Gamesight(ゲームサイト)はPC・コンソールゲームの広告がインストールやゲーム内課金につながったかを計測し、クリエイター(配信者・動画投稿者)を使った施策も請け負う米シアトル発の会社で、2025年10月にはDiscordが広告計測の連携先に選びました。計測の対象はゲーム会社自身の売上なので、日本の食品や日用品のようなブランド広告主がゲームの中で認知を広げたい場合は、Gamesightではなく、ゲーム内広告の媒体とその媒体が出す認知の指標で選ぶことになります。

Gamesightのトップページのメインビジュアル。ゲーム機を中心に、データ処理・分析・成長を表すアイソメトリックのイラスト
出典: Gamesight(

直近の動きと公表されている規模

モニターとゲーミングPCを並べたデスク。キーボード、ヘッドセット、コントローラーが置かれたPCゲームの環境
イメージ写真(Unsplash)

Discordとの計測連携(2025年10月2日)

Discordは2025年10月2日、新しい広告フォーマット「Arena Quests」の発表と同時に、AppsFlyer、Gamesightとの広告計測の連携を発表しました。Gamesightとの連携は両社のサーバー同士でイベントをやり取りする方式(S2S)です。PC・コンソールゲームのパブリッシャーは、Discordの広告に接したユーザーのインストール、ログイン、購入を広告に紐付けられるようになります。発表時点では、Gamesightをすでに導入しているPC・コンソールの広告主向けのベータでした(出典: Discord プレスリリース)。

ベータが一般提供に移ったという発表は、今回の調査では確認できませんでした。ただし、Gamesightのドキュメントには Discord 連携の設定手順が載っており、利用できる状態にはなっています(出典: Gamesight ドキュメント(Discord))。Discord側の発表の詳細は「Discord Arena Questsと広告計測の連携」で解説しています。

公式サイトに載っている数字

Gamesightは自社を「THE #1 MARKETING MEASUREMENT SOLUTION FOR PC & CONSOLE GAMES」(PC・コンソールゲームでいちばんのマーケティング計測ソリューション)と名乗っています。公式サイトに載っている規模は次のとおりで、いずれも会社自身の公表値です。

項目

数字

掲載ページ

導入タイトル数

世界で1,000本超のPC・コンソールゲーム

トップ、採用ページ

処理するデータ量

1日あたり11億件超のゲームデータポイント

トップ、計測ページ

広告に紐付けた成果

年間52億件超のインストール・購入・ゲーム内行動

トップ、計測ページ

顧客がGamesightを通じて使うマーケティング費

10億ドル超(期間の記載なし)

トップ

計測しているマーケティング費

年間2億5,000万ドル超

計測ページ

キャンペーン数

年間10万件超

トップ

連携先

100以上。レポートは40以上の切り口で分けられる

計測ページ

出典: Gamesight 公式サイト、Measurement & Attribution

マーケティング費の数字は2つあります。トップページの「10億ドル超」には年の区切りがなく、計測ページの「年間2億5,000万ドル超」は1年あたりの計測額です。別々の数字として読む必要があります。

インフルエンサー施策の件数もページによって違います。トップページは「年間1万件超のインフルエンサーとの協業」、クリエイターマーケティングのページは「毎年2万人以上のクリエイターが有料施策で協業」と書いています。数え方の違いは説明されていません。

Gamesightとはどんな会社か

基本情報

項目

内容

社名

Gamesight(法人格を含む正式社名は確認できなかった)

設立

2015年(LinkedInの会社ページの記載。公式サイトでは確認できない)

本社

米ワシントン州シアトルで創業。現在は完全リモートで、業務の中心時間帯は米太平洋時間

創業者

公式サイトに記載がなく、確認できなかった

CEO

アダム・リーブ(Adam Lieb)氏

従業員

50人超(採用ページ)。会社紹介ページに載っている経営陣とメンバーはおよそ60人

資金

ベンチャーキャピタルの出資を受けている(採用ページ)。投資家・金額は公式サイトに記載がなく、確認できなかった

受賞

GamesIndustry.bizの「Best Places to Work」に2回選出(年の記載なし)

