Playwire(プレイワイヤー)は、ゲームサイトの広告を代理販売する会社として2007年に米国で生まれ、いまはWebサイトやアプリの広告収益化基盤「RAMP」と、MinecraftやRobloxでのゲーム内広告をあわせて提供している企業です。2019年1月から日本のフリークアウト・ホールディングスの連結子会社ですが、サービスは英語圏向けが中心で、日本の広告主が国内のゲームユーザーに広告を届けるなら国内の事業者を使うことになります。

この記事で扱う範囲と出典

この記事は、海外のゲーム内広告・ゲーム周辺広告の事業者Playwireを紹介する企業解説です。特定の発表は扱いません。数値と沿革は、とくに断りがない限りPlaywireの公式サイト(The History of Playwire、会社概要など)と、親会社フリークアウト・ホールディングスの沿革ページを出典にしています。

Playwireを取り上げるのは、ゲーム広告の売り方がゲームの中だけで完結していないことを示す例だからです。同社は攻略サイトやファンサイト、ブラウザゲーム、モバイルアプリ、Minecraftのサーバー、Robloxの体験まで、「ゲームに関わる時間」をまとめて広告主に売っています。

Playwireとはどんな会社か

Playwireのロゴ
出典: Playwire(

項目

内容

社名

Playwire, LLC

創業

2007年、米国フロリダ州

創業者

ジェイソン・デュビン(Jayson Dubin、現CEO)、スティーブン・バーガー(Steven Berger)

拠点

フロリダ州ボカラトン、ロンドン、ケベック、ニューヨーク、シドニー

親会社

株式会社フリークアウト・ホールディングス(2019年1月に連結子会社化)

事業

パブリッシャー向けの広告収益化基盤「RAMP」と、広告主向けのゲーム・エンタメ・キッズ領域の広告販売

従業員数・売上

非公開

出典: Playwire 会社概要、フリークアウト・ホールディングス グループ会社

フリークアウト・ホールディングスは、Playwireを「2007年に米国フロリダ州にて創業し、メディア向け収益化支援プラットフォームを開発・運営し、機械学習を活用した最適化運用を通じて、メディアの収益最大化を支援」する会社と説明しています。

2つの顔:パブリッシャー向けと広告主向け

Playwireの事業は、売る側と買う側の両方にまたがっています。

  • パブリッシャー向け: WebサイトやアプリにRAMPを入れてもらい、広告枠の販売と最適化を引き受ける。公式サイトでは「1,000以上のパブリッシャーが利用」としている
  • 広告主向け: RAMPでつながったサイトやアプリ、Minecraft・Robloxなどの在庫を、直販営業チームがブランドに売る

2023年7月のプレスリリースでは、700以上のパブリッシャーの資産を管理し、月間700億インプレッション、月間30億ページビュー超を扱い、十数か国で運用しているとしていました。40人以上の直販営業チームを持つことも、このとき公表しています。

PC・コンソール・モバイルのゲームユーザーにまたがるPlaywireの広告媒体のイメージ図
出典: Playwire(

広告主向けに公表している規模

広告主向けページで公表しているリーチは次のとおりです。

区分

公表値

全体

月間9,800万人超のユニーク視聴者

ゲーム

200以上のコミュニティで7,400万人

モバイルアプリ

1,700以上のアプリで月間アクティブユーザー1億7,800万人、累計10億ダウンロード超

エンタメ

6,800万人超

出典: Playwire Brand Advertising

ゲーム広告では、PC・コンソール・モバイル・メタバースを対象に挙げています。PCゲームの文脈で配信する動画広告、Minecraftでの視認率100%のリワード動画、モバイルアプリの在庫、ブランデッドゲーム(ブランドが主役のオリジナルゲーム)制作がメニューに並びます(Playwire Game Advertising)。

RAMPの仕組み

RAMPは、サイトやアプリの広告枠を複数の買い手に競争させて売るための基盤です。マネージドサービス(Playwireが運用まで担当)、セルフサービス(技術者がいるパブリッシャーが自分で設定)、モバイルアプリ向けの3つの形で提供しています。

RAMPの分析画面。広告ユニット別の収益をグラフで表示している
出典: Playwire(

公式サイトが挙げる主な機能は次のとおりです。

  • ヘッダービディングと直販の組み合わせ: Webでは30以上のデマンドパートナーがリアルタイムで入札する。アプリ向けSDKは、AppLovin、Google、Unity、Amazon TAMなど15以上のデマンドパートナーにつながる
  • AIによる価格フロアの制御: 1サイトあたり120万の動的なルールで最低落札価格を調整する。この機能だけで平均約20%の収益増になったと公表している
  • リアルタイム分析: 24〜48時間待たずに、ページ・広告ユニット・デマンド別の収益を見られる
  • 広告フォーマット: ディスプレイ、動画(プレロール、アウトストリーム、リワード)、ハイインパクト広告「Flex Suite」
Flex Suiteのハイインパクト広告の表示例(PCとスマートフォン)
出典: Playwire(

