医薬品・ヘルスケア企業のブランドマーケティングは、薬機法による広告規制・MR(医薬情報担当者)数の構造的な減少・生活者のデジタルシフトという3つの変化が同時進行している、他業界と比べて設計難度の高い領域だ。特にOTC医薬品・栄養補助食品・ウェルネスブランドを展開する企業にとっては、「製品の効能を訴求しにくい規制環境」の中で、いかに生活者との長期的な信頼関係を構築するかが課題の核心にある。

この記事では、医薬品・ヘルスケア業界に特有のマーケティング課題を整理した上で、医療用医薬品とOTC医薬品それぞれで取れる施策の違い、成功事例で使われた手法、若年層・潜在生活者への接点設計、評価指標の考え方までを実践的に解説する。

この記事でわかること:

  • 医薬品・ヘルスケアマーケティングが難しい構造的な理由
  • 医療用医薬品とOTC医薬品で「できること・できないこと」の違い(比較表あり)
  • 業界別の主要施策とその特徴・向き不向き(比較表あり)
  • ロート製薬・大塚製薬・バイエル等の実際の施策事例
  • ブランドロイヤルティを測る評価指標の設計方法
  • どのような企業・ブランドにどの施策が合うかの判断基準

対象読者:OTC医薬品・栄養補助食品・ウェルネスブランドのマーケティング担当者、製薬企業のブランド戦略室、ヘルスケア領域に携わる広告・PR担当者

ヘルスケアブランドのマーケティングが難しい3つの構造的要因

薬機法・MR減少・デジタルシフトなどヘルスケアマーケティングの構造的課題を表すイメージ

医薬品・ヘルスケア企業のマーケティング担当者が「他業界のマーケティング手法がそのまま使えない」と感じる背景には、以下の3つの構造的な要因がある。

1. 薬機法・広告規制による表現の制約

薬機法(医薬品医療機器等法)第66条は、虚偽・誇大広告を「何人も」禁止している。製造業者・販売業者に限らず、広告代理店・制作会社・メディア・インフルエンサー・ライターも規制の対象となる点に注意が必要だ(厚生労働省「医薬品等の広告規制について」、確認日:2026-04-13)。

特に医療用医薬品(処方薬)は生活者向けの製品名広告が原則禁止(行政指導ベース)とされており、疾患啓発は「疾患名+受診促進」の形に限定される。一方、OTC医薬品・機能性表示食品は製品名を使った広告が認められているが、効能・効果表現には薬機法・食品表示法・景品表示法それぞれの制約がかかる。

2019年12月からは虚偽・誇大広告違反に対して「対価合計額の4.5%」の課徴金制度も導入されており(同出典)、法令リスクを踏まえた慎重な設計が求められる。

2. MR(医薬情報担当者)の構造的減少

製薬業界において、医師・薬剤師への情報提供を担うMRの数は10年連続で減少している。2023年度の国内MR数は46,719人で、5万人を下回った(インターフェックスWeek「医薬品マーケティングとは?」確認日:2026-04-13)。

この減少を補うために、デジタルチャネル(ウェビナー・Web会議・オウンドメディア)への移行が急速に進んでいる。対面訪問とデジタルを組み合わせた「オムニチャネルMR」モデルへの転換が業界全体の課題となっている。

3. 治療中心から予防・ウェルネスへの市場シフト

日本のヘルスケア産業市場規模は2025年時点で約33兆円に達し、2050年には77兆円規模に拡大すると経済産業省は推計している(「新しい健康社会の実現」2024年2月版)。この成長の背景にあるのは「治療(キュア)」から「予防・健康維持(ケア)」への市場シフトだ。

フェムテック(ルナルナ累計2,100万DL突破)、メンタルヘルスケアアプリ、ウェアラブルデバイス連携など、ヘルスケアの対象範囲が広がるとともに、生活者の「自分ごと化」が進んでいる(メンバーズメディカルマーケティングカンパニー「ヘルスケア市場最新トレンド5選」2025年10月)。この変化に対応したブランド設計が、中長期の競争優位を左右する。

