 認知→体験→再接触の3ステップで設計する統合ブランド体験フレームワーク
- 施策ごとの費用感・KPIの比較(ゲーム内広告/SNS広告/ポップアップストアの横断比較)
- 業種別の向き・不向きと設計チェックリスト
- よくある失敗パターンと回避策
食品・飲料・日用品・外食・交通など、生活接点の広いナショナルブランドのマーケティング担当者・ブランド戦略室向けの実務設計ガイドです。

なぜ今、リアルとデジタルを統合した体験設計が必要なのか
ポップアップストアや体験型イベントへの投資は増えている一方、「開催したが期待ほどSNSで拡散しなかった」「来場者は増えたが売上・認知への効果が測れない」という声は今も多く聞かれます。
背景には、体験施策を「点」として設計してきたことがあります。イベント当日だけ盛り上がっても、その前後の認知設計と再接触設計がなければ、ブランド記憶として定着しません。
電通グループの「CMO調査レポート2025」(調査対象:日本含む主要14市場のCMO等1,950名、確認日:2026-04-14)では、86%のCMOが「現代のブランドは体験によって築かれる」 と回答しています。同時に、73%が「AIによってブランド体験が薄れるリスクがある」 と懸念しており、リアルな体験接点の設計が改めてマーケティング戦略の軸になっています。
博報堂の「コンテンツファン消費行動調査2025」(確認日:2026-04-14)によれば、1人当たりのコンテンツ支出額は85,137円(前年比+6,034円)と過去最高を更新。リアルイベント市場が成長を牽引しており、消費者の「体験に対する支出意欲」は高まり続けています。
課題は、体験の場を作ることではなく、「体験の前後をどう設計するか」にあります。
ポップアップストア・体験型イベントとは何か
ポップアップストアは、駅構内・商業施設・イベントスペースなどに期間限定で設置する仮設店舗です。英語の「pop-up(突然現れる)」が語源で、数日〜数週間という短期展開が特徴です(出典:PR TIMES MAGAZINE「ポップアップストアとは?」、確認日:2026-04-14)。
近年、その役割は「商品を売る場所」から「ブランドを体験してもらう場所」へと大きく変化しています。グローバルのポップアップリテール市場は2025年に950億ドルに達する見込みであり(出典:GII市場調査レポート、確認日:2026-04-14)、Z世代・ミレニアル世代の「対面体験選好」が成長を後押ししています。
体験型マーケティングは、消費者に商品・サービスを実際に試してもらうことで、理解・親和性・購買意欲を高めるマーケティング手法の総称です(出典:originalgoods.press「体験型マーケティングでファンの心をつかもう」、確認日:2026-04-14)。ポップアップストアはその代表的な手段の一つですが、コンサート・フェス、ワークショップ、試食・サンプリング、AR/VRデジタル体験なども同じカテゴリに属します。
統合ブランド体験設計の3ステップフレームワーク
上位記事の多くはポップアップストアを「体験の場」として単独で解説しています。しかし、ブランドの第一想起につなげるには、体験の前後を含めた3つのフェーズを連動させる設計が必要です。

ステップ1:認知フェーズ(体験前の接点設計)
ポップアップやイベントの集客に頼る前に、ターゲット層が「そのブランドを知っている状態」を作る必要があります。
主な手段:
- ゲーム内広告:スマートフォンゲームの空間内に掲出するサイネージ型広告。プレイを邪魔しない非侵襲型で、繰り返し接触による記憶形成に強み。若年層・20代男性を中心に幅広い層にリーチ
- SNS広告:インスタグラム・TikTok等での動画広告。ECへの即購買誘導に強いが、スキップされやすく記憶定着には継続接触が必要
- OOH(屋外広告・デジタルサイネージ):駅・商業施設での接触。認知拡大には有効だが、ターゲティングが粗い
ステップ2:体験フェーズ(ブランド世界観の具現化)
認知を得た後、リアルな接点でブランド体験を提供するフェーズです。
主な手段:
- ポップアップストア:空間設計・接客を通じた没入体験。SNS拡散の起点として機能
- 体験型イベント・フェス:コンサート・ワークショップ等でブランドとの感情的結びつきを形成
- 試食・サンプリング:商品の使用感を直接体験。購買スイッチとして即効性が高い
- AR/VRデジタル体験:QRコード連動のWebAR等でフォトスポットやスタンプラリー機能を付加
体験フェーズで重要なのは、「映える空間を作ること」ではなく、「ブランドのコアバリューを体感できる設計にすること」です。
ステップ3:再接触フェーズ(体験後の記憶定着)
体験直後は記憶が最も鮮明ですが、時間とともに薄れます。体験後の再接触設計がブランドロイヤルティを高める上で欠かせません。
