英ロンドン拠点のアドテック企業Venatus(ヴェナタス)が、Roblox(ロブロックス)の報酬型動画広告フォーマット「Rewarded Video」について、英国・フランス・ドイツ3市場の公式リセラーとなり、Roblox本体との直接商業契約に基づくプレミアムアクセスを提供すると発表した。日本の広告主にとっては、DAU1億4,400万人規模のプラットフォームの広告在庫が、地域特化パートナー経由で流通する仕組みが欧州で公式化された事例として参考になる。
発表の内容

Venatusは2026年4月21日、Robloxの広告フォーマット「Rewarded Video」について、英国・フランス・ドイツの3市場における公式リセラーとしてRobloxと直接の商業契約を締結したと公式ブログで発表した(Venatus Blog)。これにより広告主・広告代理店は、Venatusを経由してRobloxのRewarded Video在庫に「プレミアムアクセス」できるようになる。
Rewarded Videoは、ユーザーが動画広告を視聴すると引き換えにゲーム内アイテムや特典を得られる、いわゆるリワード動画広告の一種で、視聴はユーザーの任意(オプトイン)である。Roblox公式が公表している実績値は次の通り。
- 視認率95%超(Roblox Newsroom 2026年1月)
- 完了率90%超(同上)
- ユーザーの好意度87%(Venatus公式ブログ)
- 稼働体験(ゲーム)数400以上(Roblox Newsroom 2026年1月)
発表主体であるRoblox自体の規模は、2025年第4四半期(2025年10〜12月期)決算資料によると、DAU(デイリーアクティブユーザー)1億4,400万人(前年同期比+69%)、月間アクティブユーザー3億8,180万人。欧州のDAUは3,400万人、18歳以上ユーザー層は前年比50%超の伸びを見せている(Roblox 2025 Q4 Shareholder Letter、Venatus公式ブログ、Tubefilter)。
なお、Q3 2025決算では平均DAU1億5,150万人(前年比+70%)が開示されており、Q4の1億4,400万人と数値の水準が異なる。四半期平均値と単月末値の算出方法の違いによる可能性があるが、正確な理由はRoblox非開示のため未確認である。

発表コメントとして、Venatus Chief Publisher OfficerのFleur Bennettは「Robloxは、Z世代がつながり、創造し、時間を過ごすことの中心にある」とコメント。VenatusのCRO(当時)Dora Michail-Clendinnenも「Z世代は関心が向く場所を作り変えており、Robloxはその最も明確な例のひとつだ」と述べている。Roblox側からはSenior Director, Global Brand PartnershipsのMark Bamburyが「Rewarded Videoは、エコシステム全体に価値を築くという私たちのコミットメントを反映している」とコメントした。
Venatusの広告事業

Venatusとはどんな会社か。ゲーミング・スポーツ・エンターテインメント領域に特化したアドテック企業で、2008年にアドテック業界で協業を始めたMatt Cannon氏とRob Gay氏が2010年に創業した。本社は英国ロンドン(具体的な住所は未確認)で、英国・欧州・北米・APACに事業を展開している。従業員規模は公式サイト記載で120人以上(外部データベースでは24〜200人と幅があるため、公式値を採用)。
2026年7月には投資ファンドMedia Scale Capital Limitedに買収され、旧CROのTheodora Michail-Clendinnen氏がCEOに、Joe Seath氏がCFOに就任する新体制に移行している(この買収については別記事で詳報)。
Venatusが提供する中核プロダクトは「Prosper」というプラットフォームで、需要予測・ハイインパクト広告フォーマット・適応的最適化・アドブロック回復機能を統合している。提供ソリューションは以下の通り(公式サイトより)。
- Direct Sales(直販広告営業代行)
- Header Bidding
- Video Formats / High-Impact Formats
- AdBlock Recovery
- PMP(プライベート・マーケットプレイス)
- Consent Management
- Ad-Mediation
事業モデルは、パブリッシャーのウェブサイト・アプリ・ブラウザゲームの広告枠を、自社の直販営業チームおよびプログラマティック経由で収益化する「アドセールスハウス」型である。年間900件以上の直販キャンペーンを実施しており、EA・Rovio・FUTBINと独占的な直販関係を持つほか、広告主実績としてLEGO・PlayStation・Disneyとの協業が公式サイトに記載されている(詳細キャンペーン内容は非公開)。
今回のRoblox提携は、Venatus自身が保有する広告枠を売る従来モデルとは異なり、Robloxという第三者プラットフォームの広告在庫を、指定地域で独占的に代理販売するという新しい事業形態にあたる。この仕組みはゲーム内広告市場全体で見ても、プラットフォーム側が自社営業だけでなく地域特化パートナーに販売権を委ねるモデルの一例として位置づけられる。

