音楽フェス協賛・アーティストタイアップ・ゲーム内広告など、エンタメ接点でのブランド体験施策は「どの手段が自社に合うか」の判断材料が少ない領域だ。この記事では、音楽・エンタメ業界での主要5施策を費用・リーチ・体験の深さで比較し、ライブイベント前後のBefore/During/After統合設計から各施策の向き不向きまで、マーケティング担当者の意思決定に必要な情報を一つにまとめている。
この記事で解説する内容:
- 音楽・エンタメ業界でのブランド体験設計が必要とされる背景
- 施策の種類と特徴(音楽フェス協賛・アーティストタイアップ・バーチャルライブ・ゲーム内広告など)
- 各施策の費用感・リーチ・体験の深さを整理した比較表
- ライブイベント前後(Before/During/After)の統合設計
- KPI・評価指標の考え方
- こんな企業に向いている施策・向かない施策
音楽・エンタメ業界でのブランド体験施策を検討しているマーケティング担当者・ブランドマネージャーを対象に書いています。
音楽・エンタメ業界でのブランド体験設計が求められる背景

ライブ・エンタメ市場は過去最高を更新し続けている
現時点での国内ライブ・エンタメ市場は、企業がブランド体験を展開するのに最適な規模に達している。
ぴあ株式会社の調査(2025年6月発表)によれば、2024年の日本ライブ・エンタメ市場規模は7,605億円(前年比10.9%増)と過去最高を更新した。内訳は音楽分野5,299億円、ステージ分野2,306億円。コンサートプロモーターズ協会(ACPC)の調査では、2024年の総動員数は約5,938万人(前年比105.4%)、総売上額は6,121億円(前年比119.1%)に上る。
これほどの規模の生活者が、ある感情的高揚状態のもとで一堂に会する場はほかにない。この「高感度な状態での接触」がブランド体験設計の起点になる。
Z世代はTVCMより「エンタメ体験の中」でブランドを知る
Z世代・若年層は、テレビを見ないだけでなく、SNS広告すら積極的にスキップする行動をとる。博報堂WEBマガジン(センタードット)の調査では、Z世代にとってゲームは「リアルの友達・ネット上の友達と盛り上がれる共有体験」として機能しており、30〜40代の「個人的な気分転換ツール」とは役割が異なる。エンタメを通じたコミュニティ体験の中にブランドが溶け込むことが、若年層との感情的接点を持つ最も現実的な手段になりつつある。
「可処分精神」をブランドへの愛着に転化させる
MarkeZineが提唱した「タイアップ2.0」の概念では、音楽・エンタメが生み出す熱狂(可処分精神)をブランドへの愛着に転化させることが現代の体験型マーケティングの本質だとされている。単なる広告露出ではなく、「このフェスを体験した記憶の中に、あのブランドがいた」という感情的結びつきを設計することが目的だ。
音楽・エンタメ業界でのブランド体験設計:5つの主要施策

施策1|音楽フェス・ライブイベントへのスポンサード
フジロック・サマーソニック・ライジングサン等の音楽フェスへの協賛は、感度の高いライブ来場者に対してブランドを「ライフスタイルアイテム」として認識させる機会を作る。
フジロック2024年には25社が協賛企業として参加。化粧品ブランドのコゼットジョリ社は「苗場の空」をテーマにしたオリジナルマニキュアを作るワークショップを実施し、参加者に「この体験をした場所でこのブランドに出会った」という記憶を埋め込んだ(出典:Festival Life 2024年)。
海外では、コーチェラ2024年でDoveがウェルネスオアシス体験(コールドプランジ・サウナ・スムージー)を提供し、アメリカン・エキスプレスはグラム・バーを展開した(出典:Digiday Japan、BizBash)。
この施策が向く企業: 感度の高い20〜30代をメインターゲットとするブランド。フェスの「世界観」との親和性がある商材(食品・飲料・コスメ・ライフスタイル)。ただし、スポンサー費用は非公開のケースが多く、大規模協賛となると相応の予算が必要な点に留意が必要。
施策2|アーティスト×ブランドのタイアップ
アーティストの世界観とブランドメッセージを融合させ、ファンのブランドへの感情移動を設計するアプローチ。従来の「楽曲提供」「タイアップ曲」にとどまらず、より深い世界観連動が求められるようになっている。
国内事例として:
