Roblox Corporation(以下Roblox)は2026年6月4日、子ども向けデジタルマーケティング企業SuperAwesome Inc.(以下SuperAwesome)を、13歳未満ユーザー向け広告における世界唯一の第三者パートナーに指定したと発表した。これにより、これまで「広告を一切表示しない」としてきたRobloxの13歳未満ユーザー層が、初めて広告対象プールに加わることになる。

発表の内容

RobloxとSuperAwesomeの提携発表ブログのヘッダー画像
出典: SuperAwesome Inc.(

SuperAwesome公式ブログ(データライン表記「NEW YORK & LONDON, 4 June 2026」)によると、SuperAwesomeはRobloxにおける13歳未満ユーザー向けコンテキスト広告(行動追跡を伴わない広告手法)の「世界唯一の第三者商業・技術パートナー」に指定された。対象は「Roblox Kids」「Roblox Select」を含む全年齢層の体験で、モバイル・PC・コンソール・VRの全デバイスをカバーする。

提供される広告フォーマットは次の4種類で、いずれも米国のCOPPA(児童オンラインプライバシー保護法)に準拠する設計とされる。

  • ビデオビルボード
  • ブランデッドポータル(Branded Portals)
  • ホームページ広告
  • スポンサードタイル

同時に両社は「Blox Aware」という教育プログラムを開始した。ブランド向けにプラットフォーム別の広告基準・安全プロトコル・責任あるコンテンツ制作のベストプラクティスを教える研修とされる。

取引条件にも明確な制約が設けられている。AdExchangerの報道によると、13歳未満向け在庫はプログラマティック取引(システムを介した自動的な広告枠の売買)を一切行わず、直接取引(ダイレクトディール)限定。行動データの収集や1対1のパーソナライズドターゲティングは不可で、ターゲティングは国・性別・年齢帯といった集計データに限定される。また食品・化粧品・医薬品・金融商品の広告は完全禁止、視聴で報酬を得るリワード広告も画面占有時間を助長するとして禁止されている(eMarketer報道ベース)。なお北米では「選定された戦略的パートナー」への13歳未満在庫の直接販売という例外が維持されるが、パートナー名・条件は非開示である。

Robloxは2026年第1四半期(2026年3月期)決算で、日次アクティブユーザー(DAU)が前年同期比35%増の1億3,200万人に達したと発表している。同四半期の年齢認証済みユーザーのうち13歳未満は36%、13〜17歳は38%、18歳以上は26%だった(Q1 2026決算関連報道)。なお13歳未満DAUを「3,970万人」とする二次報道(eMarketer/Statista出典)もあるが、Roblox自身の一次開示資料での同一数値は確認できておらず、報道ベースの推計値として扱う必要がある。

SuperAwesomeとはどんな会社か

SuperAwesomeの企業ロゴ
出典: SuperAwesome Inc.(

SuperAwesomeは、英国ロンドンで2013年に設立された(複数メディア報道ベース。公式サイトでの一次確認は取れていない)「kidtech(キッズテック)」領域のパイオニアとされる企業である。米国ニューヨーク・ロサンゼルス・シカゴにもオフィスを持つとされる(報道ベース)。共同創業者はアイルランド出身のDylan Collins氏で、現CEOはCOOから昇格したKate O'Loughlin氏。従業員規模は公式に開示されていない。

事業の中核は、子ども・ティーン(Gen Alpha・Gen Z)向けにブランドが安全に広告・マーケティングを展開できるようにする技術とメディアの提供にある。主な事業ラインは次の3系統に整理できる。

  1. Video & Ads事業(Awesome Video / Awesome Ads / Awesome Audio): YouTube、YouTube Shorts、子ども向けプラットフォーム、コネクテッドTV、ゲーム内、アプリ内を横断する若年層特化メディアを提供する。
  2. Creator Economy事業(Awesome Creators / Awesome Gaming / Roblox Ads): クリエイター・ゲーム領域向けの子ども安全な収益化支援。今回のRoblox提携はこの「Roblox Ads」ラインに位置づけられる。
  3. Awesome Intelligence: トレンド分析・測定ツール。

広告が配信される仕組みの核となるのが「Awesome Intelligence」という独自の分類技術だ。ユーザーの行動データや個人プロフィールを追跡するのではなく、コンテンツのカテゴリーやクリエイタータイプに基づいて広告予算をマッチングする「コンテキストベース」の方式を採用している。これがCOPPAやGDPRといった児童プライバシー規制に抵触しない設計の技術的な核になっている。

