Roblox Corporationは2026年6月18日、市場調査大手Ipsosおよびテレビ広告アウトカム測定企業EDO, Inc.と、広告効果測定領域で相次いでパートナーシップを発表した。日本の広告主にとっての意味は明快で、ゲーム内広告を「なんとなく効きそう」ではなく、TV広告と同じ物差しで投資判断できる媒体として扱える環境が海外で先行して整い始めた、という点にある。

発表の内容

発表は仏カンヌで開催中のCannes Lions 2026にあわせて行われた。内容は大きく2つある。

  1. Ipsosとの戦略的リサーチ提携:Z世代・α世代の行動変化を継続的に調査する「リサーチエンジン」を共同構築する。第一弾として調査レポート『Immersive Is Effective』を公開し、デジタル自己表現や没入型広告の新しいベンチマーク、仮想環境が実世界の消費行動に与える影響を測定する。
  2. EDOとの測定パートナーシップ:Roblox上の広告主は、ブランド仮想イベント・ゲーム内広告統合・標準広告キャンペーンを、EDOが線形テレビ・ストリーミングTVに対して用いているのと同じ「investment-grade(投資判断に耐えうる水準の)」データ基準で測定できるようになる。EDOにとっては、ゲーミング分野で初の公式パートナーシップとなる。
RobloxがIpsos・EDOとの測定パートナーシップをCannes Lions 2026で発表した公式ニュースリリースのキービジュアル
出典: Roblox Corporation(

発表内容はRoblox公式ニュースルームに加え、EDO公式サイト・Businesswireでも同日配信された。

Roblox公式ニュースルーム記事では、13〜34歳を対象とした調査結果として次の数値が示されている。

指標

数値

比較対象

注目度

52%が「Roblox上の広告は他プラットフォームより注意を払っている」と回答

ストリーミングを13pt、ソーシャルを11pt上回る

関与度

54%が「Robloxの広告のほうが関与度が高い」と回答

記憶度

63%が「Roblox上で見た商品情報を記憶している」と回答

ストリーミング・ソーシャルの平均を14pt上回る

EDOが今回Robloxに適用する測定手法は2種類ある。①Engagement Rate:リワード動画やビルボード動画に適用し、コンバージェントTV(線形+ストリーミングTV)の標準と比較する。②Event-driven Lift Analysis:仮想イベント開催中のブランド検索エンゲージメントの上昇を、各ブランドのオーガニック検索ベースラインと比較する(出典: ppc.land)。

なお、上記の調査サンプル数・調査時期の詳細は、原資料であるPDFレポート『Immersive Is Effective』の本文からは確認できておらず、Roblox公式ニュースルーム記事の要約表現に基づく数値であることをあらかじめ断っておく。

事業者プロファイル

今回の発表の当事者は3社。Robloxはすでに広く知られたプラットフォームのため、ここでは会社紹介ではなく広告事業(Roblox Ads)を解説する。一方EDOは日本ではほとんど知られていないため、会社としての成り立ちから説明する。

Robloxの広告事業(Roblox Ads)

Roblox広告プラットフォームの動画広告フォーマットを紹介する公式イメージ
出典: Roblox Corporation(

Robloxの広告事業は、ゲーム空間内・ホームページ上に複数の広告フォーマットを配信するビジネスで、公式サイト(brands.roblox.com)によれば主に以下を提供している。

  • Rewarded Video / Billboard Video:動画視聴でアイテムを獲得するリワード広告と、空間内の看板に表示するビルボード動画広告
  • Homepage Hero / Homepage Feature / Search Tiles:2026年1月のCES発表で追加されたホームページ広告枠。Homepage Featureはクリックするとブランド動画がインタラクティブな3D体験に変換されるCPM課金広告
  • Immersive Integrations / Brand Integrations:クリエイターとのコラボレーションによるゲーム内ブランド統合
  • Persistent Experience:常設のブランド体験空間
  • Branded Avatar Items:期間限定のアバターアイテム
  • Portals:ユーザーをブランド体験へ直接誘導する導線機能

プラットフォーム規模は、2026年3月30日締めの2026年度第1四半期決算で平均DAU(デイリーアクティブユーザー)1億3,200万人(前年同期比+35%)と公表されている(出典: Roblox IR Q1 2026 Shareholder Letter)。なお2025年第3四半期には1億5,200万人でピークをつけた後、同年12月のロシアでのサービス遮断等の影響で第4四半期は1億4,400万人、2026年第1四半期は1億3,200万人へ減少している。

買い付け導線もこの1年で拡張された。デマンドサイドはAmazon DSP・Liftoff、サプライサイドはIndex Exchange・Magnite・PubMatic、加えて2025年8月に拡張されたGoogleとの連携がある(いずれも2026年1月CES発表)。測定・検証パートナーはIntegral Ad Science・DoubleVerify・Nielsenが既存で対応しており、今回EDO・Ipsosが新たに加わる形になる。