主な手段:
- UGC(ユーザー生成コンテンツ):体験参加者のSNS投稿を活用。ハッシュタグ設計・フォトスポット設置でUGC量を最大化
- ゲーム内広告(継続掲出):イベント後もゲーム空間でブランドロゴ・世界観を定期的に露出。「ルーティン接触」で長期的な第一想起を維持
- LINEコミュニティ・メルマガ:来場者との継続エンゲージメント。次回イベント・新商品情報の送付
施策別の費用感・KPI比較
ブランド体験施策を選ぶ際の実務的な比較項目として、費用感・主なKPI・向いている企業をまとめました。
施策 | 費用感 | 主なKPI | 特に向いている企業 |
|---|---|---|---|
ゲーム内広告(サイネージ型) | CPM 400円〜(開始10万円〜) | 広告想起率・視認率・ブランドリフト | 若年層認知拡大を狙う全業種。繰り返し接触が必要な認知フェーズ |
SNS広告(Instagram/TikTok) | CPC数十〜数百円 | クリック率・フォロワー増加・EC転換率 | ECへの即購買誘導・キャンペーン期間中の集中露出 |
ポップアップストア(小規模) | 10〜50万円/期間程度 | 来客数・SNS投稿数・サンプル配布数 | テストマーケティング・地域密着型ブランド |
ポップアップストア(大規模) | 100万〜1,000万円以上 | ブランドリフト・NPS・メディア露出量 | ナショナルブランド・新製品ローンチ・認知設計 |
体験型イベント(フェス・ワークショップ) | 会場費100万円〜(規模によって大きく変動) | 参加者数・満足度・UGC投稿数 | コアファン形成・ブランドコミュニティ構築 |
OOH(デジタルサイネージ) | 数十万〜数百万円/月 | インプレッション数・ブランド認知率 | 幅広い生活者への面的認知拡大 |
※費用は参考目安です。立地・規模・期間によって大きく異なります。ポップアップストアのスペースレンタル日額は路面店7,000〜25,000円/日、ショッピングモール15,000〜20,000円/日程度が一般的です(出典:SHOPCOUNTER MAGAZINE「ポップアップストアの相場」、確認日:2026-04-14)。
業種別:こんな企業に向いている設計パターン
ナショナルブランド向け(食品・飲料・日用品メーカー)
向いている設計
- ゲーム内広告で若年層に繰り返し接触し「ブランド名+コアメッセージ」を記憶させる
- 商業施設・駅構内でのポップアップストアで試食・サンプリングを実施
- 体験後のUGCをSNSで収集し、エンゲージメント指標を測定
費用配分の目安
- 認知フェーズ(ゲーム内広告・SNS広告):30〜40%
- 体験フェーズ(ポップアップ・イベント):40〜50%
- 再接触フェーズ(SNS運用・UGC収集・継続広告):10〜20%
外食・小売チェーン向け
向いている設計
- 新メニュー・期間限定コラボのポップアップで「来店のきっかけ」を作る
- ゲーム内広告で店頭認知を先行して形成し、ポップアップへの集客につなげる
- キャンペーンハッシュタグを活用したUGCで口コミ効果を増幅
交通・インフラ・ホテル向け
向いている設計
- 「安全・信頼・使いやすさ」を空間体験として具現化したイベントで親しみを形成
- 家族層・若年層にリーチするゲーム内広告と連動させ、生活接点を拡張
- 体験後の継続コミュニケーションでブランドロイヤルティを維持

こんな企業に特に有効、こんな企業には慎重に
統合ブランド体験設計が特に有効な企業
- 認知率はあるが「第一想起」が弱い既存ブランド:生活者に名前は知られているが、購買時の想起順位が上がらない状態。リアル体験×継続接触で記憶を上書きできる
- 若年層・Z世代への認知拡大を優先課題にしている企業:TVCMのリーチが弱まっている世代に、ゲーム内広告→ポップアップ→SNS拡散の設計が効く
- 新製品ローンチや既存ブランドのリニューアル時期:体験設計で「変わった」「試してみたい」という動機を強化できる
- コアファンのエンゲージメントを高めたい企業:体験型イベントはブランドコミュニティの形成・強化に最も適した手段
慎重に検討すべき企業
- 即時のROIを求める施策として単発イベントを考えている企業:ポップアップストアの即日売上で費用回収を期待すると、大規模体験型は費用対効果が合わないケースが多い。LTV最大化・認知投資として設計する必要がある
- デジタルとリアルを別チームが担当しており、統合設計が難しい体制の企業:認知→体験→再接触の連動には、施策をまたがる統一テーマ・KPI設計が必須。縦割り体制のままでは効果が分断される