公式サイトでは「300以上のリーディングブランド・コンテンツオーナー」がクライアントであると公表されている。過去の報道(2018年時点、Epic Games買収前)では「5億人以上の子どもがSuperAwesomeのプラットフォームを利用するアプリ・ゲーム・サービスを使っている」との記載があったが、これは古い数値であり、現在の月間ユーザー数・対応タイトル数の最新公表値は確認できていない。

主要パートナー(ブランド側)として公式サイトに名前が挙がっているのは、Nike、Universal、LEGO、Hollister、L'Oréal、Nintendo、Nickelodeon、MGA Entertainment、Disney、Roblox、Aeropostale、Warner Brothersなどである。

ここまでの歩み

SuperAwesomeの資金調達とM&Aの変遷

SuperAwesomeは単純な一直線の資金調達史を持つ企業ではなく、独立系企業として設立された後、大手ゲーム会社の傘下に入り、その後経営陣が買い戻すという珍しい経路をたどっている。

時期

出来事

会社が目指していたこと

2013年

ロンドンで設立

kidtech領域のパイオニアとして、子ども向け広告のプライバシー準拠モデルを構築

2018年2月

資金調達を経て評価額1億ドル超・黒字化と報じられる(TechCrunch報道)

独立系kidtech企業としての事業拡大

2020年1月

Microsoftのベンチャーファンド「M12」が参加する1,700万ドル(約25.5億円、1ドル=150円換算、2026年8月10日時点)の資金調達を実施

大手テック企業からの資本参加を得て事業基盤を強化

2020年9月

Epic Gamesに買収され、Epic Gamesファミリーの一員となる

Epic Gamesが掲げる「全年齢層に安全なメタバース」戦略の一環として、Fortniteなどのメタバース展開に児童安全の知見を組み込む

2023年9月

SuperAwesomeの経営陣がEpic Gamesから同社の大部分を買い戻し、独立企業として再出発。ただし保護者同意管理プラットフォーム「Kids Web Services(KWS)」はEpic Games側に残留。Epic Gamesはその後も投資家として関与

独立企業としての機動性を取り戻しつつ、Epic Gamesとの関係は維持

2026年6月

Robloxの13歳未満向け広告における世界唯一の第三者パートナーに指定(今回の発表)

kidtech企業としての専門性を、業界最大級のプラットフォームの広告インフラに実装

累計調達額について、公式に確認できる一貫した数値は本リサーチでは見つからなかったため、ここでは各ラウンドの個別事実のみを記載している。日本の投資家の参加は確認できていない。

なお、SuperAwesomeとRobloxには今回の発表以前から業界内での接点があったとみられる。SuperAwesomeが運営するポッドキャスト企画「#Kidtech」にRobloxのVP MarketingであるTami Bhaumik氏が出演するなど、買収前後から関係者間の接触は存在していた可能性があるが、詳細な提携交渉の経緯は未確認である。

Robloxの広告事業のこれまでの取り組み

Robloxの広告プラットフォーム拡大に関する公式ニュースルーム記事のアイキャッチ画像
出典: Roblox Corporation(

Robloxは長年「13歳未満ユーザーには広告を一切表示しない」という方針を掲げており、2022年9月に「immersive ads(没入型広告)」を2023年に投入すると発表した時点でも、13歳未満ユーザーは広告と一切インタラクトできない設計だと明言していた。今回の提携は、この長年の方針からの明確な転換であり、単なる新機能追加ではなく過去のポリシーの撤回にあたる。

その後の広告事業の主な展開は以下の通りである。

時期

出来事

2022年9月

「immersive ads」を2023年投入と発表。13歳未満は広告対象外

2023年11月

動画広告を試験導入。e.l.f. Beauty、HUGO、Walmart、Warner Bros. Pictures、dentsu・Hearts & Scienceなどと半年間テスト

2024年4月

PubMaticと提携し、動画広告在庫のプログラマティック買い付けを可能に

2024年5月

動画広告を全広告主に開放。セルフサーブのAds Manager経由、プログラマティック経由でジャンルターゲティング等を提供

2026年1月6日

ホームページの動画クリエイティブを没入型3D環境に変換する新フォーマット「Homepage Feature」を発表。e.l.f.、Sam's Club、Universal Picturesがテスト導入

2026年4月13日

CEO David Baszuckiが「Roblox Kids」(5〜8歳)「Roblox Select」(9〜15歳)の年齢別アカウント制度を発表。同時に13歳未満ユーザーを初めて広告対象プールに含める方針を明らかにした(報道ベース)

2026年6月初旬

Roblox Kids/Selectアカウントをグローバル展開

2026年6月4日

SuperAwesomeを13歳未満向け広告の世界唯一の第三者パートナーに指定(今回の発表)