- Honda × ONE OK ROCK:アーティストの世界観とブランドメッセージの融合(出典:MarkeZine)
- Origami Pay × サカナクション:決済音をアーティストが手掛けることで、ファンのブランドへの関心を移動させる施策(出典:MarkeZine)
- GU × Spotify × imase(2025年5月):楽曲ジャケットモチーフのTシャツにSpotifyコードを印字した「聴けるTシャツ」を展開。日本・台湾・香港・中国・米国でリリース(出典:Amazon Advertising)
海外では:
- Lexus × Anderson .Paak:ミュージック動画「Celebrate」を共同制作し、ワールドミュージックデー(2024年6月)に合わせてPrime Video等で展開(出典:Amazon Advertising)
Amazon Advertisingの調査では、ストリーミング消費者の78%が「新しくて興味深いコンテンツ」を求めており、音楽×ブランドの文脈でのタイアップはその入口として機能する。
施策3|ゲーム内バーチャルライブ(Fortnite・Roblox等)
大手アーティストが大手ゲームプラットフォームとタッグを組み、ゲーム空間でバーチャルライブを開催するモデル。体験の深さと参加者数の規模が特徴だが、実現には大規模なプロジェクト交渉が必要。
主要な事例:
- Travis Scott × Fortnite「Astronomical」(2020年):最大2,770万人が参加したとされる(KDDI MUGENLABOレポート。別データでは1,230万人/販促会議デジタル版)。9分間のバーチャルライブで推定2,000万ドル以上を稼いだとされる(出典:FRONTROW。二次情報)。イベント中に披露した新曲「The Scotts」はBillboard Hot 100で1位を獲得。
- 米津玄師 × Fortnite(2020年8月):日本人アーティスト初のFortniteバーチャルライブ。コロナ禍でのツアー中断を受け、全世界同時配信で実施(出典:米津玄師公式サイト、Billboard JAPAN)。
- Lil Nas X × Roblox(2020年):3,300万人を動員(出典:KDDI MUGENLABO Magazine)。
- Spotify × Roblox「Spotify Island」(2022年):K-POPアーティストとの連動も展開し、ファンがアーティストと交流できるバーチャル空間を提供。
留意点:2020〜2021年の事例はコロナ禍の特殊状況下での需要増が背景にあり、2026年現在の市場環境と単純比較することは適切でない。また、Fortnite・Roblox等での大規模バーチャルライブは個別交渉案件で、費用・規模の壁は高い。
施策4|ゲーム空間でのブランド露出(デジタルツイン・サイネージ型)
リアルとバーチャルの連動広告や、ゲーム内看板・モニターへの動画広告配信。上記のバーチャルライブ型より導入障壁が低く、継続的な接触設計ができる。
デジタルツイン型の事例:SHIBUYA109 × Fortnite(2024年1月)では、渋谷店シリンダーに掲出された広告をFortniteゲームマップ内のSHIBUYA109シリンダーにも掲出。現実世界とメタバースが連動したデジタルツイン広告(出典:Mogura VR News)。
サイネージ型(Ad-Virtuaの領域):ゲーム空間内の看板・モニターに動画広告を配信するアドネットワーク。プレイ体験を阻害しない「嫌われにくい広告」として機能する。
施策5|SNS・デジタル連動施策
上記のリアル・バーチャル施策を補完するデジタル施策。ライブ後のSNS拡散促進、ハッシュタグキャンペーン、ストリーミングプラットフォームとの連動など。単体では若年層へのリーチが限定的になりやすいが、他施策との組み合わせで効果を最大化する。
施策別比較:費用・リーチ・体験の深さ・継続性

施策 | 費用規模 | リーチ先 | 体験の深さ | 継続性 | 導入難易度 |
|---|---|---|---|---|---|
音楽フェス協賛 | 大(非公開) | ライブ来場者(高感度) | 深い | 年1〜2回 | 高 |
アーティストタイアップ | 中〜大 | ファン層(指名買い層) | 中 | 契約期間内 | 中〜高 |
バーチャルライブ(Fortnite等) | 大(個別交渉) | ゲームユーザー全般 | 深い | 期間限定 | 高 |
