発表の内容:Webゲーム白書「The Renaissance of Instant Play on the Web」

ロブロックス(Roblox)などのゲーム内広告を手がける米スーパーリーグ・エンタープライズ(Super League Enterprise, Inc.)が2026年9月17日、ブラウザで遊ぶゲーム(Webゲーム)の広告価値をまとめた白書を公開し、同社が「最大手のWebゲームプラットフォーム」と位置づけるポキ(Poki)と組んでブランド向け広告枠を販売していることを明らかにしました。日本の広告主にとっては「Webゲームが海外でブランド広告の在庫になり始めた」ことを示す動きですが、現時点で日本からこの在庫を買う経路は確認できず、白書の数値も対象国が示されていないため、そのまま国内の判断材料にはできません。

Pokiで遊べるブラウザゲームのアイコンが並ぶビジュアル。Subway Surfersなどの人気タイトルが並んでいる
出典: Super League Enterprise, Inc.(

発表は米東部時間の午前9時、カリフォルニア州サンタモニカ発のプレスリリースで行われました。白書のタイトルは「The Renaissance of Instant Play on the Web(Webのインスタントプレイ復興)」です(出典: Super League 公式IRリリース)。

白書は5ページで、公式の掲載ページにある登録フォーム(氏名、仕事用メール、会社名、役職)を送ると受け取れます。リリースによると、中身はプラットフォーム別・年代別のオーディエンスデータと、ブランドがWebゲームに参入するための3ステップの枠組みです。主張の軸は、ブラウザゲーム(H5ゲーム、インスタントプレイとも呼ばれる)が大きな規模に育ったにもかかわらず、ブランドのメディアプランからほぼ抜け落ちている、という点にあります。

リリースで示された主な数値は次のとおりです。

項目

数値

リリース上の出典表記

Webゲームの利用率

13〜55歳のオンライン消費者の46%が月1回以上プレイ

グーグル(Google)×ニューズー(Newzoo)の白書「How to win with H5 gamers」

ポキの規模

2026年に月間アクティブプレイヤー1億人超、2020年の10倍

スーパーリーグの記述(10倍はポキ公式では確認できず)

遊ぶ頻度

86%が週1回以上、37%が1日に複数回

個別の出典は示されていない

1回あたりの長さ

4分の1超が30分以上、5分未満は4%

個別の出典は示されていない

広告の記憶

94%が広告を見た記憶がある。多くがリワード形式を好む

個別の出典は示されていない

事例

セラヴィ(CeraVe)の施策で平均5分の接触、「一般的なソーシャルコンテンツ1本の231倍」

スーパーリーグの説明

ポキ以外の大手として、クレイジーゲームズ(CrazyGames)、クールマスゲームズ(Coolmath Games)、フリヴ(Friv)の名前も挙げられています。

数値を読むときに押さえる3点

1つ目に、数値の多くはスーパーリーグ自身の調査ではありません。46%はリリース本文でグーグル×ニューズー白書の数値と明記されています。白書の掲載ページは出典として「The 2026 State Of Web Gaming Report(Developer and Gamer Perceptions study)」「ポキのプラットフォームデータ」「Google x Newzoo H5 gaming research, 2026」の3つを挙げていますが、86%・37%・94%などがどれに由来するかは示されていません。

2つ目に、調査の対象国が分かりません。「13〜55歳のオンライン消費者」が米国だけなのか複数国なのかは、リリースにも掲載ページにも書かれていません。46%を日本のネット利用者の数値として読むことはできません。

3つ目に、「231倍」の比較の基準が示されていません。平均5分(300秒)を231で割ると、比較対象は約1.3秒になります。この基準値の出典や、同じ方法で測ったのかは公表されていません。

白書は市場レポートであり、自社の販売開始を知らせる資料でもある

同じリリースで、スーパーリーグはポキとの提携と、ポキ上でブランド向けのカスタム施策と「計測可能な広告枠」を提供していることを明らかにしました。コマーシャル・オペレーション担当EVPのリアノン・アップル(Rhiannon Apple)氏は次のように述べています。

"Brands want to be where active, engaged audiences spend their time, and web-based games are one of the biggest, most overlooked examples of that today. Through our partnership with leading web gaming platforms like Poki, we're bringing brands custom integrations and measurable media units within curated, brand-safe environments, backed by the appeal of hugely popular titles like Subway Surfers. Everything we've proven in UGC gaming - what drives engagement, what earns trust, what performs - we're now bringing to one of the largest under-monetized audiences in the space."