RobloxのHomepage Feature広告フォーマットのビジュアル例
出典: Roblox Corporation(

一方で、こうした方針転換の背景には見過ごせない事実もある。Robloxは2026年時点で、児童の安全性(性的搾取・グルーミング等)を主張する家族からの訴訟が連邦多地区訴訟(MDL)として130件超係属しており(2025年12月のMDL形成時点では85件、2026年4月時点で146件との報道もある)、複数州との和解にも至っている(報道ベースで総額約5,400万ドル、約81億円、1ドル=150円換算、2026年7月13日時点)。今回の「広告ガバナンスの制度化」(第三者専門パートナー指定、教育プログラム「Blox Aware」の開始)は、こうした規制・訴訟圧力の中で「安全性を制度として示す」動きという文脈で報じられている(AdExchanger等)。つまり今回の発表は、過去の「広告を出さない」という単純な安全策から、「専門パートナーとガバナンス設計によって安全性を担保した上で広告を出す」という、より踏み込んだ方針への転換であり、その分だけ制度設計の厳格さが問われる場面でもある。

広告出稿事例

Roblox上での具体的なブランド出稿事例は、2026年6月4日の発表直後であるため本リサーチ時点では未確認である。ここでは、SuperAwesomeの既存メディア(AwesomeAdsプラットフォーム)で公表されている、効果指標付きの事例を2件紹介する。

事例1: Nickelodeon(ViacomCBS傘下)

Nickelodeonのキャンペーン事例で使用された広告クリエイティブ
出典: SuperAwesome Inc.(

新番組・新シーズンのプロモーションを目的に、動画中心のキャンペーンをYouTube・モバイル・タブレット・Web上でインタラクティブな広告ユニットとして展開した。公表されている効果指標は、クリックスルー率が競合比20%向上、ビュースルー率が競合比15%向上、クリック単価が競合比€10.99削減、というものである。

事例2: MGA Entertainment(L.O.L. Surprise! Remix Music Awards)

MGA EntertainmentのL.O.L. Remix Music Awardsキャンペーン事例画像
出典: SuperAwesome Inc.(

新製品ライン「Remix」のプロモーションとして、10人のインフルエンサーによるリミックス楽曲に子どもが投票するデジタルイベントを13ヶ国・7言語で展開した(コロナ禍で対面イベントが実施できなかった代替施策)。公表されている効果指標は、キッズセーフな広告インプレッション140万件(目標比117%達成)、インフルエンサー音楽動画の平均視聴継続率48%(業界平均35%を上回る)、COPPA準拠マイクロサイトへのページビュー186万件、である。

いずれの事例も「行動データを追跡しない」制約の中で、コンテキストと文脈を活かしたクリエイティブ設計によって競合比で優位な指標を出している点が共通している。

なぜこの動きが起きたのか

Robloxが13歳未満ユーザーへの広告を解禁した背景には、複数の要因が重なっている。

第一に、事業規模の拡大に伴う収益機会の拡張である。Robloxは2026年第1四半期にDAU 1億3,200万人(前年同期比35%増)、売上高14.42億ドル(前年比39.3%増)を計上している。年齢認証済みユーザーの36%が13歳未満という構成比を踏まえれば、この層を広告対象から除外し続けることは事業成長上の機会損失になり得る。

第二に、「Roblox Kids」「Roblox Select」という年齢別アカウント制度の導入により、年齢帯ごとに異なる広告基準を技術的に適用できる基盤が整ったことである。2026年4月13日の年齢別アカウント発表と、6月のSuperAwesome提携はセットで設計されていたとみられる。

第三に、児童安全に関する訴訟圧力への対応という文脈がある。130件超の連邦多地区訴訟が係属し、複数州との和解も進む中で、「広告を一切出さない」という消極的な安全策ではなく、「専門パートナーによる制度設計で安全性を担保した上で広告を出す」という能動的なガバナンス強化の姿勢を示す必要があったと考えられる。SuperAwesomeという第三者の専門企業を独占パートナーとして指定し、プログラマティック排除・直接取引限定・禁止カテゴリ設定といった複数の制約を課す設計は、この文脈で理解すると一貫性がある。

日本市場ではどうか

スマートフォンを操作する日本の街中の様子
Photo by Yosuke Ota on Unsplash

Robloxの日本国内での一般的な知名度はまだ高くないが、小学生を中心にユーザー数が急拡大しており、2026年は前年の8倍以上にプレイヤー数が伸び、国内メタバース系タイトルの中ではMinecraftに次ぐ人気とする報道がある(Web担当者Forum、文春オンライン等)。ただし米国・ブラジル・フィリピンなど主要国と比べると規模は依然として小さい(報道ベース)。

