ディスコード(Discord)は2026年3月9日、ダウンロードもインストールもせずにその場でゲームを試遊できる広告形式「インスタントプレイ・クエスト(Instant Play Quests)」を発表し、初期テストでは新規ユーザーの試遊率が最大4倍になったと公表しました。使えるのはクラウド配信に対応したゲームの会社に限られるため、食品・飲料など非ゲームの日本の広告主にとっては、同社の広告事業「クエスト(Quests)」全体の動きと、国内で使える代わりの手段をあわせて押さえておく話になります。
ディスコードが2026年3月に発表した内容
ディスコードは2026年3月9日(米サンフランシスコ発)、ゲーム会社向けの成長支援機能をまとめたプレスリリース「Discord Deepens Its Ability to Drive Growth for Games」を出しました(出典: ディスコード公式プレスリリース)。発表は「プレイヤーの獲得」「エンゲージメントの向上」「収益の拡大」の3つの目的に沿って整理されています。
インスタントプレイ・クエストの中身
インスタントプレイ・クエストは、同社のリワード広告「クエスト」の新しい形式です。クラウドストリーミングでゲームを配信するので、ユーザーはディスコードのアプリ内でそのまま試遊を始められます。
- 対象: エヌビディア(NVIDIA)の「ジーフォース・ナウ(GeForce NOW)」か、AWSの「アマゾン ゲームリフト・ストリームス(Amazon GameLift Streams)」で配信されているゲーム
- 初期テストの結果: 新規ユーザーの試遊率(new-user trial rates)が最大4倍。何と比べた倍率か、母数、テストしたタイトルはリリースに書かれていません
リリースは狙いを「すぐに遊べること、報酬、ディスコードのソーシャルグラフを組み合わせ、好奇心を試遊とエンゲージメントに変える」と説明しています。

同時に発表された3つの機能
同じリリースでは広告以外も含めて次の3点が発表されました。
- 広告の高度なターゲティングと計測機能の拡張。ディスコード広告を「計測可能なパフォーマンスエンジン」に育てる方針で、具体的な機能名は書かれていません
- ソーシャルコマース(Social Commerce)の参加パートナーを招待制で拡大。公式サーバーの中で、アカウントを連携したプレイヤーにゲーム内アイテムを販売する仕組みです
- 公式ゲームプロフィール(Official Game Profiles)の提供。開発者が公式プロフィールの所有を申請し、公式コミュニティサーバーを認証したうえで、ゲーム情報やシーズンごとのブランド素材を編集できます
発表で示された数値
リリースにはディスコード上でゲームを遊ぶ人の行動データが並んでいます。いずれもディスコードの社内データです。
指標 | 数値 | 時点 |
|---|---|---|
クエストの広告完了率(中央値) | 96% | 2025年12月 |
友人1人以上と一緒に遊んだときのプレイ時間(中央値、PC) | 6倍(友人3人なら8倍) | 2025年12月 |
ボイスチャンネル利用者のプレイ日数 | 推定66%多い | 2025年12月31日までの3か月間 |
2024年12月以降にソーシャルSDKを組み込んだ15本超のゲームで、アカウント連携したプレイヤーの起動日数(中央値) | 25%増(プレイセッション数は16%増) | 2025年12月 |
ゲームコミュニティ数/メンバー数 | 1万超/8,000万人超 | 2025年12月31日 |
1日あたりの利用者数(DAU) | 9,000万人超 | 2025年第4四半期 |
広告完了率の中央値はその後も更新されており、2026年3月31日時点で96%、2026年6月30日時点で97%と発表されています(出典: 2026年8月のリリース、2026年9月のリリース)。クエストはユーザーが自分で選んで参加する広告なので、この完了率は自主的に参加した人の数字です。
共同創業者でCTOのスタニスラフ・ヴィシネフスキー(Stanislav Vishnevskiy)氏は、リリースで「私たちは開発者と多くの時間をかけて話をしていますが、彼らは一貫して『最も価値の高いプレイヤーはディスコードにいる』と言います」とコメントしています。
2026年11月時点の掲載状況