(訳)ブランドは、能動的に熱中しているオーディエンスが時間を過ごす場所にいたいと考えている。Webゲームは、その中でも今もっとも大きく、もっとも見落とされている例の一つだ。ポキのような主要Webゲームプラットフォームとの提携を通じて、私たちは厳選されたブランドセーフな環境の中で、カスタム施策と効果を測れる広告枠をブランドに提供している。サブウェイサーファーズ(Subway Surfers)のような大人気タイトルの魅力がその裏付けになる。UGCゲームで私たちが証明してきたこと、つまり何がエンゲージメントを生み、何が信頼を得て、何が成果を出すのかを、いまこの分野でもっとも収益化が進んでいない大きなオーディエンスの一つに持ち込んでいる。

つまりこの白書は、Webゲームという市場の調査報告であると同時に、スーパーリーグがWebゲーム在庫の販売を始めたことを知らせる資料でもあります。数値は、在庫を売る側がまとめたものとして読む必要があります。

スーパーリーグとはどんな会社か

Super Leagueのロゴ
出典: Super League Enterprise, Inc.(

スーパーリーグは、ロブロックスやフォートナイト(Fortnite)などのゲーム空間でブランドの広告やワールド(ゲーム内の体験空間)を企画・制作・配信する米国の上場企業です。同社は自らを「オーディエンス分析とメディア運用の会社(an audience intelligence and media activation company)」と定義しています。

基本情報

項目

内容

正式社名

Super League Enterprise, Inc.

上場市場

ナスダック(ティッカー: SLE)

設立

2014年10月1日(当初の社名はNth Games, Inc.)

本社

米カリフォルニア州サンタモニカ(2450 Colorado Ave, Suite 100E)

CEO

マット・エデルマン(Matt Edelman)

創業者

公式資料では未確認(初期の会長兼CEOはアン・ハンド〈Ann Hand〉氏)

従業員数

公表なし

売上規模

2025年度(FY2025)1,134.2万ドル・粗利率40%、2026年第2四半期 約300万ドル・粗利率41%

今後の社名

メタプラネットとの取引完了後にSuperplanet, Inc.(ティッカー: SUPA)へ変更予定

出典: FY2025決算リリース、2026年第2四半期決算リリース、メタプラネットとの取引リリース、SEC提出書類(10-K)

ロブロックスの印象が強い会社ですが、2026年第2四半期の売上のうち広告・スポンサーは約47%で、残る約53%はワールドの受託制作・運営です。「広告枠を売る会社」というより、「ブランドのゲーム施策を丸ごと請け負い、そこに広告配信を組み合わせる会社」と捉えると実態に近いと考えられます。決算の詳細はスーパーリーグの2026年第2四半期決算の解説で扱っています。

何を売っているか:「プレイ・エフェクト」という考え方

今回のプレスリリースの会社概要(About欄)では、事業を「ゲームとデジタルメディアのプラットフォームをまたいで、広告とブランデッドコンテンツを通じてブランドと世界35億人のゲーム人口をつなぐ」と説明しています。収益源は、自社のインタラクティブ広告フォーマット、クリエイターコンテンツ、没入型体験、データ分析、キャンペーン戦略サービスです。

公式サイトは「プレイ・エフェクト(Play Effect)」という考え方を掲げ、その中心に独自の「プレイ・インテリジェンス・エンジン(Play Intelligence Engine)」を置いています。エンジンは次の3つの機能で構成されます。

  1. オーディエンス・インテリジェンス: 狙うオーディエンス、その動機、注意が高まる瞬間を見つける
  2. メディア・アクティベーション: ゲーム、デジタル、ソーシャルの場で届ける
  3. クリエイティブ・レリバンス: オーディエンスの行動に合った体験を設計する

プレイヤーは6つのタイプ(Change Makers、Progress-Driven、Strategic Minds、Bold Expressers、Risk Takers、Social Connectors)に分類してターゲットを決めます。この性格・心理データは、2026年1月に独占提携したソルステン(Solsten)のものです。