利用条件はWebサイトが月間50万ページビュー以上、アプリが1日1,000アクティブユーザー以上です。FAQでは、米国・英国・カナダといった英語圏でのトラフィックがあることも条件に挙げています(Playwire FAQ)。支払いは月初にNet 60(60日後払い)で行い、クッキーに頼らない配信のためにID5、LiveRamp、自社のDMPと連携しています。

ヘッダービディングやDSP・SSPといった用語は「プログラマティックゲーム内広告とは」で図解しています。

ここまでの歩み

Playwireは、ベンチャーキャピタルからの資金調達ラウンドを公表していません。創業時に「資金を確保した」という記述はあるものの、金額と出資者は書かれていません。そのため、資金調達の履歴ではなく、事業の広げ方と撤退の経緯を時系列で整理します。

Playwireの2007年から2024年までの沿革を示す公式年表
出典: Playwire(

年

出来事

2007年

「ビデオゲーム向けの世界初の広告ネットワーク」を掲げて創業。社名はE-Game Logicだったが、似た名前の会社から警告状を受けて1か月でIntergiに変更

2008年

Microsoft傘下のMassiveから、World of Warcraftの独占広告代理販売を受託

2009年

自社の動画プレイヤーを開発し、動画広告の販売を始める

2014年

米国・カナダ・英国・豪州に拠点を持ち、エンタメ領域に広げる。このころ社名をPlaywireに変更

2015年

子ども向けサイトの広告を扱うKids Clubを開始

2016年

動画商品「Trendi」を開始

2019年1月

フリークアウト・ホールディングスの連結子会社になる

2022年

アプリ向けのRAMP Mobile SDKを開始

2023年

経済環境の悪化を受けて事業を見直す。7月にRoblox Partner Programの最初のメンバーに

2024年

事業の拡大に向けて社内の仕組みを整える。10月にJounce Mediaの「Bellwether」ポートフォリオに選出

出典: The History of Playwire(公式年表を含む)、フリークアウト・ホールディングス 沿革

フリークアウト・ホールディングスが過半数株主になった時期について、Playwireのブログ本文は2018年、同じページの年表画像とフリークアウト・ホールディングスの沿革は2019年(1月に連結子会社化)と書いています。この記事では親会社の沿革に合わせて2019年1月としています。

World of Warcraftで成長軌道に乗る

創業当初は社員が数人、提携サイトも数えるほどでした。転機になったのが、当時世界最大のゲームだったWorld of Warcraftの独占広告代理販売です。Playwireのブログによると、この契約の保証額は当時の年間売上を上回り、その後の成長につながりました。Comscoreのゲーム系広告レップ企業のランキングで1位になったとも書いています。

動画プラットフォームの失敗

2009年ごろ、次の柱としてソーシャル、モバイル、動画を検討し、Facebookなどと競うのは難しく、モバイルはまだ早いと判断して動画を選びました。動画プレイヤーと動画広告の販売は早くから成果が出ましたが、ユーザーが動画を投稿できるオンライン動画プラットフォーム(OVP)は、ブランドにとって安全でない投稿が多く集まり、「どこにも行き着かなかった」と同社は振り返っています。そこで自社で動画とプレイリストを作る方式に切り替え、2016年の動画商品「Trendi」につなげました。

大手が撤退した子ども向け領域に入る

米国で子どものオンライン上の個人情報を保護する法律COPPAへの対応が求められるようになると、大手の多くは子ども向けサイトの広告から手を引きました。Playwireはここを好機と見て、当時最大の子ども向けサイトと組み、COPPAに準拠した広告事業を育てました。ゲーム、エンタメ、子ども向けの各領域でそれぞれ1位になった時期があり、そこから業種を問わずWebサイトを収益化できると考えて直販営業チームに投資した、と同社は説明しています。

2023年の見直しと、選別の強化

公式年表は、2023年に経済環境の悪化で事業を考え直し、「本業を磨き、新しい業種に入り、革新する」方針を取ったと記しています。2024年には品質の低いパブリッシャーとの取引を絞り込み、10月にはプログラマティック取引の調査会社Jounce Mediaから、品質の高い売り手を示す「Bellwether」ポートフォリオの一つに選ばれました。同年9月には、メディア企業Recurrent Venturesが自社の収益化基盤を閉じ、Playwireに独占販売権を任せています(Playwireの発表)。