ここまでの歩み
Venatusはスタートアップに多い複数回のVC調達ではなく、ブートストラップ運営を経て1回のPE(プライベートエクイティ)投資を受け、その後PEファンドに買収されるという経路を辿っている。
時期 | 種別 | 内容 |
|---|---|---|
2010〜2021年 | ブートストラップ | 創業者主導で運営、外部資本調達なし(未確認だが、2021年の投資が「初の外部成長資本」と報じられている) |
2021年9月28日 | 成長株式投資 | 英国の中堅企業向けPEファンドLivingbridge(Livingbridge 7ファンド、総額12.5億ポンド)が投資。金額非開示。目的は「同分野における世界最大級の企業としての地位確立」「米国での成長計画の促進」「新地域展開」「専有技術への投資」 |
2026年7月 | 買収 | Media Scale Capital Limitedが買収。金額非開示。新経営体制に移行。目的は「規模拡大」「新たな需要へのアクセス」「データ・IDツール・技術基盤の拡充」 |
日本企業の投資家は確認されていない。累計調達額は公式非開示。
資本の変遷と並行して、Roblox関連の事業展開も段階的に進んできた。
- 2023年8月30日: Bidstack(英・2017年設立のゲーム内広告フォーマット企業、400以上のゲームネットワーク・月間リーチ1億人)と提携し、米・英・独・加・豪・韓の6市場でBidstackのゲーム内広告インベントリの独占直販権を獲得
- 2024年5月: Roblox内の独立系広告プラットフォームBloxbiz Co.(2021年1月設立)とグローバル独占パートナーシップを締結。この時点ではBloxbiz・VenatusのいずれもRoblox本体との商業契約は無いと明記されており、月間1,000万人以上のゲーマーへのリーチを提供する提携と説明されていた
- 2025年1月14日: Fleur Bennett氏(CPO)、Dora Michail-Clendinnen氏(CRO)、Prabhu Prakash Ganesh氏(CTO)を新任。今回の提携発表でコメントを出した2名は、いずれもこの人事で入社した幹部にあたる
- 2026年4月21日: Roblox本体と直接契約し、英仏独3市場のRewarded Video公式リセラーに就任(今回の発表)
- 2026年7月: Media Scale Capitalに買収、新経営体制へ移行
今回の提携は、Venatusにとって「Bloxbiz経由の非公式なRoblox内アクセス」から「Roblox本体との直接契約」への格上げにあたる。資本強化とほぼ同時期に事業ポートフォリオを拡張した動きと位置づけられる。
Roblox側のRewarded Video提供も段階的に拡大してきた経緯がある。
- 2025年4月1日(IAB Playfronts): Google Ad Manager・Google's Authorized Buyers経由でのプログラマティック購入を可能にする「Google提携」を発表。完了率80%超(一部体験では90%超)、DAU 5,000万人超のうち61%以上が13歳以上という数値を開示
- 2025年11月11日: 対象クリエイター条件(月間UU 2,000人以上、13歳以上、2FA有効化、本人確認済み等)を拡大し、全対象クリエイターに開放
- 2026年1月6日: 広告プラットフォーム拡大を発表。完了率90%超・視認率95%超(1,000以上のブランドでの実績)、稼働体験数400以上という、今回のVenatus発表と同じ数値セットを公表
- 2026年4月21日: Venatusを英仏独の公式リセラーに指定(今回のニュース)
広告出稿事例
Roblox Rewarded Video経由の具体的なブランド出稿事例・成果指標は、今回の発表時点では非公開である。ただしVenatusの既存アドネットワーク上での事例は公式ケーススタディとして公開されている。

事例1: Intel(Intel Arc グラフィックス) 韓国のゲーム統計サイトOP.GG上で、「Premium Takeover」フォーマットによる大型ジャンプページ広告を実施。成果指標の公表値は確認できておらず、公式ケーススタディ・ブログには画像のみ掲載されている。

事例2: PokemonCoders(ゲーム攻略サイト)向けパブリッシャー支援 Atlus「真・女神転生V」のテイクオーバー広告を掲載し、収益を「4倍に拡大」させたとVenatus公式ケーススタディで公表されている。これは広告主向けというより、Venatusがパブリッシャー側の広告収益を伸ばした事例である。
このほか、HP(Omen)・Logitechの韓国市場向けキャンペーン、Burberryの「Hero広告フォーマット」実施が公式ケーススタディページに記載されているが、いずれも具体的な成果指標までは公開されていない(未確認)。
なお、これらはすべてVenatusの既存アドネットワーク上での事例であり、Roblox在庫での事例ではない点に注意が必要である。Roblox本体が公表しているRewarded Videoの早期ブランド事例としては、e.l.f.、Sam's Club、Universal Pictures「Five Nights at Freddy's 2」が早期テストに参加し「好意的な初期反応」があったとRoblox公式が発表している。Sam's Club担当者は「お客様が最も多くの時間を過ごす場所に表示することが重要」とコメントした(Roblox Newsroom 2026年1月)。
なぜこの動きが起きたのか
RobloxはDAU1億4,400万人・月間アクティブユーザー3億8,180万人という規模を持ちながら、広告販売のすべてを自社で完結させているわけではない。特に地域ごとの営業リレーションやローカル広告主開拓には、地域に根ざした専門パートナーの存在が有効に働く。VenatusはRoblox内の独立系プラットフォーム(Bloxbiz)との提携で得た知見と、ゲーミング領域での直販営業ノウハウを土台に、Roblox本体との公式契約という段階へ進んだと考えられる。
背景には、Roblox自身の広告事業拡大方針もある。2025年4月のGoogle Ad Manager連携によるプログラマティック購入対応、同年11月の対象クリエイター条件拡大、2026年1月の実績数値公表と、Rewarded Videoの供給面・実証面での整備が段階的に進んできた。視認率95%超・完了率90%超・好意度87%という数値は、オプトイン型広告の高い受容性を示すものであり、Roblox自身が広告在庫としての価値をブランド側に訴求する材料として使ってきたとみられる。
日本市場ではどうか
日本におけるRoblox広告の窓口は、既に電通が保有している。電通は2023年6月28日、Roblox Partner Programの「創設パートナー」として初の広告代理店ホールディングカンパニーに指定されたと発表しており、自動車・FMCG業界クライアントの没入型体験構築を日本で支援してきた実績があると説明している(電通公式発表)。
ただし電通の役割は「ブランド体験開発・没入型広告モデルの共同構築を担う認定パートナー制度」であり、今回のVenatusのような特定広告フォーマット(Rewarded Video)の地域限定・独占リセラー契約とは制度上異なる。日本において「Rewarded Videoの公式リセラー」に相当する契約が存在するかどうかは確認できなかった。
Rewarded Video自体はGoogle Ad Manager経由のプログラマティック購入というグローバル共通の仕組みも用意されており、理論上は日本の広告主・代理店もGAM経由で出稿可能とみられる。ただし地域特化の営業支援・プレミアムアクセスという意味でのリセラー制度は、現時点で英仏独3市場に限定されている(日本での同等プログラムの有無は未確認)。
日本で同じ広告を実施する選択肢
Roblox Rewarded Videoのような海外プラットフォームの報酬型動画広告に、日本の広告主が直接アクセスする手段は、現状では電通のRoblox Partner Program経由か、Google Ad Manager経由のプログラマティック購入に限られる。いずれも国内の中堅企業が単独で商談を組み立てるにはハードルが高い。
日本国内で同種の「オプトイン型・動画を軸にしたゲーム内広告接点」を実施する選択肢としては、国内タイトルを束ねたアドネットワークを利用する方法がある。Ad-Virtuaはその一例で、国内400タイトル以上のゲーム空間内の看板・モニターに動画広告を配信するゲーム内広告のアドネットワークであり、累計再生数8,000万回を超えている(2025年後半時点)。ただしAd-Virtuaが扱うのはゲーム空間内のサイネージ広告であり、視聴と引き換えに報酬を得るリワード型フォーマットとは仕組みが異なる。フォーマットの違いはリワード動画広告とは?仕組み・効果・ゲーム内サイネージとの違いを企業向けに解説で整理している。