デジタルツイン連動広告 | 中(個別) | ゲーム×リアル来場者 | 中 | 期間限定 | 中 |
ゲーム内広告(サイネージ型) | 小〜中(週30万円〜) | ゲームユーザー(日常接触) | 中 | 継続可能 | 低 |
SNS・デジタル連動 | 小〜中 | 広範(ターゲティング次第) | 浅い | 継続可能 | 低 |
※各施策の費用は公開情報での確認範囲。音楽フェス協賛・バーチャルライブの具体的な費用は各プロジェクトによって異なり、非公開が多い。
ライブイベント前後の統合設計:Before / During / After

音楽フェスや大型コンサートへのブランド参画は、ライブ当日だけでなく「前後の期間」を含めたトータル設計が効果を最大化する。
Before(ライブ1〜3か月前):認知醸成フェーズ
ライブ参加が確定しているファン層・チケット未購入の若年層ゲームユーザーに対して、デジタル接点で先行認知を積み上げる。
- ゲーム内広告(サイネージ型):ライブに来ない若年層ゲームユーザーへの認知醸成に有効。日常的にゲームをプレイしている層に、ライブ前の期間から繰り返し接触できる。
- SNS広告・ストリーミング広告:チケット購入層・ファン層へのリマインド接触。
- アーティストSNS・公式チャンネル連動:タイアップ楽曲やコンテンツを通じてブランドへの自然な接触を促進。
During(ライブ当日):体験没入フェーズ
感情的高揚状態にある来場者に対して、ブランドの「ライフスタイル感」を埋め込む。
- スポンサードブース・体験型施策:ワークショップ・フォトスポット・限定グッズ配布など。
- デジタルツイン連動:現実の広告をゲーム空間にも展開することで、接触面積を拡大(SHIBUYA109 × Fortnite型)。
After(ライブ後):ファンエンゲージメント維持フェーズ
ライブの熱量が冷めないうちに、デジタルでの継続接触を設計する。
- SNSリターゲティング:ライブ関連コンテンツを通じてエンゲージした層への追いかけ接触。
- ゲーム内広告(サイネージ型):ライブ後もゲームに戻るユーザーに、ブランドの「ライブを思い出させる接点」として機能。
- アーティストタイアップコンテンツの活用:ライブ後のアーカイブ映像・コンテンツをブランドと連動した形で配信。
KPI・評価指標の整理

音楽・エンタメ×ブランド体験施策は、「来場者数」「再生回数」だけでは効果を測れない。施策の目的に応じて以下の指標を使い分けることが重要。
KPI | 主に測る施策 | 測り方(一般的な方法) |
|---|---|---|
ブランド認知率・想起率 | 全施策共通 | 事前・事後のブランドリフト調査 |
好感度向上率 | フェス協賛・タイアップ | 感情分析・アンケート |
広告接触後の行動変容(購買・来店) | ゲーム内広告・SNS広告 | コンバージョン計測 |
SNS拡散数・UGC生成量 | フェス・タイアップ | ハッシュタグ計測・UGC分析 |
イベント参加者数・エンゲージメント時間 | バーチャルライブ・ゲーム内イベント | プラットフォーム提供のデータ |
広告想起率(Ad Recall) | ゲーム内広告 | 第三者ブランドリフト調査 |
参考値(公式情報):Ad-Virtuaのゲーム内広告(サイネージ型)では、広告想起率約1.8倍・注目度約1.7倍のリフト効果を確認している(Ad-Virtua公式サイト。確認日:2026年4月)。
こんな企業に向いている施策 / こんな企業には向かない施策
音楽フェス協賛に向いている企業
- 20〜30代の感度の高い消費者が主要ターゲット
- ライフスタイルブランドとしての認知向上を狙っている(食品・飲料・コスメ・アパレル・サービス)
- 年1〜2回のフェスシーズンに合わせて予算を集中投下できる
- ブランドの「世界観」がフェスの雰囲気と親和性がある
向かない企業:ターゲットが40代以上の企業、法人向けビジネス(BtoB)、フェスの世界観とミスマッチのある業種(重厚長大産業など)
アーティストタイアップに向いている企業
- 特定のファン層に深く刺さりたいブランド
- アーティストの世界観とブランドメッセージに重なる部分がある
- 短期的な話題形成・SNS拡散を優先したい
- 楽曲・映像コンテンツ制作の予算がある
向かない企業:アーティストの世界観とブランドイメージに乖離がある場合、タイアップ継続性より長期的な認知醸成を優先したい場合