- ターゲット層がゲームやSNSとの接点が薄い50代以上中心のブランド:ゲーム内広告は若年層・20代男性層へのリーチが中心。中高年層にはOOH・テレビ・新聞との組み合わせのほうが適している
効果測定のKPI設計
統合ブランド体験設計では、フェーズごとのKPIを別々に設定する必要があります。一つの指標で全施策を評価しようとすると、「イベントは盛り上がったが広告効果が見えない」という状況になります。
フェーズ | 代表的なKPI | 測定方法 |
|---|---|---|
認知フェーズ | 広告想起率・視認率・CPM・ブランドリフト | ゲーム内広告の効果測定レポート・第三者調査 |
体験フェーズ | 来客数・滞在時間・NPS(推奨意向)・サンプル配布数 | 現場カウント・アンケート・QRスキャン数 |
再接触フェーズ | UGC投稿数・エンゲージメント率・フォロワー増加数・LTV変化 | SNS分析ツール・CRMデータ |
統合KPI | 第一想起率(ブランドリフト)・NPS変化・ブランドロイヤルティスコア | 定期ブランド調査・パネル調査 |
SNSキャンペーンにおけるエンゲージメント率の目安は2%超が一般的なKPIとされています(出典:各SNSマーケティング専門媒体記事、確認日:2026-04-14)。ただし、体験型施策はSNS指標より「ブランドリフト(想起率・好意度の変化)」を主KPIに設定する方が設計の質は上がります。
国内成功事例:デジタルとリアルを統合したブランド体験
SHIBUYA109 × Fortnite(デジタルツイン型)
2023年12月、SHIBUYA109はFortnite内に"現実世界を超越した渋谷"を舞台にしたオリジナルゲームマップ「SHIBUYA109 SHOOT and RUN」をリリース(出典:n2p.co.jp「ゲーム型キャンペーン成功事例」、確認日:2026-04-14)。現実の店舗とメタバース空間が連動し、ゲーム内でのブランド体験がリアル店舗への来訪動機を生む事例となりました。
@cosme TOKYO(OMO型)
「@cosmeベストコスメアワード」受賞アイテムをオンライン・オフライン双方で展開。店頭でサンプル商品とQRコードを紐づけ、来場者の顧客情報を収集して、オンラインでのパーソナライズドコミュニケーションに還元する設計です(出典:各種メディア記事、確認日:2026-04-14)。リアル接点が「デジタルデータの取得ポイント」として機能するモデルです。
バターサンドのゲーム型キャンペーン(リアル送客型)
「スイカゲーム」形式のWebゲームをSNSで拡散させ、ゲームプレイで「店頭クーポン」を配布。Webの盛り上がりをリアル店舗への集客に直結させた事例です(出典:n2p.co.jp「ゲーム型キャンペーン成功事例」、確認日:2026-04-14)。デジタルゲーム体験が購買行動につながるループを設計した点が特徴です。

よくある失敗パターン5選
体験型施策の設計で繰り返される失敗を整理しました。企画前のセルフチェックにご活用ください。
失敗1:「映え」設計に偏り、ブランド体験として記憶に残らない
フォトジェニックな空間を作ることに注力した結果、「何のブランドだったか覚えていない」という体験になるケースです。空間の美しさとブランドメッセージの一致が不可欠です。
失敗2:デジタルとリアルが分断している
ポップアップはマーケティング部、SNS広告はデジタル部門、と担当が分かれていると、認知→体験→再接触のサイクルが機能しません。統一テーマとKPIを全施策で共有することが前提です。
失敗3:イベント当日の集客に全力で、事前・事後設計が薄い
体験前の認知形成(なぜそのポップアップに行くべきかを事前に伝える)と、体験後の再接触(記憶を維持する継続接触)がなければ、LTV向上には結びつきません。
失敗4:効果測定が「来場者数」だけで終わっている
来場者数は体験フェーズのKPIの一つに過ぎません。ブランドリフト・NPS・その後の購買変化・SNS言及数まで測定しなければ、施策の改善ができません。次の投資判断にも根拠が得られません。
失敗5:「企業がやりたいこと」起点で設計している
OMOや体験型施策が失敗する最も根本的な原因は、「顧客が求めること」ではなく「企業が伝えたいこと」を起点にした設計です(公式注意事項:各種体験型マーケティング専門記事、確認日:2026-04-14)。「この体験を通じて顧客はどんな感情を得るか」を設計の出発点にする必要があります。
ゲーム内広告が認知フェーズを担える理由
体験型施策への投資を検討している企業にとって、「体験前の認知設計」は最も難しいフェーズです。TVCMのリーチが弱まっている若年層・Z世代に確実に届き、かつ繰り返し接触で記憶に残す手段が限られているからです。
