結論

ゲーム内音声広告プラットフォームのOdeeo(オデオ)は2026年3月11日、Amazon Ads のDSP(デマンドサイドプラットフォーム)を通じて自社のゲーム内音声広告インベントリを購入できるようになったと発表した。Amazon DSPを使っている広告主・代理店は、Odeeoとの個別契約や技術統合を新たに行わなくても、使い慣れた運用画面のままゲーム内音声広告にリーチできる。日本の広告主にとっては、「ゲーム内広告を大手DSP経由でプログラマティックに買い付ける」という運用フローが海外で先行している一例として押さえておく価値がある。

発表の内容

Odeeoは公式ブログ(blog.odeeo.io)にて、自社のモバイルゲーム内音声広告インベントリがAmazon DSP経由で購入可能になったと発表した。Amazon Ads側との連名プレスリリースは確認できておらず、発表はOdeeo単独による(出典)。

  • 提携形態: Odeeoのサプライサイド在庫を、Amazon DSPのデマンド経由で購入可能にする統合。広告主側の追加統合作業は不要
  • 提供開始時期: 2026年3月11日発表、発表と同時に利用可能と記載。段階的ロールアウトの詳細は非公表
  • 金額規模・レベニューシェア等の取引条件: 非公表
OdeeoとAmazon Adsの提携を伝える公式発表記事のヘッダー画像
出典: Odeeo(

Odeeo公式ブログでは、この統合の意義について次のように説明している(発言者の個人名・役職は本文に明記されておらず未確認)。

"For Amazon DSP advertisers, this removes a barrier to in-app advertising at scale. Instead of managing separate demand relationships, buyers can now reach Odeeo's in-app audiences through the same Amazon DSP workflows they are used to using, with the same audience targeting, measurement, and reporting infrastructure applied across their other media types."

意訳すると「Amazon DSPの広告主にとって、これはアプリ内広告をスケールさせる際の障壁を取り除くものだ。個別のデマンド関係を管理する代わりに、バイヤーは使い慣れたAmazon DSPの運用フローを通じて、他のメディアタイプと同じオーディエンスターゲティング・計測・レポーティング基盤のままOdeeoのアプリ内オーディエンスにリーチできるようになる」という趣旨である。

Odeeoとはどんな会社か

ゲーム内音声広告プラットフォームOdeeoの公式ロゴ
出典: Odeeo(

Odeeoはイスラエル・ヘルツリヤ(Herzliya)に本社を置く、モバイルゲーム内広告のうち音声広告に特化した配信プラットフォームである。日本国内での事業展開は確認できず、現時点では海外市場向けのサービスと位置づけられる。

  • 設立年: 資料によって「2020年」「2021年」の表記が割れており、公式サイトに明確な記載は確認できなかった。ここでは未確認として扱う
  • 本社所在地: イスラエル・ヘルツリヤ
  • 創業者: Amit Monheit氏(CEO)、Elad Stern氏(Chief Product Officer)。両者とも創業前はモバイル収益化プラットフォームのIronSourceに在籍していた
  • 従業員規模: 公式発表の数値は確認できず。非公式データベース(LeadIQ等)では「30〜50名程度、4大陸に分散」との記載があるが、あくまで参考値

プロダクトと配信の仕組み

Odeeoが提供するのは、モバイルゲームのプレイ中に短い音声広告を再生し、画面上に小さなクリック可能なコンパニオンバナーを併設するフォーマットである。画面全体を覆うインタースティシャル広告のようにゲームプレイを中断させない、非侵襲型の広告体験を特徴とする。広告ユニットはアイコン型・バナー型・リワード型の3種類が公式サイト(advertisersページ)で紹介されている。

Odeeoのバナー型ゲーム内音声広告ユニットのプロダクトイメージ
出典: Odeeo(
Odeeoのアイコン型ゲーム内音声広告ユニットのプロダクトイメージ
出典: Odeeo(

インベントリ規模と対応プラットフォーム

Amazon DSP発表記事で示された最新の実配信規模は、プレミアムアプリパブリッシャーとの直接SDK統合を通じた「月間アクティブユーザー3億人以上(300M+)」である。公式サイトのグローバル向けページには「30億人のモバイルゲーマーへのリーチ可能性」という表現もあるが、これは市場全体の潜在リーチを指すマーケティング的な数値であり、Odeeo自体の実配信規模とは区別する必要がある。

