健康食品・サプリメント市場でZ世代・α世代にブランドを届けるには、SNS広告単独ではなく、複数の接点を組み合わせたブランド体験設計が必要です。国内サプリメント市場は2025年に1兆876億円規模に達しながらも(富士経済グループ、2025年11月)、SNSインフルエンサー施策は景表法ステマ規制で大手ブランドが相次ぎ措置命令を受け、TV広告では若年層への到達が急速に落ちています。新たな接点の設計が、業界全体の共通課題になっています。

この記事でわかること:

  • Z世代・α世代の健康食品に対する意識・購買行動の実態(最新調査データ付き)
  • SNS・インフルエンサー・ゲーム内広告・体験型イベントなど施策ごとの違いと比較
  • 薬機法・景表法・ステマ規制の実際の違反事例と回避策
  • 施策の効果をどう測るか(評価指標の選び方)
  • 自社の状況に合った施策を選ぶ判断基準

主に食品・飲料・健康食品メーカーのマーケティング担当者・ブランドマネージャー向けの記事です。

健康食品・サプリメント業界が直面するZ世代マーケティングの3つの課題

Z世代向け健康食品マーケティングの課題——テレビ・SNS広告・コモディティ化の3つの障壁

健康食品・サプリメント業界はここ数年で市場規模を維持・拡大していますが、Z世代・若年層への接点には構造的な難しさが重なっています。

課題1:テレビリーチの急低下

若年層のテレビ離れが加速する中、健康食品CM(認知向け訴求が中心)はZ世代に届きにくくなっています。マイナビ調査(2025年1月、対象:Z世代社会人)では、健康食品の情報収集経路はテレビ47.4%・SNS41.8%とほぼ拮抗しており、特に女性はSNSが半数を超えています。かつてテレビが独占していた認知形成の役割を、SNS・動画が急速に置き換えています。

課題2:SNS広告の回避と規制リスクの増大

Z世代のSNS上での広告スキップ・ブロック行動は加速しています。加えて2023年10月施行のステルスマーケティング規制(景表法改正)により、インフルエンサー施策でのPR表記が法的義務に。大正製薬(2024年11月)・ロート製薬(2025年3月)はいずれも健康食品・サプリメント領域でステマ規制違反措置命令を受けました。施策コストが上昇する一方でリスクも高まっています。

課題3:商品のコモディティ化と「選んでもらえない」状態

機能性表示食品市場は2024年度で7,251億円(前年度比6.4%増、矢野経済研究所、2025年)と成長を続ける一方、選択肢の増加により差別化が難しくなっています。Z世代は「なんとなく体によさそう」という動機でも購入しますが(マイナビ調査、2025年)、そのためにはまず「名前を知っている」状態が必要です。ブランド認知の前段階を作る施策設計が不可欠です。

Z世代・α世代の健康意識と購買行動の実態

Z世代の健康意識と購買行動——フィットネスやウェルネスを日常に取り入れる若年層の実態

Z世代(現在18〜28歳)の特徴

20代の健康投資意欲は全年代で最高水準の58.0%(ネオマーケティング、2025年5月調査・全国20歳以上1,000名対象)。健康を「病気がないこと」だけでなく「心が平和で穏やかなこと」「幸せを実感できること」などの精神的健康と同等に重視する人が半数以上います(MediaGene、2021年)。

購買行動の特徴:

  • 購入場所はドラッグストアが約68%(マイナビ調査、2025年1月)。月額支出のボリュームゾーンは1,000〜3,000円未満(30.9%)
  • 男性はスポーツドリンク(31.3%)・プロテイン(22.4%)の購買が他年代を上回る。機能性表示食品・トクホの認証を重視する傾向(36.8%)
  • 女性はグミ・チョコレートなど食べやすい形状のサプリを好む傾向があり、味(38.2%)・価格(30.9%)・糖質/カロリーオフを重視
  • 信頼する情報源は「インフルエンサーのPR外の投稿」(45.4%)。PR投稿は19.1%にとどまり、「リアルな声」を重視する(マイナビ調査、2025年)

Z世代のゲーム利用実態(LINEヤフー「Z世代のスマホゲームに関する調査」、2024年):スマホゲームを週1回以上プレイするZ世代は約7割、毎日プレイは約26.7%。YouTubeでゲーム実況を視聴するZ世代は53.3%。ゲームは可処分時間の中心的な使い方として定着しており、広告主にとって無視できない接点になっています。

α世代(現在15歳以下)と保護者への波及

α世代の特徴は「AIネイティブ」「デジタルとリアルの境界がない」「クリエーター気質・成果志向」。α世代の親にあたるY世代(ミレニアル世代)は国内約2,500万人規模(TKC「α世代マーケティングの重要性」、2025年4月)の購買力を持ちます。