Webゲームで広告はどう表示されるのか

今回のリリースで確認できる提供形式は2つです。

  • カスタム施策(custom integrations): 既存の人気ゲームの中に、ブランドの店舗や製品を使う仕組みを組み込む形。後述するセラヴィの事例がこれにあたります
  • 計測可能な広告枠(measurable media units): 名前は示されていますが、ディスプレイ・動画・リワード・ゲーム内看板のどれなのか、プログラマティック取引か直接取引か、どの計測ベンダーを使うのかは公開されていません

2026年5月に買収したミスフィッツ(Misfits)の広告部門は、プログラマティック取引とリワード動画の技術を持っていますが、それがWebゲーム在庫に使われているかは確認できていません(買収の経緯はミスフィッツ広告部門買収の解説を参照)。

ゲーム内広告の形式ごとの違いは、ゲーム内広告とはで整理しています。

対応プラットフォームとインベントリ規模

面

公表されている規模

補足

Webゲーム(ポキ経由)

1億人超のブラウザゲーマー

IRサイトのトップでも「Access to 100M+ browser-based gamers」と掲げる

Webゲーム(クレイジーゲームズ)

公表なし

公式サイトに対応面として掲載。提携条件は非公開

ロブロックス/フォートナイト/マインクラフト(Minecraft)

ミスフィッツ側のゲーム群でMAU 1億人超

2026年3月・5月のリリース

コネクテッドTV(プレイワークス〈Play.Works〉)

1億世帯超、月間1.5億インプレッション超

2026年6月から米国で独占販売

2024年時点の参考値

提携ゲーム体験5,000件、没入型プラットフォームの月間アクティブプレイヤー1.3億人超、2023年に約100ブランドと取引、ゲーム内広告キャンペーン180件超

2024年6月の公式ファクトシート

公式サイトには、このほかモバイルゲーム、PC、ゲームラント(GameRant)、スマートTV(サムスン、Vizio、LG、Roku)が対応面として並んでいます。

主要パートナーと取引ブランド

  • ポキ: Webゲーム在庫。今回はじめて提携がはっきり示されました。提携の開始時期と条件は非公開です
  • クレイジーゲームズ、ゲームラント: 公式サイトに対応面として掲載
  • プレイワークス: コネクテッドTV向けのゲーム型広告(2026年6月から米国で独占販売)
  • ソルステン(性格・心理データ)、アドアーケード(AdArcade)(AIを使ったプレイアブル広告): いずれも2026年1月に独占提携
  • ミスフィッツ・ゲーミング・グループ(Misfits Gaming Group): 2026年5月に広告部門を買収し、その後も優先的なブランド提携契約を結ぶ

取引実績として公式サイトや決算資料に名前が出ているブランドは、マテル(Mattel)、パラマウント(Paramount)、ESPN、チポトレ(Chipotle)、ディズニー(Disney)、ヒョンデ(Hyundai)、パンダエクスプレス(Panda Express)、パックサン(PacSun)、ダッジ(Dodge)、ライオンズゲート(Lionsgate)、クラークス(Clarks)、リーガル(Regal)、H&Rブロック(H&R Block)、グーグル、ロジクール(Logitech)などです。計測ベンダーやDSPの具体名は確認できていません。

Webゲームの配信先:ポキとクレイジーゲームズ

今回の発表で広告の「場」になるWebゲームプラットフォームについて、公式サイトで確認できる範囲をまとめます。

項目

ポキ

クレイジーゲームズ

所在地

オランダ・アムステルダム

ベルギー・ルーヴェン

公表規模

月1億人のプレイヤー、1日の合計プレイ時間350万時間

「5,000万人のプレイヤー」(期間の定義は読み取れず)

開発者・言語

開発者500社以上、34言語に対応

公表なし

特徴

「2行のコードで」ゲームを公開できる開発者向け仕組み。ミッションは"We let the world play. Because play is how we learn."

