ゲーム内広告の媒体資料は、「出稿前に媒体を選ぶ目線」で読むのが最も難しい。CPM・視認率・想起率といった数字は出稿後のレポートにも同じ名前で出てくるが、出稿前は「これから契約していい媒体か」を見抜く視点が必要になる。本記事では、複数の媒体資料を並べて比較・稟議に通すまでの出稿前評価に絞ってチェック項目とヒアリング質問を整理した。出稿後の運用レポートの読み方はゲーム内広告 出稿後レポートの読み方ガイドで別途解説している。

この記事でわかること

  • 出稿前に必ず確認すべき7つの評価項目(媒体資料チェックリスト)
  • 「CPMが安い/視認率96%/想起率1.8倍」を稟議に通すときの注意点
  • 媒体営業からヒアリングすべき5つの質問テンプレート
  • 食品・飲料・日用品・外食など業界別の媒体評価視点
  • RFP・相見積もり時の進め方と稟議用チェックリスト

この記事は誰向けか

複数のゲーム内広告媒体から提案資料を受け取り、媒体選定・社内稟議・予算決定を進めているマーケティング担当者・購買担当者向け。広告そのものの基礎は広告とは|種類・媒体・効果を体系的に解説、ゲーム内広告の仕組み・種類はゲーム内広告とは|CPM・視認率・効果の完全ガイドで確認できる。

なぜ媒体資料は「読み方」を間違えやすいのか

媒体資料の数字は出稿後のレポートと同じ名前で並ぶため、つい同じ目線で読んでしまうが、出稿前は前提条件が見えにくいまま比較することになる。実務で起きやすい3つの罠を先に整理しておく。

罠1:定義が揃っていない数字を横並びにしてしまう

A社の「CPM 300円」とB社の「CPM 300円」は、片方が通常CPM・もう片方がvCPMだと実質コストは数倍違う。視認率も「最大96%」と「平均60%」では算出条件がそもそも別物だ。

罠2:「出稿後にわかればいい」項目を出稿前に確認していない

ブランドリフト調査の有無・第三者検証ツール対応・レポート提供頻度などは、契約前に握っておかないと出稿後に手戻りが発生する。

罠3:媒体側の有利な指標だけを比較してしまう

媒体資料は媒体側の強みが書かれた営業資料であり、不利な数字(フリークエンシー上限なし・視認率の独自定義など)は省略されがちだ。比較する側が何を聞きに行くかを決めておく必要がある。

各指標の定義そのもの(CPM・視認率・想起率の意味)はゲーム内広告とは|CPM・視認率・効果の完全ガイドゲーム内広告/メタバース広告の費用・料金相場に集約しているので、本記事では比較の判断基準に絞って解説する。

出稿前に必ず確認すべき7つの評価項目

ゲーム内広告の媒体資料を比較するためのアナリティクスダッシュボード。出稿前に確認すべき7つの評価項目を3層で整理する考え方を示す

媒体資料を受け取ったら、以下7項目が揃っているか/揃っていないかをまず確認する。揃っていない項目は媒体営業に追加質問する対象になる。

#

評価項目

確認すべき内容

揃っていない場合の質問例

1

配信タイトル・ジャンル構成

何タイトルに配信できるか/カジュアル・RPG・パズル等の比率

「主要配信タイトルの上位10本を教えてください」

2

ユーザー属性

年代・性別・プレイ頻度の構成比

「自社ターゲット層(例:20〜40代女性)の構成比は?」

3

CPMの定義

通常CPMかvCPMか/最低出稿金額・期間

「視認可能インプレッションあたりに換算するといくらですか?」

4

視認率の測定基準

IAB/MRC 2022年改定基準準拠/独自定義の場合の条件

「視認率96%は連続1〜2秒以上の視認可能を要件にしていますか?」

5

ブランドリフト測定

第三者調査会社対応/自社測定/実施可否

「Kantar・Nielsen等の第三者調査と接続できますか?」

6

配信レポート

提供項目・頻度(週次/月次)・形式

「インプレッション・視認率・タイトル別配信比はレポートに含まれますか?」

7

ブランドセーフティ

NGタイトル除外・コンテンツ審査の運用

「自社が避けたいジャンルを配信対象から除外できますか?」

この7項目が1枚の媒体資料に揃っていない場合は媒体側に追加で資料請求する。揃っている前提で複数媒体を比較しないと、出稿後に想定とずれるリスクが高い。

CPM・視認率・想起率の比較で陥りやすい落とし穴

デジタル広告のCPM・vCPM比較データ画面。視認率を加味して実質コストを比較する考え方を示すイメージ

各指標の数字を見るときに、特に稟議で他指標と並べる前に押さえておくべき注意点を3つ挙げる。

CPMが安くても媒体選定に失敗する理由

「CPM 300円」を稟議に出すときは、必ずvCPM(視認可能インプレッション単価)で換算した数字も併記する。視認率20%の媒体では、CPM 300円でも実質的には1,500円程度のvCPMになる。

