結論
ゲーム内音声広告を手がけるOdeeo(オデオ、法人名 Sonic Odeeo Ltd.)は2026年8月13日、自社のモバイルアプリ・ゲーム内音声広告在庫を、米ウォルマート(Walmart)傘下の広告部門Walmart Connectが提供するデマンドサイドプラットフォーム(DSP)「Walmart DSP」経由で購入できるようにしたと発表した。日本の広告主にとっての意味は、「新しい広告フォーマットを試すために新しい取引先・管理画面を増やす」という採用障壁が、海外では既存DSPへの接続によって下がりつつあるという事実であり、今回のWalmart DSP経由の在庫が日本向けにも開放されるかどうかは、公式発表内で明言されておらず現時点では確認できていない。
発表の内容
Odeeoは公式ブログ(2026年8月13日付)で、自社のプレミアムなin-app音声広告在庫がWalmart DSP経由で購入可能になったと発表した出典: Odeeo公式ブログ。広告主・代理店は、Walmart DSPで従来使っているプログラマティック購買のワークフローをそのまま使い、追加のオンボーディングや別システムへの統合作業なしに、Odeeoが直接SDK連携するモバイルアプリ・ゲーム内の音声広告枠にリーチできるとしている。

発表文では、Effie・System1によるグローバル分析データを引用し、「音声を使ったキャンペーンは利益目標を達成する可能性が75%高く、消費者の信頼を構築できる可能性が81%高い」という数値を、音声広告フォーマットの有効性の根拠として示している。ただしこの調査の実施年・調査対象国・一次データへのリンクは公式ブログ内に明記されておらず、現時点では確認できていない。
なお、今回の発表本文にはOdeeo・Walmart Connect双方とも役職者個人名でのコメント掲載はない。対象国・地域(米国限定かグローバル対応か)や、Walmart DSP経由の音声在庫がプライベートオークションかオープンオークションかといった取引形式についても、公式ブログには明記がなく未確認である。
Odeeoとはどんな会社か