創業者は"Raf"(姓は未確認)

出典

about.poki.com

about.crazygames.com

ポキの設立年・創業者・資金調達は公式サイトに記載がありません。また、スーパーリーグとの提携やセラヴィの事例について、ポキ側の公式な発表は見つかっていません。

ここまでの歩み:アマチュアeスポーツからWebゲーム在庫まで

スーパーリーグは上場企業のため、スタートアップのようなラウンドごとの調達履歴ではなく、上場・私募・大型出資という形で資本を集めてきました。ここでは資本の動きと、事業の転換・撤退を順に振り返ります。

資本の動き

時期

出来事

当時の会社の状況

2019年

ナスダックに上場(調達額は本記事では未確認)

アマチュア向けeスポーツの大会・リーグ運営から始まった会社が、2019〜2022年の買収を通じてロブロックス・マインクラフト上のメディア企業へ転換していく時期

2025年6月

1対40の株式併合

売上がFY2023の2,510万ドルからFY2024の1,620万ドルへ減少。同年にはナスダックの上場基準に抵触していた

2025年10月

エボ・ファンド(Evo Fund)主導の私募で2,000万ドルを調達。同月、ナスダック上場基準への抵触を解消

同年5月にマインハブ売却とモブクラッシュ解散を行い、事業を絞り込んだ後の調達

2026年1月21日

1対12の株式併合。「次の実行フェーズ」に入ると宣言

同じ月に、ロブロックスゲームの持分取得、レッツバウンス買収、ソルステン・アドアーケードとの独占提携を相次いで発表

2026年8月18日

東証上場のメタプラネットが2,100 BTC(同社の発表時点の説明で約1億3,210万ドル相当)と現金250万ドルを出資すると発表。完了後の持分は約95.7%

取引は2026年第4四半期に完了見込みで、株主承認などが条件。広告・メディア事業は「独立した事業セグメントとして続ける」と説明

累計の調達額は公式資料で確認できていないため記載しません。また、メタプラネットの出資はビットコイン財務戦略の取引で、広告事業そのものへの評価として読むのは適切ではないと考えられます。

事業の軸足の移り変わり

時期

出来事

2014年10月

Nth Games, Inc. として設立

2015年6月

Super League Gamingに社名変更。アマチュア向けeスポーツの大会・リーグ運営から始める

2019〜2022年

マインハブ(Minehut)、モブクラッシュ(Mobcrush)、ブロックスビズ(Bloxbiz、ロブロックス内の広告ネットワーク)などを取得し、ロブロックス・マインクラフト上のメディア企業に変わる(各社の取得年月と金額は未確認)

2023年9月

Super League Enterpriseに社名変更。「3Dウェブ/没入型プラットフォーム」を掲げる

2024年6月

ファクトシートで没入型プラットフォームの月間アクティブプレイヤー1.3億人超、FY2023売上2,510万ドルを公表

撤退と縮小

今回の発表を評価するうえで、この数年の撤退は外せません。

  • eスポーツ事業から撤退し、創業時の本業を畳みました
  • マインハブ/マインヴィル(Mineville)を売却(2025年5月、100万ドル)。マインクラフト領域の主要資産を手放しました
  • モブクラッシュを解散(2025年5月)、InPvPを売却(FY2025)
  • 売上はFY2023からFY2025で半分以下に: FY2023 2,510万ドル → FY2024 1,620万ドル → FY2025 1,134万ドル

同社は2026年3月のFY2025決算で「事業変革を完了した」と説明しています。

2026年:ロブロックスの外へ在庫を広げる

時期

出来事

2025年12月2日

ゲーム仕立ての食品コンテンツをコネクテッドTVとモバイル広告で配信する提携

2026年1月6日

人気ロブロックスゲーム「Hide or Die!」の持分を取得

2026年1月7日

レッツバウンス(Let's Bounce, Inc.)を買収(ゲーム・UGCでのフルファネルマーケティング)

2026年1月23日・28日

ソルステン、アドアーケードと独占提携

2026年4月9日

ロブロックスゲーム「My Avatar!」の持分を取得

2026年5月6日

ミスフィッツ広告部門の買収を完了(プログラマティック取引とリワード動画の技術)

2026年5月20日

「Job City by Indeed」をロブロックスで公開

2026年6月9日

プレイワークスのコネクテッドTV向けゲーム型広告在庫で米国の販売パートナーに

2026年8月14日

第2四半期決算。売上約300万ドルで横ばい、粗利率41%。「Youth and Family Marketplace」を開始

2026年9月17日

Webゲーム白書を公開し、ポキとの提携を明らかにする(今回)

Super LeagueとPlay.Worksのロゴ。コネクテッドTV向けのゲーム型広告で提携したことを示すビジュアル
出典: Super League Enterprise, Inc. / Play.Works(