医療用医薬品とOTC医薬品:広告規制と取れる施策の違い

まずブランドマーケティングの土台として、自社が扱う商材が「医療用医薬品」か「OTC医薬品・ヘルスケア商材」かによって、取れる打ち手が大きく異なることを理解しておく必要がある。

比較項目

医療用医薬品(処方薬)

OTC医薬品・栄養補助食品・ウェルネス商材

主な対象

医師・薬剤師(BtoB)

一般生活者(BtoC)

生活者向け製品名広告

原則禁止(行政指導ベース)

可能(薬機法・食品表示法の範囲内)

疾患啓発活動

疾患名+受診促進のみ可

製品名も含めた啓発が可能

主要施策

MR訪問・学術展示・オウンドメディア(医師向け)・ウェビナー

TV-CM・SNS広告・体験型施策・コンテンツMKT・ゲーム連携

テレビCM

疾患啓発型・企業広告のみ

製品CMが可能(ただし効能表現に規制)

SNS・デジタル広告

医師向けプラットフォームに限定

一般SNS広告が使用可能

体験型マーケティング

学術イベント・患者教育の範囲

商品体験・イベント連携・ゲーム空間活用が可能

インフルエンサー活用

薬剤師・医師資格者のみ推奨

一般インフルエンサー活用が可能

広告規制の根拠法

薬機法第66条・行政指導

薬機法・食品表示法・景品表示法

違反時のリスク

課徴金(対価合計額の4.5%)・業務停止

同左 + 行政指導・是正命令

(出典:厚生労働省「医薬品等の広告規制について」、JFSMI「OTC医薬品等の適正広告ガイドライン2019年版」、確認日:2026-04-13)

この表からわかるように、OTC医薬品・栄養補助食品・ウェルネスブランドは、消費財ブランドに近い幅広いマーケティング施策が活用できる。一方で薬機法の適用を受ける以上、「効能効果の誇大表現」「承認内容を超えた訴求」は厳禁だ。特に体験型施策・インフルエンサー活用・コンテンツマーケティングにおいては、制作時点から法務確認のフローを組み込むことが実務上の必須条件となっている。

主要マーケティング施策の選択肢と特徴

医薬品・ヘルスケアブランドが選べる主要施策を、目的・対象層・コスト・規制対応の観点で整理する。

施策

主な目的

適した対象層

費用感

規制リスク

向いている商材

テレビCM

認知形成・リブランド

40代以上・ファミリー層

高(制作+媒体費)

中(効能表現に注意)

OTC薬・サプリ・機能性食品

SNS広告(Meta/X/TikTok)

認知・エンゲージメント

20〜40代

中(インフルエンサー発信は特に注意)

OTC薬・ウェルネス全般

コンテンツマーケティング(SEO)

信頼構築・検索流入

情報収集中の生活者

中〜低(初期投資)

中(E-E-A-T・監修体制が必要)

疾患啓発・予防ケア全般

オウンドメディア(医師向け)

医師への情報提供

医療従事者

低(専門家限定チャネル)

医療用医薬品

ウェビナー・Web会議

医師・薬剤師への詳細訴求

医療従事者

低〜中

医療用医薬品・OTC両方

体験型イベント

ブランド体験・信頼形成

生活者全般・医療従事者

低〜中(内容次第)

OTC薬・ウェルネス・疾患啓発

eスポーツ・ゲーム連携

若年層認知・好感度設計

10〜30代・Z世代

低(製品名訴求でなければ)

OTC薬・ウェルネス・スポーツ栄養

疾患啓発DTC活動

潜在患者の顕在化・受診促進

該当疾患の可能性がある生活者

中〜高

低(製品名を出さない形)