  • 通常CPM 300円 × 視認率20% → 実質vCPM 約1,500円
  • 通常CPM 300円 × 視認率96% → 実質vCPM 約313円

媒体資料がvCPMを記載していない場合は、「CPM ÷ 視認率」で概算vCPMを自分で出して比較するのが実務での定石だ。CPMの相場感はゲーム内広告/メタバース広告の費用・料金相場、動画素材を活用する場合は動画広告 費用対効果 比較も参考になる。

視認率「最大96%」を稟議に出すときの注意点

マーケットリサーチの調査データ画面。視認率の測定基準(IAB/MRC 2022年改定)を比較するためのプロセスを示すイメージ

視認率の数値は、IABが2009年に制定した旧基準と、2022年8月にIAB/MRCが改定した新基準(Intrinsic In-Game Advertising Measurement Guidelines 2.0)で測定条件が大きく異なる。

基準

静的・ディスプレイ

動画

旧基準(2009年)

ピクセル50%以上 + 累積10秒以上

同左

新基準(2022年)

ピクセル50%以上 + 連続1秒以上

ピクセル50%以上 + 連続2秒以上

(出典:IAB/MRC In-Game Advertising Measurement Guidelines 2.0、2022年8月)

加えて、IABとMRCは2025年11月に「IAB and MRC Attention Measurement Guidelines Version 1.0」を正式公開し、視認率の上位概念としてアテンション計測(注視秒数・視覚追跡・パネル/サーベイ等4手法)を業界標準化する動きが本格化している(出典:IAB公式、2025年11月)。2026年以降の媒体資料では、視認率に加えてaCPM・APMが併記されているかも比較項目に加えたい。

媒体資料に「視認率96%」と書かれていたら、どの基準で測定されたか・3D空間の視聴角度や遮蔽をどう扱っているか・第三者検証か独自測定かを必ず確認する。

想起率の「Web広告比1.8倍」を稟議に出すときの注意点

広告想起率は媒体資料で「Web広告比1.8倍」「業界比1.7倍」のような相対値で記載されることが多い。稟議に出す前に以下を確認しておく必要がある。

  • 比較対象の「Web広告」とはバナー広告か/動画広告か/指定なしか
  • 想起率の測定形式(純粋想起/助成想起/第一想起)
  • 調査主体(媒体側自社調査か第三者調査会社か)
  • サンプル設計と調査時期

各指標の評価設計の詳細はゲーム内広告の効果測定と評価指標完全ガイドで別途解説している。

媒体営業からヒアリングすべき5つの質問テンプレート

媒体資料に書かれていない情報を引き出すために、媒体営業との打ち合わせで聞くべき質問を5つに絞ってまとめた。そのままコピーして社内ミーティング前に印刷できる形で整理している。

#

質問

期待する回答/NGサイン

Q1

記載のCPMは通常CPMですか、それともvCPMですか? vCPMでない場合、視認率を加味した実質単価はいくらになりますか?

vCPMを即答できる/回答に時間がかかる場合は要警戒

Q2

視認率の測定はIAB/MRC 2022年改定基準に準拠していますか? 独自定義の場合は要件(連続秒数・サイズ・視聴角度)を教えてください

準拠状況・独自条件を文書で提示できるか

Q3

ブランドリフト調査(Kantar・Nielsen等の第三者)と接続できますか? 自社測定の場合の費用と期間は?

第三者対応可・費用範囲を即答できるか

Q4

配信レポートの提供項目・頻度・形式を教えてください。タイトル別の配信比やフリークエンシーは出ますか?

週次レポート+タイトル別配信比が標準で出るか

Q5

第三者検証ツール(IAS・DoubleVerify等)との連携実績はありますか? ブランドセーフティの管理体制を教えてください

連携実績の有無・除外運用が文書化されているか

この5問は媒体ごとに同じ順序で聞くことで、回答の質と速度に差が出る。回答が曖昧な媒体は、出稿後にレポートでも同じ部分が曖昧になりやすい傾向がある。

業界別の媒体評価視点(食品・飲料・日用品・外食)