対応タイトル数のグローバル最新値は今回の発表内では非開示。2023年時点の報道ベースでは「400タイトル以上」との記載があるが、2026年時点の公式最新値は未確認である。

計測パートナーと主要提携先

  • 計測・認証パートナー: Oracle MOAT(ビューアビリティ等の第三者認証)、TAG(Trustworthy Accountability Group)、IAB UK加盟
  • 主要パートナー: DAX(Global傘下のデジタルオーディオ広告プラットフォーム)、Xandr(Monetize SSP経由の配信)、NumberEight(オーディエンスターゲティング技術)、Magnite、Azerion 等

ここまでの歩み

Odeeoはこれまで3回の資金調達を公表しており、いずれも非上場スタートアップとしての調達である。公式ニュースルームおよび業界メディア(PocketGamer.biz、Calcalistech等)で裏取りできた範囲は以下の通り。

時期

ラウンド

調達額

リード投資家

主要参加投資家

そのとき何をしようとしていたか

2021年9月

シード(初回)

100万ドル

Play Ventures

Eric Seufert(Memo Syndicate)、Michail Katkoff(Savage Game Studios)

ゲームプレイを妨げない形でパーソナライズされた音声広告を配信するプラットフォームを立ち上げる

2022年6月

シード拡張

900万ドル

Play Ventures、Global(欧州最大のラジオ会社)

Eric Seufert(Heracles Capital)、Anton Gauffin(Huuuge Games創業者)、Christian Calderon(GameJam創業者)、Lior Shiff(TripleDot Studios創業者)

ゲーム特化の新しいデジタル音声広告カテゴリーの構築を主導する立場を確立し、より多くのブランド・開発者を結びつける

2024年9月

追加ラウンド

500万ドル

Atinum Investment(韓国)

Play Ventures、Anton Gauffin(既存投資家)

北米・アジア(韓国・ベトナム)・中東北アフリカでの事業拡大。ニューヨークに初の米国オフィスを開設

日本企業の投資家参加は確認できなかった。一方で2024年ラウンドでは韓国のAtinum Investmentがリードしており、韓国系資本によるグローバルアドテック投資の一例として記録に値する。累計調達額について公式に明記された数値は確認できていない。非公式データベース(Tracxn等)では「3ラウンド・9投資家から累計1,500万ドル」との記載があるが、一次情報での裏取りはできておらず参考値にとどまる。

資金調達後の事業展開を時系列で並べると、次のような流れになる。

  • 2021年: Monheit氏・Stern氏(元IronSource)がOdeeoを創業。ゲーム内音声広告に特化したプラットフォームとして立ち上げ
  • 2021年9月: シード資金100万ドルを調達(Play Ventures主導)
  • 2022年6月: シード拡張ラウンドで900万ドルを追加調達。欧州最大のラジオ会社Globalが参画し、デジタルオーディオ広告業界大手との連携が始まる
  • 2022年(報道ベース): 前年比300%の収益成長・300%のアクティブユーザー成長、10億件の広告インプレッション創出、1,000本以上の広告配信を発表(ExchangeWire等の2023年報道)
  • 2024年9月: 500万ドルの追加調達(Atinum Investment主導)。米国・アジア・中東北アフリカへの地理的拡大を明言し、ニューヨークオフィスを開設
  • 2025年前後: Oracle MOAT・TAG・IAB UK等の第三者認証・業界団体との連携を確立し、ブランドセーフティと計測面の信頼性を強化
  • 2025年11月: McDonald's × Admerasiaの事例を公式ケーススタディとして公開
  • 2026年3月11日(今回): Amazon DSPとの統合を発表。プログラマティック(運用型)購入の主要チャネルへの接続を実現
  • 2026年6月23日: フランスのメディアレップLagardère Publicitéとの提携を発表。フランス国内での音声広告配信網を拡大(この提携でのフランス限定の数値「月間300万人以上・対応2,500タイトル」は、今回のグローバル規模「3億人以上」とは別の指標であり混同しないよう注意)

