マーケティング予算の配分を最適化するには、「各施策の媒体特性とファネル上の役割を理解した上で、目的別に組み合わせを設計すること」が前提になる。一施策にまとめて投下したり、前年踏襲で機械的に分配したりするだけでは、どれだけ総額を積んでも成果に結びつきにくい。

この記事では以下の内容を解説する。

  • TVCM・SNS広告・ゲーム内広告・体験型施策、4施策の費用・ROI・ターゲット特性の比較
  • マーケティングファネルと施策配分の考え方(認知〜購買の段階別)
  • 70-20-10、60-30-10など予算配分フレームワークの使い方
  • 業種別の予算比率目安と、よくある失敗パターン
  • 2026年のマーケター調査から見えた予算シフトの実態
  • ゲーム内広告が予算配分の選択肢になる条件

対象読者は、食品・飲料・日用品・外食など生活接点の広い企業で、TVCMやSNS広告の補完施策を探しているマーケティング担当者・ブランド担当者。

マーケティング予算配分の最適化とは

マーケティング予算を計画するビジネスパーソンのイメージ

マーケティング予算の配分最適化とは、限られた予算を複数の広告媒体・施策に適切に割り振ることで、全体のROI(投資収益率)を最大化する取り組みを指す。単純な金額の分散ではなく、認知→興味→検討→購買というファネルの各段階に対応した施策の役割を理解した上で、組み合わせを設計することが本質的な意味での「最適化」だ。

ROIは次の式で表される。

ROI(%)= (売上利益 − 投資額)÷ 投資額 × 100

ただし、施策ごとのROIを単体で比較するだけでは不十分な点に注意が必要だ。テレビCMが10週間以上の残存効果を持ち、後続のデジタル施策の効率を押し上げる「クロスメディア効果」のように、施策の組み合わせによって相乗効果が生まれる。予算配分の最適化とは、こうした相乗効果を込みで評価する視点を持つことでもある。

TVCM・SNS・ゲーム内広告・体験型施策の特性比較

TVCM・SNS・ゲーム内広告・体験型施策の各媒体特性の比較イメージ

予算配分を考える前提として、4つの主要施策が何に強く、何に向いていないかを整理する。

4施策横断 比較表

施策

最小予算目安

CPM目安

Z世代リーチ

主な目的

ROI特性

TVCM

1,000万円〜(1クール)

認知コスト約5.6円/人(※1)

弱(40代以上に強い)

認知・ブランドリフト

残存効果約10週間。長期ブランド構築向き

SNS広告

数万円〜(テスト可)

500〜1,500円(媒体・設定により変動)

強(37.2%のブランド影響、※2)

獲得・拡散・精度ターゲ

即効性が高い。広告疲れ・CPM高騰リスクあり

ゲーム内広告

10万円〜

約300〜400円(Ad-Virtua公式)

強(Z世代の約80%が毎日プレイ、※3)

認知・好感度・想起率向上

広告想起率約1.8倍。プレイを中断しない好感度型

体験型施策

数十万円〜(小規模ポップアップ)

参加者限定のため換算困難

限定的(接触者のみ)

体験・ファン化・LTV向上

ROI計測が難しい。長期的なブランドロイヤルティに効く

※1 出典:日本民間放送連盟「データでわかるテレビの広告効果」(最新データは公式サイトで要確認) ※2 出典:GameBusiness.jp「SNS広告がZ世代大学生のブランドイメージ形成に最も影響」(2025年11月・Z世代大学生600名調査) ※3 出典:ad-virtua.com「ゲーム内広告市場の規模と成長率|2026年最新データ」

この比較表から読み取れる構造的な傾向は次のとおりだ。

  • TVCM: 予算規模が大きい分、認知コスト効率は最も低いが、残存効果と信頼感醸成に優れる
  • SNS広告: 少額から始められる柔軟さと精度ターゲティングが強みだが、若年層の広告疲れとCPM上昇が課題になりつつある
  • ゲーム内広告: CPM効率と好感度の両立が最大の特徴。Z世代男性への認知補完に機能しやすい
  • 体験型施策: 接触者数は少ないが、ブランド体験の深度が最も高い。ファン化・LTV向上を狙う局面に適する

ファネル別の予算配分の考え方

マーケティングファネルと施策配分を議論するビジネスチームのイメージ

施策ごとの特性がわかったら、次はファネルの段階(認知→興味→検討→購買)と予算配分を対応させる設計が必要になる。

ビデオリサーチが化粧品会社(約1億円予算)を対象に行った分析(出典:ビデオリサーチ VR Digest plus「テレビ:デジタル=何:何が理想?」)では、次の傾向が確認されている。