海外調査(Mintel「次世代の食品消費者、アルファ世代とは?」、英国・米国データ)では「18歳未満の子どもを持つ親の6割が、子どもの勧めで新製品を試した経験あり」という報告もあり、子ども経由で保護者の購買に影響するルートが一定程度あると考えられます。ただし日本国内での同等調査データは現時点未確認のため、直接的な適用には注意が必要です。

韓国発製品のZ世代人気——「話題性」が購買意向を動かす

インテージヘルスケア(「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート2025」、2025年12月発表)の調査では、韓国産健康食品・サプリメントに「使いたい・今後試したい」と回答した10〜20代が43%(米国製品の20%を大幅に上回る)。Z世代が感じるイメージは「効果が高そう26.5%」「流行している24.5%」「話題性がある23.4%」の順。SNSトレンドと連動した話題性が購買意向に直結しやすいZ世代の特性を表しています。

若年層向け施策の比較

若年層向けマーケティング施策の比較——SNS・ゲーム内広告・体験型イベントなど各手法のZ世代適合度・規制リスク・コスト感

各施策のZ世代適合性・規制リスク・コスト感・主な用途を整理します。

施策

Z世代適合度

規制リスク

コスト感目安

主な用途

補足

TikTok・Instagram広告

★★★★★

中(景表法注意)

中(月30〜100万円〜)

認知・拡散

視覚訴求・UGC誘発に強い

インフルエンサーマーケティング

★★★★

高(ステマ規制)

中〜高

共感・認知

PR明記義務。転載時も要注意

ゲーム内広告(サイネージ型)

★★★★★

低〜中(CPM約300円※)

ブランド認知・好意形成

広告スキップなし。Z世代の約7割にリーチ

体験型イベント・サンプリング

★★★★

高(イベント運営費含む)

試食・口コミ誘発

リアル接触の強みあり。地域限定になりやすい

パーソナライズ提案(LINE等)

★★★★

低〜中

検討促進・CRM

診断体験でタイパ需要に対応

リスティング広告(検索)

★★

指名検索の刈り取り

Z世代は検索頻度が比較的低い

テレビCM

★★

非常に高

広域認知

Z世代リーチは低下傾向が続く

※CPM約300円:Ad-Virtua公式データ(確認日:2026年4月)。一般的なWeb広告のCPM500円前後比で約60%水準。

施策ごとの活用事例と効果データ

SNS・コンテンツマーケティング:VALX(バルクス)

プロテイン・サプリメントブランドVALXは、スポーツ科学者・山本義徳氏監修のYouTubeチャンネルを軸にしたコンテンツマーケティングで成長。「PR外のリアルな専門知識」という文脈でZ世代男性の信頼を獲得し、2023年10月期売上高74億円を達成しました(出典:薬事法マーケティング研究所「健康食品・サプリメントのマーケティング成功事例15選」)。インフルエンサーへのPR依頼ではなく、専門性コンテンツの継続発信が「知っている人が本当に使っているブランド」という認知を積み上げた成功例です。

グミ・スナック型サプリの形状イノベーション

機能性グミ市場は2021年の635億円から2024年には1,138億円へ3年で約1.8倍に拡大(各種市場調査、2025年)。20代・30代を中心にSNSトレンドと連動した急成長が続いています。「サプリを飲む」という行動を「グミを食べる」という日常行動に変換したことで、Z世代の継続的な購買ハードルが下がりました。商品設計の段階でZ世代の行動習慣に合わせることが、マーケティング以前の差別化になっています。

パーソナライズ × D2C:FUJIMI(フジミ)

「お肌のチェックシート」によるLINEパーソナライズサプリ提案と、肌診断データベース+CRM+インフルエンサー施策の組み合わせで、2022年12月期売上高24億円を達成(出典:薬事法マーケティング研究所)。Z世代の「タイムパフォーマンス重視」「自分に合ったものへの需要」を、診断体験と継続購買の仕組みで刈り取っています。

体験型マーケティング:Suppleno・BASEFOOD

  • Suppleno(サプリノ):なんばマルイでの体験型ストアとコミュニティイベントを組み合わせ、累計顧客数を1年で40倍に拡大
  • BASEFOOD:「BASEFOOD給食所」として通勤中のビジネスパーソンに2万食を無料配布。体験型イベントと会員コミュニティを組み合わせた継続ファン化が特徴