日本には、米国のCOPPAのような「子ども向け広告」を専門に規制する法律は存在しない。景品表示法(ステルスマーケティング規制、2023年10月施行)・薬機法・個人情報保護法は子ども向け広告にも一般的に適用されるが、業界自主規制やプラットフォームポリシーが事実上の規制として機能している状態である。この論点は、Ad-Virtuaの既存記事「子ども向け広告の規制と注意点」でも媒体別に整理している。

日本の広告主が今すぐRobloxのSuperAwesome経由の13歳未満向け広告枠を使えるかというと、現時点では北米中心の「戦略的パートナーとの直接取引」枠を除き、SuperAwesomeが唯一の窓口となる。SuperAwesomeとの直接契約、もしくは代理店経由での取次が前提になるとみられるが、日本国内の代理店・パートナー体制についての公式発表は本リサーチ時点で確認できていない。

日本で同じ広告を実施する選択肢

RobloxとSuperAwesomeが提供するのは、あくまで海外プラットフォーム上の13歳未満向け広告インフラである。日本の広告主が「子ども・ファミリー層に安全に広告を届ける」という目的自体を国内で実現したい場合、選択肢は複数ある。

Ad-Virtuaのようなゲーム内広告のアドネットワーク(ゲーム内広告とはで仕組みを解説している)は、ゲーム空間内の看板・モニターに動画広告を配信する形式で、プレイヤーの個人情報を直接収集しない点はRoblox×SuperAwesomeの「コンテキストベース」の思想と方向性が近い。ただし、Ad-Virtuaは13歳未満専用の商品設計や、SuperAwesomeが提供するような未成年者向け専用の制度(第三者認定パートナー・専門トレーニングプログラム)を持つわけではない点は異なる。

この選択肢が合うのは、次のような条件の企業である。

  • 若年層・ファミリー層への認知拡大を目的としており、13歳未満への専用ターゲティングまでは必須要件ではない企業
  • TVCM・SNS広告の補完として、プレイ体験を阻害しにくい広告接触を国内で試したい企業
  • 海外プラットフォームとの直接契約・英語での交渉リソースを確保しづらい企業

逆に、13歳未満ユーザーへの精緻なターゲティングや、COPPA相当の制度的なガバナンス枠組みそのものを求める企業には、現時点でRoblox×SuperAwesomeのような海外の専用インフラに相当する国内の選択肢は存在しない。この場合は、SuperAwesomeとの直接契約や代理店経由の取次を検討する必要がある。

広告主が取るべき判断

広告出稿の方針を話し合うチームのミーティング風景
Photo by Vitaly Gariev on Unsplash

今すぐ動くべきなのは、すでにグローバル展開しておりRobloxのようなプラットフォームでの出稿実績・体制を持つ、あるいは海外代理店との取引チャネルを持つ企業である。SuperAwesomeが公表しているNickelodeon・MGA Entertainmentの事例のように、コンテキストベースの制約下でも競合比で優位な指標が出ている実績があるため、グローバルブランドにとっては検討材料になり得る。

一方、国内市場中心で、13歳未満向けの専用出稿インフラをまだ必要としない企業は、様子見でよい。日本国内の代理店・パートナー体制が未整備の現時点では、SuperAwesomeとの直接契約という高いハードルを越える必要があり、まずは国内で確立されたゲーム内広告等の手段でファミリー層への接触を試す方が現実的である。

関連する基礎知識への導線

FAQ

Q. Robloxで13歳未満向け広告が始まると、日本の子どもも広告を見ることになるのか。
A. 対象はモバイル・PC・コンソール・VRの全デバイス、Roblox Kids・Roblox Selectを含む全年齢層の体験とされているため、地域を限定した発表内容ではない。ただし日本語圏への具体的な展開スケジュールや国別の適用条件は本リサーチ時点で確認できていない。

Q. SuperAwesomeに日本企業が直接広告出稿を申し込むことはできるのか。
A. 日本国内の代理店・パートナー体制についての公式発表は確認できていない。現時点では英語での直接契約交渉が前提になるとみられる。

Q. COPPAは日本企業が海外向けに広告を出す場合にも適用されるのか。
A. COPPAは米国の児童オンラインプライバシー保護法であり、対象となるのは米国の13歳未満ユーザーのデータ・広告に関わる事業者である。日本企業であっても、COPPA対象のサービス・ユーザーに広告を配信する場合は適用範囲に入り得る。日本国内向けの出稿には、COPPAそのものではなく国内の個人情報保護法・景品表示法等が適用される。

Q. 今回の提携でRoblox側の広告収益に占める13歳未満向け広告の比率はどの程度になる見込みか。
A. 契約金額や収益分配条件は両社とも非開示であり、13歳未満向け広告が収益全体に占める比率の見通しについても公式な言及は確認できていない。