Jounce MediaのBellwetherポートフォリオ選出を告知する公式画像
出典: Playwire(

広告出稿事例

Lunchables:RobloxとMinecraftでのゲーム内施策

クラフト・ハインツの子ども向け食品ブランドLunchablesは、Playwireを通じてRobloxで「Lunchabuild This」という体験を展開しました。広告会社Starcomや、Suit Up Games、Poptropica、Misfitsと共同で制作し、企画から2か月かからずに公開しています。プレイヤーは協力してLunchablesのアイテムを集め、建物を作って侵略者や災害から身を守ります。

公表された結果(2022年12月31日時点)は次のとおりです(Playwireのプレスリリース、2023年7月12日)。

指標

結果

総エンゲージメント時間

68,545時間

ユニーク訪問数

1,010,441

総インプレッション

13,932,987

この施策は2023年のDigiday Media Awardsで「Best Use of Emerging Tech」を受賞しました。

Digiday Media Awards受賞とRoblox Partner Program参加を告知する公式画像
出典: Playwire(

Playwireのゲーム内広告ページには、ゲーム内の看板とスキップできない動画枠にLunchablesの広告を出した例も載っています。画像には「動画完了率80%」と書かれていますが、このキャンペーン単体の結果なのか、商品全体の値なのかは示されていません。

ゲーム内の看板とスキップできない動画枠にLunchablesの広告が表示されている例
出典: Playwire(
Minecraftのゲーム画面とLunchablesのゲーム内広告を組み合わせたカスタム施策の例
出典: Playwire(

Minecraftサーバーのリワード動画(Vortex Games)

Vortex Gamesは、複数のMinecraftサーバーを運営する事業者です。2018年にサーバー群を買収した際、その一つがすでにPlaywireを使っており、その後ほかのサーバーにも広げました。プレイヤーが任意で短い動画広告を見ると、ゲーム内のアイテムなどを受け取れるリワード動画を入れています(Playwireの事例ページ)。

同社によると、第4四半期(年末商戦期)には総収入の50%以上を広告が占めることがあるといいます。Playwireの別の記事では、Minecraftサーバーの中心は13〜15歳で、1回のプレイは平均30分としています(Playwireの解説記事)。

Minecraftサーバーを運営するVortex Gamesの事例紹介画像
出典: Playwire(

リワード動画の仕組みと、ゲーム空間の看板に出す広告との違いは「リワード動画広告とは」で解説しています。

そのほかの公表事例

  • Kellogg(ケロッグ): Robloxで複数のキャンペーンを実施(数値は非公表)
  • FlexSkin(ハイインパクトのディスプレイ広告): キャンペーンのランディングページで、平均セッション時間がほかのプログラマティックのディスプレイ広告の約2倍になった(広告主名は非公表)
  • Chess.com: リワード動画のCPMが通常の動画広告の4倍になった(パブリッシャー側の事例)
  • Serebii.net(ポケモンの情報サイト): 広告枠を上下2つに保ったまま、セッションあたりの収益が前年比で約3倍、月間収益が約283%増になった(パブリッシャー側の事例)

ゲーミング向けページでは、直販で扱う広告主の例としてMcDonald's、Disney、Netflix、Nissanを挙げています。

なぜこうした事業者が伸びたのか

Playwireの沿革からは、ゲーム広告の需要がゲームの中だけでなく、攻略サイトやファンサイト、コミュニティ、ブラウザゲームといったゲームの周辺に広がっていることが読み取れます。ブランドから見ると、若い層がゲームをしている時間と、ゲームについて調べたり話したりしている時間は同じ関心の延長にあります。Playwireはその両方の在庫を集め、まとめて売る形をとってきました。

もう一つは、子ども・若年層向けの広告に規制対応が欠かせなくなったことです。COPPAへの対応を早くから事業にしたことが、その後のRobloxやMinecraftでの施策につながったと考えられます。13歳未満向けの広告の扱いは「Roblox×SuperAwesome提携で13歳未満向け広告が解禁」でも取り上げています。

日本市場ではどうか

親会社は東証に上場する日本のフリークアウト・ホールディングスですが、Playwireの利用条件は英語圏のトラフィックを前提にしています。日本のパブリッシャーや広告主に向けてPlaywireのサービスを提供しているかは、公開情報からは確認できませんでした。