出典: About、Careers、LinkedIn

公式サイトのタイトルは「Performance Marketing for PC & Console games」で、成果を数字で追うマーケティング(パフォーマンスマーケティング)をPC・コンソールゲーム専門で手がけると打ち出しています。会社紹介ページのミッションは「We build technology to help kickass games build, understand, and grow their fanbase.」(すごいゲームがファンを作り、理解し、増やすための技術を作る)です。

経営陣と拠点

Gamesightの会社紹介ページの背景ビジュアル。紫のグラデーションにアイソメトリックのイラスト
出典: Gamesight(

会社紹介ページ(2026年10月31日確認)に載っている主な経営陣は次のとおりです。

氏名

役職

Adam Lieb

最高経営責任者(CEO)

Dan Laughlin

最高売上責任者(CRO)

Robert Syvarth

最高技術責任者(CTO)

Crystal DiCarlo

最高財務責任者(CFO)

Christian Thomas

データ・計測部門の責任者

Jennifer Zall

クリエイター戦略のディレクター

Emilee Helm

クリエイターマーケティングのディレクター

Jess Leonard

オペレーションのディレクター

Per Höglund

欧州営業の責任者

Camille Lieb

戦略的パートナーシップの責任者(社内弁護士を兼務)

このほか、韓国の責任者(Head of Korea)としてデイビッド・ムーン(David Moon)氏、ブランドパートナーシップ担当の副社長としてダン・ドレッセル(Dan Dressel)氏が載っています。欧州と韓国には担当者がいて、北米以外にも営業の体制があります。日本担当の役職は見当たりません。

提供している4つのサービス

Gamesightの公式サイトはゲームの発売前・発売時・発売後に分けてメニューを並べています。

段階

メニュー

発売前

プレイテスト、市場調査、CPMディレクトリ

発売時

インフルエンサー施策、マーケティング計測、ユーザー獲得(UA)

発売後

クリエイタープログラム、グロースマーケティング

出典: Gamesight 公式サイト

製品は次の4つです。

  1. Measurement & Attribution(計測・アトリビューション): 中核の製品です。広告、インフルエンサー施策、自社サイトなどのどの接点が、インストール、休眠ユーザーの復帰、ゲーム内課金、継続率、売上につながったかを1か所で集計します。集計した売上への効果をもとに予算の配分を変えられ、不正な広告を防ぐ機能(Fraud Prevention suite)も付いています。複数のストアで売っているゲームもまとめてレポートでき、データウェアハウスとの連携やSAML認証といった大企業向けの機能もあります
  2. Creator Marketing(クリエイターマーケティング): Twitch、YouTube、TikTok、Xの1億2,900万人超のゲーム系クリエイターを分析し、フォロワー数ではなく、視聴者の定着、ファンの忠誠度、プラットフォームでの影響力で採点して起用する人を選びます。ゲームキーの配布、配信、動画、TikTok、リアルイベントへの出演などの施策を企画から実行まで請け負います。「PC・コンソールゲームで、クリエイターのコンテンツを売上・ゲーム内課金まで追跡している唯一の会社」というのは同社の主張です
  3. Creator Programs(クリエイタープログラム): 発売後もクリエイターに配信を続けてもらうための長期のプログラムです。大会、オフ会、コンテスト、ベータテスト、グッズの配布のほか、Discordでのコミュニティ運営も含みます。同社は、プログラム1件あたりの1年間のアーンドメディア価値(広告費を払わずに得た露出を広告費に換算した額)が平均2,000万ドル超で、参加したクリエイターは対象作品の配信を80%多く行うようになると公表しています
  4. Creator-Led Playtests(クリエイターによるプレイテスト): 発売前の作品をクリエイターに遊んでもらい、市場に合うか、配信で見映えがするかを確かめます。オンライン、対面、継続して意見を聞く諮問会(Creator Councils)の3つの形式があり、秘密保持契約、契約書、渡航、支払いまで代行します