Robloxホームページ広告枠(Homepage Hero/Feature/Search Tiles)の公式イメージ
出典: Roblox Corporation(

EDOとはどんな会社か

EDO(TV広告アウトカム測定企業)の公式ロゴ
出典: EDO, Inc.(

EDO, Inc.(旧称Entertainment Data Oracle)は2015年設立の米企業で、本社はロサンゼルス(ニューヨークにも拠点、サンフランシスコでエンジニアリング拠点を拡大中)。共同創業者は俳優・映画製作者のEdward Norton氏(現Chairman)と経済学者のDaniel Nadler氏で、現在の社長兼CEOはKevin Krim氏が務める。

EDOが手がけるのは、TV広告(線形テレビ・ストリーミングTVを合わせて「コンバージェントTV」と呼ぶ)の効果を、広告接触後の消費者の実行動(検索・購買関連シグナル等)に紐づけて測定する「TVアウトカム測定」事業だ。機械学習・自然言語処理を用いて広告出稿データと消費者エンゲージメントデータを突合する。TV測定分野ではNielsenと並ぶ主要プレイヤーの一つとされる(二次情報ベース)。

主要プロダクトはコンバージェントTVアウトカム測定プラットフォーム「Ad EnGage」、ストリーミングと線形テレビを横断するクロススクリーンレポート、競合広告インテリジェンス、AIチャット形式でTV広告インテリジェンスを提供する「ChatEDO™」など。The Walt Disney Companyのキャンペーンアウトカム分析プロバイダーに指名されているほか、Amazon(Prime Video「NFL Thursday Night Football」の広告効果測定)、Netflix(同社初のアウトカム測定パートナー)を顧客に持つ。データベース規模は2018年時点で「3.5年以上・4,700万件超のTV広告放送を測定」という公表値があるが、最新の件数は非公開・未確認。

今回のRobloxとの提携は、EDOにとってゲーミング分野への測定拡張の第一号案件にあたる。

Ipsos

Ipsos(世界的マーケットリサーチ企業)の公式ロゴ
出典: Ipsos(

Ipsos S.A.は1975年にフランスで設立された市場調査・世論調査企業で、創業者はDidier Truchot氏。1999年7月1日にユーロネクスト・パリに上場している。2025年時点の公表値で87カ国・拠点100以上・従業員約20,000人を抱え、世界第3位のリサーチ会社とされる。ブランド測定、イノベーションテスト、広告効果評価、顧客・従業員体験調査など幅広い調査ソリューションを提供しており、仮想空間・没入体験に関する調査知見を蓄積する専門プラクティス「Immersive Research」を社内に持つ。今回のRoblox提携は、このImmersive Researchの知見を活用した継続調査エンジンの構築という位置づけになる。

ここまでの歩み

EDOの資金調達の振り返り

EDOはテレビ広告データ企業として、段階的に資金を調達しながら事業を拡大してきた。

時期

ラウンド

調達額

リード投資家

主要参加投資家

そのとき目指していたこと

2018年11月

Series A

1,200万ドル(約18億円、1ドル=150円換算・2026年8月時点の目安)

Jim Breyer(Breyer Capital)

Robert Smith・Brian Sheth(Vista Equity Partners共同創業者)、WGI Group(Michael Walrath・Noah Goodhart・Jonah Goodhart創業)

全米営業体制の拡大、分析能力の強化、ライブ/非ライブTV広告横断で消費者インテントを測定する新製品開発

2022年4月6日

戦略的成長投資(業界メディアはSeries B相当として扱う)

8,000万ドル(約120億円、同換算)

Shamrock Capital

急成長するコンバージェントTVアウトカム測定事業のスケール、Ad EnGageプラットフォームの機能強化、データパートナー網の拡大

累計調達額はCrunchbase集計で92.4百万ドルとされるが、これは二次情報の参考値であり、EDO公式に累計額の明記は確認できていない。2022年ラウンド時点のバリュエーションについて「プレマネー2億ドル超」との報道もあるが同様に未確認の参考値である。いずれのラウンドにも日本企業の投資家参加は確認できなかった。

EDOの調達履歴は、TV業界の測定という比較的ニッチな領域に対し、著名投資家がスケール投資を継続してきた記録でもある。2018年の立ち上げ期投資から2022年の成長投資へと、投資家の評価軸が「TV測定の精度」から「事業のスケール性」へ移っていったことがうかがえる。

Robloxの広告事業のこれまでの取り組み

今回のIpsos・EDO発表は単発ではなく、2024年以降段階的に積み上げられてきた広告インフラ拡張の延長線上にある。

時期

出来事

2024年5月(時期は報道ベース)

動画広告(Video Ads)を全ブランドに開放

2025年8月(同上)

Googleとのプログラマティック連携を拡張

2026年1月6日

CES 2026で「Homepage Feature」広告フォーマットを発表。Amazon DSP・Liftoff(デマンド)、Index Exchange・Magnite・PubMatic(サプライ)とのプログラマティック連携拡大を同時発表

2026年1月(時期詳細未確認)

Magniteがリワード動画の独占取扱権を獲得

2026年6月(時期詳細未確認)

未成年保護の観点でSuperAwesomeを13歳未満向け広告の独占パートナーに指名

2026年6月18日

Cannes Lions 2026にあわせ、Ipsos・EDOとの測定パートナーシップを発表

この半年の流れを整理すると、Robloxは「広告枠の拡大(Homepage Feature)」→「買い付け導線の拡大(プログラマティック接続)」→「測定の標準化(EDO・Ipsos)」という順で広告事業のインフラを積み上げてきたことになる。買い付けと測定の両輪が揃ったことで、Robloxは「TV予算・デジタル予算と同じ基準で比較検討できる媒体」という訴求を強めている段階にある。公開されている情報の範囲では、Robloxの広告事業における明確な失敗・撤退事例は確認できていない。

広告出稿事例

Roblox公式サイト・ニュースルームで確認できた事例を挙げる。いずれも売上・ROIといった厳密な効果指標までは公表されておらず、インプレッション数・ブランド数などの規模指標にとどまる点に留意したい。

事例1: Homepage Feature 初期テスト(2026年1月・CES発表)

2026年1月に新設されたホームページ広告枠「Homepage Feature」の初期テストに、e.l.f.(コスメ)、Sam's Club(小売)、Universal Pictures「Five Nights at Freddy's 2」(映画)が参加した。クリック後にブランド動画がインタラクティブな3D体験に変換される仕組みで、具体的な効果数値は公表されていない(出典: Roblox Newsroom 2026年1月)。

Roblox内のイマーシブ(没入型)ブランド統合広告の公式イメージ
出典: Roblox Corporation(

事例2: 「Jurassic World Rebirth」「Wicked: For Good」の映画プロモーション統合

Roblox上でのブランド統合キャンペーンとして、映画「Jurassic World Rebirth」は約20億インプレッション、「Wicked: For Good」は約80億インプレッションをそれぞれ獲得したとRoblox公式が発表している。スポーツ(NBA、NFL、FIFA)、玩具(Mattel)、金融サービス(H&R Block)等の大手ブランドも参加している。

事例3: EDOパイロット測定(2026年6月18日発表と同時)

複数業界のブランドを対象に、EDOのEngagement Rate・Event-driven Lift Analysisの2手法を用いたパイロット測定が実施されている。個社名や具体的なリフト数値は非公開だが、EDO公式は「即座に投資判断に耐えるアウトカムデータ」を提供する体制が整ったとしている(出典: EDO公式)。

EDOのロゴ(タグライン付き・白抜き版)
出典: EDO, Inc.(

なぜこの動きが起きたのか

背景には、業界全体で進むゲーム内広告測定の標準化がある。IAB(Interactive Advertising Bureau)は2025年6月26日、ディスプレイ・動画・音声・カスタムといったゲーム広告フォーマットの標準測定指標を定めた「Gaming Measurement Framework」を発表しており、ゲーム広告の測定基準を業界横断で揃える動きが進んでいる(出典: IAB公式)。

EDO社長兼CEOのKevin Krim氏は今回の発表で「現代のマーケターは、消費者が最も関与している画面の数が増え続ける中でパフォーマンスを測定・比較できることを期待している」とコメントしており、テレビ・ストリーミング・ゲームを横断してメディア予算を比較したいという広告主側のニーズが背景にあることを示唆している。RobloxのAllison McDuffee氏(Global Head of Brand Insights & Measurement)も「広告主はマーケティングチャネル全体で一貫性があり透明性の高い評価方法をますます求めている」と述べている。

RobloxとEDOの提携は、この業界的な標準化の流れの中で、個別プラットフォームが第三者機関を使ってTV業界の測定慣行(investment-grade data)に合わせにいった事例と位置づけられる。

日本市場ではどうか

2025年4月、RobloxとGoogleの連携拡張により、報酬型動画広告(Rewarded Video Ads)がプログラマティック経由で導入され、日本の広告主・代理店からもRobloxへの出稿がしやすい環境が整いつつあるとされる(出典: 民間メディア「メタバース情報局 by transcosmos」。Roblox公式の日本市場向け発表は確認できていない)。