- Robloxのようなグローバル単一プラットフォームへの出稿を検討している企業には、電通のRoblox Partner Program経由、またはGAM経由のプログラマティック購入が現実的な選択肢になる。ただし予算規模・商談リードタイムはナショナルクライアント向けの水準になりやすい。
- 国内の若年層・ファミリー層への認知拡大を目的とし、まず国内タイトルで検証したい企業には、Ad-Virtuaのような国内アドネットワークが選択肢になる。1週間300,000円プランという小規模から始められる料金設計があり、広告想起率約1.8倍・CPM約300円という自社実績も公表されている(Ad-Virtua公式実績)。
- 動画クリエイティブの出稿費用感を把握したい場合は動画広告 費用 相場、制作費を含めた総額感を把握したい場合はゲーム内広告の動画クリエイティブ制作費 相場【2026年版】内製・外注・AI制作の費用比較と選び方を参照するとよい。
広告主が取るべき判断
Roblox Rewarded Videoへの出稿を今すぐ検討すべきなのは、グローバル展開を行っており、Z世代・10代後半〜20代の欧州ユーザーへのリーチを重視する企業である。視認率95%超・完了率90%超という数値は、動画広告の品質担保の観点でも参考になる水準であり、AI動画広告の品質管理ガイド|ゲーム内広告での生成AI活用・ブランドセーフティ・承認フロー【2026年版】で扱う品質管理の論点と合わせて確認しておくと判断しやすい。
一方、国内市場への訴求が主目的の企業や、まず小規模に検証してから海外展開を検討したい企業は、現時点でRoblox広告に無理に急ぐ必要はない。日本におけるRewarded Videoの出稿可否・料金体系・地域パートナーの有無は未確認であり、電通経由の大型契約以外の窓口が整備されているとは確認できていない。まずは国内のゲーム内広告・リワード広告で反応を検証し、海外展開のタイミングで改めて検討するという順序が現実的である。
関連する基礎知識への導線
- ゲーム内広告とは — ゲーム内広告全体の仕組みと種類を解説する基礎記事
- リワード動画広告とは?仕組み・効果・ゲーム内サイネージとの違いを企業向けに解説 — Rewarded Videoというフォーマット自体の解説
- 動画広告 費用 相場 — 動画広告全般の費用感を把握する記事
- AI動画広告の品質管理ガイド|ゲーム内広告での生成AI活用・ブランドセーフティ・承認フロー【2026年版】 — 高い視認率・完了率を支える品質管理の考え方
- ゲーム内広告の動画クリエイティブ制作費 相場【2026年版】内製・外注・AI制作の費用比較と選び方 — 出稿にあたっての制作費比較
- インタラクティブ動画広告とは?ゲーム内広告・体験型コンテンツとの統合設計ガイド【2026年版】 — Rewarded Videoが持つオプトイン視聴という「インタラクティブ性」の位置づけ
FAQ
Q. VenatusはRoblox社そのものなのか? A. 異なる。Venatusは英国のアドテック企業で、Robloxとは別会社である。今回の発表は、VenatusがRobloxの広告在庫(Rewarded Video)を英仏独3市場で代理販売する契約を締結したというもので、資本関係は確認されていない。
Q. VenatusはRoblox以外にどんな広告枠を扱っているのか? A. 自社の直販営業チームを通じて、EA・Rovio・FUTBIN等のパブリッシャーのウェブサイト・アプリ・ブラウザゲームの広告枠を収益化している。年間900件以上の直販キャンペーンを実施しており、ゲーム内広告フォーマット企業Bidstackとの独占直販提携(2023年)も持つ。
Q. 今回の提携で、日本の広告主はRoblox Rewarded Videoに出稿できるようになるのか? A. 直接の変化はない。今回のリセラー契約は英国・フランス・ドイツの3市場限定である。日本からの出稿はGoogle Ad Manager経由のプログラマティック購入、または電通のRoblox Partner Program経由が理論上の選択肢になるが、日本向けの地域特化リセラー制度の有無は確認できていない。
Q. Venatusは今後もRoblox関連の提携地域を拡大する可能性はあるか? A. 現時点では、英仏独3市場以外への拡大方針は公式に確認できていない。2024年のBloxbiz提携から今回の直接契約への格上げという経緯を踏まえると、今後の拡大があり得るとは考えられるが、公式発表は無い。


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