出典: Measurement & Attribution、Creator Marketing、Creator Programs、Creator-Led Playtests

Gamesightの管理画面。ユーザー獲得ダッシュボード、インフルエンサー分析、獲得ダッシュボードをPC・タブレット・ノートPCで表示したイメージ
出典: Gamesight(

計測と並ぶもう一つの柱がクリエイター施策で、Gamesightは計測の道具を売る会社であると同時に、施策を実行する部隊も持っています。UA代理店やコンサルティング会社を認定する「Gamesight Partner Program(GPP)」もあり、認定代理店の一覧には26社が載っています(出典: GPP、Partner Directory)。

対応プラットフォーム

計測ページに載っている対応先は、Steam、Xbox One/X、PS4/PS5、Nintendo Switch、Epic Games Store「など」です。各プラットフォーマーと正式に提携したという発表は、今回の調査では見つかりませんでした。

PC・コンソールで広告効果を計測する仕組み

モバイルアプリでは、端末の広告ID(iOSのIDFA、AndroidのGAID)とアプリストアの仕組みを使って、広告とインストールを結び付けられます。PC・コンソールにはこれに当たる共通の仕組みがありません。Gamesightの公開ドキュメントからは、次の方法で計測していることが分かります。

  1. 広告の側: Gamesightが発行するクリック用のURLと、表示を記録するインプレッション用のタグを広告に入れます。クリックしたあとの成果(クリックスルー)と、見ただけのあとの成果(ビュースルー)の両方を扱います。ただし、媒体によってはインプレッション用のタグを置けないことがあると、ドキュメント自身が書いています
  2. ゲームの側: ゲームが起動するたびに「game launch」イベントをGamesightへ送り、そこからインストール、継続率、休眠ユーザーの復帰を割り出します。各イベントにはイベントの種類、ユーザー、端末の識別子、売上額を付け、DLCの購入やゲーム内課金も送れます
  3. 照合: PCは主に端末の情報で照合します。コンソールは、識別子を自社のアイデンティティグラフ(同じ人の複数の識別子をまとめたデータ)に対応づけて照合する部分が大きいとしています

出典: PC Game Attribution、Console Game Attribution

Gamesightのホーム画面。広告経由のコンバージョン数、インストール・購入数、Twitch視聴時間を並べて表示している
出典: Gamesight(

この方式には限界もあり、ドキュメントに明記されています。

  • Steam、Epic Games Store、PlayStation Storeなどのストアページは他社が管理しているので、ストアの中での行動は直接見えない
  • SteamはSteamworksの権限を受け取ればストアページの訪問とウィッシュリストへの追加を取り込める(Steam UTM Analytics)。ただしSteamの側で紐付けられる流入は「typically less than 10%」(通常1割未満)
  • 標準の連携では、購入の時点ではなくインストールの時点で新規ユーザーと数える。購入を直接取れるのは、自社サイトで販売するゲームにWeb SDKを入れたときだけ
  • Discordとの連携はクリック用URLやタグを使わないサーバー同士の方式で、成果はDiscordへ自動で返る(Gamesightの側では編集できない)。Discordの広告費は自動で取り込めず、手作業でアップロードする

出典: Steam UTM Analytics、Discord

つまりGamesightで追えるのは、広告への接触と、ゲームの起動・課金のデータを照合した結果で、インストールとゲーム内課金までです。他社のストアで売られている限り、ストアでの購入そのものは直接は見えません。「PC・コンソールでも広告から購入まで完全に計測できる」と受け取るのは言い過ぎです。

連携している媒体とツール

ドキュメントの連携先一覧(Network Integrations)には、次の名前が並んでいます。

種類

連携先

広告媒体

Meta Ads、Google Ads、Reddit Ads、TikTok Ads、X Ads、Google Campaign Manager、Google DV360、Amazon Ads、Snapchat Ads、Microsoft Ads、Quantcast、Vungle