スマートフォンでモバイルゲームをプレイするシーン。業界別にゲーム内広告のリーチとフリークエンシーを評価するイメージ

業界によって媒体資料で重視すべき指標は異なる。代表的な業界ごとの評価視点を整理する。

業界

主な広告目的

媒体資料で重視すべき指標

関連記事

食品・飲料メーカー

第一想起獲得・新商品認知

助成想起率/純粋想起率/ブランドリフト調査の有無/若年層リーチ比率

食品・飲料の若年層リーチ施策

日用品メーカー

ブランドロイヤルティ向上・店頭想起

視認時間/フリークエンシー/購入意向リフト

外食チェーン

来店促進・第一想起

地理ターゲティング可否/配信タイトルのプレイ層/助成想起率

小売・EC

認知+検索行動誘発

リーチ規模/検索リフト測定可否/レポート粒度

食品・飲料メーカーは特に、TVCM・SNS広告との重複を避けて新規ユニークリーチを獲得する目的でゲーム内広告を組み合わせる事例が増えており、ユニークリーチ数とフリークエンシー上限が稟議の通りやすさに直結する。メタバース広告との比較を検討する場合はメタバース広告とは|効果・費用・出稿事例ガイドも参照してほしい。

提案書を比較するための稟議用チェックリスト

複数の媒体資料を並べて稟議に出すときに使えるチェックシートを以下に示す。Excel・スプレッドシートに転記して媒体ごとに○/△/×を埋める形での運用を推奨する。

確認カテゴリ

確認項目

A媒体

B媒体

C媒体

基本情報

対応タイトル数・ジャンル構成が記載されているか

基本情報

配信フォーマット(サイネージ/リワード/インタースティシャル)が明記されているか

基本情報

ユーザー属性(年代・性別・プレイ頻度)が記載されているか

CPM・費用

CPMが通常CPMかvCPMかが明記されているか

CPM・費用

最小出稿金額・最小出稿期間が記載されているか

視認率

視認率の測定基準(旧/新IAB/MRC基準/独自定義)が明記されているか

視認率

業界平均(一般ディスプレイ60〜67%)と比較できる形で書かれているか

リーチ

ユニークリーチ数(インプレッションではなく)が記載されているか

リーチ

フリークエンシー上限の設定が可能か

想起率

想起率の測定形式(純粋/助成/第一想起)が明記されているか

想起率

第三者調査会社(Kantar・Nielsen等)と接続可能か

測定

第三者検証ツール(IAS・DoubleVerify等)対応の有無

測定

配信レポートの項目・頻度・形式が記載されているか

ブランド安全

ブランドセーフティ管理体制(NG除外等)が記載されているか

比較

ゲーム内広告以外の媒体(OOH・TVCM・SNS)との比較データの提示があるか

このチェックリストを稟議資料の付録として添付すると、「なぜA媒体を選んだのか」が説明可能になる。意思決定の透明性を担保する目的で、媒体側にも「このチェックリストの観点で回答してほしい」と渡してしまうのも有効だ。

RFP / 相見積もり時の進め方

複数の媒体提案書をテーブルで比較しながらチェックリストを埋めていくRFP・相見積もりの実務フローのイメージ

複数の媒体に相見積もりを取る場合の標準的な実務フローを示す。

  1. 要件定義:広告目的(認知/想起/ブランドリフト/来店促進)・ターゲット層・予算上限・出稿期間・KPIを社内で確定
  2. RFP作成:上記7つの評価項目+5つのヒアリング質問をRFPテンプレートに転記
  3. 媒体ロングリスト:ゲーム内広告(サイネージ/リワード/プレイアブル)・OOH/DOOH・TVCM代替メディアを並列で検討。ゲームアプリ広告 媒体選定ガイド【2026年版】が選定の起点になる
  4. 媒体資料受領&チェックリスト埋め:上記の稟議用チェックリストでスコアリング
  5. 追加ヒアリング:チェックリストで○がつかない項目について追加質問
  6. 3社程度に絞り込み:定量比較(vCPM・ユニークリーチ・想起率)と定性比較(営業対応・レポート品質)でスコア集計
  7. 稟議・契約:チェックリスト+ヒアリング回答+スコアシートを稟議資料に添付

特に4〜5の往復が出稿成果を左右する。媒体側の回答スピードと正確性が、出稿後の運用品質をそのまま反映する傾向がある。

こんな企業におすすめ/おすすめしない企業

このアプローチが特に有効な企業

  • 複数媒体(ゲーム内・OOH・SNS・TVCM)を組み合わせて比較検討している食品・飲料・日用品メーカー:媒体ごとに評価軸が揃っていないと稟議が通らないため、本記事のチェックリストが活きる
  • ブランド認知・第一想起・ブランドリフトを主KPIにしているマーケティング部門:CTRではなく視認率・想起率・vCPMで評価する考え方が機能する
  • 広告主社内で稟議の透明性を求められる立場:チェックリストとヒアリング回答が稟議資料の根拠になる
  • 若年層・Z世代向けの新規ユニークリーチを増やしたい広告主:TVCM・SNS広告と重複しない接点としてゲーム内広告が候補になる