ゲーム内広告(サイネージ型)は、この課題に対して有効な選択肢の一つです。スマートフォンゲームのプレイ中、ゲーム空間内の看板・モニターにブランドロゴや動画が自然に表示されるため、広告をスキップする動機が生まれにくい設計です。Ad-Virtua公式サイトによれば、視認率は最大96%(業界平均67%比)、注意持続時間は1,000インプレッションあたり29分(業界平均17.5分の約1.7倍)とされています(出典:Ad-Virtua公式サイト、確認日:2026-04-14)。
特に以下の条件を持つ企業には、認知フェーズのゲーム内広告活用が統合設計にフィットします。
- 若年層(10代〜30代)・ゲームプレイヤー層への認知拡大を優先している
- ポップアップ・体験型イベントと組み合わせて「事前認知→体験集客」の流れを設計したい
- TVCMやSNS広告だけでは届いていない層へのリーチを補完したい
- プレイを邪魔しない「好感度の高い広告接触」でブランドイメージを保護したい
ゲーム内広告の仕組みや費用の詳細については、「ゲーム内広告とは?種類・仕組み・費用を徹底解説」も参考にしてください。
体験型マーケティング全体の概念・手法の俯瞰については、「体験型マーケティングとは?定義・効果・手法を解説」をあわせてご覧ください(※公開予定)。

よくある疑問
Q. ポップアップストアとゲーム内広告、どちらを先に実施すべきですか?
A. 一般的には、まずゲーム内広告やSNS広告で認知・興味を形成してからポップアップに誘導する順序が効果的です。「名前を知っている状態」の人を体験の場に集める方が、体験の意味付けも深くなります。予算・時期によっては同時並行でも機能しますが、その場合は統一したクリエイティブテーマを設定してください。
Q. 体験型イベントの効果をどう測定すれば良いですか?
A. フェーズ別KPIを設定するのが基本です。体験フェーズは来客数・NPS・サンプリング数、再接触フェーズはUGC投稿数・エンゲージメント率、統合KPIとしてブランドリフト(広告想起率・好意度の変化)を第三者調査で測定する方法が現場では主流です。「来場者数」だけで評価を終わらせると、次回以降の投資判断ができなくなります。
Q. 小規模な予算(100万円未満)でもデジタルとリアルの統合設計はできますか?
A. できます。小規模ポップアップ(路面・商業施設の小スペース)の出店費用は10〜50万円程度に収まるケースもあります(出典:SHOPCOUNTER MAGAZINE、確認日:2026-04-14)。残りの予算をゲーム内広告の初期費用(10万円〜)とSNS広告に配分し、ハッシュタグ設計でUGCを促すだけでも統合設計は成立します。「規模の大小」より「3つのフェーズをつなぐ設計になっているか」が重要です。
Q. ゲーム内広告で届く層はどんな人ですか?
A. 現時点では、20代男性が中心(約60.7%)ですが、ゲーム実況(YouTube・TikTok)経由で女性・年配層にも二次・三次リーチが発生します(出典:Ad-Virtua公式コラム、確認日:2026-04-14)。若年層・ゲーマー層へのリーチを主目的として使い、実況視聴層への波及を副次効果として捉える設計が適切です。
Q. 体験型施策が「失敗する」会社に共通点はありますか?
A. 最も多いのは「企業が伝えたいことから設計している」ケースです。「顧客がその体験を通じて何を感じ、どう行動変化するか」を出発点にした設計でなければ、印象に残らないイベントになります。また、認知→体験→再接触のフェーズのうち、体験フェーズだけに予算が集中し、前後の設計が薄いケースも失敗につながりやすいです。
まとめ:統合設計で体験施策を「ブランド資産」に変える
ポップアップストアや体験型イベントは、正しく設計すれば一時的なイベントではなく「ブランド資産の積み上げ」になります。そのためには、体験の場を作るだけでなく、認知フェーズ(事前接触)と再接触フェーズ(事後の継続露出)を組み込んだ3ステップの統合設計が必要です。
86%のCMOが「ブランドは体験によって築かれる」と答えている時代に、リアル体験だけ、あるいはデジタルだけの設計では、第一想起には届きにくくなっています。
体験型施策の認知フェーズ設計(ゲーム内広告での事前接触)について具体的な相談をご希望の企業は、Ad-Virtuaへお問い合わせください。若年層・ゲーマー層へのリーチから始めるブランド体験設計を、一緒に考えます。
数値・情報の確認日:2026-04-14。ポップアップストアの費用は参考値であり、実際の費用は規模・立地・期間・仕様によって大きく異なります。Ad-Virtuaの実績数値は公式サイト・コラムに基づきますが、最新情報は公式サイトでご確認ください。


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