Odeeoはこれまで直接のSDK統合・直接セールスを中心に事業を拡大してきたが、2026年に入り「既存の大手DSP経由でのプログラマティック買い付け対応」(Amazon DSP、3月)と「大手メディアレップとの提携によるオーディオエコシステムへの統合」(Lagardère Publicité、6月)という2つの異なるチャネル拡張を並行して進めている。前者は広告主側の導入障壁を下げる動き、後者は既存の音声広告インベントリ(ラジオ・ポッドキャスト等)とゲーム内音声広告を横断で束ねる動きであり、単独のニッチSSPから、既存の音声広告バイイングフローに溶け込む方向へ戦略をシフトしていることがうかがえる。

広告出稿事例

Odeeo公式サイトのケーススタディページ(odeeo.io/case-studies)および個別ケーススタディ記事で公表されている事例のうち、効果指標が明示されているものを紹介する。

McDonald's(米国)

代理店Admerasiaと共同で、「McValue」メッセージを通じてアジア系アメリカ人(ACM)オーディエンスにリーチする施策をOdeeoのアプリ内音声広告で実施した。効果測定はClaritasが独立して30日間のルックバックで実施している。

  • 注文数: +15%(インクリメンタル)
  • アプリインストール: +50%
  • ユーザー登録: +50%

出典: Odeeo公式ブログ(2025年11月4日掲載)、GamesBeatによる報道

OdeeoとMcDonald'sのゲーム内音声広告キャンペーン事例を示す公式画像
出典: Odeeo(

Hyundai Ioniq 6(現代自動車)

Havas Media・Innocean と共同で、EV車「Ioniq 6」の認知向上と試乗予約獲得を目的にアプリ内音声広告を実施した。この事例は複数の海外業界メディアで言及されているが、Odeeo公式ケーススタディページ内の個別ページの有無は確認できていないため、報道ベースの情報として扱う。

  • 音声広告からの試乗コンバージョン率: 1.3%
  • バナーのクリック率(CTR): 6.3%
  • リード獲得数: 8,000件超

大手ファストフードブランド(社名非公表)

季節限定商品の認知拡大を目的としたキャンペーン。社名は非公表のため単独記事としての裏付けは弱いが、参考値として紹介する。

  • ストリーミング音声広告のCPMより50%低いCPMを実現
  • バナーCTRが業界平均の15倍

このほか、Costa Coffee、英国労働年金省(Department for Work and Pensions)、Red Bull、EE等の事例名もOdeeo公式サイトに掲載されているが、個別の効果指標は非公開または未確認である。

なぜこの動きが起きたのか

プログラマティック広告のデータダッシュボードのイメージ
Photo by Stephen Dawson on Unsplash

Amazon DSPは、Amazon自社のショッピングデータを活用したオーディエンスターゲティングを、ディスプレイ・動画・音声など複数のメディアタイプを横断して同じ運用画面から購入できる点を強みとするDSPである。Odeeo側の発表コメントが示す通り、広告主にとっての障壁は「ゲーム内音声広告を買うために、Odeeo専用の個別契約・SDK連携・別ダッシュボードでの運用を新たに覚える必要がある」という導入コストにあった。

これをAmazon DSPの既存ワークフローに接続することで、Odeeoは新しいインベントリタイプを学習させることなく、既存の大口広告主の予算をそのまま呼び込める。Odeeoにとっては、直接セールス・直接SDK統合という従来型の営業モデルに加えて、プログラマティック経由の需要チャネルを確保する動きであり、前述の「ここまでの歩み」で見たフランスのLagardère Publicité提携(既存音声エコシステムへの統合)と合わせて、ゲーム内音声広告というニッチカテゴリーを既存の音声広告市場・DSP市場に接続していく戦略の一環と考えられる。

日本市場ではどうか

日本国内でも構造的に類似した動きがすでに起きている。音声広告事業者のオトナル(株式会社オトナル)は2025年7月30日、ゲーム内音声広告サービス「GainAds」の広告枠をプログラマティック(運用型)広告として開放し、DSP経由での買い付けに対応したと発表した(PR TIMES、2025年7月30日)。

  • リーチ規模: 月間3億3千万人以上の国内外のゲームプレイヤーにリーチ可能(オトナル公式発表)
  • 対応タイトル数: 大手ゲームパブリッシャーが開発・運営する500本以上のゲーム
  • 対応DSP: Google合同会社の「ディスプレイ&ビデオ 360(DV360)」、The Trade Desk。「その他、今後順次追加予定」と記載されており、2025年7月の発表時点でAmazon DSPとの接続は明記されていない(その後の対応状況は未確認)

