結論
PubScale(パブスケール、旧GreedyGame)は、インド・ベンガルールに本社を置くモバイルゲーム向けの収益化企業で、ゲーム内の看板やステージクリア画面の空きスペースを広告枠にする「Immersive Ads(没入型広告)」を開発者に提供している。広告枠の売り先は主に Google のプログラマティック需要で、日本の広告主がこの枠を名指しで買う窓口は確認できないため、日本で同じ形式の広告を出すなら国内のゲーム内広告サービスを使うのが現実的な選択肢になる。
PubScaleについて確認できる事実
この記事では、PubScale という会社と主力製品 Immersive Ads を解説する。特定の発表を扱う速報ではないため、まず公式サイトと報道で確認できる事実を並べる。
- 運営会社はインドの PubScale Tech Private Limited で、旧社名は GreedyGame Media Private Limited である(greedygame.com、pubscale.com プライバシーポリシー)
- 2023年3月6日、GreedyGame が開発者向けの総合プラットフォーム「PubScale」を立ち上げたとするプレスリリースを ANI と NewsVoir が配信した(ThePrint 掲載のリリース)。その後、ブランドと法人名が PubScale に移っている。法人名を変えた日付は公式サイトに書かれていない
- 主力製品の Immersive Ads は、2D/3Dゲームの中で使われていない空間を広告枠にする。製品ページ(Immersive Ads Platform)は「最大35%の追加収益」「プログラマティック需要とのマッチ率95%超」「リテンションとセッション長は下がらない」と説明している
追加収益の数字は公式サイト内でも揃っていない。同じ製品ページの別の欄では30%、solutions ページと自社ブログ(2024年2月26日)では最大40%と書かれている。マッチ率も95%超と97%の2通りの表記がある。どれも PubScale の自社公表値で、第三者による検証は見つからなかった。この記事では追加収益を「30〜40%」の幅で扱う。
PubScaleとはどんな会社か
PubScale はゲーム開発会社(パブリッシャー)の側に立つ会社だ。広告主に枠を直接売る媒体社というより、開発者が持つ広告在庫を Google の広告需要につなぎ、開発者の収益を増やす役割を中心にしている。
項目 | 内容 |
|---|---|
正式社名 | PubScale Tech Private Limited(旧 GreedyGame Media Private Limited) |
関連法人 | GreedyGame Inc.(米デラウェア州)、PubScale Pte. Ltd.(シンガポール) |
設立 | 2013年(公式サイトの About に "Founded in 2013")。登記はデリー |
本社 | インド・ベンガルール(HSR Layout) |
創業者 | Arpit Jain(アルピット・ジェイン)、Arink Verma(アリンク・ヴェルマ、共同創業者。Google Cloud 導入事例での肩書きは CTO) |
従業員規模 | 51〜200名(LinkedIn の表示) |
主な製品 | Immersive Ads、GROW、Offerwall、AdX、PLUG |
認定 | Google Certified Publishing Partner |
出典: greedygame.com About、LinkedIn、pubscale.com
創業者と創業の経緯
創業者の Arpit Jain 氏はインド工科大学ロパール校(IIT Ropar)を卒業し、PayPal に勤めていた。インドの起業家紹介サイト CrazyEngineers(2024年10月26日更新)によると、Jain 氏と Arink Verma 氏は IIT Ropar で Jain 氏が共同設立した社会起業サークル Enactus で出会った。GreedyGame は Jain 氏にとって3つ目の起業アイデアで、PayPal 入社1年目に思いつき、退職して専念したという(CrazyEngineers)。
Verma 氏は Google Cloud の導入事例ページに共同創業者兼CTOとして登場し、LinkedIn では GreedyGame の在籍期間を2013〜2018年としている。現在の CEO は Jain 氏とされるが、これは企業データベース Tracxn の記載で、公式サイトでは確認できていない。