コネクテッドTVへの展開はプレイワークスとの提携の解説で詳しく扱っています。

今回の発表はどこに位置づくか

2026年の同社は、ロブロックス中心の会社から「ゲームを遊ぶオーディエンス全体に届ける会社」へ、フォートナイト → コネクテッドTV → Webゲームと在庫を横に広げてきました。今回の白書はその最新の一手です。ただし、ポキとの提携がいつ始まったのかは、2025年11月以降のIRリリースを見ても単独の発表がなく、確認できていません。

広告出稿事例

効果の数値はすべてスーパーリーグの公表値で、第三者による検証の有無は確認できていません。

事例1:セラヴィ × ポキ『スプリント・リーグ』(Webゲーム)

ロレアル(L'Oréal)傘下のセラヴィは、ポキで遊べるランニングゲーム『スプリント・リーグ(Sprint League)』の中に「CeraVe Pharmacy」を作りました。『スプリント・リーグ』はオンラッシュ・スタジオ(OnRush Studio)が開発した無料ゲームで、ルームランナーで走力を鍛えて他のランナーと競います。PCとモバイルの両方で遊べます(ポキのゲームページ)。

プレイヤーはゲーム内でセラヴィの製品を使い、皮脂や菌を落とします。広告枠に動画を流すのではなく、製品の使い方そのものをゲームの操作にした施策です。

  • 公表されている効果: ブランドとの接触時間が平均5分。スーパーリーグの説明では「一般的なソーシャルコンテンツ1本の231倍」(比較の基準は示されていない)
  • 公表されていない項目: 実施時期、対象国、参加者数、インプレッション数、ブランドリフト

2026年9月25日時点で、スーパーリーグのケーススタディページにはまだ掲載されていません。ポキのゲームページにもセラヴィの記載はなく、キャンペーンはすでに終了している可能性があります(未確認)。

事例2:メイベリン × ロブロックス(同じロレアル傘下のUGCゲーム施策)

メイベリン(Maybelline)は、人気のロブロックスのロールプレイワールドを期間限定でジャックし、「Sunkisser Blush」をバーチャルで試せるようにしました。

  • 公表されている効果: バーチャル試用2,500万回超、ブランドインプレッション3,850万、平均エンゲージメント9分
MaybellineがRobloxで実施したSunkisser Blushのバーチャル試用キャンペーン
出典: Super League Enterprise, Inc.(

ロレアル傘下のブランドが、ロブロックス(メイベリン)とWebゲーム(セラヴィ)の両方でスーパーリーグを使っていることになります。「UGCゲームで証明したことをWebゲームへ持ち込む」というEVPの発言を裏付ける材料です。ただし、ロレアルがグループとしてWebゲームへの出稿を判断したことを示す公式情報はありません。

事例3:チポトレ × ロブロックス「Boorito Maze」

チポトレは、ロブロックスで「Boorito Maze」を展開しました。

  • 公表されている効果: ユニークプレイヤー350万人超。同社で過去最高のモバイル売上日を記録し、アプリダウンロードとデジタル取引も過去最高
  • 2024年のファクトシートにある別の数値: 総訪問2,400万、PRとゲームを合わせたインプレッション46億、「Burrito Builder」での平均滞在14分
ChipotleがRobloxで展開した「Boorito Maze」のキャンペーンビジュアル
出典: Super League Enterprise, Inc.(

事例4:ランチャブルズ × バーチャルワールド「Playables」

クラフト(Kraft)の食品ブランド、ランチャブルズ(Lunchables)は、バーチャルワールド「Playables」を使った施策を実施しました。スーパーリーグのケーススタディに掲載されている事例です。

  • 公表されている効果: エンゲージメント1,000万時間、獲得ポイント74億、ペット交換730万、購入率+6.3%(QRコード付きの実物パッケージと、付いていないパッケージの比較)
Lunchablesのバーチャルワールド施策。購入率が6.3%上がったと公表されている
出典: Super League Enterprise, Inc.(