一方、今回発表されたEDOによるTV基準測定は、日本の広告主が今すぐ使える状態にはない。EDOの計測対象は米国の線形/ストリーミングTVを基準としたベンチマークであり、日本市場向けにローカライズされたベンチマークが存在するかどうかは確認できなかった。EDOの日本法人・日本向けサービス提供自体も確認できていない。Ipsosは日本法人(Ipsos株式会社)を有し市場調査事業を展開しているが、今回の『Immersive Is Effective』調査およびRobloxとの提携が日本を対象範囲に含むかは不明である。

日本のモバイルゲーム広告市場は2025年に約31.2億ドル(約4,600億円)規模、グローバルのゲーム内広告市場は2026年に約120億ドル・年平均成長率約11%という試算がある(いずれも参考値、一次ソース未確認)。市場としての成長は見込まれる一方、「TV業界と横並びで測定できる」という枠組みそのものは、まだ米国発の取り組みにとどまっている。

ゲーム内広告全体の基礎についてはゲーム内広告とはで仕組みと種類を解説している。

日本で同じ広告を実施する選択肢

今回のRoblox×EDOのような「TV業界標準の第三者機関によるアウトカム測定」を日本で同条件のまま利用することは、現時点ではできない。ただし、これは「日本でゲーム内広告の効果を測定する手段がない」という意味ではない。

日本国内でゲーム内広告(ゲーム空間内の看板・モニターへの動画広告配信)を検討する場合、実務上意味を持つのは次の2点だ。

  1. 国内対応タイトル・インベントリを持つアドネットワークかどうか:Robloxのようなグローバル単一プラットフォームではなく、日本のカジュアルゲーム・スマホゲームを横断したネットワークが選択肢になる。Ad-Virtuaはこの領域で、対応タイトル400以上、累計再生数8,000万回超(2025年後半時点)のサイネージ広告ネットワークを提供している。
  2. 測定の考え方をどこまで自社KPIに翻訳できるか:EDOのEngagement Rate・Event-driven Lift AnalysisはTV業界の指標体系に基づくものであり、そのまま日本のブランドリフト調査に持ち込めるわけではない。Ad-Virtuaは広告想起率約1.8倍・注目度約1.7倍という自社データを保有しているが、EDOのような第三者・TV業界標準ベンチマークとの連携は現状ない。

向いている企業:TVCM予算との比較材料としてゲーム内広告を検討し始めており、まずは国内実績のある媒体で想起率・注目度データを取得したい企業。
向いていない企業:Robloxのグローバル規模のインプレッション(数十億単位)や、EDOのTV横断アウトカムデータそのものを国内でそのまま再現したい企業。この場合は、Roblox本体への直接出稿とグローバル基準の測定枠組みを検討する必要がある。

広告主が取るべき判断

今回の発表を受けて日本の広告主が取るべき判断は、対象企業の状況によって分かれる。

  • 今動くべき企業:すでにグローバル展開しており、Robloxのようなプラットフォームへの出稿実績・検討がある企業。TV予算との比較検討を進める上で、EDOの測定枠組みがどこまで日本向けに展開されるか、今後の動向を継続的に確認する価値がある。
  • 様子見でよい企業:国内市場中心で、まずは国内のゲーム内広告で若年層接点の効果を検証したい段階の企業。EDOのTV横断測定が日本でローカライズされるかどうかは未確定であり、現時点で急いで対応する必要はない。

いずれの場合も、「ゲーム内広告は測定できないのではないか」という懸念自体は、RobloxがTV業界標準の第三者機関を持ち込んだことで、少なくとも海外では解消の方向に向かっていると理解しておくとよい。

関連する基礎知識への導線

FAQ

Q. EDOの測定データは日本の広告主も申請すれば使えるのか。
A. 公開情報の範囲では、EDOが日本市場向けにサービスを提供しているという公式情報は確認できていない。現時点では米国の広告主・米国市場を基準としたパートナーシップと考えるのが妥当である。

Q. Ipsosの『Immersive Is Effective』調査は日本のZ世代・α世代も対象にしているのか。
A. 調査の対象国・地域はRoblox公式ニュースルーム記事の要約表現からは確認できておらず、原資料のPDFレポート本文でも特定できなかった。日本を含むかどうかは不明である。

Q. RobloxはEDO以外にどんな測定パートナーと連携しているのか。
A. 公式資料で確認できる範囲では、Integral Ad Science・DoubleVerify・Nielsenがブランドセーフティやビューアビリティの検証パートナーとして既存で連携しており、プログラマティックではGoogleとも接続している。EDOとIpsosは、この体制に加わる形の新規パートナーである。

Q. 今回の発表とRobloxのクリエイター向け収益分配の見直しは関係があるのか。
A. Roblox側の担当者(GamesBeat報道ベースの情報のみで役職・詳細は未確認)は、2027年の収益分配フレームワーク改定と今回の測定発表に直接的な関連はないとコメントしている。ただし測定精度の向上がクリエイター報酬の算定にも資すると説明されている。