2026年8月・9月の広告関連リリース、2026年11月1日時点の広告ページ(discord.com/ads)、クエストのFAQ、事例ページのどれにも、インスタントプレイ・クエストは載っていません。一般提供の開始日、提供地域、料金も公表されていません。ディスコードからの説明はなく、現在どの段階にあるのかは公式情報からは判断できません。
ディスコードの広告事業「クエスト」

ディスコードは日本でもゲームを遊ぶ人の間では通話・チャットアプリとして使われていますが、広告媒体として見られることはまだ少ないサービスです。ここでは会社の概要を押さえたうえで、広告事業のクエストを中心に説明します。
会社の概要
項目 | 内容 |
|---|---|
社名 | Discord Inc. |
本社 | 米国サンフランシスコ |
創業 | 前身のスタジオ、フェニックス・ギルド(Phoenix Guild、のちのハンマー・アンド・チゼル)を2012年4月に設立。ディスコードの最初の版は2015年5月公開 |
創業者 | ジェイソン・シトロン(Jason Citron)氏、スタニスラフ・ヴィシネフスキー氏(CTO) |
CEO | フマーム・サクニーニ(Humam Sakhnini)氏(2025年4月就任)。シトロン氏は取締役兼アドバイザーに移った |
利用規模 | DAU 9,000万人超(2025年第4四半期)、月間利用者数(MAU)2億人超(2025年のリリース) |
利用者の特徴 | 利用者の90%超がゲームを遊ぶ(2025年ユーザー調査)。PCプレイヤーの約40%が1時間以内にゲームを起動する(2025年平均) |
収益モデル | 基本無料。有料サブスクリプション「ニトロ(Nitro)」と、2024年に始めた広告(クエスト) |
従業員数・上場状況 | 公式ページに記載なし |
同社は自らを「ゲームを遊ぶ楽しさを軸に、意味のあるつながりを築くためのコミュニケーションプラットフォーム」と説明しています。
クエストの仕組み
クエストはオプトイン型のリワード広告です。ユーザーが自分でクエストを選び、「動画を見る」「ゲームを遊ぶ」「配信する」といった条件を満たすと、ディスコード内で報酬を受け取ります。報酬はゲーム内アイテム、アバターデコレーション、ディスコード内の仮想通貨「オーブ(Orbs)」などです。報酬と引き換えに広告へ自分から接触してもらう考え方は、ゲームエコノミー×ブランド戦略の実践ガイドで扱っている報酬型広告と同じ系統にあたります。
クエストが表示される場所は次のとおりです(出典: クエストFAQ)。
- デスクトップアプリ: 右上のクエストタブと、ディスカバー内のクエストホーム
- モバイルアプリ: 画面下部のクエストバー

購入方法と料金
2026年11月1日時点のFAQでは、ディスコード広告は営業チーム経由でのみ購入できます。料金は公開されておらず、リーチや地域などで決まります。FAQに書かれているターゲティングは国単位の指定だけです。
2026年9月29日には広告管理画面「アズマネージャー(Ads Manager)」が発表されました。予測、目的別の入札、成果レポートを備え、価格は固定CPMではなくオークションで決まります。現在は一部の広告主に、ディスコードが運用を支援する形で提供されています。固定単価とオークションの料金体系の基礎は、ディスプレイ広告の費用・料金で整理しています。
広告フォーマット一覧
2026年11月1日時点の公式広告ページをもとに、クエストの形式を整理しました。
フォーマット | 内容 | 登場時期 |
|---|---|---|
プレイクエスト(Play Quests) | 新規・休眠プレイヤーがゲームを遊ぶと報酬 | 2024年 |
ビデオクエスト(Video Quests)/ビデオクエスト・リザーブ | 動画を見ると報酬。リザーブは予約型のプレミアム枠で、最後まで見ることが報酬の条件 | 2024年(リザーブへの改称は2026年9月) |
ビデオクエスト(モバイルの新版) | 約15秒の視聴でオーブを付与し、オークションで配信 | 2026年9月 |
ミッション(Missions) | ミニゲーム、インタラクティブ動画、クイズ型のネイティブ広告 | 2026年7月に「次の追加」として紹介 |
ヒーロー(HERO) | クエストホーム上部の大型アニメーション枠 | 確認できず |
アリーナクエスト(Arena Quests) | 指定タイトル群から選んで遊ぶと、ブランドが報酬を出す(アルファ版) | 2025年10月 |