このアプローチがあまり機能しない企業

  • CTR・直接コンバージョンのみをKPIにしている企業:サイネージ型ゲーム内広告はCTR評価に向かないため、本記事の指標群(vCPM・想起率・ブランドリフト)の前にKPI設計を見直す必要がある
  • 施策効果を当日・翌日で判断したい企業:ブランドリフト調査は集計に2〜4週間程度かかるため、即時可視化を求める運用には不向きだ
  • ブランドリフト調査の費用(50〜200万円程度)を予算に含められない案件:視認率と視聴時間の間接評価でも傾向はつかめるが、稟議の根拠としては弱くなる

Ad-Virtuaの媒体資料を評価するときの参考値

参考として、Ad-Virtua(ゲーム内サイネージ型)の媒体資料に記載される代表値を示す。本記事のチェックリストと突き合わせて評価の起点にしてほしい。以下はいずれもAd-Virtua公式サイト(2026年4月確認)の掲載値だ。

指標

Ad-Virtua掲載値

確認すべきポイント

CPM目安

約300〜400円

通常CPM/サイネージ型

最小出稿

1週間300,000円・初期費用なし

短期テストが可能

視認率

最大96%

独自測定値。IAB/MRC基準準拠の詳細は要確認

広告想起率

約1.8倍(Web広告比)

比較対象「Web広告」の定義は要確認

広告好感度

約85%

調査方法・時期は要確認

注目度

約1.7倍(業界比)

比較対象は業界標準値

想定週次インプレッション

約100万(最小プラン)

ユニークリーチ数は別途要確認

対応タイトル数

600タイトル以上

2026年4月確認

媒体資料単体で完結させず、本記事のヒアリング質問テンプレートを用いて「視認率の測定基準」「想起率の比較対象」「ブランドリフト調査の接続可否」を確認することを推奨する。複数媒体を比較したうえでゲーム内広告の導入を検討している場合は、Ad-Virtuaへの無料相談から見積もり取得が可能だ。チェックリストを持参して相談すれば、各数値についてより具体的な説明を受けられる。

よくある質問(FAQ)

Q. 媒体資料の比較で最初に見るべき項目は何ですか?

A. 「CPMが通常CPMかvCPMか」と「視認率の測定基準(IAB/MRC 2022年改定準拠か)」の2点を最優先で確認してほしい。この2つが揃わないと、他の数字を並べても定量比較にならない。両方が明記されている媒体は出稿後のレポート品質も高い傾向がある。

Q. 媒体資料に書かれていない情報は、どう引き出せばよいですか?

A. 本記事の「媒体営業からヒアリングすべき5つの質問テンプレート」をそのまま媒体ごとに同じ順序で聞くのが有効だ。回答の即答性・具体性・文書化の有無で媒体側の運用品質が把握できる。複数媒体に同じ質問をすることで横並び比較が可能になる。

Q. 出稿前と出稿後で見るべき指標は違うのですか?

A. 違う。出稿前は「これから契約していい媒体か」を判断するため、媒体定義・測定基準・運用体制を中心に評価する。出稿後は「実際の配信が想定通りに動いたか」を見るため、実測値とKPIの乖離・タイトル別の配信比・想起率の実測などを確認する。出稿後のレポートの読み方はゲーム内広告 出稿後レポートの読み方ガイドで別途解説している。

Q. 稟議で「想起率Web広告比1.8倍」をそのまま使ってもよいですか?

A. そのまま使うことは推奨しない。比較対象「Web広告」の具体的なフォーマット(バナー/動画/指定なし)・調査主体(媒体側自社/第三者調査会社)・想起の測定形式(純粋/助成/第一想起)を媒体側に確認したうえで、稟議資料には条件を併記する形が望ましい。条件付きで提示することで、稟議後の効果検証フェーズでも齟齬が起きにくくなる。

Q. ゲーム内広告以外の媒体(OOH・TVCM・SNS)と並列で比較する場合はどうすればよいですか?

A. vCPM・ユニークリーチ数・想起率を共通指標として揃えると比較しやすい。TVCM代替・補完の文脈で検討する場合はテレビCMの代替・補完施策、動画素材の費用対効果を比較する場合は動画広告 費用対効果 比較が参考になる。広告全体の体系の中での位置づけは広告とは|種類・媒体・効果を体系的に解説で確認できる。