結論

ゲーム内音声広告プラットフォームのOdeeo(オデオ)が、計測企業Claritasと提携し、ストリーミング音声・ポッドキャスト・ゲーム内音声を横断してコンバージョンまで追跡できる計測の仕組みを2025年8月に発表した。日本の広告主にとっては、「ゲーム内広告は効果が見えにくい」という懸念に対して海外の音声広告領域がどう答えようとしているかを示す事例であり、この計測フレームワーク自体は米国データを前提としているため、今すぐ日本のキャンペーンに使えるものではない。

発表の内容

Odeeo(イスラエル・ヘルツリヤ本社)は2025年8月5日、公式ブログでマーケティング計測プラットフォームのClaritas(Claritas LLC、米国)との提携を発表した。ストリーミング音声・ポッドキャスト・放送・ゲーム内音声という複数の音声接点を単一の計測フレームワークで横断比較できるようにする取り組みで、Odeeoはこれを「業界初(pioneering)」と位置づけている。

OdeeoとClaritasの提携発表を伝える公式告知画像
出典: Odeeo(

Claritasの独自アトリビューション技術とアイデンティティグラフをOdeeoのゲーム内音声インベントリに統合することで、広告主はチャネル横断でのパフォーマンス比較と、ほぼリアルタイムでのキャンペーン最適化が可能になるとしている。将来的にはClaritasのAI最適化エンジンを統合し、オーディエンスターゲティングやクリエイティブ調整への拡張も「評価している(evaluating)」としているが、確定した提供時期は明言されていない。

Odeeo共同創業者兼プレジデントのElad Stern氏はコメントで、「クライアントの多くはゲーム内広告キャンペーンでROAS改善や著しいブランドリフト改善を実現してきた。この提携により、完全なアトリビューション計測を得て、ゲームオーディエンスが成長に与える影響を把握できるようになる」と述べている(出典: Odeeo公式ブログ)。ただし、ROAS改善率やブランドリフト改善率の具体的な数値は公表されていない。

Claritas最高成長責任者のChase Miller氏は、「ゲームはポッドキャストやストリーミングと同じ説明責任が求められる不可欠なチャネルになった」とし、「すべての露出を最初の視聴から最終コンバージョンまで、発生場所を問わず追跡できる」とコメントしている(出典: 同上)。この発表は業界メディアPocketGamer.bizでも3日後の2025年8月8日に後追い報道されている。

Odeeoのゲーム内音声広告事業

Odeeoの企業ロゴ
出典: Odeeo(

Odeeoとはどんな会社か。公式サイトによれば2021年設立、本社はイスラエル・ヘルツリヤに置く。共同創業者はAmit Monheit氏(CEO)とElad Stern氏(プレジデント)で、公式ブログ「The Odeeo Odyssey」では、両氏が2020年のロックダウン後から協業を始め、同年12月にプロトタイプをローンチしたという記述もある。従業員規模は非公開だが、「イスラエル・ヨーロッパ・アメリカにチームを配置するグローバルスタートアップ」と説明されている。

Odeeoが提供するのは、モバイルゲームアプリ内に、プレイを中断させない「非侵入型(non-disruptive)」の音声広告を配信するプラットフォームである。専用SDKをゲームパブリッシャーに組み込み、ラジオCMのようにゲーム内のBGMや効果音の音量を一時的に下げてブランドメッセージを流す方式を採る。CTA(Call to Action)ボタンを同時表示するクリッカブル型のフォーマットも用意されている。プレイ画面そのものを覆わないため、ユーザーの操作を止めずに広告を届けられる点が特徴とされている。

インベントリ規模について、公式サイトでは月間アクティブユーザー3億人以上(300M+ MAU)、月間ビッドリクエスト120億以上、1,000以上のプレミアムモバイルゲームへの統合という数値を公表している。

主要パートナーは配信インフラ側とゲームパブリッシャー側に分かれる。配信インフラ・SSP/エクスチェンジではDAX、Xandr、AdsWizz、Magnite、Unity(2026年6月提携)と連携し、DSP側ではAmazon DSP(2026年3月)、Google Authorized Buyer認定(2026年4月)、Walmart DSP(2026年8月、業界メディアの報道ベース。Odeeo公式ブログでの単独告知は未確認)を通じた買い付けに対応している。ゲームパブリッシャーではGameloft、Azerion、SayGames、SuperSonic、PlaySimple等と提携し、業界認証としてTAG(Trustworthy Accountability Group)、IAB UK、Oracle Moatを取得している。日本市場ではオーディオ広告代理店オトナルと2023年12月に提携済みである。

Odeeoの企業ロゴ(白抜き・ヘッダー用)
出典: Odeeo(

Odeeoが配信する音声広告は、看板やモニターに映像を表示するゲーム内広告とはで扱われる媒体分類の中では、視覚を使わない「音声インベントリ」に位置づけられる。プレイ画面を占有しないため、視覚系のサイネージ広告とは異なる接触の作り方になる点は押さえておきたい。

提携先Claritasの位置づけ

Claritasの企業ロゴ
出典: Claritas LLC(

Claritasは米国のマーケティング計測プラットフォームで、設立年・創業者・本社所在地・従業員規模は公式サイト上に明記がなく未確認である。「アイデンティティグラフ」と特許取得済みAI最適化エンジン「Clair」、消費者インテリジェンスデータを組み合わせ、オーディエンスの識別・配信・最適化を単一システムで提供する。データ範囲の表現はページによって異なり、今回の提携発表記事内では「米国成人消費者100%」「40億デバイス以上」「1万以上のインサイト」と説明されている一方、Claritas公式サイトの別ページでは「40 billion monthly data points」「1.2+ billion devices」、トップページでは「255 million people profiled」「600 million linked devices」という異なる数値セットが掲載されており、どれが最新・正式な値かは確認できていない。主要パートナーとしてComcast Advertising、Databricks、AudioStack、AnalyticsIQ等が公式ニュースページに掲載されている。

ここまでの歩み

Odeeoはスタートアップであり、資金調達の履歴は市場からの評価の記録でもある。確認できた範囲を時系列で整理する。

時期

ラウンド・金額

主な投資家

そのとき何をしようとしていたか

2021年(設立時)

プリシード 100万ドル

Play Ventures ほか

プレイを止めない音声広告という新フォーマットの開発

2022年6月13日

シード拡張 900万ドル

Play Ventures・Global(リード)、Eric Seufert氏、Anton Gauffin氏ほか

ブランドとゲームデベロッパーをつなぐ機能の強化

2024年9月(報道ベース)

戦略的資金調達 500万ドル超

Atinum Investments(韓国)、既存投資家のPlay Ventures・Anton Gauffin氏

北米展開(プレジデントのNY移住)とアジア展開の強化。日本での既存提携を足がかりにする意図が言及されている

累計調達額について、二次メディアの集計では「累計1,600万ドル」という記載があるが、Odeeo公式ニュースルームでの累計額の明記は確認できていないため、参考値として扱う。個別ラウンドの合算(100万+900万+500万超)は1,500万ドル超に近い水準である。

資金調達と並行して、Odeeoはこの1年で配信インフラ側の提携を連続して積み重ねてきた。2023年12月に日本のオトナルと提携し、2026年に入ってからはAmazon DSP(3月)、Google Authorized Buyer(4月)、Unity(6月)、フランスのLagardère Publicité(6月)、Walmart DSP(8月・報道ベース)と拡大が続いている。今回のClaritasとの提携(2025年8月)は、この配信面の拡大と対をなす「計測・アカウンタビリティ」側の強化策として位置づけられる。配信面を広げるほど「効果が見えにくい」という広告主の懸念が強まるため、Claritasとの提携は在庫拡大戦略の説得力を担保する布石と考えられる。

なお、公式サイト・公式ブログ・主要業界メディアの確認範囲内で、Odeeoの大規模な撤退やサービス終了の記録は見当たらない。2021年設立のスタートアップとして、現時点までは拡大局面が続いている。

広告出稿事例

事例1: McDonald's(起用代理店Admerasia)

McDonald'sのゲーム内音声広告キャンペーン事例を示す公式イメージ
出典: Odeeo(

アジア系アメリカ人(AAPI)層向けに「McValue」メッセージを訴求するゲーム内音声広告キャンペーンを実施した事例。効果指標は、インクリメンタル注文+15%、アプリインストール+50%、ユーザー登録+50%と公表されている。この効果測定はClaritasが検証を担当したと公式ケーススタディに明記されており、今回のOdeeo×Claritas提携が打ち出す「フルファネル計測」の先行実証例に当たる。

事例2: Costa Coffee

Costa Coffeeのゲーム内音声広告キャンペーン事例を示す公式イメージ
出典: Odeeo(

DAX Mobile Gamingと連携し、モバイルゲーム内でシームレスな音声広告キャンペーンを実施した事例。具体的な効果指標の数値は公式ケーススタディページ上には非公開で、詳細版はダウンロード資料でのみ提供されている。

このほか、英国政府機関Department for Work and Pensionsによる公共広報目的の活用事例も公式サイトのケーススタディ一覧に掲載されているが、効果指標は非公開である。

なぜこの動きが起きたのか

Odeeoの1年間の動きを俯瞰すると、「配信面を増やす」動き(Amazon DSP、Google Authorized Buyer、Unity、Walmart DSP)と、「計測を強化する」動き(Claritas)がセットで進んでいることがわかる。在庫だけを増やしても、広告主が効果を検証できなければ出稿判断はできない。Claritasのコメントにある「ゲームはポッドキャストやストリーミングと同じ説明責任が求められる」という表現は、音声広告市場全体で計測の水準を揃える動きが起きていることを示していると考えられる。

Claritas側から見ても、ストリーミング音声・ポッドキャストで培ったアイデンティティグラフとアトリビューション技術を、伸びているゲーム内音声という新しいインベントリに広げる動機がある。Odeeoの発表では世界のモバイルゲームプレイヤー数を30億人以上としており、音声広告の接触面としてのゲームの規模は計測企業にとっても無視できない水準になってきていると考えられる。

日本市場ではどうか

同種の動きは日本市場でも既に始まっている。Odeeoは2023年12月19日、日本のオーディオ広告代理店オトナルと業務提携し、同社の音声広告プラットフォーム「GainAds」経由で日本国内のカジュアルモバイルゲーム(1,000タイトル以上)への音声広告配信を開始している。Odeeo CEOは提携時に「日本は最も先進的なゲーム市場のひとつ」とコメントしており、日本はOdeeoにとって早期からの重点市場である。

一方、今回のClaritas計測フレームワークがそのまま日本のキャンペーンに適用できるかは未確認である。Claritasのデータ範囲は「米国成人消費者100%」「40億デバイス」など、明確に米国市場を対象としたアイデンティティグラフであり、日本国内のGainAds経由キャンペーンに今回の計測が適用されるという言及は、Odeeo公式ブログ・オトナル公式ニュースいずれにも見当たらない。したがって現時点では、「日本の広告主が今すぐ使える計測メニューではない」と考えるのが妥当である。

日本国内の音声広告・ゲーム内広告の効果測定については、GainAdsがCPM課金・最低出稿金額原則なしで提供しており、Nielsenの調査によるブランド想起率+24%というデータも公表されている(詳細はゲーム内音声広告とはを参照)。今回のニュースは、この「音声広告の効果はどう測るのか」という論点を、海外の最新動向でアップデートする材料として位置づけられる。

日本で同じ広告を実施する選択肢

海外の音声広告インベントリは、Claritasのような外部の第三者計測パートナーと組むことで「露出からコンバージョンまで」の一気通貫追跡を訴求しようとしている。ゲーム内広告全般に共通する「効果が見えにくい」という懸念は、フォーマットが音声かサイネージかを問わず広告主の最大の懸念点であり、この提携はその懸念に対する海外側の一つの回答と見ることができる。

日本国内でゲーム空間内の看板・モニターに動画広告を配信する仕組みとしては、Ad-Virtuaのようなアドネットワークが選択肢になる。Ad-Virtuaは広告想起率約1.8倍・注目度約1.7倍という指標を公表しており、これは「想起・注目」という認知寄りの効果指標である。一方、Odeeo×Claritasが志向するのは「注文・インストール・登録」という購買行動に近い直接アトリビューションであり、両者は測っている対象が異なる。TVCM・SNS広告の補完として認知・想起の底上げを狙う段階の広告主であれば、国内で計測・レポーティング体制を持つサイネージ広告の選択肢は現実的な候補になる。逆に、購買までの直接効果を厳密に検証したい広告主にとっては、Odeeo×Claritasのような購買アトリビューション志向の計測は今のところ日本語圏では代替が乏しく、様子見にならざるを得ない。

広告主が取るべき判断

今回の発表を受けて動くべきかどうかは、広告主が置かれている状況によって分かれる。

  • 今動いてよい企業: 日本国内でゲーム内広告・音声広告の認知施策をまだ試していない企業。オトナルのGainAdsやAd-Virtuaのような国内アドネットワークで、まずは想起率・注目度といった認知指標から検証を始める段階に合う。
  • 様子見でよい企業: 米国市場を主戦場としており、Claritasの計測基盤を前提にキャンペーンを組める企業。ただし、Claritasのデータ範囲は米国が中心であるため、日本国内向けキャンペーンでの適用は現時点で確認できていない。
  • 判断を急がなくてよい企業: Claritasの「AI最適化エンジン統合によるターゲティング拡張」を待ってから検討したい企業。この機能は「評価中」の段階であり、確定した提供時期は明言されていない。

関連する基礎知識への導線

FAQ

Q. Odeeoの広告はゲーム画面に表示されるバナーや動画広告と何が違うのか。
A. 表示面ではなく音声に接触点を作る広告である。ゲーム内のBGMや効果音を一時的に下げてブランドメッセージを流し、画面自体は覆わないため、プレイを止めずに接触できる点が視覚系フォーマットとの違いである。

Q. ClaritasはOdeeo専属の計測パートナーか。
A. 未確認。Claritasの主要パートナー一覧にはComcast AdvertisingやDatabricksなど他社も名を連ねており、今回の提携が独占契約かどうかは公式発表に明記がない。

Q. Odeeoと日本のオトナルの提携と、今回のClaritas提携は別物か。
A. 別の提携である。オトナルとの提携(2023年12月)は日本国内での音声広告配信インフラの提携、Claritasとの提携(2025年8月)は米国データを主体とした計測技術の提携であり、両者が自動的に連動しているという言及は確認できていない。

Q. ROAS改善やブランドリフト改善の具体的な数値は公表されているか。
A. 公式発表内では「改善した」という定性的な表現のみで、パーセンテージ等の具体的数値は公表されていない。数値が公表されているのはMcDonald's事例(インクリメンタル注文+15%、インストール+50%、登録+50%)などケーススタディ単位の実績である。