プレイクエスト・プラス(Play Quest+) | 遊んだ時間ではなく「チュートリアル完了」「試合完了」「友人と遊ぶ」などゲーム内の行動に報酬を出す | 2026年8月 |
インスタントプレイ・クエスト | クラウドストリーミングでその場で試遊 | 2026年3月(11月時点の広告ページには記載なし) |
ミッションは1回あたりの接触時間の中央値が7分、完了者のブランド想起が平均90%と公表されています(約2,500人の調査、2025年12月)。

計測パートナー
パートナー | 役割 | 発表 |
|---|---|---|
カンター(Kantar) | ブランドリフト調査(認知・想起・意向) | 2025年5月 |
アップスフライヤー(AppsFlyer) | ディスコード初のMMP(モバイル計測パートナー)。モバイルのビデオクエストを計測 | 2025年10月 |
ゲームサイト(Gamesight) | PC・コンソール向けのサーバー間連携(イベントAPI)。インストール、ログイン、購入をクエストへの接触と結びつける(ベータ) | 2025年10月 |
クラウド配信のパートナー
インスタントプレイ・クエストの基盤は、外部のクラウドゲーム配信サービスです。
- ジーフォース・ナウ: 2025年8月のゲームズコム(gamescom)で、ディスコードとの連携を非公開デモで披露しました。フォートナイト(Fortnite)を最大1440p/60fpsで配信し、ゲームを持っていなくても、ジーフォース・ナウの会員でなくても、エピック(Epic)のアカウントを連携するだけで遊べる内容でした(出典: NVIDIA公式ブログ)
- アマゾン ゲームリフト・ストリームス: 既存のゲームビルドを改修せずにブラウザへ配信できるAWSのサービスで、最大1080p/60fps。AWSの製品ページは用途に「インスタントプレイのデモ」を挙げ、ツイッチ(Twitch)での試遊デモを例にしています。ディスコードへの言及はありません(出典: AWS公式)
主要な広告主とパートナー
公式の事例ページにはパラマウント(Paramount)、ユニバーサル・ピクチャーズ、フォーカス・フィーチャーズ、マックス(Max)、ソニー・ピクチャーズ、カプコン、ブリザード、ベセスダ、ネクソン、ホヨバース(HoYoverse)、スーパーセル(Supercell)、セカンド・ディナー(Second Dinner)、プレイサイド・スタジオ(PlaySide Studios)、エンバーク・スタジオ、セオリークラフト・ゲームズ、FRVR、エレクトロニック・アーツ(EA)、ウェンディーズ(Wendy's)、ウォルマート(Walmart)、マウンテンデュー(Mountain Dew)の名前があります(出典: クエスト事例ページ)。
日本企業では、カプコンが『ストリートファイター』のテリー・ボガードのプレイクエストを実施し、デスクトップとコンソールのプレイヤーに配信しています。これが日本向けの配信だったかは確認できていません。ほかの日本企業の出稿は、公式ページでは確認できませんでした。
ここまでの歩み
インスタントプレイ・クエストは、2024年に始めたリワード広告に、計測の仕組みと「その場で遊ばせる」形式を足してきた流れの途中に置かれています。
時期 | 出来事 |
|---|---|
2012年4月 | 前身のスタジオ、フェニックス・ギルドを設立 |
2015年5月 | ディスコードの最初の版を公開 |
2024年 | 広告事業を開始。ビデオクエストとプレイクエストでスタート |
2025年3月17日 | ソーシャルSDKを発表 |
2025年3月20日 | 初のモバイル広告(モバイル版ビデオクエスト)を発表。パイロットは2025年6月 |
2025年4月23日 | サクニーニ氏がCEOに就任 |
2025年5月28日 | オーブ(ベータ)とカンターによるブランドリフト計測を発表 |
2025年7月14日 | オーブを全世界で提供開始 |
2025年8月18日 | ジーフォース・ナウとのインスタントプレイ連携を発表 |
2025年10月2日 | アリーナクエスト(アルファ)、アップスフライヤー・ゲームサイトとの計測提携 |
2025年12月2日 | ソーシャルコマースを開始(マーベル・ライバルズが第1弾) |
2026年3月9日 | インスタントプレイ・クエスト、計測・ターゲティングの拡張などを発表(今回) |
2026年7月22日 | 映画『Resident Evil』のミッションと、コミコン会場でのリアルイベントを実施 |
2026年8月20日 | プレイクエスト・プラス、ソーシャルコマースの参加拡大 |
2026年9月29日 | アズマネージャーとモバイル向けの新しいビデオクエストを発表 |
出典: ディスコード公式の会社情報、プレスリリース、ブログ
2024〜2025年前半: リワード広告として始まる
ディスコードの広告は2024年にゲームを見つけてもらうためのリワード広告として始まりました。2025年3月には初めてモバイルに広げ、同年7月には報酬の受け皿になる仮想通貨のオーブを全世界で提供しています(出典: 2025年7月のリリース)。広告主も映画、ファストフード、飲料といったゲーム以外の業種に広がっています。
2025年8月: ジーフォース・ナウとのインスタントプレイ連携
今回の発表の直接の前提が、2025年8月のエヌビディアとの連携です。このときヴィシネフスキー氏は「ジーフォース・ナウを使ったインスタントプレイをエヌビディアと実現することで、ゲームの見つけ方が変わると考えている」と述べ、ジーフォース・ナウ担当VPのフィル・アイスラー(Phil Eisler)氏は「開発者はコミュニティへの直接の経路を手に入れる」とコメントしています(出典: ディスコード公式ブログ)。

この時点では技術デモでした。2026年3月の発表は、このクラウドでの即時プレイを広告商品のクエストと結びつけたものと整理できます。
2025年10月〜2026年: 計測と成果連動へ
2025年後半からは計測と成果連動の機能が続けて追加されています。カンターのブランドリフト調査に続き、アップスフライヤーとゲームサイトでインストールや購入まで追えるようにし、2026年3月の「ターゲティングと計測の拡張」、8月のプレイクエスト・プラス(ゲーム内の行動に報酬)、9月のアズマネージャー(オークション、目的別の入札)へとつながります。


この流れの中でインスタントプレイ・クエストは、「広告を見る」から「広告の中でそのまま遊ぶ」へ進む一歩にあたります。ただし前述のとおり、その後の公式の広告メニューには載っていません。2026年11月1日時点の公式広告ページに載っているのは、プレイクエスト、ビデオクエスト、ミッション、ヒーロー、アリーナクエスト、プレイクエスト・プラスです。
クエストの広告出稿事例
インスタントプレイ・クエスト自体の出稿事例は、公式ページでは1件も確認できませんでした。初期テストの対象タイトルも公表されていません。ここではクエスト全体の事例を、公表されている効果指標とともに紹介します。
プレイサイド・スタジオ『マウスP.I.フォー・ハイヤー』: 純ROAS 4.5倍
プレイサイド・スタジオは『マウスP.I.フォー・ハイヤー(Mouse P.I. For Hire)』でビデオクエストとビデオクエスト・リザーブを使いました。クエストが生んだゲーム販売で、純ROAS(広告費に対する売上の倍率)4.5倍だったと公表されています(出典: クエスト事例ページ)。動画を見せるリワード広告が、販売まで結びついた数字として示されている事例です。
パラマウント『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』: 100万人超が参加
パラマウントは映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング(Mission: Impossible – The Final Reckoning)』の宣伝に、パズル型のプレイクエストを使いました。100万人超が参加し、そのうち48.5万人がクエスト経由でした(出典: クエスト事例ページ)。ゲームではなく映画の広告主が「遊ばせる」形式を使った例です。
セカンド・ディナー『マーベル・スナップ』: 2回目で30%向上
セカンド・ディナーは『マーベル・スナップ(Marvel Snap)』でモバイル版ビデオクエストを実施し、800万人超にリーチしました。2回目のキャンペーンではアップスフライヤーの計測とプレイヤーベースのターゲティングを使い、1回目と比べて30%向上したと発表されています(出典: クエスト事例ページ、2025年10月のリリース)。
ホヨバース『原神』ほか2025年前半の事例
2025年3月のリリースでは次の事例が紹介されています(出典: 2025年3月のリリース)。
広告主/タイトル | 形式 | 公表されている成果 |
|---|---|---|
ホヨバース/原神 | プレイクエスト | 「数百万人」が参加し、実施週のプレイ時間が80%増 |
マックス/ドラマ『デューン:プロフェシー(Dune: Prophecy)』 | ビデオクエスト(初のビデオクエスト) | 2分38秒のトレーラーで完了率85% |
ネクソン/ザ・ファースト・ディセンダント | プレイクエストなど | 動画の完了が100万回超。うち10%はプレイヤー同士の共有による自然流入 |
スーパーセルの『ブロスタ(Brawl Stars)』でも、モバイル版ビデオクエストで約100万人がトレーラーを最後まで視聴したと公表されています(出典: クエスト事例ページ)。
EA『バトルフィールド6』: プレイクエスト・プラスの最初のキャンペーン
EAは2026年9月、『バトルフィールド6』でプレイクエスト・プラスの最初のキャンペーンを実施しました。数値は公表されていません。EAの幹部はプレイクエストについて「より多くのプレイヤーを呼び込み、つなぎとめる重要な要素」とコメントしています(出典: 2026年8月のリリース)。

ネットイース・ゲームズ『マーベル・ライバルズ』: 広告ではなく販売の事例
ソーシャルコマースは広告ではなく販売の機能ですが、今回の発表に含まれるため紹介します。ネットイース・ゲームズ(NetEase Games)の『マーベル・ライバルズ(Marvel Rivals)』のパイロット(2025年12月、社内調査)では、購入の41%がギフトで、ギフト購入者の25%は休眠ユーザーか未プレイ者でした。購入はプロフィール、ウィッシュリスト、DM、ボイスチャットにも表示され、ゲームを遊んでいない友人もギフトを贈れます(出典: ディスコード公式プレスリリース)。

マーベル・ライバルズのパブリッシング・マーケティング責任者ヤーチェン・ビアン(Yachen Bian)氏は「摩擦を取り除けば、ゲームとそのエコシステムはともに栄える」とコメントしています。
非ゲームブランドの出稿
事例ページには、ゲーム以外のブランドの出稿も載っています。いずれも成果の数値は載っていません。
- ウェンディーズ: ファストフードで初めてのクエスト。ネットフリックスのドラマ『ウェンズデー』とのタイアップ
- マウンテンデュー: 『ワールド・オブ・ウォークラフト』とのコラボで、飲料・食品で初めてのクエスト
- ウォルマート: 「スカイワード(Skyward)」のクエスト
なぜディスコードは「その場で遊ばせる広告」に進んだのか
試遊までの手間を省く
ゲームの広告を見て興味を持っても、実際に遊ぶまでにはダウンロードとインストールが必要です。インスタントプレイ・クエストはこの手順をクラウド配信で省き、広告に触れた直後に製品そのものを遊ばせる設計です。「最大4倍」という試遊率の数字は、この手順を省いた結果として示されたものと考えられます。
ゲームの一部を広告の中で遊ばせる手法には、プレイアブル広告があります。プレイアブル広告が広告用の簡易版を作るのに対し、インスタントプレイ・クエストは製品版をクラウドで遊ばせる点が違います。手法の基本はプレイアブル広告の設計と効果で整理しています。
ゲームを遊ぶ人がもともとディスコードにいる
ディスコードの利用者の90%超はゲームを遊び、PCプレイヤーの約40%は1時間以内にゲームを起動します(2025年平均)。ゲームを探す・誘い合うという行動がすでにアプリの中で起きているため、試遊の入口を置く場所として相性がよいと同社は見ていると考えられます。リリースが「ソーシャルグラフ」を挙げ、友人と遊ぶとプレイ時間が6〜8倍になるというデータを並べているのも、友人の行動が試遊のきっかけになることを示すためと読めます。
「計測できる媒体」になる必要がある
2025年後半からの機能追加は、ゲーム会社がユーザー獲得の予算を他のアドネットワークと比べて配分できるようにする動きと整理できます。試遊率やインストール、購入まで追える形式は、広告費の効果を説明しやすくします。インスタントプレイ・クエストも「計測可能なパフォーマンスエンジン」という方針と同じリリースで発表されており、成果で比べられる媒体になるための品ぞろえの一つと考えられます。
日本市場ではどうか

クエストは日本でも出稿できるのか
クエストのFAQには「ディスコードが使えるすべての地域でクエストを出稿できる」とあり、国単位でのターゲティングもできます。形式上は日本も配信先に含まれ得ます。一方で、日本向けの広告ページや日本語の営業窓口は見つかりませんでした(日本語版の広告ページ discord.com/ja/ads は2026年11月1日時点で存在しません)。購入は営業チーム経由に限られるため、日本の広告主が出稿するには英語での商談が前提になると考えられます。日本の広告主による出稿事例も、公式ページでは確認できていません。
インスタントプレイ・クエストの国内提供
提供地域も一般提供の状況も公表されておらず、2026年11月時点の広告メニューにも載っていません。現時点で日本の広告主が申し込める商品とは言えません。
クラウド配信の基盤側では、アマゾン ゲームリフト・ストリームスがアジアパシフィック(東京)を主要ロケーションの一つにしています(出典: AWS開発者ガイド)。ジーフォース・ナウはエヌビディアの日本語ページがありますが、日本での運営主体は公式ページから確定できませんでした。
日本の広告主にとっての障壁
- 日本語の営業窓口と、国内での出稿事例が確認できない
- インスタントプレイ・クエストは、ジーフォース・ナウかゲームリフト・ストリームスでの配信が前提。ゲーム会社側にクラウド配信用のビルドを用意する負担がある
- 試遊させられるのはゲームの広告主だけ。食品・飲料などの非ゲームブランドは、この形式を直接は使えない
- ディスコードの国内利用者数は公表されておらず、日本でどれだけリーチできるかを事前に見積もりにくい
非ゲームブランドが使えるクエストの形式は、ビデオクエストかミッションです。ウェンディーズ(ドラマとのタイアップ)やマウンテンデュー(ゲームとのコラボ)のように、タイアップや動画で接触する形になります。
日本で同じ広告を実施する選択肢
ディスコードのクエストは、ゲームを遊ぶ人に遊びを邪魔しない形で広告を届ける媒体です。日本国内で同じ層に、同じ考え方で広告を届けたい場合の選択肢を、目的別に整理します。
目的別の選択肢
目的 | 選択肢 | 前提 |
|---|---|---|
自社ゲームを試遊させたい(ゲーム会社) | インスタントプレイ・クエスト | クラウド配信対応、英語での商談。提供状況は未公表 |
自社ゲームを試遊させたい(ゲーム会社) | プレイアブル広告 | 広告用の簡易版を制作する |
ゲームを遊ぶ人に動画で認知を取りたい(非ゲームブランド) | ディスコードのビデオクエスト・ミッション | 英語での商談、報酬(オーブなど)の設計 |
ゲームを遊ぶ人に動画で認知を取りたい(非ゲームブランド) | ゲーム内広告(ゲーム空間の看板・モニターへの配信) | 既存の動画素材を使える。国内タイトルで配信 |
ゲーム内広告の全体像はゲーム内広告とはで解説しています。
ディスコードのクエストとゲーム内広告の比較
比較ポイント | ディスコードのクエスト | ゲーム内広告(Ad-Virtua) |
|---|---|---|
広告が出る場所 | ゲームの外(ディスコードのアプリ内) | ゲームの中(ゲーム空間の看板・モニター) |
接触の形 | ユーザーが自分で選んで参加する(オプトイン) | プレイ中に風景の一部として目に入る |
報酬の用意 | 必要(オーブ、ゲーム内アイテムなど) | 不要 |
主な計測 | 完了率、ブランドリフト、インストール・購入 | 広告想起率、注目度、CPM |
購入方法 | 営業チーム経由(日本語窓口は未確認) | 国内の窓口で相談 |
料金 | 非公開。アズマネージャーはオークション型 | 1週間30万円のプランあり |
国内の配信実績 | 公式ページでは未確認 | 国内400タイトル以上 |
Ad-Virtuaは国内のゲーム空間内の看板やモニターに動画広告を配信するアドネットワークです。公表している指標は、広告想起率約1.8倍、注目度約1.7倍、CPM約300円(通常500円との比較)、好感度約85%です(いずれもAd-Virtua公表値、2025年後半時点)。
Ad-Virtuaが合う企業
- 食品・飲料・日用品など非ゲームのブランドで、ゲームを遊ぶ若年層に認知を広げたい
- TVCMやSNS用に作った動画素材を、そのまま新しい接点で使いたい
- 報酬の設計や英語での商談をせず、国内で小さく試したい
食品・日用品ブランドでのKPIの置き方はFMCGメーカーのゲーム内広告活用プレイブック、短尺動画の作り方は食品・飲料の15秒動画クリエイティブにまとめています。ディスコードの新しいモバイル版ビデオクエストも約15秒の視聴が条件なので、同じ尺の素材は両方の媒体で検討できます。
Ad-Virtuaが合わない企業
- 自社ゲームを試遊させ、インストールや購入まで追いたいゲーム会社。この目的にはクエストやプレイアブル広告のほうが合います
- ディスコードのコミュニティで、ユーザーに能動的に参加してもらう施策をしたい企業
両者は広告が出る場所が違うため、片方を選ぶだけでなく、ディスコードで参加型の施策をし、ゲーム内広告でプレイ中に繰り返し目に入れる、という組み合わせも考えられます。
広告主が取るべき判断
今動くべき企業
- PCやコンソールのゲームを海外でも売っていて、すでにジーフォース・ナウかゲームリフト・ストリームスで配信している、または配信を検討しているゲーム会社。ディスコードの営業に、インスタントプレイ・クエストの提供状況を直接確認する価値があります
- 若年層のゲームユーザーへの認知が課題で、国内で配信できる手段を探している非ゲームブランド。ゲーム内広告のように、既存の動画素材ですぐ試せる手段から始められます
様子見でよい企業
- 日本国内だけで販売しているブランドで、ディスコードのクエストを検討している場合。日本語の窓口、国内の出稿事例、国内の利用者数が公表されるまでは、効果を見積もる材料が足りません
- インスタントプレイ・クエストを使いたいが、クラウド配信用のビルドをまだ持っていないゲーム会社。一般提供の状況が分かってから準備しても遅くないと考えられます
判断の際の注意点
- 「最大4倍」は比較対象も母数も公表されていない数字です。自社のゲームで同じ効果が出るとは限りません
- クエストの完了率96〜97%は、報酬目当てで自ら参加した人の数字です。報酬なしで流れる広告の完了率と同じ物差しで比べないようにしてください
- アズマネージャーはオークション型のため、今後は競合の出稿状況で単価が変わる可能性があります
関連する基礎知識
- ゲーム内広告とは: ゲームの中に出る広告の種類と仕組みの全体像
- プレイアブル広告の設計と効果: 遊ばせる広告の費用、事例、向き不向き
- ゲームエコノミー×ブランド戦略の実践ガイド: 報酬型広告とゲーム内広告の選び方
- ディスプレイ広告の費用・料金: 固定単価とオークションの料金体系の基礎
よくある質問
インスタントプレイ・クエストで遊ぶにはジーフォース・ナウの会員になる必要がありますか?
インスタントプレイ・クエストでの条件は公表されていません。前身にあたる2025年8月のデモでは、ゲームを持っていなくても、ジーフォース・ナウの会員でなくても、エピックのアカウントを連携するだけでフォートナイトを遊べました(パフォーマンス・ティアの期間限定トライアル扱い)。
日本から遊ぶと遅延は大きくなりませんか?
ゲームリフト・ストリームスは東京を主要ロケーションの一つにしており、最大1080p/60fpsで配信できます。日本向けの配信拠点がある点は確認できますが、インスタントプレイ・クエストが日本で提供されるかどうかは公表されていません。
オーブはユーザーにとって何に使えるのですか?
オーブはディスコード内の仮想通貨で、クエストの報酬として受け取り、ディスコードのショップで使います。ベータ期間中はショップの初回購入者が16倍になったと発表されています。広告主にとっては、自社で報酬アイテムを用意しなくてもクエストを組める受け皿になっています。
アズマネージャーを使えば日本の広告主も自分で出稿できますか?
2026年11月時点では、一部の広告主にディスコードが運用を支援する形で提供されています。誰でも自分で出稿できるセルフサーブは2027年初頭に予定されていると発表されていますが、これは同社の計画で、日本で使えるかどうかも含めて決まった話ではありません。
ソーシャルコマースは日本のゲーム会社も使えますか?
2025年12月の開始時点で、提供地域は米国、カナダ、英国、アイルランド、オセアニアのデスクトップ版で、決済はドルでした。日本は含まれていません。参加パートナーの拡大は招待制で、2026年8月にはニンジャキウイ(Ninja Kiwi)とフェイスパンチ(Facepunch Studios)が加わりました。フェイスパンチの『ラスト(Rust)』では、最初の1週間でアクティブプレイヤーの5人に1人に届き、初週の購入者の約4人に1人が再購入したと発表されています。


.jpg)