体験型施策は「知ってもらう→試してもらう」の2段階を同時に進める強みがある一方、イベント運営コストが高く、リーチ規模に物理的な上限があります。

規制リスクの落とし穴——薬機法・景表法・ステマ規制を施策設計前に理解する

健康食品・サプリメント広告の規制リスク——薬機法・景表法・ステマ規制の適用範囲と注意点

健康食品・サプリメント領域での若年層マーケティングには、媒体・クリエイティブを問わず規制の適用があります。施策設計の前提として押さえておくべき要点を整理します。

薬機法の広告規制

健康食品は医薬品ではないため薬機法の直接規制対象外ですが、「医薬品と誤認される表現」は規制対象になります(出典:薬事法広告研究所「健康食品広告の薬機法、景表法等の法律ルールを解説」、2026年4月確認)。

禁止表現の例:

  • 「高血圧の方に」(疾病予防の標榜)
  • 「病気を治す」「治療効果がある」
  • 医薬品成分名・医薬品類似の剤型表示

ゲーム内広告・SNS広告でも同じ規制が適用されます。薬機法の広告規制は「何人」にも課せられており、広告媒体・プラットフォームを問いません。

景品表示法とステマ規制

2023年10月1日施行のステルスマーケティング規制(景表法改正)により、インフルエンサーへの報酬付き依頼には「#PR」「#広告」の明記が法的義務になりました。

実際の違反事例(健康食品領域)

  • 大正製薬(2024年11月):インフルエンサーに報酬を支払い自社商品を宣伝させ、自社サイトへの転載時にPR表記を行わなかったとして措置命令(出典:薬事法広告研究所「大正製薬株式会社が『ステマ広告』で景表法違反」、2024年11月14日)
  • ロート製薬(2025年3月):機能性表示食品「ロートV5アクトビジョンa」のモニターに指定画像・文言でInstagram投稿を依頼。Instagram上ではPR表記があったが、自社サイト転載時に非表示として措置命令(出典:薬事法広告研究所、2025年3月25日)

「SNS上でPR表記していれば転載はOK」という認識が誤りだったことが明示されています。施策設計の段階で転載・二次利用フローを確認しておくことが不可欠です。

食品区分別の広告NGポイント

食品区分

代表的なNG表現

機能性表示食品

届出表示の範囲外の効能訴求、美容訴求(「美しい素肌に導く」等)

栄養機能食品

定められた表示の言い換え・独自強調

トクホ(保健機能食品)

届出表示の一部切り出しによる過度な強調

一般食品

疾病予防・治療効果の標榜すべて

施策の効果をどう測るか——評価指標の選び方

若年層向け施策は「購買転換」より「認知・好意形成」を目的とするものが多く、評価指標の設定を誤ると投資対効果が見えにくくなります。施策フェーズに合わせた指標設計が必要です。

施策フェーズ

主な評価指標

確認時の注意点

認知拡大

リーチ数、CPM、インプレッション数

Z世代のリーチは「スマホ × 非スキップ接触」の質も重要

ブランド好意形成

広告好感度、ブランドリフト率、広告想起率

サーベイ設計(ブランドリフト調査等)が別途必要

検討促進

ECサイト流入、ブランド名の検索ボリューム変化

施策後の検索増加を定点計測

購買・継続

購買転換率、リピート率、LTV

D2C・定期購入モデルで特に重要

ゲーム内広告(サイネージ型)のブランドリフト参考値:広告想起率約1.8倍、注目度約1.7倍、好感度約85%(Ad-Virtua公式データ、確認日:2026年4月)。CPM約300円は一般的なWeb広告(CPM500円前後)比で約60%の水準です。

こんな企業に向いている施策・向いていない施策

SNS広告(TikTok・Instagram)

向いている企業:20代女性へのリーチが優先。グミ・スナック型など視覚的に映えやすい商材。SNSトレンドと連動したい。キャンペーン期間中に一気に認知を広げたい。

向いていない企業:規制表現が複雑な機能性表示食品を効能中心で訴求したい。60代以上のシニア層がメインターゲット。

インフルエンサーマーケティング

向いている企業:PR表記を明示した上でリアルな使用感を伝えたい。インフルエンサーとの中長期的な関係構築ができる体制がある。転載・二次利用の管理フローを整備できる。

向いていない企業:転載・流用フローの管理体制が整っていない(ステマリスクが高まる)。単発キャンペーンで終わる想定。法務確認のコストを割けない。

ゲーム内広告(サイネージ型)

向いている企業:Z世代・α世代の親層(Y世代)へのブランド認知を最優先にしている。既存のSNS広告効率が落ちており、新しい接点を探している。動画素材(15〜30秒程度)を保有または制作できる体制がある。1週間30万円からの予算が確保できる。インフルエンサー施策のステマリスクを避けたい。

向いていない企業:即時購買転換・コンバージョン獲得が主目的の場合(ゲーム内広告は認知・好意形成フェーズに適す)。「機能性表示食品の具体的な効能」を広告クリエイティブの中心にしたい場合。60代以上が主要顧客層の場合。