創業時の考え方は、Verma 氏の次の発言によく表れている。
いまのゲームやオンラインコンテンツの収益化は押し付けがましく、ユーザーの熱中をほとんど壊してしまい、リテンションを大きく下げています。だから GreedyGame を立ち上げたとき、バナーやインタースティシャルではなく、コンテンツに溶け込むゲーム内広告を選びました。たとえばモバイルのサッカーゲームなら、選手のジャージやボール、スタジアムを、現実のチームやスポンサーと同じように収益化できます。
(Arink Verma 氏、Google Cloud 導入事例より訳出)
Jain 氏も2026年7月22日の Mobidictum のインタビューで「モバイル広告は、効果を出すために邪魔である必要はなかった」と語っている(Mobidictum)。
製品ラインナップ
PubScale は Immersive Ads 以外にも、開発者の収益化とユーザー獲得の製品を揃えている。
製品 | 内容(公式サイトの説明) |
|---|---|
Immersive Ads | ゲーム内の空きスペースをネイティブ広告の枠にする |
GROW | ユーザー獲得(UA)用のモバイル DSP |
Offerwall | 50超の国で5,000超のオファーを並べるオファーウォール |
AdX | Google Ad Manager の需要と15超のアドネットワークをつなぐ。フィル率95%と説明 |
PLUG | アプリに組み込めるプレイアブルゲーム50超 |
出典: greedygame.com、pubscale.com
Immersive Adsが表示される仕組み
Immersive Ads は、ゲームの中にある看板、スタジアムのボード、街中のサイネージ、ステージクリア画面の空きなどに広告を表示する。プレイを止めて全画面で流すインタースティシャルやリワード広告とは違い、ゲームの画面の一部として広告が見える。この形式を含むゲーム内広告の種類と全体像はゲーム内広告とはで、没入型のゲーム内広告の体験設計は5G×没入型ゲーム内広告 活用ガイドで解説している。

開発者が導入する手順は、製品ページでは次の4段階で説明されている。
- 2D/3Dゲームに Immersive Ads SDK を組み込む。SDK は2MB未満で、CPU、RAM、ゲームの動作に影響しないと PubScale は説明している
- PubScale のダッシュボードにアプリを登録し、開発者の AdMob アカウントを Google の MCM(Multiple Customer Management)でリンクする
- Google Play/App Store でアプリを更新する
- 公開後、プレイヤーが遊ぶと広告収益が発生する
準備にかかる時間は、製品ページでは「数時間で公開」、solutions ページでは「30分ほどで開始」とされている。

配置とフォーマット
広告をどこに置くかは開発者が決める。ポリシーに沿ったテンプレートを使い、ドラッグ&ドロップで広告ユニットを置き、寸法や形も変えられる。対応するフォーマットとして、動画対応の広告スロット、動く広告(Dynamic moving ads)、32×10の拡張フォーマットが挙げられている。
製品ページが示す使い方は3つある。
- ハイパーカジュアル/カジュアルゲームで、短いセッションの合間に置く
- スポーツやシミュレーションのゲームで、スタジアムの看板や街中のサイネージとして自然に置く
- 長く遊ばれるゲームで、目に入りやすく、プレイの妨げになりにくい場所に置く
3D空間の看板やサイネージに広告を出すという点では、メタバース空間での広告と考え方が近い。両者の共通点と違いはメタバース広告とはを参照してほしい。



誰の広告が表示されるのか
広告主の立場で最も気になるのは、この枠に誰の広告が入るかだろう。製品ページは需要元を "Google programmatic demand"(Google のプログラマティック需要)と説明している。Mobidictum の記事(2026年6月30日)は、Google のプレミアム需要に加えて、ブランドや代理店との直接キャンペーンもあると書いているが、PubScale 寄りの記事であることに注意が要る。
PubScale の自社ブログ(2024年2月26日)には「広告主がセルフサーブでキャンペーンを組める」とある。ただし、Immersive Ads を広告主が直接買うための料金表や入稿画面は、公式サイトでは確認できなかった。
対応プラットフォームと規模
対応するのは Android/iOS の2D/3Dゲームで、PC やコンソールへの対応は書かれていない。会社全体の規模は、greedygame.com に次のように掲載されている。Immersive Ads だけの対応タイトル数やリーチは公表されていない。
指標 | 数値(会社全体) |
|---|---|
パブリッシャー・広告主 | 1,500超 |
SDK を組み込んだアプリ・ゲーム | 2,000超 |
月間インプレッション | 100億超 |
平均収益成長 | 40% |
平均フィル率 | 95% |
出典: greedygame.com
Mobidictum の記事は、Immersive Ads のフィル率を地域によって80〜97%、典型的な CPM を $0.40〜$4 としている。ある匿名パブリッシャーでは、米国・日本・英国・カナダ・豪州・UAE で6億超の広告リクエストを85%超のフィル率で埋めたという。いずれもベンダー側が公表した数字だ。
主要パートナーと顧客
- Google: Certified Publishing Partner の認定を受け、MCM と AdX で需要側とつながっている
- インフラ: Google Cloud(BigQuery、Vision API、Compute Engine)。導入はインドの Searce が支援した(Google Cloud 導入事例)
- 顧客ロゴ: greedygame.com には Gameloft、ShareChat、Truecaller、Amanotes、Nazara、Kwalee、Dmobin、ABI Game Studio、Falcon Game Studio、Amazon、Dream11、Rummy Circle、MobiKwik など30社のロゴが並ぶ。各社との取引内容は確認できていない
- 実名の事例がある開発者: Rocket Studio、Fusion Blocks、Dmobin(ベトナム)、Deguci Games、Gamivision
pubscale.com のトップには、Gameloft の An Nguyen 氏が PubScale のサポート体制と、Google MCM のパートナーとしての取引に触れた声が載っている。一方、Moat、IAS、DoubleVerify といった第三者計測ベンダーとの連携や、広告の視認率の指標は公式サイトに見当たらない。広告代理店とのパートナーシップも確認できなかった。
ここまでの歩み
時系列
時期 | 出来事 | 確度 |
|---|---|---|
2013年 | GreedyGame Media Pvt. Ltd. 設立(デリー登記)。Arpit Jain 氏と Arink Verma 氏が創業 | 公式 |
2014年9月 | シード資金を調達したとされる(後述) | 二次情報 |
2015〜2017年ごろ | ジャージ、ボール、スタジアムなどを収益化するコンテンツ型のゲーム内広告で事業を広げる。30名体制で100超のゲームに配信し、1日300万リクエスト、フィル率70% | 公式(Google Cloud 事例。掲載年は未確認) |
2022〜2023年 | WebSummit 2022、MWC 2023、ad:tech New Delhi 2023 などに出展 | 公式 |
2023年3月6日 | 開発者向けの総合プラットフォーム「PubScale」を立ち上げ | 報道(プレスリリース) |
2024年1月 | Dmobin が Immersive Ads を組み込む。PubScale 名義の Immersive Ads について確認できた最も古い日付 | 公式事例 |
2024年2月26日 | 自社ブログで Immersive Ads を「最大40%の追加収益」と紹介 | 公式ブログ |
時期未確認 | 法人名を PubScale Tech Pvt. Ltd. に変更 | 公式(日付なし) |
2026年6〜7月 | Mobidictum が Immersive Ads の記事と創業者インタビューを掲載。インタビューでは Singular ROI Index 2026 への掲載に触れている | 報道 |
設立年は、公式サイトの2013年を採った。インドの会社登録番号(CIN U72200DL2013PTC259581)にも2013年の登記が表れている。Immersive Ads の提供開始日は確認できなかった。
資金調達の振り返り
PubScale の公式サイトには、資金調達の発表が一つもない。ニュースルームはなく、資金調達を扱うページも見当たらない。以下は二次情報サイトの記載で、公式には非開示である。
時期 | 内容 | 出典と確度 |
|---|---|---|
2014年9月 | シード2万ドルとされる。リードは TLabs | Inc42(参考値) |
2017年1月13日 | ビジネスプランコンテストで資金を獲得したとされる。金額は不明 | CB Insights(参考値) |
時期不明 | 計4ラウンドで約127万ドル、最大のラウンドはシードとされる | Tracxn(参考値) |
2014年のシードは、GreedyGame がジャージやスタジアムにブランドを入れる「コンテンツ型のゲーム内広告」を掲げていた時期にあたる。それ以降、公式に発表された大型ラウンドはない。累計調達額は Inc42 が2万ドル超、Tracxn が約127万ドルと食い違っており、断定はできない。Tracxn の株主構成では創業者が54.70%、ファンドが16.69%を持つとされる。日本企業の出資は確認できなかった。
ベンチャーキャピタルから大型の資金を集めず、少額の外部資金で10年以上事業を続けてきたとみられる。大きな資金を前提にブランド向けの営業網を広げるより、開発者向けの収益化サービスで売上を立てる道を選んだと考えられる。
コンテンツ型ゲーム内広告から収益化プラットフォームへ
CrazyEngineers によると、創業時の構想は、ブランドがゲームのセッションをスポンサーし、キャラクターやパワーアップ、背景にブランドを入れる「ダイナミックなゲーム内広告」だった。いまのゲーム内ブランド広告とほぼ同じ発想で、ブランドに直接売るモデルだったと読める。
2023年の PubScale 立ち上げで、軸足は開発者の収益化をまとめて請け負う方向に移った。AdX(Google MCM)、Offerwall、UA の GROW が並び、Immersive Ads も需要の中心を Google のプログラマティックに置く形で作り直されている。
撤退やサービス終了の公式発表は見つからなかった。ただし GreedyGame のブランドは事実上 PubScale に吸収されており、ブランドに直接売る旧来のゲーム内広告ネットワークが独立した事業として今も続いているかは確認できない。いまの Immersive Ads が創業期と違うのは、ブランドに一社ずつ営業する代わりに、Google の需要で枠を埋める仕組みにした点だ。営業力に頼らずに枠を収益化できる一方、広告主から見ると「指名して買う」ことが難しい形になっている。
広告出稿事例
PubScale の事例ページは、広告主(ブランド)向けの "Advertise" と、開発者向けの "Monetize" に分かれている。広告主にとっての参考になるのは前者だが、Immersive Ads の製品名が明記された広告主側の事例は見つからなかった。そのため、ブランドがゲーム内に掲出した事例と、開発者が Immersive Ads を導入した事例の両方を紹介する。
事例1: Dream11(インドのファンタジークリケット)のゲーム内ブランディング
インドのファンタジースポーツサービス Dream11 は、クリケットゲームの中にブランドを掲出した。ピッチやバウンダリー(境界線)へのブランド表示、リードスポンサーとしての表示に加え、4点打・6点打の演出にも Dream11 のブランドを入れた。メインメニューとティーブレイクの画面にはクリックできるユニットを置いている(PubScale 事例ページ)。
- 配信量: クリケット系ゲームで2,240万セッション(ページの見出しは「2,240万分」で単位が食い違う)
- 成果: 登録2.5万件、登録率5%
実施日は書かれていない。製品名は出てこないが、競技場の中にブランドを置く点で、Immersive Ads をブランド広告に使う形に最も近い事例である。
事例2: Amazon India のスマートフォンセール告知