医療用医薬品・OTC両方

D2C・LINEマーケティング

LTV向上・継続率改善

既存購入者

低〜中

継続利用型OTC薬・サプリ

PHR(パーソナルヘルスレコード)連携

生活習慣改善促進

健康意識の高い層

高(システム連携)

低〜中(個人情報取り扱い注意)

予防・ウェルネス全般

(出典:各施策の規制情報は厚生労働省・JFSMI公式情報に基づく。費用感は一般的な相場を参考値として記載)

施策の選択で重要なのは「何を達成したいか」と「どの法規制が適用されるか」の2軸だ。短期的な売上よりも中長期のブランド資産(信頼度・好感度・想起率)を目的に設計する施策は、規制環境下でも取り組みやすいものが多い。

業界の成功事例から見る「信頼構築」の設計

医療従事者と患者の信頼関係構築を示す医療現場のイメージ

ロート製薬:eスポーツ参入による若年層ブランド認知(2019年〜)

ロート製薬は2019年から、目薬ブランド「ロートジー」の若年層認知獲得を目的にeスポーツへ参入。格闘ゲームのトッププレイヤーであるときど選手・GO1選手とのスポンサー契約により、国内外の大会でブランドロゴを継続的に露出した。

施策の特徴は「ROI・KPIの短期最大化」ではなく「新しいことにチャレンジする会社」としてのブランドイメージ構築を目的においた点だ。スマートフォン普及により目の疲れが増す若い世代に対して、目薬ブランドとしての接点を自然な形で設計した先進的な事例として評価されている(出典:日経クロストレンド「ロート製薬はときど選手と契約 eスポーツ参入は当然」確認日:2026-04-13)。

さらにロート製薬は男性向けスキンケアブランド「OXY」もeスポーツに関連付けることで、複数ブランドの若年層認知設計をeスポーツという単一チャネルで同時に実現した。

大塚製薬「ポカリスエット」リブランド戦略

大塚製薬はポカリスエットの若年層への接点強化を目的に、中高生をターゲットとした施策を展開。テレビCMと「#ポカ動」「ポカリスエットガチダンス選手権」などのデジタル・SNS施策を組み合わせ、ブランドへのエンゲージメントを高めることで売上拡大に成功した。

「走りながら考えられる柔軟さ」が成功要因として評価されており、施策の継続的な修正・最適化を実行できる組織体制の重要性を示している(出典:MarkeZine「ポカリ若返り戦略成功の裏には」確認日:2026-04-13)。

バイエル薬品:体験型ゲームによる疾患啓発(2024年)

バイエル薬品は床一面の特大ボードゲームを使って糖尿病の知識を楽しみながら学ぶ体験型イベントを展開した。医薬品・疾患の情報を「押しつける」のではなく「遊びの中で体験する」設計は、患者教育・疾患啓発の新しいアプローチとして業界内で注目された(出典:Medinew 2025年トレンド記事、確認日:2026-04-13)。

この事例は、薬機法の制約がある医療用医薬品のマーケティングでも、「製品名を前面に出さない体験型アプローチ」であれば疾患啓発・ブランド好感度向上の施策が設計できることを示している。

ジョンソン・エンド・ジョンソン「ハートアートプロジェクト」

統合失調症患者のアート作品を募集・展示するハートアートプロジェクトは、疾患を持つ人への社会的理解を深める取り組みとして展開された。製品訴求ではなく「企業の社会的姿勢」を芸術を通して表現するアプローチは、特に医療用医薬品のように直接広告ができない領域での信頼構築施策として参照されている(出典:Medinew 2025年トレンド記事、確認日:2026-04-13)。

ロート製薬:LINE活用D2Cで発毛剤のLTV最大化

第1類医薬品である発毛剤のような「継続使用難度の高い商材」でのLINEマーケティング活用事例として、ロート製薬の取り組みが注目されている。LINE公式アカウントを中心としたD2C戦略を展開した結果、LTV 2倍・CPA半減・LINE経由の購入率約90%という成果を達成したとされている(出典:DM ZERO社事例記事、確認日:2026-04-13)。処方なしに購入できるOTC医薬品において「継続購入を促すコミュニケーション設計」の有効性を示す事例だ。