ゲーム内の接触と実物パッケージの購入を結びつけて測った事例で、日本の食品メーカーにとっては計測設計の参考になります。

事例5:パンダエクスプレス × フォートナイト+ロブロックス

パンダエクスプレスは、フォートナイトとロブロックスの両方でキャンペーンを実施しました。

  • 公表されている効果: 参加26.5万人超、プレイヤーとのやり取り18.5万回超、合計エンゲージメント時間65日分
Panda ExpressがFortniteとRobloxで実施したキャンペーンのビジュアル
出典: Super League Enterprise, Inc.(

5件のうちWebゲームの事例はセラヴィの1件だけで、残りはロブロックスなどのUGCゲームです。Webゲームでの公表実績はまだ少なく、効果指標も接触時間しか示されていない段階です。

なぜこの動きが起きたのか

背景は、売る側(スーパーリーグ)と場を持つ側(Webゲーム)の双方にあると考えられます。

売る側の事情: スーパーリーグの売上はFY2023からFY2025で半分以下になり、2026年第2四半期も横ばいでした。売上の半分以上を占める受託制作は1件ごとに企画と制作の手間がかかる形です。ロブロックス以外の在庫を加えて販売できる面を増やすことは、売上を立て直すための打ち手と考えられます。メタプラネットとの取引が完了する前に、広告事業の成長余地を示す材料という側面もあると読めますが、同社はそう説明していません。

場を持つ側の事情: 白書の主張によれば、ポキなどのWebゲームは規模が大きいのにブランド広告の予算がほとんど流れていません。EVPの発言にある「もっとも収益化が進んでいない大きなオーディエンス」という表現はこの点を指しています。

業界の流れ: Webゲームをブランド広告の在庫にする動きは今回が初めてではありません。2025年11月には、ゲーム内の看板などに広告を出すアンズ(Anzu)が、Webゲームのプレイガマ(Playgama)でこの形式の広告を初めて展開しています(アンズ×プレイガマの解説)。ゲーム内広告の事業者が、アプリやUGCゲームの次の在庫としてWebゲームに目を向け始めていると考えられます。

日本市場ではどうか

現時点で、日本の広告主がスーパーリーグ/ポキの在庫を買える経路は確認できません。スーパーリーグの公式サイトやIRには、日本法人、日本の代理店、日本語の窓口の記載がありません。

国内から判断するうえでの障壁は、公式情報から次の4点が言えます。

  1. 窓口は米国の会社で、日本向けの営業体制は示されていない
  2. 白書の数値の対象国が分からず、日本のユーザーにどれだけ届くか判断できない
  3. 「計測可能な広告枠」の形式と計測ベンダーが非公開で、国内で使うリーチ・フリークエンシー・ブランドリフトと接続できるか判断できない
  4. 取引相手が2026年第4四半期にメタプラネット傘下のSuperplanetに変わる予定

メタプラネットは東証上場企業ですが、今回の出資はビットコイン財務戦略の取引で、広告事業の日本進出とは別の話です。

アンズは2024年6月に日本のARROVAと提携しており、日本の広告主がアンズの在庫に出稿する経路はあります。ただし、アンズのWebゲーム在庫がその経路で日本向けに開かれているかは確認できていません。

日本のブラウザゲームの利用率や市場規模について、信頼できる一次情報は今回見つかっていません。46%を日本の数値として使うことは避けるべきです。

日本で同じ広告を実施する選択肢

海外で進んでいるのは「ゲームを遊ぶ時間の中で、プレイを止めずにブランドに触れさせる」施策です。日本で同じ狙いの施策を実施する場合、形式によって選択肢が分かれます。

比較ポイント

スーパーリーグ×ポキ(カスタム施策)

アンズ(ゲーム内看板型)

Ad-Virtua(ゲーム内看板・モニター型)

形式

作り込み型。人気ゲームの中にブランドの店や製品の仕組みを組み込む

配信型。ゲーム内の看板などに広告を表示

配信型。ゲーム空間の看板・モニターに動画広告を表示

在庫

Webゲーム(ポキ)。ロブロックス等にも対応

Webゲーム(プレイガマ)など

400タイトル以上(カジュアル/RPG/パズル/アクション等)

日本からの発注

経路を確認できず

ARROVA経由の経路あり(Webゲーム在庫の扱いは未確認)

国内で発注可能

素材

ゲーム内の仕組みを新たに企画・制作

本記事では未確認

既存の動画素材を流用可能

費用の目安

非公開

本記事では未確認

1週間300,000円プラン、CPM約300円

公表されている指標

平均接触5分(セラヴィ)