「ゲーム内音声広告を大手DSP経由でプログラマティックに買い付ける」という運用フローは、海外(Odeeo×Amazon DSP)だけでなく日本国内(オトナル×DV360/The Trade Desk)でもすでに実現しつつある。ただしAmazon DSPという特定チャネルへの対応可否は、日本国内では確認できていない。

なお、ゲーム内広告とはで整理している通り、「ゲーム内広告」には音声広告のほかにも複数のフォーマットが存在する。OdeeoやオトナルのGainAdsが扱うのはゲームプレイ中に再生される音声広告とコンパニオンバナーが中心であり、聴覚を主な訴求経路とする。一方でAd-Virtuaが提供するのはゲーム空間内の看板・モニターに動画を表示するサイネージ広告であり、視覚訴求が中心となる。「ゲーム体験を中断させない非侵襲型の広告」という思想は共通するが、フォーマットが異なる点は検討時に区別しておく必要がある。ゲーム内広告のリワード広告のように、同じゲーム内広告と呼ばれる施策でもユーザーの視聴の仕方が大きく異なる点も参考になる。

日本で同じ広告を実施する選択肢

海外では、ゲーム内広告在庫を広告主が使い慣れた大手DSPの運用フローのまま買い付けられるプログラマティック接続が音声広告から先行して進んでいる。日本国内でも、オトナルのGainAdsがDV360・The Trade Desk経由でのプログラマティック買い付けに対応しており、Amazon DSPのような外部DSP経由での運用を軸にしたいナショナルクライアントであれば、この流れを踏まえた出稿設計を検討できる。

一方、Ad-Virtuaが提供するのはゲーム空間内の看板・モニターに表示する動画のサイネージ広告であり、直販・アドネットワーク形態での提供が中心となる。したがって、

  • 既存のDSP運用フローの中で音声広告を追加したい企業は、オトナルGainAdsのようなプログラマティック対応の音声広告在庫が選択肢になる
  • 動画クリエイティブを活用した視覚的な認知施策を、直販型で確実に実施したい企業は、Ad-Virtuaのようなサイネージ広告が選択肢になる

どちらが適しているかは、社内の広告運用体制がDSP経由の運用を前提にしているか、それとも媒体社との直接調整を許容できるかによって変わる。

広告主が取るべき判断

  • 今動くべき企業: 既にAmazon DSPやDV360等の大手DSPを日常的に運用しており、複数メディアタイプへの予算配分を一元管理したいナショナルクライアント。特に若年層向けの新しい接点を模索している食品・飲料・自動車メーカーは、McDonald'sやHyundaiの事例が示す効果指標(インストール数・試乗コンバージョン等)をベンチマークに、テスト出稿を検討する価値がある
  • 様子見でよい企業: DSP経由の運用体制をまだ持たず、代理店の直接提案ベースで広告出稿している企業。この場合はプログラマティック対応そのものよりも、まずゲーム内広告というフォーマット自体の効果検証(想起率・CPM等)を優先した方が実務上の意思決定がしやすい

関連する基礎知識への導線

FAQ

Q. Odeeoは日本国内でもサービスを提供しているか。
A. 現時点で確認できる公式情報の中に、日本語対応や日本市場向け展開に関する言及はない。今回のAmazon DSP統合の対象地域についても、公式発表内に具体的な記載がなく確認できていない。

Q. Amazon DSPとの統合はAmazon Ads側からも発表されているか。
A. 確認できた範囲では、発表はOdeeo公式ブログのみで、Amazon Ads側の公式ニュースルームでの連名発表は確認できていない。

Q. 今回の統合で広告主が支払う費用体系は変わるのか。
A. 取引条件・レベニューシェア等の金銭的な詳細は非公表であり、公式発表からは確認できない。Amazon DSPの通常の入札・課金の仕組みの中でOdeeoの在庫が扱われるものと考えられるが、詳細は個別に確認が必要である。

Q. ゲーム内音声広告とゲーム内サイネージ広告はどちらが効果的か。
A. 公表されている効果指標の種類が異なるため単純比較はできない。音声広告はインストール数・コンバージョン率などアクション指標での事例が多く、サイネージ広告は想起率・注目度などブランドリフト指標での実績が中心となる。自社の広告目的がアクション獲得かブランド認知かによって、適した施策は変わる。