若年層・潜在生活者への接点設計:新しいアプローチの可能性

スマートフォンでヘルスケアアプリを使用する若年層のデジタル接点イメージ

ヘルスケアブランドの多くが「現在の患者・ユーザー向けコミュニケーション」に注力する一方、「将来の生活者・潜在患者層へのブランド体験設計」という視点は比較的手つかずの領域だ。

Z世代のゲーム接触率と新しい生活者接点

Z世代の約8割がゲームを経験しており、1週間の平均プレイ時間は約7時間にのぼるとされている(INTAGE調査、出典:SORENA記事、確認日:2026-04-13)。テレビCMやSNS広告では接触が難しくなりつつある若年層に対して、ゲームプラットフォームは有効な接触機会を提供している。

ロート製薬のeスポーツ参入はその先駆けだが、より幅広い施策としてゲーム空間内でのブランド露出(ゲーム内広告)は、「嫌われない広告」としての特性が評価されている。プレイ体験を阻害しないゲーム内サイネージ広告は、好感度が高い接触を設計できる手法として、特にOTC薬・スポーツ栄養・ウェルネスブランドとの親和性が高い。

ゲーム内広告(インゲーム広告)の特性や費用感についてはゲーム内広告とは|種類・仕組み・活用法を解説で詳しく解説している。

疾患啓発×インタラクティブ体験の可能性

バイエルのボードゲーム疾患啓発は、医療用医薬品のマーケティングにおける「体験型アプローチ」の一例だ。これをデジタルゲーム空間に発展させると、「企業名・疾患名・生活習慣改善の訴求をゲーム体験と組み合わせる」形での疾患啓発が可能になる。薬機法が禁止するのは「虚偽・誇大広告」であり、正確な情報提供を伴う疾患啓発・生活習慣改善の啓発活動は規制の外にある。

2023年にはゲーマー向けサプリメント「ウルトラサプリ」(メディカルONE社)がクラウドファンディングで目標額の465%を達成し、ヘルスケア×ゲーム文化の融合という新しい市場の存在を示した(出典:eSports World記事、確認日:2026-04-13)。ヘルスケアブランドとゲーム文化の接点は、ニッチ領域から徐々に市場として形成されつつある。

ブランドマーケティングの評価指標(KPI)の設計

ブランドマーケティングのKPI・評価指標をモニタリングするダッシュボードイメージ

医薬品・ヘルスケアブランドのマーケティングKPIは「短期売上」と「中長期のブランド資産」を分けて設計することが重要だ。

短期指標(施策の実績を測る)

指標

説明

主な用途

認知率(aided/unaided)

商品・ブランド名の認知度調査

新商品・リブランドの効果測定

広告想起率

施策実施後に広告を覚えているか

キャンペーン効果測定

購入率・処方数

直接的な成果指標

OTC薬・医療用医薬品

CPM / CPA

コスト効率

デジタル広告の最適化

SNSエンゲージメント

いいね・シェア・コメント

SNS施策の効果測定

中長期指標(ブランド資産を測る)

指標

説明

重要なタイミング

第一想起率

該当カテゴリで最初に思い浮かべるブランドか

年1〜2回の定期調査

好感度

ブランドへの感情的評価

新施策投入前後

信頼度

「信頼できるブランド」として認識されているか

ヘルスケア固有の重要指標

NPS(Net Promoter Score)

他者への推奨意向

LTV・口コミ設計の参考

Share of Voice(SoV)

競合対比での広告接触シェア

医療用医薬品の処方推進指標

ヘルスケアブランドにおいて特に重視すべきなのは「信頼度」と「好感度」だ。医薬品・健康に関わる商材への生活者の警戒感は他業界よりも高く、「押しつけがましい」「不安を煽る」広告表現への抵抗感が強い。接触した生活者が「好ましい」と感じる体験設計こそが、中長期のブランドロイヤルティ向上につながる。