amazon.in はスマートフォンのセールを知らせるため、ゲーマー、Z世代、若いミレニアル世代を狙ってゲームアプリに広告を出した。インドの10の大都市と9の地方都市で6日間配信し、月間アクティブユーザー10億超のゲームパブリッシャーのアプリ(Asphalt 8/9、Gangster Vegas、Talking Tom Gold Run など)に掲出した。フリークエンシーキャップは1人4回である(PubScale 事例ページ)。
指標 | 結果 |
|---|---|
インプレッション | 600万 |
ユニークリーチ | 55.5万 |
クリック | 15.6万 |
CTR | 2.69% |
この事例はバナー枠での配信で、Immersive Ads ではない。実施日も書かれていない。PubScale がゲームアプリの在庫をまとめて広告主に売る仕組みを持っていることを示す事例として読むのがよい。

事例3: Rocket Studio『Monster Shooter: Survival FPS』(開発者側)
Rocket Studio のシューティングゲームは、1日のアクティブユーザー(DAU)は多いのに、収益化が頭打ちになっていた。Immersive Ads SDK の追加機能(動画広告でも枠を埋められる機能と最新の SDK)を有効にし、需要の調達先を広げ、配信の判断ロジックを改善した(PubScale 事例ページ)。
- ARPDAU(1日のアクティブユーザー1人あたり収益): 45%増
- CPM: 20%増
- 広告の量と頻度は増やしていない
Mobidictum の記事は同じ事例を「ARPDAU 30%増」と書いており、ここでは公式事例ページの数字を採った。続く事例では、広告の最低価格(フロア)を見直して ARPDAU が最大70%増、Tier-1 の国向けに高めのフロア帯を設けて blended eCPM(全体の平均の1,000インプレッションあたり収益)が43%増になったとしている。顧客の声として、製品ページには Rocket Studio の「今のところすべて順調で、この提携の進み方に満足しています」というコメントが載っている。

事例4: Fusion Blocks(2Dパズル、開発者側)
Fusion Blocks は、バナー広告と Immersive Ads のネイティブ枠(1×1)を同じ条件で並べて配信し、成績を比べた(PubScale 事例ページ)。
- ネイティブ枠はバナーよりインプレッションが57%少ないのに、収益は62%多かった
- CPM はバナーの3.8倍、1インプレッションあたりの収益は約4倍
続く事例では、静止画の広告を動く広告に替えただけで、収益が3.5%、eCPM が約16%、クリック率が約7%上がったとしている。広告の数ではなく1回の表示の価値で収益を上げた例で、媒体ごとの CPM の相場はゲーム内広告 媒体別CPM比較ガイド 2026年版にまとめている。

事例5: Dmobin『Survivor in Rainbow Monster』(ベトナム、開発者側)
ベトナムの Dmobin は2024年1月に Immersive Ads を組み込み、ステージクリア画面とプロフィール編集画面に広告を置いた。全体の収益は18%増えた(ページの見出しは「20%」で、本文と食い違う)。米国・豪州・英国の Tier-1 地域ではフィル率88〜94%、CPM は $1.5 超だった。それまでの在庫パートナーは1地域の需要しか買っていなかったため、フィル率が低かったと説明されている(PubScale 事例ページ)。
Dmobin Studio の Phạm Tiến Đạt 氏は「彼らのカスタムデザインの組み込みで、全体の収益が上がっただけでなく、新しい収益源もできました」とコメントしている。

参考: Gamivision
Mobidictum の記事(2026年6月30日)は、1日の平均プレイ時間が約2.5時間の Gamivision で、Immersive Ads が総収益の8%超を占め、四半期で35%伸びたと伝えている(Mobidictum)。
公表値をどう読むか
ここまでの数字は、どれも PubScale 自身か PubScale 寄りの記事が公表したものだ。指標の多くは eCPM や ARPDAU といった開発者側の収益指標で、広告主側の効果(広告想起やブランドリフト)を第三者が測った事例は見つからなかった。Dream11 の登録率5%も、ゲーム内広告がなかった場合と比べた上積みかどうかは書かれていない。広告主が同じ形式の広告を評価するときは、出稿した場合としなかった場合の差を測る設計が欠かせない。考え方はゲーム内広告 インクリメンタルリフト測定ガイドで解説している。
なぜこの動きが起きたのか
PubScale がゲーム内ブランド広告の専業から、開発者の収益化をまとめて請け負う会社へ移った理由について、公式な説明は見つからなかった。公開情報から読み取れる背景を整理する。
1つ目は、在庫の多くがカジュアルゲームのロングテールにあることだ。PubScale の在庫の中心は、インドや東南アジア、ベトナムなどの開発者のカジュアルゲームにある。こうした多数のタイトルの枠を一つずつブランドに売るより、Google の需要でまとめて埋めるほうが、枠を余らせずに済むと考えられる。少額でも多数のタイトルに配信して認知を積み上げる考え方はゲーム内広告 ロングテール配信設計ガイドで扱っている。
2つ目は、開発者の収益化の考え方の変化だ。Jain 氏は Mobidictum のインタビューで「グロースはもうインストールを買うことだけではないし、収益化もインプレッションを埋めることだけではない」「結局のところ、これからは広告を多く見せることが大事なのではない」と語っている。広告の数を増やしてユーザーを離脱させるより、プレイを止めない枠で1回あたりの単価を上げる方向に、開発者の関心が移っていることがうかがえる。Fusion Blocks や Rocket Studio の事例が「広告の量を増やさずに収益が増えた」ことを強調しているのも、この流れに沿っている。
3つ目は、競合との立ち位置の違いだ。PubScale の自社ブログ(2024年2月26日)は、Anzu、Gadsme、Adverty、AdInMo、Frameplay などを同じ領域の企業として挙げている。これらの企業がブランドへの販売と計測を軸にしているのに対し、PubScale は Google の需要で開発者の追加収益を作る側に寄っている。同じ「ゲーム内の看板に広告を出す」技術でも、誰に何を売るかで事業の形が分かれている。
日本市場ではどうか
PubScale の公式サイトには、日本の拠点、日本語のページ、日本の顧客の記載がない。Mobidictum の記事に「日本を含む国々で匿名パブリッシャーの在庫を埋めた」とあるが、これは在庫側の話で、日本の広告主との取引を示すものではない。
Immersive Ads の枠は主に Google のプログラマティック需要で売られているため、日本の広告主が Google の広告ツールで出したディスプレイ広告が、結果としてこの枠に表示される可能性はある。ただし、Immersive Ads を名指しで買う仕組み、料金、日本語の窓口は確認できない。日本の広告主が計画的に使うには、次の壁がある。
- 在庫の中心はインド、東南アジア、ベトナムなどの開発者のカジュアルゲームで、日本のユーザーにどれだけ届くかが公表されていない
- 視認性やブランドリフトの第三者計測が示されていない
- 日本語での提案や運用の体制がない
日本企業の側でも似た動きはある。株式会社ジーニーの海外法人 Geniee International は、スウェーデンのゲーム内広告企業 Adverty と提携し、自社のアプリパブリッシャー網に没入型のゲーム内広告を提供すると発表した(ジーニーグループの発表。発表日はページで確認できない)。対象は東南アジアで、日本発のアドテク企業もアプリパブリッシャーの収益化手段として没入型ゲーム内広告を扱い始めているが、現時点では海外市場向けにとどまっている。
日本で同じ広告を実施する選択肢
ゲーム空間の看板やサイネージに広告を出す形式を日本国内で試すなら、国内のゲームタイトルに在庫を持ち、日本語で提案から報告まで対応できるサービスを使うのが現実的だ。選択肢の一つとして、Ad-Virtua を PubScale の Immersive Ads と並べる。
比較ポイント | PubScale Immersive Ads(公開情報) | Ad-Virtua |
|---|---|---|
主な利用者 | ゲーム開発者(収益化の手段) | 広告主(認知施策の媒体) |
広告の表示場所 | 看板、サイネージ、ステージクリア画面などの空きスペース | ゲーム空間内の看板・モニター |
広告枠の売り方 | Google のプログラマティック需要が中心 | 広告主が直接申し込む |
在庫の地域 | インド、東南アジア、英語圏の開発者が中心。日本のリーチは非公表 | 400以上のタイトル(カジュアル、RPG、パズル、アクションなど) |
料金 | 広告主向けの料金は非公表 | 1週間300,000円のプラン |
公表されている効果指標 | 開発者側の収益指標(ARPDAU、eCPM) | 広告主側の指標(広告想起率 約1.8倍など) |
日本語での対応 | 確認できない | あり |
Ad-Virtua の数値は同社の公表値である。
こんな企業におすすめ
- 若年層への認知を、テレビCMや SNS 広告とは別の接点で取りたい企業
- 手元の動画素材を使い、国内で週単位の小さな予算から試したい企業
- 配信先のタイトルや結果の報告を日本語で確認しながら進めたい企業
おすすめしない企業
- インドや東南アジアなど、海外の複数国で同時に配信したい企業。この場合は PubScale のような海外の在庫や、海外の DSP を通じた購入のほうが合う
- 運用型のディスプレイ広告の一部として、配信面を問わず自動で最適化したい企業
広告主が取るべき判断
今動く価値がある企業
- インドや東南アジアでスマートフォンユーザーへの認知を広げたい企業。Amazon India や Dream11 の事例が示すように、PubScale の在庫はインドのゲーマーに届いている。ゲーム内ブランディングの直接キャンペーンを受けているかを、PubScale に問い合わせる価値がある
- 国内でプレイを止めないゲーム内広告を、認知施策の候補として比べたい企業。国内のサービスで小さく試し、想起やリフトを測ってから予算を判断できる
様子見でよい企業
- 日本国内のユーザーだけを狙う企業が、PubScale の Immersive Ads を名指しで使おうとする場合。日本での窓口と日本のリーチが公表されるまでは、検討の材料が足りない
- 第三者計測の結果がないと出稿を判断できない企業。PubScale が計測ベンダーとの連携を公表するまで待つのが妥当だ
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よくある質問
Q. PubScale の設立年が資料によって2013年、2014年、2015年と違うのはなぜか?
A. 資料ごとに基準が違うためとみられる。公式サイト(greedygame.com の About)は "Founded in 2013" と書いており、インドの会社登録番号にも2013年の登記が表れている。一方、CrazyEngineers は2014年、Google Cloud の導入事例ページは2015年としている。この記事では公式の2013年を採った。
Q. greedygame.com と pubscale.com はどちらが公式サイトなのか?
A. どちらも同じ会社のサイトだ。greedygame.com には「PubScale Tech Private Limited(formerly known as GreedyGame Media Private Limited)」と書かれており、旧ブランドのサイトとして会社概要や規模の数字が残っている。Immersive Ads の製品ページや事例は pubscale.com に置かれている。
Q. ジーニーが告知していた「Immersive In-Game Ads」は PubScale の製品と関係があるのか?
A. 関係を示す情報は見つからなかった。ジーニーは2025年7月6日の Facebook 投稿で「Immersive In-Game Ads」をアルファテスト中と告知したとされるが、名前が似ているだけで、PubScale との提携や技術提供は確認できない。同社が発表した提携先は Adverty である。
Q. Immersive Ads を入れると、ゲームの既存の広告は外す必要があるのか?
A. PubScale の説明では外す必要はない。SDK はほかの収益化 SDK と併用でき、既存のバナー、インタースティシャル、リワード広告と食い合わないとしている。ただしこれは自社の説明で、食い合いが本当に起きないかは開発者が自分のゲームで確かめる必要がある。
Q. Immersive Ads の収益は誰から開発者に支払われるのか?
A. PubScale の solutions ページでは「Google から直接」支払われると説明されている。開発者の AdMob アカウントを MCM でリンクする仕組みのため、収益は Google の支払いの流れに乗る形になる。


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