ファネル段階

テレビCM貢献度

デジタル貢献度

ブランド認知

92%

8%

ブランド興味

88%

12%

ブランド利用

82%

18%

この結果が示すのは、「認知段階はテレビが強く、ボトムファネルになるにつれてデジタルの貢献が上昇する」という傾向だ。ただし、これはTVCMに大規模予算を投下できる大手ブランドのケースであり、中規模以下の企業ではデジタル施策の比重が変わる。

ファネル×施策の組み合わせ例

ファネル段階

推奨施策

役割の例

認知(TOP)

TVCM・ゲーム内広告

広くリーチ。ブランド想起の種まき

興味・好感(MID)

ゲーム内広告・SNS広告

繰り返し接触。嫌われにくい接点で好感度を形成

検討・比較(MID-LOW)

SNS広告・リターゲティング

商品特徴の訴求・比較支援

購買・ファン化(BOTTOM)

SNS広告・体験型施策

クロスセル・LTV最大化・ブランドロイヤルティ強化

「認知補完」として注目されるゲーム内広告は、TVCMではカバーしにくいZ世代・スマホヘビーユーザー層への中間ファネル施策として機能する。TVCMで40代以上の認知は取れているが、10〜30代への接触が薄いと感じているブランドにとっては、ファネルの「認知→好感形成」フェーズを埋める選択肢になる。

予算配分フレームワーク:70-20-10と60-30-10

実務でよく使われる2つのフレームワークを押さえておこう。

70-20-10ルール(実績重視型)

区分

比率

内容

Core

70%

実績のある既存施策(TVCMやSNS広告など効果が確認済みの施策)

New

20%

新しいアプローチ・媒体への試み(ゲーム内広告、インフルエンサー等)

Test

10%

未実証の実験的施策(新媒体・生成AI活用など)

現状の主力施策を維持しながら新しい接点を開拓するバランス感で、安定志向の大手ブランドに適しやすい。

(出典:ficilcom.jp「マーケティング予算のチャネル別配分比率」)

60-30-10の法則(LTV重視型)

区分

比率

内容

既存顧客

60%

既存顧客の維持・育成(リテンション・ロイヤルティ強化)

新規獲得

30%

新規顧客の獲得施策

実験

10%

新規テスト・実験的施策

「既存顧客の維持コストは新規獲得コストの約5分の1」というデータに基づく考え方。LTVを重視するブランドやリピート商材(日用品・食品等)に向いている。

(出典:tools-box.jp「予算配分の黄金比率」)

大手家電メーカーの実例

  • デジタル40%:イベント25%:ブランディング20%:PR15%
  • デジタル比率を20%→40%へ引き上げた結果、顧客獲得コストが32%削減

(出典:note「マーケティングROIを最大化する予算配分モデル完全ガイド」)

この事例からわかるのは、「デジタルの比重を上げれば自動的に効率化する」わけではなく、「どのチャネルに集中するか」という選択と実行の精度が成果を分けるという点だ。

業種別のマーケティング予算比率の目安

予算の「総額」を売上に対してどの程度確保すべきかは、業種によって異なる。以下は一般的な目安だ。

業種

売上対比の目安

一般消費財(BtoC)

3〜10%

化粧品・健康食品

10%前後

飲食業

3〜6%

通販・サービス業

15〜20%

上場企業の平均

約3.5%

(出典:KOTORA JOURNAL「マーケティング費用の秘密」、megdai.jp「広告費の平均を業種別で解説」)

注意点は、この比率はあくまで目安であり、ブランドのステージ(創業期・成長期・成熟期)や競合の投資水準によっても変わる。新ブランドの立ち上げ期は認知獲得コストが高く、目安より高い比率が必要になるケースが多い。

よくある予算配分の失敗パターン

失敗①:短期ROI偏重で認知施策を削る

「デジタル広告のROIが可視化しやすいから、TVCMやブランド認知施策を削ってデジタルに集中する」という判断は、短期的には数値が改善して見えることがあるが、中長期では認知の底上げが止まり、新規客の流入が細っていくリスクがある。TVCMの残存効果(約10週間)やクロスメディア効果を無視した単純比較は危険だ。

(参考:日経クロストレンドのMMM事例より。あるMMMの分析では、テレビCMが1万円の投下で1.5万円の売上創出(ROI 50%)に対し、Web広告単体は8,000円の売上創出(ROI −20%)という結果が出ているケースも存在する)

失敗②:前年踏襲で施策の固定化

「去年うまくいったから今年も同じ配分」という判断は、SNS広告のCPM上昇やプラットフォームアルゴリズムの変化を無視することになる。2026年の調査(Macbee Planet、1,086社調査・出典:ネットショップ担当者フォーラム)では、BtoC企業の42.9%が体験型施策を「削減候補」に挙げており、市場の変化に合わせた見直しが求められている。

失敗③:KPI未設定のまま体験型施策に投下する

体験型施策(ポップアップ・イベント等)はブランドへの深いエンゲージメントを生む一方、ROIの計測が難しいという構造的な弱点がある。計測手段(来場者属性・購買追跡・ブランドリフトサーベイ等)を事前に設計せずに投下すると、「効果があった気がする」という主観的評価で終わってしまう。

失敗④:Z世代へのリーチ手段を持たないまま認知施策を打つ

TVCMは40代以上への認知効率に優れる一方、Z世代へのリーチは弱い。GameBusiness.jpの調査(Z世代大学生600名、2025年9月)では、TVCMがブランドイメージに影響すると答えた割合は12.0%と、SNS広告(37.2%)やタブレット広告(22.8%)を大きく下回っている。Z世代がターゲットに含まれる商材では、TVCMだけに頼る認知戦略は機能しにくい。

2026年のマーケティング予算シフトトレンド

2026年デジタルマーケティング予算シフトのトレンドを示すデータ分析画面

マーケター1,000人超を対象とした2026年の調査(Macbee Planet・BtoC/BtoB企業1,086名、出典:ネットショップ担当者フォーラム 2026年2月)では、次のような予算シフトの傾向が確認されている。

投資が増える領域(BtoC企業):

  1. デジタル広告(検索・ディスプレイ等):42.9%
  2. SNS・動画・インフルエンサー施策:40.7%
  3. 生成AIツール:35.8%

削減される領域:

  • イベント・展示会・セミナー・ポップアップストアなど体験型施策:42.9%が削減候補

体験型施策は2026年の予算計画では削減対象の筆頭になっている。一方でデジタル・SNS・動画への投資は拡大傾向が続く。

また、インターネット広告市場全体は2025年に3兆3,093億円(前年比11.8%増)、2026年には3兆5,840億円(前年比8.3%増)と予測されており(出典:ネットショップ担当者フォーラム 2026年3月)、動画広告は2026年に1兆1,783億円(前年比14.7%増)と特に高い成長が見込まれている。

こんな企業におすすめ / おすすめしない企業

各施策が向いている企業の特徴

施策

こんな企業におすすめ

おすすめしない企業

TVCM

月1,000万円以上の予算を確保できる大手ブランド。40代以上が主要ターゲット。全国規模の認知構築が必要

月100万円前後の予算規模。Z世代限定のターゲット施策。即効性・計測精度を重視する場合

SNS広告

少額からテストしたい中小〜中堅ブランド。ターゲットが絞られている商材。獲得・コンバージョン重視

ブランディング・好感度向上が主目的の場合(短期的なインプレッションに流れやすい)

ゲーム内広告

TVCMでZ世代に届いていないと感じるブランド。SNS広告の広告疲れを感じている食品・飲料・日用品メーカー。月30〜300万円のテスト予算がある企業

即効性(コンバージョン)を主KPIにしたい企業。ゲームユーザーと自社商材の接点が想定しにくい業種

体験型施策

深いブランド体験・ファン化を狙う場合。商材の世界観を体感してもらう必要がある場合

大規模認知獲得が目的の場合(接触者数が限られる)。ROI計測を厳格に求められる場合

マーケティング費用を可視化する:MMM(マーケティングミックスモデリング)

複数施策を横断して「どの施策が売上にどれだけ貢献しているか」を可視化する手法として、MMM(マーケティングミックスモデリング)の活用が日本でも広がっている。

MMMを使うと「TVCMをX%削減したらどうなるか」「ゲーム内広告を追加したことで想起率がどう変化したか」といった予算配分シミュレーションが可能になる。近年はツールの普及とともに中堅企業でも導入しやすくなっているが、過去データの蓄積と専門知識が必要という点がハードルになる。

(出典:マーケジン「テレビCMも含めた統合マーケティング、MMMでどこまで可視化できるのか?」2022年)

ゲーム内広告が予算配分の選択肢になる条件

スマートフォンでゲームをプレイするユーザーのゲーム内広告イメージ

ゲーム内広告は、認知施策の中で「TVCMが届きにくいZ世代への補完」と「SNS広告よりも嫌われにくい接触」を両立する施策として機能しやすい。以下の条件に当てはまる企業にとっては、予算配分に組み込む選択肢として検討する価値がある。

ゲーム内広告(Ad-Virtua)が合いやすい企業の条件:

  • TVCMで40代以上の認知は取れているが、Z世代(10〜30代)へのリーチが薄いと感じている
  • SNS広告の広告疲れ・CPM上昇を実感しており、新しい認知接点を模索している食品・飲料・日用品メーカー
  • 月30〜300万円のテスト予算で、ブランドリフト(広告想起率・好感度向上)を計測したい
  • TVCM用の動画素材をすでに保有しており、追加制作コストを最小化したい(既存素材を転用できる)
  • Z世代の「好意的な広告接触」を重視するブランド(ゲーム内広告のブランド好感度は約85%)

Ad-Virtuaのゲーム内広告は、ゲーム空間の看板・モニターに動画広告を配信するサービスで、400タイトル以上のゲームに対応している。CPMは公式情報で約300〜400円と、YouTube・Instagramの500〜1,500円と比較してコスト効率が高い。広告想起率は通常のWeb広告比で約1.8倍、視認率は最大96%、ブランド好感度は約85%のユーザーが広告を好意的に受け入れるという効果データが示されている。

(出典:ad-virtua.com 公式サイト、ad-virtua.com/column/game-ads-market/「ゲーム内広告市場の規模と成長率|2026年最新データ」)

ゲーム内広告を詳しく知りたい方は、以下の関連記事も参考にしてほしい。

よくある質問

Q1. マーケティング予算はどのくらいから始めればいいですか?

一般的には売上の3〜10%が目安とされているが(BtoC企業)、ブランドの成長ステージによって異なる。立ち上げ期は認知獲得コストが高いため、この比率以上になることも珍しくない。デジタル施策であれば数万円からテストが可能なため、まず目的と計測KPIを決めた上で少額から始めることを推奨する。

Q2. TVCMとデジタル広告の理想的な比率は?

業種・予算規模・ターゲット層によって大きく異なる。ビデオリサーチの分析では、ブランド認知段階ではテレビが92%、ボトムファネルになるにつれてデジタルの比重が上がる傾向が示されている。Z世代がターゲットに含まれる場合は、TVCMの補完としてゲーム内広告やSNS動画広告を組み合わせることで、認知の死角を埋めやすくなる。

Q3. 体験型施策のROIはどう計測すればいいですか?

体験型施策のROI計測は構造的に難しい。計測可能な指標として「来場者数・アンケート回答率・購買意向スコア・ブランドリフトサーベイ」を事前設計することが重要だ。また、体験後のSNS拡散数・UGC生成数・メディア掲載数を補完指標として設定することで、定性的な効果をある程度定量化できる。

Q4. SNS広告のCPMが上昇しています。代替手段はありますか?

SNS広告のCPMは競合増加・プラットフォームアルゴリズム変更で上昇傾向にある。代替・補完手段としては、ゲーム内広告(CPM約300〜400円)、YouTube動画広告、OOH(デジタルサイネージ)などが挙げられる。特にZ世代向けの認知補完を目的とする場合は、ゲーム内広告がコスト効率面で選択肢になりやすい。

Q5. 70-20-10ルールと60-30-10の法則、どちらを使えばいいですか?

新規顧客獲得を主要課題とするブランドには「70-20-10ルール」が、既存顧客のリピート・LTV最大化が課題のブランドには「60-30-10の法則」が向いている。日用品・食品のような繰り返し購買商材はLTV重視の60-30-10が合いやすく、新ブランドの立ち上げや新カテゴリへの参入では新規獲得を重視した配分が優先される。

まとめ:予算配分最適化の3つの原則

  1. 施策の役割をファネルで整理する — 認知はTVCM・ゲーム内広告、獲得はSNS・リターゲ、ファン化は体験型、という対応関係を理解した上で配分を設計する
  2. Z世代へのリーチ手段を明示的に確保する — TVCMだけでは届きにくいZ世代に対して、ゲーム内広告・SNS動画などの補完施策を「Core」ではなく「New」として10〜20%の予算で試す
  3. KPIを先に決め、計測可能な設計にする — 体験型施策を含め、投下前にKPIと計測手法を設計しておかないと、事後の評価も改善も困難になる

マーケティング予算の配分に正解の比率はない。TVCMが最強だった時代も、SNSだけで完結する時代も、今は来ていない。各施策の特性とファネル上の役割を理解した上で、自社の課題・ターゲット・予算規模に合わせた組み合わせを設計し、データで継続的に見直していくことが、ROIを最大化するための唯一の実践的なアプローチだ。

ゲーム内広告を含む認知施策の選択肢や費用感について詳しく知りたい場合は、以下のページも参照してほしい。

関連記事・参考リンク