Odeeo(正式法人名 Sonic Odeeo Ltd.)は2021年設立とされる、イスラエル・ヘルツリヤ(Hertzliya)拠点のゲーム内音声広告スタートアップである(設立年・本社住所は公式ページでの明記が確認できず、複数の独立系報道に基づく)。創業者はCEOのAmit Monheit氏と、共同創業者でPresidentのElad Stern氏。Monheit氏はテルアビブの音声コンテンツ発見プラットフォームで職を失った経験をきっかけに音声広告分野を研究し、Odeeoを創業したと報じられている(出典: AdExchanger)。従業員規模は非公開で、第三者データベース(Tracxn)の推計では36名程度(11〜50名レンジ)とされるが、公式の人数開示は確認できていない。
提供プロダクトと配信の仕組み
Odeeoは「ノンインテンシブ(非侵襲的)なゲーム内音声広告」を起点に事業を始め、2026年時点では音声・ディスプレイ・動画・ネイティブを扱う「フルスタック・マルチフォーマットのin-appアドテクプラットフォーム」へと事業領域を広げている(同社の自己定義)。
- 軽量SDKをモバイルゲーム・アプリに直接統合し、プレイ中のBGMや効果音の音量を落として音声広告を挿入する、ラジオCMに近い形式を採用
- ゲームプレイ自体を中断しないことを「非侵襲的」として訴求軸にしている
- SDKによる直接在庫に加え、Amazon DSP・Google Authorized Buyer・Unity・Walmart DSPなど主要なDSP/SSP経由のプログラマティック購買にも対応し、広告主が既存の購買導線から出稿できる設計にしている
- TAG認証を取得し、sellers.json・app-ads.txtを整備することで、アービトラージや転売在庫を扱わない透明なサプライチェーンを公言している
対応プラットフォームとインベントリ規模
公表されている数値は次のとおり。ただし発表時期が異なるため単純な時系列比較はできない点に留意が必要である。
指標 | 数値 | 出典・時点 |
|---|---|---|
グローバル月間アクティブユーザー | 3億人以上 | Amazon DSP統合発表(2026年3月) |
対応モバイルゲーム数 | 1,500以上 | 同上 |
フランス国内月間アクティブユーザー | 300万以上 | Lagardère Publicité News統合発表(2026年6月) |
フランス国内対応ゲーム数 | 2,500 | 同上 |
フランス国内月間広告インプレッション | 2,000万以上 | 同上 |
(参考)2024年時点の日次アクティブユーザー | 1,500万人 | techstartups.com(2024年9月) |
主要パートナー
- DSP/SSP: Amazon DSP、Google Authorized Buyer(Ad Manager/AdMob/AdSense経由)、Unity、Walmart DSP(Walmart Connect)、Magnite(DV+)、AdsWizz、Xandr、DAX(Digital Audio Exchange)
- 地域代理店・パブリッシャー系: Lagardère Publicité News(フランス)、Otonal(日本)
- ゲームパブリッシャー・開発者: Gameloft、Azerion、SayGames、SuperSonic、PlaySimple、AzurGames、TapNation、MondayOff、White Room Games、Rocket Studio、Lihuhu、Gamejam
- 計測・検証: Claritas(第三者効果検証)、Oracle Moat、IAB/IAB UK
- オーディエンスターゲティング: NumberEight
ここまでの歩み
資金調達の振り返り
Odeeoは2021年の創業以来、段階的に資金を調達しながら事業を拡大してきた。
時期 | ラウンド | 調達額 | リード投資家 | 主要参加投資家 | そのとき会社は何をしようとしていたか |
|---|---|---|---|---|---|
2021年9月 | プレシード | 100万ドル | Play Ventures | Eric Seufert、Michail Katkoffら業界エンジェル投資家 | SDKを100以上のゲームに統合済みで、McDonald's・CBS・Progressiveなどフォーチュン500ブランドのキャンペーン実績を土台に、初期の事業拡大を図る段階だった |
2022年6月 | シード | 900万ドル | Play Ventures、Global(欧州最大級のラジオ・メディア企業) | Eric Seufert(Heracles Capital)、Anton Gauffin(Huuuge Games創業者)、Christian Calderon(GameJam創業者)、Lior Shiff(TripleDot Studios創業者) | ゲーム内で映像広告と並行して音声広告を活用できる技術の開発・展開を進めていた |
2024年9月 | 追加調達 | 500万ドル | Atinum Investments(韓国の大手アーリーステージVC) | Play Ventures、Anton Gauffin(既存投資家の追加参加) | 北米市場を中心としたグローバル展開の加速局面。ニューヨークに初の米国オフィスを開設し、共同創業者のElad Stern氏がテルアビブからニューヨークへ移住して現地チームを強化した |
累計調達額については、二次情報のTracxnが1,600万ドル、gamesbeat.comの2024年記事が「本ラウンドを含め累計1,500万ドル」と記載しており、100万ドルの食い違いがある。いずれも公式ニュースルームでの明記は確認できないため、正確な累計額は未確認として扱う。上記いずれのラウンドにも、参加投資家リストに日本の投資家は確認できなかった。
DSP・SSP統合の積み上げ
資金調達と並行して、Odeeoは主要な広告購買プラットフォームへの接続を一つずつ増やしており、今回のWalmart DSP統合はその延長線上にある。

- 2023年12月: 日本の音声広告専門代理店Otonal(オトナル)と提携し、日本向け製品「GainAds」を共同ローンチ
- 2026年3月11日: Amazon DSPとの統合を発表。米国限定・音声フォーマットのみ・Magnite DV+経由のプライベートオークションディールという条件付き
- 2026年4月17日: Google Authorized Buyerに認定されたと発表。Google Ad Manager/AdMob/AdSense経由の在庫にアクセス可能に
- 2026年6月22日: Unityとの統合を発表。Unityのin-app在庫へのアクセスを獲得し、音声・ディスプレイ・動画のマルチフォーマット展開を強化
- 2026年6月23日: フランスのLagardère Publicité Newsとの提携を発表。Europe 1、RFM、SoundCloudなどの広告枠にOdeeoの音声広告を統合
- 2026年8月13日: 今回のWalmart DSP統合
この並びから、Odeeoは単発のDSP接続を積み重ねているのではなく、主要な広告購買プラットフォームを順に押さえていくプラットフォーム戦略を明確に取っていると考えられる。今回のWalmart DSP統合は、確認できた範囲で6件目の主要統合にあたる。なお、リサーチした範囲でOdeeoの撤退・サービス終了の事例は確認されていない。
広告出稿事例
事例1: McDonald's(Admerasia代理店経由、Claritasが効果検証)
McDonald'sは代理店Admerasia、Odeeo、第三者計測会社Claritasの4者体制で、アジア系アメリカ人消費者(ACM)向けに「McValue」メッセージを配信する、約1ヶ月間のゲーム内音声広告キャンペーンを実施した。