体験型イベント・サンプリング

向いている企業:試食・試供品が購買決定に直結しやすい商材(グミ・ドリンク等)。ファン化・口コミ誘発を最重視する。地域限定の集中投下でも構わない。

向いていない企業:地域を絞らず全国規模でリーチしたい。単発ではなく継続的なブランド接触が必要。イベント企画・運営のリソースを割けない。

ゲーム内広告が健康食品ブランドのZ世代認知形成に合う理由

既存の媒体でZ世代への認知を広げることが難しくなる中、ゲーム内広告(サイネージ型)は「嫌われにくい広告接触」として選択肢に上がりやすい施策です。

Z世代の約7割がスマホゲームを週1回以上プレイしており(LINEヤフー調査、2024年)、その多くがカジュアルゲーム・パズルゲームを日常的に楽しんでいます。ゲーム空間の看板・モニターに表示されるサイネージ型広告はプレイを中断させないため、強制視聴型の広告とは異なる受容を生みます。Ad-Virtuaの場合、好感度は約85%(公式データ、確認日:2026年4月)と報告されています。

また、ゲーム実況(YouTubeで53.3%のZ世代が視聴)を通じた二次露出も期待できます。ゲーム内での広告接触がSNS・検索への流入を補完するかたちで機能します。

健康食品・サプリメントメーカーとしての重要な前提:ゲーム内サイネージ広告は「ブランドの認知・好意形成」を目的とするため、機能性表示食品の効能・効果を中心とした訴求には向きません。「ブランドイメージの浸透」「初めて名前を知ってもらう」という前段階に位置づけ、SNS・検索広告・D2Cとの組み合わせで設計するのが実務上の使い方です。

ゲーム内広告の仕組み・種類・費用については、以下の関連記事で詳しく解説しています:

健康食品・サプリメントブランドのZ世代向け施策設計についてのご相談は、Ad-Virtua(アドバーチャ)公式サイトからどうぞ。

よくある質問

Q. Z世代向け健康食品マーケティングで、まず始めるとしたらどの施策が有力ですか?

自社の目的とリソースによります。「若年層へのブランド認知拡大」が最優先であれば、SNS広告(TikTok/Instagram)またはゲーム内広告が費用対効果の面で検討しやすい起点です。インフルエンサー施策は拡散力が高い反面、PR管理体制の整備なしにはステマリスクが伴います。「認知」「検討」「購買」のどのフェーズを強化したいかを先に決めてから施策を選ぶことが重要です。

Q. 機能性表示食品の広告でゲーム内広告を使う際に気をつけることは?

ゲーム内サイネージ広告は短尺動画での露出形式のため、機能性表示食品の届出表示を詳細に伝えるより、ブランド名・商品の認知形成に絞った訴求が適しています。「効能・効果」を前面に出したクリエイティブよりも「ブランドイメージの浸透」を目的とした活用が基本です。薬機法の広告規制はゲーム内広告にも適用されるため、クリエイティブ制作前に法務確認を行うことをお勧めします。

Q. ステマ規制のリスクを避けながらインフルエンサーマーケティングをするには?

報酬付き依頼を行う場合は投稿・動画内での「#PR」「#広告」の明示が必須です。さらに、インフルエンサーの投稿を自社サイト・SNSに転載する際も広告表示を維持する必要があります。大正製薬・ロート製薬の事例(2024〜2025年)では「転載時の非表示」が問題になっています。施策設計の段階でクリエイティブの二次利用フローを確認・社内ルール化しておくことが現実的な対策です。

Q. Z世代と40代以上では健康食品マーケティングの打ち方が違いますか?

大きく異なります。Z世代には「SNS口コミ」「インフルエンサーのリアルな発信」「グミ・スナック形状」「パーソナライズ体験」「タイパ重視の摂取しやすさ」が有効です。40代以上は「機能性の明確な訴求」「テレビCM・薬局での実演」「定期購入の安心感」が重視されやすい傾向があります。若年層獲得を目的とする場合は、媒体・商品形状・訴求文脈を年代別に分けて設計することが求められます。

Q. α世代(小学生以下)への健康食品訴求は意味がありますか?

α世代自身への直接訴求より、α世代の親(Y世代・ミレニアル世代)へのリーチが現実的な施策になります。子どもが家庭での食品選択に影響を与えるという海外調査もあり(Mintel、英国データ)、親子が同じゲーム・エンタメ空間を共有する場面でのブランド体験が間接的な効果を持つ可能性があります。ただし日本国内でのα世代向け健康食品マーケティングの定量データは現時点限られており、今後の知見蓄積が必要な領域です。

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