本記事では未確認

広告想起率約1.8倍、注目度約1.7倍

Ad-Virtuaの数値は同社が国内で計測した公表値です。白書の「94%が広告を見た記憶がある」は対象国不明の「広告を見た記憶」で、ブランドの想起率とは指標が異なるため、横に並べて優劣を比べることはできません。また、この比較はAd-VirtuaでWebブラウザゲームやポキに配信できることを示すものではありません。

Ad-Virtuaをおすすめする企業

  • 若年層への認知を、TVCMやSNS広告の補完として国内で積み上げたい企業
  • 手元にある動画素材を使い、企画・制作の負担を抑えて試したい企業
  • 1週間単位の予算で配信し、国内ユーザーへの配信結果を確かめたい企業

Ad-Virtuaをおすすめしない企業

  • セラヴィのように、製品の使い方そのものをゲームの仕組みにする作り込み型の体験を作りたい企業
  • 海外のWebゲームユーザーに向けて、ポキなど特定のプラットフォーム上で配信したい企業
  • 特定の人気タイトルとのコラボ(キャラクターやアイテムとの連動)を主目的にする企業

広告主が取るべき判断

今動くべき企業

  • 米国など海外で商品を売っており、現地の若年層向けにゲーム施策を検討している企業。スーパーリーグに直接問い合わせ、白書を入手して対象国と計測方法を確認する価値があります
  • 国内でゲーム内広告をまだ試しておらず、「プレイ中の広告は記憶に残るか」を自社で検証したい企業。海外の数値を待つより、国内配信で自社の指標を取る方が判断材料になります

様子見でよい企業

  • 日本国内だけで販売しており、海外のWebゲームユーザーに届ける必要がない企業
  • 代理店から白書の数値を根拠に提案を受けている企業。対象国、比較の基準、誰が計測したかが示されるまでは、予算判断の根拠にしないのが妥当です

判断の前に確かめること

  • 数値の母集団はどの国のユーザーか
  • 「231倍」のような倍率は、何と何を同じ方法で比べたものか
  • 効果指標は第三者の計測ベンダーによるものか、在庫を売る側の自社計測か
  • 作り込み型か配信型か。前者は企画・制作の期間と費用が、後者はリーチの広さと単価が判断の中心になる

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よくある質問

Q. Webゲームはパソコンで遊ばれるものではないのですか?

白書の掲載ページによると、米国のWebゲーマーの83%はモバイル端末から遊んでいます。また65%はSNSのフィードでゲームを見つけると記載されています。「ブラウザゲーム=PC」という前提で広告面を評価すると、実態とずれる可能性があります。なお、この2つの数値は米国のものとして示されており、リリース本文には含まれていません。

Q. ポキは日本語で遊べますか?

ポキは34言語に対応していると公表していますが、日本語版があるかは確認できていません(2026年9月25日時点で poki.com/ja は表示されません)。日本からどれだけ遊ばれているかのデータも確認できていません。

Q. 広告主が自社でゲームを作り、ポキで公開することはできますか?

ポキは開発者向けに「2行のコードで」ゲームを公開できる仕組みを案内しており、500社以上の開発者が参加しています。ただし、ブランドが自社で制作したゲームを掲載できるか、その審査基準は確認できていません。スーパーリーグ経由のカスタム施策は、既存の人気ゲームの中に組み込む形です。

Q. スーパーリーグの社名が変わると、広告の取引に影響はありますか?

メタプラネットとの取引が完了すると、社名はSuperplanet, Inc.、ティッカーはSUPAに変わる予定です。同社は広告・メディア事業を「独立した事業セグメントとして続ける」と説明しています。取引の完了は2026年第4四半期の見込みで、株主の承認などが条件になっています。長期の契約を結ぶ場合は、完了後の体制を確認しておくのが安全です。

Q. リリースでWebゲーム大手として挙がったクールマスゲームズやフリヴにも、スーパーリーグ経由で出稿できますか?

リリースではポキ、クレイジーゲームズ、クールマスゲームズ、フリヴが大手として挙げられていますが、スーパーリーグが提携を明示しているのはポキだけです。クレイジーゲームズは公式サイトに対応面として載っているものの、提携の条件は公開されていません。クールマスゲームズとフリヴとの関係は確認できていません。