日本の広告主がPlaywireを使う場面として考えやすいのは、米国・英国・カナダなどで販売している商品の広告を、現地のゲームファンに届けたい場合です。国内のゲームユーザーに向けた施策は、国内の在庫を持つ事業者を選ぶことになります。

国内では、ゲーム周辺のWebメディアやアプリの広告はアドネットワークやDSP経由で買えます。ゲームの中の看板やモニターに広告を出す「ゲーム内サイネージ」は、専門の事業者が扱っています。子ども向けの施策では、COPPAではなく、景品表示法や業界ガイドラインの確認が必要です(「子ども向けゲームアプリ広告規制対応ガイド」)。

日本で同じ広告を実施する選択肢

Playwireの商品のうち、日本でも同じ種類の接触をつくりやすいのは、ゲームの中に広告を自然に置く施策です。目的別に整理すると次のようになります。

やりたいこと

Playwireでの方法

日本での選択肢の例

英語圏のゲームファンに届ける

RAMPでつながるゲームサイト、アプリ、Minecraft・Robloxの在庫

Playwireや海外のゲーム内広告事業者に直接相談する

国内のゲームプレイ中に動画で認知を取る

Minecraftのゲーム内看板・動画枠(英語圏)

Ad-Virtuaなどのゲーム内サイネージ

ゲームそのものを作って体験させる

Playwire STUDIOSのブランデッドゲーム、Roblox体験

Robloxなどのプラットフォームで体験を制作できる国内外の制作会社

リワード動画で能動的に見てもらう

Minecraftサーバー、Chess.comなどのリワード動画

国内アプリのリワード広告(アドネットワーク経由)

Ad-Virtuaが合う企業・合わない企業

Ad-Virtuaは、国内400タイトル以上のゲーム空間にある看板やモニターに動画広告を流すアドネットワークです。Playwireが英語圏で提供しているMinecraftのゲーム内看板・動画枠に近い接触を、日本国内のゲームユーザーにつくれます。

合う企業

  • テレビCMやSNS用の動画素材があり、そのまま国内のゲームユーザーに見せたい
  • 若年層への認知を、プレイを止めない形で広げたい
  • 1週間30万円のプランから試し、広告想起率や注目度といった認知の指標で評価したい(Ad-Virtuaの公表値では広告想起率約1.8倍、注目度約1.7倍、CPM約300円)

合わない企業

  • 米国・英国など海外の消費者に配信したい
  • Robloxでの体験づくりやブランデッドゲームのように、遊べるコンテンツそのものを作りたい
  • ゲーム周辺のWebメディアやファンサイトにも、同じ窓口でまとめて出稿したい

広告主が取るべき判断

今動いてよい企業

  • 英語圏で販売している食品・飲料、玩具、エンタメの企業。PlaywireにはLunchablesのRoblox体験のような実績があり、ゲームの中とゲーム周辺のサイトをまとめて相談できる
  • 国内で若年層への認知を広げたい企業。ゲーム内サイネージなら、手持ちの動画素材で始められる

様子見でよい企業

  • 日本国内だけで、ゲーム周辺メディアからゲーム内までを一つの窓口で買いたい企業。Playwireのような事業者が国内向けに同じ形で提供しているかは確認できていない
  • 子ども向けの施策を検討しているが、社内で規制対応の確認体制がまだない企業

関連する基礎知識

よくある質問

PlaywireとFreakOut(フリークアウト)はどういう関係ですか?

フリークアウト・ホールディングスが2019年1月にPlaywire, LLCを連結子会社にしています。Playwireは自社のブログで、親会社の傘下に入った後も別会社のままだと説明しています。

日本のWebメディアやアプリでもRAMPを使えますか?

公開されている利用条件は、Webサイトが月間50万ページビュー以上、アプリが1日1,000アクティブユーザー以上で、英語圏(米国・英国・カナダ)でのトラフィックも条件に挙げています。日本のメディアが対象になるかは公表されていません。

Playwireの「ゲーム内広告」は、ゲームの中に出る広告だけですか?

ゲームの中に出る広告と、ゲームの周辺に出る広告の両方を含みます。Minecraftのゲーム内動画やRobloxの体験はゲームの中の施策で、ゲーム攻略サイトやファンサイトに出すディスプレイ・動画広告はゲームの周辺の施策です。PCゲーム向けの動画広告がどちらに当たるかは、公式サイトの説明からは判断できません。

Robloxでの広告は、Playwireに頼まないと出せませんか?

Playwireだけが窓口というわけではありません。Playwireは2023年に始まったRoblox Partner Programの最初のメンバーの1社で、同じ時期にほかの事業者も参加しています。