バーチャルライブ(Fortnite・Roblox等)に向いている企業
- ゲームコミュニティへのリーチを大規模に狙える、グローバルブランド
- エンタメ業界(レーベル・アーティスト事務所・プラットフォーム)
- プロジェクト型の大型投資ができる
向かない企業:中堅規模以下の予算帯の企業、単独での交渉・実施が難しいブランド、コロナ禍のような特殊需要が戻りにくい現在では費用対効果の読みが難しい点を認識すべき
ゲーム内広告(サイネージ型)に向いている企業
- 若年層ゲームユーザーへの継続的なブランド認知醸成が目的
- 週30万円〜の予算で施策を試したい中堅〜大手ブランド
- ライブイベント施策の「Before/After」フェーズのデジタル補完として活用したい
- TVCMや大型フェス協賛との連動で認知層を広げたい
向かない企業:即時のコンバージョン(購買・来店)を求める目的でのみ運用したい場合(認知・想起率向上には向くが、短期的なCV目標には相性が異なる)
Ad-Virtuaが音楽・エンタメ業界担当者に合う条件
音楽・エンタメ業界でのブランド体験施策を設計するとき、「ライブ当日だけ」に接触を集中させているケースは多い。しかし、フェス来場者はライブ当日より前後の時間のほうがはるかに長い。その日常の時間の多くをゲームで過ごしている若年層に対して、継続的なブランド接触を設計できる手段がゲーム内広告(サイネージ型)だ。
Ad-Virtuaは以下の条件に合う企業・施策と相性がよい。
- 若年層・ゲームユーザーへのリーチが目的:国内400タイトル以上・累計再生8,000万回という規模でのリーチが可能(2025年後半時点、Ad-Virtua公式)
- プレイ体験を邪魔しないブランド体験を設計したい:広告好感度約85%、プレイ中断のない「嫌われにくい広告」
- 週30万円〜のコスト効率でゲームユーザーに接触したい:CPM約300円(通常500円比)
- ライブイベント前後の「Before/After」施策として組み合わせたい:大型フェスや有名アーティストを使った施策の補完として、日常接触を積み上げるデジタル認知施策として機能する
Ad-Virtuaへの相談・資料請求はこちら(ad-virtua.com)
よくある疑問
Q1. 音楽フェス協賛の費用はどれくらいかかりますか?
フジロック・コーチェラ等の大型フェスのスポンサー費用は非公開が原則で、協賛内容(ブースの規模・露出面・権利内容等)によって大きく異なります。現時点では公開情報での確認が困難なため、フェス主催者への個別問い合わせが必要です。
Q2. バーチャルライブはコロナ禍の施策では?今でも有効ですか?
Travis Scott・米津玄師等の大規模バーチャルライブ事例(2020〜2021年)はコロナ禍における特殊需要が背景にあります。2026年現在、Fortnite・Roblox等でのバーチャルライブは継続されていますが、当時ほどの爆発的な参加規模を見込む場合は慎重な費用対効果の検討が必要です。
Q3. ゲーム内広告は「広告」として認識されますか?ブランドイメージに影響はありませんか?
ゲーム空間内の看板・モニター型の広告(サイネージ型)は、プレイを中断しない形で表示されるため、インタースティシャル広告(全画面割り込み型)と比較してブランド好感度が維持されやすい特性があります。Ad-Virtuaのデータでは好感度約85%(確認日:2026年4月、Ad-Virtua公式)を確認しています。
Q4. ゲームをプレイしていない若年層にはリーチできませんか?
ゲーム内広告はゲームをプレイしているユーザーへの接触が前提です。音楽フェス来場者や特定アーティストのファン全員がゲームユーザーとは限らないため、施策の補完として他の手段(SNS・ストリーミング広告等)との組み合わせが有効です。
Q5. 中小規模の企業でも音楽・エンタメ業界でのブランド体験施策は実施できますか?
大型フェス協賛やバーチャルライブは費用・プロジェクト規模の壁が高いですが、ゲーム内広告(サイネージ型)は週30万円〜のプランから始められるため、中堅企業でも実施しやすい施策の一つです。アーティストタイアップも、アーティストの規模・契約内容によって幅があるため、予算・目的に合わせた選択が重要です。


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