ブランドロイヤルティの向上施策についてはブランドロイヤルティを高める施策と評価指標(※公開予定)も参考にされたい。

こんな企業・ブランドに向いている施策の選び方

テレビCM・マス広告が向いているケース

  • ターゲット層に40〜60代が含まれる(認知率の底上げ効果が大きい)
  • 一定の予算規模(制作費+媒体費で数千万円〜)が確保できる
  • 既存の認知基盤があり「リブランド・再活性化」が目的

向かないケース:20〜30代へのリーチが主目的 / 予算が限られる中小ブランド / 製品の効能を前面に出す必要がある医療用医薬品

SNS・デジタル広告が向いているケース

  • 20〜40代の日常生活に溶け込む「軽い接触」を繰り返したい
  • インフルエンサーによる自然な使用シーン訴求が効果的な商材(スキンケア・サプリ等)
  • D2C・オンライン購買につなげたい

向かないケース:薬機法の効能・効果訴求が必要なケース(インフルエンサー投稿での表現管理が難しい)/ 医師・薬剤師へのBtoB訴求

体験型施策・eスポーツ連携が向いているケース

  • 10〜30代の若年層へのブランド認知・好感度形成が主目的
  • テレビCMやSNS広告でリーチが難しい「ゲームユーザー層」を取りにいきたい
  • 製品の機能訴求より「ブランドの世界観・姿勢」を伝えることを重視
  • eスポーツ・ゲーム文化との親和性が高い商材(目薬・スポーツドリンク・エネルギーサプリ等)

向かないケース:医療用医薬品の製品名訴求 / 高齢者層へのリーチが主要目的 / 短期売上最大化が最優先

コンテンツマーケティング・SEOが向いているケース

  • 疾患や健康課題について検索する「情報収集中の生活者」を取りたい
  • 信頼度・専門性の高さを基盤にしたブランディングを長期で行いたい
  • 医師・薬剤師監修コンテンツを軸に置けるリソースがある

向かないケース:即効性が求められる施策 / E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を担保する監修体制が整っていない

D2C・LINEマーケティングが向いているケース

  • 継続使用型のOTC医薬品・サプリメント・健康食品(発毛剤・整腸薬・プロテイン等)
  • 購入後の離脱防止・リピート率向上が課題
  • 既存ユーザーとの継続的な関係性構築を重視

向かないケース:購買頻度が低い商材 / 処方薬中心でD2C設計が難しい領域

ヘルスケアブランドにとってのゲーム内広告の位置づけ

ロート製薬がeスポーツ参入を通じて実証したように、ゲームプラットフォームはOTC医薬品・ウェルネスブランドにとって若年層への有効な接点の一つだ。eスポーツスポンサーシップとは異なる形で、より広く・継続的に若年層への接触を設計できる手法としてゲーム内広告(インゲーム広告)がある。

ゲーム空間内の看板・モニターに動画広告を配信するゲーム内サイネージ広告は、プレイ体験を強制的に中断しないため、好感度が高く・ブランドへの悪感情が生まれにくい接触が設計できる。国内のゲーム内広告市場は拡大傾向にあり(日本モバイルゲーム広告市場:2025年約4,400億円、確認日:2026-04-13)、特に若年層へのリーチ手段として注目度が増している。

ゲーム内広告の費用感・期待できる指標についてはゲーム内広告・メタバース広告の費用・料金相場で詳しく解説している。

Ad-Virtuaとの接続が有効なヘルスケアブランドの条件

  • OTC医薬品・栄養補助食品・機能性表示食品・ウェルネスブランドを展開している
  • テレビCM・SNS広告に加えて「これまで接触できていなかった若年層」への認知拡大を目指している
  • 10代〜30代・ゲームユーザー層のブランド好感度・想起率向上が課題
  • 製品名・ブランド名での認知設計を行いたい(疾患名訴求ではなく)
  • 「嫌われない広告」「生活者に受け入れられやすい接触体験」という媒体価値を重視する