計測・分析

Google Analytics、AppsFlyer、Adjust

コミュニティなど

Discord、Steam UTM Analytics、Solana

出典: Gamesight ドキュメント

日本のアイモバイルも2023年に連携を発表していますが、Gamesightのドキュメントの一覧には名前が出ていません(日本市場の章で詳しく扱います)。

セキュリティの面では、GDPR・CCPAへの準拠、SOC 2認証、IAB TCF v2の承認、AES-256による暗号化、監査ログ、役割ごとのアクセス制御を掲げています(出典: Measurement & Attribution)。

主要な顧客と代理店

公式サイトに顧客の声を寄せているのは、クラフトン(Krafton、韓国)、ネットフリックス(Netflix)、アバランチ・スタジオ・グループ(Avalanche Studios Group)、アトラスの北米法人ATLUS West、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト(Wizards of the Coast、WOTC)、ライトスピードL.A.(Lightspeed L.A.)、代理店のミニボス・ソリューションズ(Miniboss Solutions)、NASC、サイドクエスト・メディア(SideQuest Media)などです。媒体の立場からはレディット(Reddit)がコメントを寄せています。

認定代理店26社には日本のセプテーニ(Septeni)と、韓国のネクスト・メディア・グループ(Next Media Group)が入っています。セプテーニとの協業の中身や時期は、公開情報では確認できませんでした。

同社は「直近3作の『Game of the Year』のローンチパートナー」とも書いていますが、作品名は挙げていません(出典: Creator Marketing)。

ここまでの歩み

資金調達:公表されているのは「出資を受けている」ことだけ

Gamesightは採用ページで、自社を「50+ person venture-backed technology company」(ベンチャーキャピタルの出資を受けた50人超のテクノロジー企業)と説明しています。資金調達のラウンド、時期、金額、リード投資家は公式サイトに書かれておらず、今回の調査では確認できませんでした。累計調達額も確認できていません。日本企業が投資家に入っているかどうかも分かっていません。

資金調達の履歴から市場の評価を読み取ることは、現時点ではできません。代わりに、製品と対外発信の広がりをたどると、この会社が何に力を入れてきたかが見えてきます。

製品と発信の年表

Gamesightが公開した「Performance Marketing Report Q1 2026(ゲームのコンバージョン要因)」の表紙
出典: Gamesight(

時期

出来事

確度

2015年

シアトルで設立

LinkedInの記載

2017年ごろ

Innervateという会社が、DIY型のインフルエンサーマーケティング基盤として「Gamesight」を発表

報道の見出しのみ(VentureBeat)

2018〜2019年

調査レポート「State of the DCCG 2019」(Twitchでのデジタルカードゲームの伸び)、「Top Ad Networks 2019」を公開

公式

2019年

代理店のミニボス・ソリューションズが利用を始める

同社の顧客の声

2020〜2022年

「Top Ad Networks 2020」「Top Ad Platforms 2021」「Top Ad Platforms 2022」「YouTube Gaming Report 2022」を公開。PC・コンソール向けの広告媒体のランキングを毎年出す

公式

2022年ごろ

『Lost Ark』が発売週にTwitchで7,600万時間視聴されたというGamesightの集計を、GamesIndustry.bizが報道

報道の見出しのみ

2023年4月12日

アイモバイルが「i-mobile Ad Network」とGamesightのAPI連携を発表

公式(アイモバイル)

2023年

「VTuber Report 2023」「Games Industry Digital Marketing Spend Analysis 2023」を公開

公式

2024年

「State of Performance Marketing 2024」を公開

公式

2025年10月2日

DiscordがAppsFlyer、Gamesightとの計測連携を発表(Gamesightはベータ)

公式(Discord)

2026年初め

Steamのレビュー評価が「賛否両論」から「非常に好評」に上がると広告の効果が上がる、というGamesightの分析を業界メディアが報道。GameSpotの見出しは「購入の可能性が3倍」

報道の見出しのみ

2026年

「Performance Marketing Report Q1 2026」を公開。広告媒体ごとの貢献、価格帯、Steamレビュー、ジャンル別のコンバージョンまでの日数を扱う

公式(本文は登録制)

2026年夏ごろ

シューター25作の発売を分析し、ゲームの成否をいちばんよく予測するのは視聴時間ではなく、発売後も配信を続けるクリエイターの数だとする分析を業界メディアが報道

報道の見出しと要約のみ

出典: Gamesight Reports、LinkedIn、VentureBeat、GamesIndustry.biz(Lost Ark)、GamesIndustry.biz(Steamレビュー)、GameSpot、GamesIndustry.biz(クリエイター数)

前身とみられるInnervateとの関係や、社名が変わった時期は確認できていません。報道の見出しをもとにすると、インフルエンサー施策の道具として始まり、Twitch・YouTubeの視聴データの分析、PC・コンソール向け広告媒体のランキング、計測・アトリビューションの製品へと広がり、2023年以降は広告媒体の側が連携を発表するようになった、という流れと考えられます。毎年の調査レポートが業界メディアに引用されてきたことも、知名度を支えてきたと考えられます。

Web3の扱いの変化

2023年のアイモバイルのリリースは、Gamesightを「PC、コンソール、Web3ゲームの成長エンジン」と紹介していました。2026年10月31日時点の公式サイトにはWeb3という言葉が見当たらず、ドキュメントの連携先にSolanaが残っている程度です。Web3から手を引いたという公式の説明はありません。現在の公式サイトはPC・コンソールに絞った打ち出し方になっています。

広告出稿事例

Gamesightの公式サイトには、独立した事例ページがありません。数字が出てくるのは顧客の声の中だけで、どれもGamesightが選んで自社サイトに載せたものです。第三者が検証した数字ではありません。

NASC:コンバージョン単価を約70%削減

NASCの共同創業者ピエール・シェトレフ(Pierre Chetreff)氏は、Gamesightのプラットフォームで大規模な広告キャンペーンを運用し、コンバージョン単価が約70%下がったと述べています。ある例では、CPA(1件の成果あたりの広告費)が17ドルから5ドルになりました(出典: Measurement & Attribution)。

公表されている事例の中で、成果の具体的な数値があるのはこの1件だけです。どのゲームの、どの媒体での結果かは書かれていません。

ウィザーズ・オブ・ザ・コースト:Magic: The Gatheringのクリエイター施策

Magic: The Gathering Arenaのブースで、クリエイタープログラム参加者がMagicロゴのクッションを持って並ぶ様子
出典: Gamesight(

カードゲーム『Magic: The Gathering』を手がけるウィザーズ・オブ・ザ・コーストは、発売後のクリエイター施策でGamesightを使いました。シニアディレクターのブライアン・ペリー(Brian Perry)氏は次のようにコメントしています。

"Gamesight helped put Magic in the hands of hundreds of top influencers at critical times in our game's lifecycle."
(Gamesightのおかげで、ゲームの大事な局面に、数百人の有力インフルエンサーにMagicを遊んでもらえた)

出典: Gamesight 公式サイト

起用したインフルエンサーが「数百人」という規模のほかに、成果の数値は公表されていません。公表されている内容はクリエイター施策の実行に関するものです。

ミニボス・ソリューションズ:代理店として2019年から全キャンペーンで利用

代理店のミニボス・ソリューションズは、2019年からすべてのキャンペーンでGamesightを使い、アトリビューションの結果をもとに広告媒体を選び直しています。創業者のアダム・クラウス(Adam Krause)氏は次のように述べています。

"Gamesight has become foundational element for every campaign that I've overseen since 2019."
(2019年以来、私が担当したすべてのキャンペーンでGamesightが土台になっている)

成果は「millions of dollars in return value」(数百万ドル規模のリターン)と書かれているだけで、具体的な値はありません(出典: Gamesight 公式サイト、Measurement & Attribution)。

クラフトンとアバランチ・スタジオ・グループ

韓国のクラフトンは新作のAAAタイトルと、運営中の大型ライブサービス型タイトルでGamesightを使っています(作品名は非公開)。マーテック担当のプロダクトマネージャー、ヘソル・ウォン(Haesol Won)氏は「改善され続ける製品は、私たちのパブリッシング業務に欠かせない一部になった」とコメントしています(出典: Creator Marketing、Gamesight 公式サイト)。

アバランチ・スタジオ・グループはチャネルごとの効き方をつかみ、成果の出るところへ投資を寄せたとしています。同社のデイビッド・カーレン(David Carlén)氏は次のように述べています。

"The biggest difference when using Gamesight is that you go from blind to having an idea of your situation."
(Gamesightを使っていちばん変わったのは、何も見えない状態から、自分たちの状況が分かる状態になったことだ)

出典: Gamesight 公式サイト

どちらも数値は公表されていません。

レディットの「ROAS 3倍」は媒体側の主張

計測ページにはレディットのブレント・カールソン(Brent Carlson)氏の「ほかのSNSよりROASが3倍、配信プラットフォームより2倍」というコメントも載っています。これはレディットが自社の広告媒体の成果として述べている数字で、Gamesightの顧客事例でも、第三者が検証した数字でもありません。計測が整うと、媒体の側も自社の成果を数字で示せるようになる、という例として読むのが妥当です。

PC・コンソールの広告計測が広がる背景

Gamesightの「Performance Marketing Primer」の図。計測・改善を繰り返す循環を矢印で示している
出典: Gamesight(

背景には、モバイルとPC・コンソールの計測環境の差があります。モバイルアプリにはAppsFlyerやAdjustのような計測ツール(MMP)が定着していますが、PC・コンソールには長く同じ役割のものがありませんでした。Gamesightの計測ページは「game marketers have lacked reliable options for managing spend or creating accurate attribution models」(ゲームのマーケターには、予算を管理したり正確なアトリビューションのモデルを作ったりする信頼できる選択肢がなかった)と書き、この空白を埋めると打ち出しています。

計測ができなければ、広告媒体はPC・コンソールゲームの広告主に「この広告で何本売れたか」を示せません。Discordとアイモバイルが自分たちから連携を発表したのは、ゲームの広告主の予算を取るには成果を数字で返す必要がある、と媒体の側が考えたためと考えられます。レディットのコメントも同じ流れにあります。

もう一つの背景は、ゲームの宣伝で配信者や動画投稿者の比重が大きいことです。Gamesightは計測の会社であると同時に、クリエイターの起用を代行する会社でもあります。クリエイターの配信からゲームの売上までをつなげて見せられることが、同社の主張する強みです。業界メディアが報じた「ゲームの成否を予測するのは、発売後も配信を続けるクリエイターの数」という分析も、クリエイター施策を重視する同社の打ち出しと方向がそろっています。

日本市場ではどうか

アイモバイルが「国内事業者初」の連携を発表

i-mobile Ad NetworkとGamesightの連携の流れ。Steamのゲームを広告配信し、購入またはインストールの時点でGamesightからi-mobileへポストバックする図
出典: 株式会社アイモバイル(

東証プライム上場の株式会社アイモバイルは2023年4月12日、自社のアドネットワーク「i-mobile Ad Network」とGamesightのAPI連携を、「【国内事業者初】」という見出しで発表しました。PC・コンシューマーゲームのオンラインストアで売られるゲームの広告効果を計測でき、「スマートフォン/PC/コンシューマゲーム機を横断しての広告効果計測」ができるとしています。リリースの図では、Steamで売られているゲームの広告をi-mobile Ad Networkで配信し、購入またはインストールの時点でGamesightからアイモバイルへ成果を返す流れが描かれています(出典: アイモバイル プレスリリース)。

アイモバイルのあとに、ほかの日本の媒体社がGamesightとの連携を発表した例は、今回の調査では見つかりませんでした。

日本との接点と、使うときの壁

日本との接点はほかに2つあります。認定代理店の一覧にセプテーニが入っていることと、アトラスの北米法人ATLUS Westが顧客の声を寄せていることです。ATLUS Westのコメントは「Gamesightとの仕事はいつも楽しい」という趣旨で、どの作品で何をしたかは書かれていません。

日本のゲーム会社が直接使おうとすると、次の点が壁になると考えられます。

  • 日本語の公式サイトとドキュメントが見当たらない
  • 会社紹介ページに日本担当の役職がない(欧州と韓国にはある)
  • 料金が公開されていない

ブランド広告主にとっての位置づけ

Gamesightが計測するのは、ゲームのインストール、起動、ゲーム内課金です。前提として、計測の仕組みをゲームの中に組み込む必要があります。そのため、使えるのはゲームを売っている会社(パブリッシャーや開発会社)に限られます。食品・飲料、日用品、外食などのブランド広告主が、ゲームの中に出した自社商品の広告の効果を測る道具ではありません。公式サイトにも、ゲーム以外のブランドがゲーム内広告の効果を測るという用途の記載はありません。ブランドパートナーシップ担当の副社長はいますが、何をする部署かは書かれていません。

ゲームに関わる広告はゲームを売るための広告と、ゲームの中に出す広告に大きく分かれます。全体の分類は「ゲーム内広告とは」で整理しています。

日本で同じ広告を実施する選択肢

紫の照明の中でゲームを楽しむ若者たち
イメージ写真(Unsplash)

Gamesightと「同じこと」が何を指すかは、広告主の立場で変わります。

PC・コンソールゲームを売っている日本の会社が、広告からインストールや課金までを追いたい場合は、Gamesightそのものが候補です。日本語の窓口は確認できず、英語でのやり取りが前提になると考えられます。日本ではi-mobile Ad Networkが連携済みで、認定代理店にはセプテーニが入っています。

ゲームを売る会社ではなく、ゲームで遊ぶ人に自社商品やブランドを知ってもらいたい広告主の場合は、考え方が変わります。測りたいのはインストールや課金ではなく、広告を覚えているか、好感を持ったかといった認知の指標です。この場合、選ぶ対象は計測の会社ではなく、ゲームの中に広告を出せる媒体と、その媒体が出せる指標になります。インストールや購入で測る成果型の計測と、認知・想起で測るブランドの計測の違いは「広告効果とは」で解説しています。

選択肢の一つが、ゲーム空間の中の看板やモニターに動画広告を配信する国内のアドネットワーク、Ad-Virtuaです。対応タイトルは400以上、累計再生数は8,000万回を超え(2025年後半時点)、料金は1週間30万円のプランです。広告想起率は約1.8倍、注目度は約1.7倍、CPMは約300円(通常は500円)と公表しています。いずれもAd-Virtuaが公表している値です。

比較ポイント

Gamesight

Ad-Virtua

何の会社か

PC・コンソールゲームのマーケティング計測とクリエイター施策

ゲーム空間の中に動画広告を配信するアドネットワーク

主な利用者

ゲームのパブリッシャー・開発会社、その代理店

認知を広げたいブランド広告主

測る成果

インストール、ゲーム内課金、継続率、売上

広告想起率、注目度、CPM

導入の前提

ゲームに計測の仕組みを組み込む

動画素材を用意する

料金

非公開

1週間30万円のプラン

日本語の窓口

確認できない(認定代理店にセプテーニ)

あり

Ad-Virtuaが合う企業

  • 食品・飲料、日用品、外食、交通・レジャーなど、自社商品やブランドの認知を目的にしている
  • TVCMやSNS広告の動画素材を、若い層に別の接点で見せたい
  • 日本語で相談し、国内のゲームタイトルに配信したい
  • 週単位の決まった予算で試したい

Ad-Virtuaが合わない企業

  • PC・コンソールゲームの販売本数や課金を、広告ごとに計測したいゲーム会社。Gamesightのような計測の仕組みが必要になる
  • 広告から店舗への来店や商品の購入までを一人ずつ追いたい。そうした計測の仕組みは、Ad-Virtuaの公開情報では確認できない
  • 配信者・動画投稿者を起用した施策を探している

費用の考え方は「ゲーム内広告の費用」で詳しく比べています。

広告主が取るべき判断

ノートPCの画面を指しながら打ち合わせをする2人の手元。机にはノートとペンが置かれている
イメージ写真(Unsplash)

今動くべき企業

  • Steamやコンソールで海外向けにゲームを売っていて、どの広告がインストールや課金につながったかを判断できていないゲーム会社。導入タイトル1,000本超という実績とDiscord・各SNS広告との連携があり、英語で対応できるなら検討の対象になる
  • i-mobile Ad NetworkでPCゲームの広告を出している、または出す予定のゲーム会社。国内で連携済みの数少ない組み合わせを使える
  • ゲーム会社を顧客に持つ広告代理店。認定代理店は26社で、日本からはセプテーニが入っている
  • ゲームで遊ぶ層に商品を知ってもらいたいブランド広告主。Gamesightの動向を待つ必要はなく、国内で使えるゲーム内広告の媒体と、その媒体が出せる認知の指標から検討できる

様子見でよい企業

  • 日本国内向けのモバイルゲームが中心の会社。モバイルにはAppsFlyerやAdjustのような計測ツールがあり、Gamesightが空白として挙げているのはPC・コンソールの領域
  • 日本語での契約と運用支援が欠かせない会社。日本担当の体制が公開されていないため、国内での支援体制が見えてから判断しても遅くないと考えられる
  • ストアでの購入件数そのものを正確に測りたい会社。他社のストアで売る限り、Gamesightのドキュメントでも購入は直接は見えないとされている

関連する基礎知識

よくある質問

GamesightとAppsFlyer・Adjustはどう違いますか?

AppsFlyerとAdjustは、モバイルアプリの広告計測で定着しているツールです。GamesightはPC・コンソールゲームの計測を主な領域にしています。Gamesightの連携先一覧にはAppsFlyerとAdjustの名前があり、競合というより、つないで使える相手として扱われています。PCとモバイルの両方で出しているゲームの場合は、両方を組み合わせる形が考えられます。

Innervateという会社とGamesightは同じ会社ですか?

2017年ごろのVentureBeatの記事の見出しに「Innervate launches Gamesight do-it-yourself influencer marketing platform」(InnervateがDIY型のインフルエンサーマーケティング基盤Gamesightを発表)とあります。Innervateが製品名としてGamesightを出し、その後に社名をGamesightに寄せた可能性がありますが、記事の本文と社名変更の時期は確認できていません。古い資料でInnervateの名前を見かけたら、Gamesightの前身の可能性がある、と受け取っておくのが無難です。

Gamesightの調査レポートは無料で読めますか?

公式サイトのレポートページで、2019年以降の広告媒体のランキングやYouTube・VTuberの調査などが公開されています。最新の「Performance Marketing Report Q1 2026」は、フォームに登録すると読める形式です。いずれも英語です(出典: Gamesight Reports)。

Steamのウィッシュリストへの追加は広告の成果として数えられますか?

Steamworksの権限をGamesightに渡せば、ストアページの訪問とウィッシュリストへの追加を取り込めます。ただし、ドキュメントはSteamの側で紐付けられる流入を通常1割未満としています。ウィッシュリストの数は傾向をつかむ材料として使い、広告ごとの正確な成果としては扱わないほうが安全です。

Gamesightの料金はいくらですか?

公式サイトに料金は載っていません。導入を考える場合は、Gamesightへの問い合わせが必要です。認定代理店の一覧にはセプテーニが載っていますが、日本でどのような支援をしているかは公開されていません。