公表されている効果指標は次のとおり。第三者機関Claritasが独立検証を行っている。
- 注文数(インクリメンタル): +15%
- アプリインストール: +50%
- アプリ登録: +50%
- リッスンスルー率(LTR): 90.37%
- クリックスルー率(CTR): 3.13%

出典: Odeeo公式ブログ、Odeeo公式ケーススタディ、GamesBeat
事例2: Costa Coffee(英国最大手コーヒーチェーン)
英国最大手コーヒーチェーンのCosta Coffeeは、モバイルゲーム内のノンインテンシブ音声広告を用いて、ブランドの認知・信頼構築を狙ったキャンペーンを実施した。

公式ページ上では「ブランド信頼度の向上」「ブランド認知度の強化」という定性的な表現にとどまり、具体的な数値指標は本文で公開されていない(詳細データはダウンロード資料扱い)。出典: Odeeo公式ケーススタディ
参考: 米国フィットネスサブスク企業(社名非公開)
複数の記事要約によると、音声予算比率を3ヶ月で全体の25%まで拡大した米国のフィットネスサブスクリプション企業の事例で、注文40%増・ウェブ訪問50%増・CPA効率18%改善という結果が紹介されている。ただし社名が非公開であり、一次情報での裏取りができていないため、参考情報として扱う。
なぜこの動きが起きたのか
Odeeoが一貫して取っている戦略は、「新しい広告フォーマットを、広告主が既にお金を使っている既存のDSPに接続する」というものである。広告主にとって新しい媒体を試す際の最大の抵抗は、フォーマットそのものへの不慣れさよりも、新しい取引先・管理画面・請求フローを追加で覚える手間であることが多い。Odeeoはこの抵抗を下げるため、SDKによる直接在庫の拡大と並行して、Amazon DSP、Google Authorized Buyer、Unity、Walmart DSPという主要な購買プラットフォームへの接続を段階的に積み上げてきた。
背景にはもう一つ、音声広告フォーマット自体への評価がある。Odeeoが引用するEffie・System1のデータでは、音声を使ったキャンペーンは利益目標達成の可能性が75%高く、消費者の信頼構築の可能性が81%高いとされている。この数値の一次調査名・調査年・対象国は公式ブログに明記されておらず未確認だが、Odeeoが音声フォーマットの非侵襲性(ゲームプレイを中断しない)を訴求の軸に据えていることと整合的である。
日本市場ではどうか
Odeeoは今回が初めての日本進出ではない。2023年12月、日本の音声広告専門エージェンシーOtonal(オトナル)と提携し、日本向けのゲーム内音声広告製品「GainAds」を共同ローンチしている。発表時、Odeeo CEOは「日本は最も洗練されたゲーマーを持つ独特で先進的な市場」とコメントし、Otonal側は「ゲーム内音声広告は日本では未開拓市場」と位置づけていた(出典: Odeeo公式ブログ、2023年12月20日)。同発表では、日本のモバイルゲーマー数7,000万人、65%が毎日プレイ、92%が週1回以上プレイ、世界第3位のビデオゲーム市場という数値が引用されている。
一方で、今回のWalmart DSP統合が日本の広告主にどう作用するかは現時点で未確認である。過去のAmazon DSP統合が「米国限定」と明記されていたことを踏まえると、Walmart DSP経由の音声在庫についても日本の広告主がすぐに使えるとは限らない。国内では、Otonalが独自に展開する「GainAds」のほか、英国発のAudiomobもOtonal経由で日本語サポート付きで提供されており、日本の広告主が実際に出稿できるゲーム内音声広告の選択肢は既に存在する(出典: オトナル公式ブログ、Audiomob日本語ページ)。
ゲーム内広告というフォーマット自体の基礎については、当社の解説記事「ゲーム内広告とは」で種類・仕組み・効果指標を整理している。音声広告に絞った国内事例や料金体系は、「モバイルゲーム内音声広告の戦略ガイド」で完聴率90%超・ブランド想起率30%といった効果データとともに扱っている。
日本で同じ広告を実施する選択肢
日本の広告主が「ゲーム内で音声広告を試したい」という場合、現時点ではOtonal経由のGainAdsまたはAudiomobが直接の選択肢になる。ただしこれらは音声フォーマットに特化しており、視覚的なブランド訴求(ロゴ・パッケージビジュアル・キービジュアル)を重視する場合は選択肢として噛み合わない。
視覚訴求を軸にゲーム空間内で認知を獲得したい場合は、当社Ad-Virtuaが提供するゲーム内サイネージ広告(ゲーム空間の看板・モニターに動画広告を表示する形式)が選択肢の一つになる。OdeeoがDSP経由のプログラマティック購買という間接的な導線で採用障壁を下げているのに対し、Ad-Virtuaは直接契約によるシンプルな出稿プロセスで同じ「新媒体への出稿ハードル」という課題に対応している点が異なる。両者は競合ではなく、音声(聴覚)と視覚という異なるチャネルであり、併用を検討する余地もある。
比較ポイント | Odeeo(GainAds/Audiomob経由・日本向け) | Ad-Virtua(ゲーム内サイネージ広告) |
|---|---|---|
訴求チャネル | 音声(BGM・効果音の間に挿入) | 視覚(ゲーム空間内の看板・モニター) |
出稿導線 | 代理店(Otonal)経由の商談、または海外ではDSP経由のプログラマティック購買 | 直接契約 |
対応タイトル規模 | 国内向けの具体的なタイトル数は非公開 | 400タイトル以上 |
累計実績 | 日本向けの累計再生数等は非公開 | 累計再生数8,000万回突破(2025年後半時点) |
こんな広告主におすすめ | ラジオCM的な音声訴求を試したい企業、ゲームプレイを中断しない接触を重視する企業 | ロゴ・パッケージ等の視覚的な第一想起を狙う企業 |
Ad-Virtuaが合うのは、TVCMやSNS広告の補完として「プレイ体験を阻害しない視覚的な認知接点」を国内で直接契約により素早く試したい企業である。逆に、音声フォーマットそのものの効果を検証したい企業や、海外DSP経由のグローバル購買基盤を既に持つ企業にとっては、OdeeoのGainAds・Audiomobのほうが検討の起点として自然である。
広告主が取るべき判断
- 今動くべき企業: 国内でゲーム内広告の効果検証を既に終えており、視覚・聴覚両方のチャネルで接点を広げたい企業。また、Amazon DSPやGoogle広告など既存のプログラマティック購買基盤を持ち、海外市場でのゲーム内音声広告を検討している企業は、Odeeoの統合状況を確認する価値がある
- 様子見でよい企業: Walmart DSP経由の在庫が日本向けに開放されるかどうかは未確認のため、日本国内のみでの出稿を検討している企業が今回の発表を理由に急いで動く必要はない。国内で使える選択肢(GainAds、Audiomob、Ad-Virtua等)から検討を始めるのが妥当である
関連する基礎知識への導線
- ゲーム内広告とは — ゲーム内広告の種類・仕組み・効果指標の基礎解説
- モバイルゲーム内音声広告の戦略ガイド — GainAdsの料金体系、完聴率・ブランド想起率などの国内データ
FAQ
Q. Walmart DSPとは何か。
A. ウォルマート傘下の広告部門Walmart Connectが提供するデマンドサイドプラットフォーム(DSP)で、広告主・代理店がプログラマティックに広告枠を購入するための管理基盤である。今回の発表は、このWalmart DSPの購買画面からOdeeoの音声広告在庫にアクセスできるようになったという内容である。
Q. Odeeoの広告は音声以外のフォーマットにも対応しているか。
A. 公式ブログの自己定義によれば、Odeeoは音声を起点としつつ、ディスプレイ・動画・ネイティブを扱う「フルスタック・マルチフォーマットのin-appアドテクプラットフォーム」に事業領域を広げている。ただし今回のWalmart DSP統合が音声フォーマット限定なのか他フォーマットも含むのかは、公式発表内に明記がなく未確認である。
Q. 日本の代理店経由でOdeeoの広告に出稿できるか。
A. 2023年12月からOtonal(オトナル)との提携により、日本向け製品「GainAds」が提供されている。今回のWalmart DSP統合とは別のスキームであり、Otonal経由の出稿がすでに存在する選択肢である。
Q. Odeeoは日本国内で撤退や事業縮小をしたことがあるか。
A. リサーチした範囲では、Odeeoの撤退・サービス終了の事例は確認されていない。
Q. McDonald'sの事例で使われた効果指標はどの媒体でも同じ結果になるのか。
A. 効果指標(注文+15%、インストール+50%等)は、Admerasia代理店・Claritasによる第三者検証を含む特定のキャンペーン条件下での結果であり、業種・ターゲット・クリエイティブが異なれば同じ数値になるとは限らない。あくまで公表されている一事例として参照すべきである。


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