一方、医療用医薬品の製品名訴求・処方数の直接的な増加を目的とする場合は、ゲーム内広告との接続は適切でない。

よくある疑問(FAQ)

Q. 医療用医薬品のマーケティング担当者ですが、この記事の施策は使えますか?

A. 医療用医薬品の場合、生活者向けの製品名広告が原則禁止されているため、テレビCM・SNS広告・ゲーム内広告などのBtoC施策はほとんど活用できません。一方で、疾患啓発(疾患名+受診促進の形)、医師・薬剤師向けオウンドメディア・ウェビナー、企業のブランドイメージ広告は有効な手法です。OTC薬や栄養補助食品も扱っている企業であれば、それらの商材向けの施策設計から始めることをおすすめします。

Q. 薬機法に抵触しない形でインフルエンサーを活用できますか?

A. 可能ですが、注意点が多くあります。薬機法第66条は「何人も」を規制対象としているため、インフルエンサー(投稿者)本人が法令違反を犯した場合でも、依頼した企業側も責任を問われることがあります。インフルエンサー起用時は、事前に表現審査の仕組みを設け、薬機法上許可される表現の範囲を明確に指定することが不可欠です。

Q. ヘルスケアブランドのコンテンツマーケティングで医師監修は必須ですか?

A. 法律上の義務ではありませんが、GoogleはYMYL(Your Money or Your Life)領域として医薬品・医療コンテンツを高い基準で評価します。E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を担保するために、医師・薬剤師による監修体制は検索上位表示に向けての実質的な必要条件と考えてよいでしょう。

Q. MRが減少する中、医師への情報提供はどう設計すべきですか?

A. 対面MR訪問とデジタルチャネルを組み合わせた「オムニチャネルMR」モデルへの移行が業界全体の方向性です。医師向けオウンドメディア・ウェビナー・学術展示会・製品情報提供ポータルの整備が基本になります。生成AIを活用した営業資材作成の効率化も2025〜2026年に本格普及しており、限られたMRリソースの最大化に貢献するとされています(Medinew「2026年の変化を先読みする」確認日:2026-04-13)。

Q. ゲーム内広告はOTC医薬品に適していますか?

A. 製品名・ブランド名での認知設計を目的とするOTC医薬品・栄養補助食品・ウェルネスブランドとの親和性は高いと考えられます。特に10〜30代のゲームユーザー層へのリーチを主目的とするキャンペーンや、テレビCMの補完手段として若年層のブランド接触頻度を高めたい場合に有効です。ただし、ゲーム内サイネージは「製品名+ブランドビジュアル」の認知形成が主たる機能であり、医薬品の効能・効果の詳細訴求には向きません。

まとめ:ヘルスケアブランドマーケティングの設計原則

医薬品・ヘルスケアブランドのマーケティングを設計する際の原則を最後に整理する。

  1. 医療用医薬品とOTC医薬品を分けて考える:適用される規制と取れる打ち手が根本的に異なる
  2. 短期売上指標と中長期ブランド資産指標を別々に設計する:好感度・信頼度・想起率の追跡が中長期の競争力を支える
  3. 「嫌われない接触」を設計する:押しつけがましい広告への抵抗感が特に強い業界であることを踏まえた体験設計が必要
  4. 若年層・潜在生活者への接点を意識する:現在の患者向けコミュニケーションだけでなく、将来の生活者へのブランド体験設計が中長期の指名需要を生む
  5. 法務確認のフローをプロセスに組み込む:薬機法・景品表示法・食品表示法の適用範囲は施策・商材ごとに異なる。制作後の修正コストを避けるため、企画段階からの確認体制が不可欠

ブランドマーケティングにおける「体験型施策」「顧客接点の設計」という観点については、ブランド体験とは|設計の考え方と効果的な施策(※公開予定)でも詳しく解説している。

関連記事: