ゲーム内広告のブランドリフトは出稿前に試算できる

「予算を入れたあとに効果検証しようとしたら、そもそも測定設計をしていなかった」という失敗は、認知目的のキャンペーンで繰り返されやすいパターンです。ゲーム内広告に限らず、ブランドリフト施策の多くは出稿前の試算と指標設計が勝負を分けます。

この記事では、広告想起率・好感度向上幅・購入意向リフトを出稿前に試算する具体的な手順と、指標設計でよく起きる失敗パターンを整理します。

この記事でわかること:

  • ブランドリフトの主要指標とその定義
  • 出稿前の試算フレームワーク(CPB計算フロー)
  • ゲーム内広告のベンチマーク値と他媒体との比較
  • 目的別のKPI設計と測定手法の選び方
  • ブランドリフト調査の手法・費用感の比較
  • 指標設計で陥りがちな失敗パターン

こんな方が対象です: ゲーム内広告の出稿を検討しているマーケティング担当者、認知系キャンペーンのKPI設計を担当している方、ブランドリフト測定の準備が何から始めればよいかわからない方。

ブランドリフトとは何か

マーケティング分析ダッシュボード:広告想起率・好感度などブランドリフト指標の概要

ブランドリフトとは、広告キャンペーンによってブランドへの認知度・好感度・購買意向などがどれだけ変化したかを定量化する指標・調査手法です。広告接触者グループと非接触者グループに同一アンケートを実施し、その回答率の差分(絶対リフト値)で効果を測ります。

クリック率やコンバージョン数と異なり、「記憶に残ったか」「好きになったか」「買いたくなったか」という態度変容を数値化する点が特徴です。TVCM・ゲーム内広告・OOHといったクリック非誘導型の認知施策では、ブランドリフトが実質的な主KPIになります。

絶対リフトの計算式:

絶対リフト = 接触群の肯定的回答率(%) − 非接触群の肯定的回答率(%)

例: 接触群の広告想起率58% − 非接触群33% = 絶対リフト25pt

主要な5つの測定指標

指標

測定する内容

主な用途

広告想起率(Ad Recall)

広告を見た記憶があるか

認知拡大キャンペーン全般

ブランド認知度(Brand Awareness)

ブランド名を知っているか

新商品・新カテゴリ投入時

好感度(Brand Favorability)

ブランドへの好意的態度の変化

イメージ改善・ブランド強化

比較検討(Brand Consideration)

購入候補に入っているか

カテゴリ参入・シェア拡大時

購入意向(Purchase Intent)

購入したいと思う割合の変化

コンバージョン直前の後押し施策

これら5指標をすべて同時に測定しようとすると調査設計が複雑になり、費用も跳ね上がります。キャンペーン目的に応じて2〜3指標に絞るのが実務的な判断です。

なぜ出稿前の試算が重要なのか

ブランドリフト系のキャンペーンで「やってみたが効果がわからなかった」と言われる主な原因は、測定設計の後回しにあります。出稿後に「やはり測定しておけばよかった」と気づいても、接触前のベースライン(非接触群の数値)はもう取れません。

出稿前に試算を行う理由は3つあります。

1. 予算判断の根拠になる
「この予算で何人に想起させられるか」を事前に試算できると、費用対効果の目安が立ち、上長への承認説明にも使えます。後述するCPB(コストパーブランドリフト)は予算規模の妥当性を判断する際の実用的な指標です。

2. 統計的に有意な結果を出すための要件を満たせる
ブランドリフト調査で意味のある数値を出すには、接触群・非接触群それぞれ500〜1,000人以上のサンプルが必要です(Googleの推奨基準では1指標あたり約2,000件以上の回答)。サンプル確保に必要なインプレッション数を逆算して出稿量を設計するのが正しい順序です。

3. 「測れない広告費」を出さないためのガード
出稿規模が小さすぎるとブランドリフトが誤差範囲に収まり、効果があったかどうかすら判定できません。試算段階で気づければ、予算増額・期間延長・測定手法の変更などの手を事前に打てます。

出稿前の試算フレームワーク:CPB計算の手順

CPBとは何か

CPB(コストパーブランドリフト)とは、1人の態度変容者を獲得するのに必要なコストを示す指標です。サイバーエージェントのAD.AGENCYが実務普及させたフレームワークで、異なる媒体・クリエイティブを横断比較する際に使います。

CPB = 総広告費 ÷ 態度変容者数
態度変容者数 = リーチ数 × ブランドリフト率(絶対リフトpt換算)

試算の4ステップ

① 出稿予算 ÷ CPM = 総インプレッション数
② 総インプレッション数 × 視認率 = 視認可能インプレッション数
③ 視認可能インプレッション数 × 広告想起率(ベンチマーク) = 想起者数(試算)
④ 想起者数 × 絶対リフト率 = ブランドリフト貢献者数(試算)

ゲーム内広告のベンチマーク値を使った試算例

Ad-Virtuaのゲーム内サイネージ広告の公開ベンチマーク値(自社調査、ad-virtua.com確認、2026年4月)を使った試算例です。

前提条件:

  • 出稿予算: 300,000円(1週間プラン)
  • CPM: 約300円
  • 視認率: 96%(同社公表値)
  • 広告想起率(誘導): 約58%(業界平均33%の約1.8倍)

試算結果:

ステップ

計算

結果

① 総インプレッション

300,000円 ÷ 300円/CPM

約100万インプレッション

② 視認可能インプレッション

100万 × 96%

約96万インプレッション

③ 想起者数(試算)

96万 × 58%

約55.7万人

④ CPB

300,000円 ÷ 55.7万人

約0.54円/想起者

CPBが1円を下回る水準は、一般的なデジタル広告と比較して効率が高い範囲とされています(参考: サイバーエージェントAD.AGENCY「CPB基準」)。ただし、この試算はベンチマーク値に基づくシミュレーションであり、実際の効果はクリエイティブ品質・ターゲット属性・配信期間によって変動します。

ゲーム内広告のブランドリフト傾向:他媒体との比較

ゲーミングデバイスとデジタル広告:ゲーム内広告の配信環境と視認性の高さを示すイメージ

ゲーム内サイネージ広告のブランドリフト性能を他媒体と比較する際に参照できるデータを整理します。

媒体別ブランドリフト指標の概要比較

媒体

視認率目安

広告想起率目安

広告好感度

クリック非誘導設計

ゲーム内サイネージ広告(Ad-Virtua)

最大96%

約58%

約85%

Web広告(業界平均)

約67%

約33%

一部

YouTube(スキッパブル)

40〜60%(30秒以上視聴後)

△(スキップされる)

TVCM

60〜70%(GRP依存)

OOH(屋外広告)

20〜40%(通過量依存)

※ゲーム内サイネージ広告の数値はAd-Virtua自社調査(ad-virtua.com確認、2026年4月)。業界平均・他媒体は公開調査データの概算値。実際の効果はキャンペーン設計によって異なる。

ゲーム内広告がブランドリフト観点で特徴的な点:

  • プレイを中断しない設計なので、広告への不快感が少なく好感度が高い傾向がある
  • 視認率が業界平均比で高い理由は、ゲーム空間の看板・モニターとしてプレイヤーの視界に自然に入る配置設計にある
  • CTR(クリック率)は低いのが前提であり、クリック獲得を目的にするとこの媒体の使い方として間違える

目的別のKPI設計と測定手法の選び方

KPIダッシュボード:認知キャンペーンの目的別指標設計と測定手法の選び方

キャンペーン目的によって測定すべき指標と手法が変わります。事前にこの対応関係を決めておかないと、配信後に「何を持って成功とするか」が曖昧になります。

目的別KPIセット

キャンペーン目的

主KPI

副KPI

推奨測定手法

認知拡大

広告想起率・視認率

ユニークリーチ、フリークエンシー

ブランドリフト調査 + 配信レポート

ブランド好感度向上

好感度・NPS変化

購買意向、推奨意向

事前後アンケート(独立調査会社推奨)

リーチ最大化

インプレッション・ユニークリーチ

CPM、フリークエンシー上限

配信レポートのみで可

第一想起獲得

純粋想起率(自発想起)

助成想起率

定期ブランドサーベイ(継続計測必須)

指標設計の3層構造

指標設計は以下の3層で整理すると、測定漏れと目的のズレを防ぎやすくなります。

層①:リーチ・露出層(配信レポートで自動取得できる)

  • インプレッション数、ユニークリーチ、フリークエンシー
  • 広告が「届いた数」の確認に使う

層②:認知・想起層(ブランドリフト調査で測定)

  • 広告想起率、ブランド認知度、好感度、購買意向
  • 「態度が変わったかどうか」の確認

層③:行動・反応層(GAやSearch Consoleで追える)

  • 指名検索数の増加、Webアクセス、実購買数
  • ブランドリフトの間接的な行動効果の確認

ブランドリフト調査の手法比較と費用感

アンケート・調査リサーチのイメージ:ブランドリフト調査手法の選び方と費用感

主要4手法の比較

手法

特徴

費用目安

向いているケース

インバナーサーベイ

バナー枠内でアンケート表示。回答率高い。設問数制限(1〜3問)

30〜50万円程度

大量配信中のリアルタイム計測

リードバナーアンケート

クリック後に専用ページへ誘導。複数設問対応可。離脱リスクあり

50〜100万円程度

詳細な態度変容測定が必要な場合

調査会社モニター活用

属性精緻設定可能。最も信頼性が高い。本格的なRCT設計対応

50〜200万円程度

本格的な効果検証・IR開示を想定

プラットフォーム付帯BLS

Google/Meta/LINE等が提供。配信プラットフォームとデータ連動

別途費用、または一定予算以上で付帯

各プラットフォームの配信評価

(出典:GMOリサーチ&AI、電通マクロミルインサイト、2025〜2026年確認)

参考:Google Brand Liftの条件(YouTube広告)

  • 1指標あたり最低1,500USD(約18〜20万円)
  • 最低10日間の配信
  • 推奨予算では1指標あたり4,100件以上の回答を目標

(出典:Google広告ヘルプ、2026年4月確認)

ゲーム内広告とブランドリフト調査の関係

2026年4月時点でのAd-Virtua公式サイトの確認では、ブランドリフト調査のパッケージ提供・サポートの有無は公式情報として明記されていません。ゲーム内広告の配信費用(1週間300,000円〜)とは別に、ブランドリフト調査を実施する場合は上記の外部委託費用が発生することを前提に予算設計してください。

指標設計で陥りがちな失敗パターン

失敗①:サイネージ型広告にCTRをKPIに設定する

ゲーム内サイネージ広告は「ゲームの看板・モニターに動画が流れる」設計で、クリックを促す仕掛けがありません。CTR(クリック率)を主KPIにしてしまうと、「クリックがほぼゼロだった=効果なし」という誤った評価につながります。

この媒体でCTRをKPIにするのは、「テレビCMのクリック率を測って評価する」のと同じ構造的な間違いです。

正しい対応: 認知・想起系のKPIを主KPIに設定し、CTRは参考指標として扱うか計測対象から外す。

失敗②:視認率だけでブランドリフトを語る

視認率は「広告が画面に表示された割合」であって、「広告が記憶に残った割合」ではありません。視認率96%であっても、広告想起率はその約半分(58%前後)になるのは、視聴者全員が広告に注目しているわけではないためです。

「視認率が高いからブランドリフト効果も高い」という主張は、指標の意味を混同しています。

正しい対応: 視認率・想起率・好感度はそれぞれ別のKPIとして設定し、それぞれに測定方法を対応させる。

失敗③:ベースライン(非接触群)の測定を忘れて出稿する

ブランドリフトは「変化量」を測る指標です。出稿前に非接触群のベースライン数値を取っておかないと、出稿後に接触群の数値を取っても「変化」が測れません。

特に指名検索数・ブランド認知率などは季節性・市場トレンドの影響を受けるため、出稿直前のベースライン計測が重要です。

失敗④:調査設計なしで出稿してしまう

「まず出稿して、効果が出たら次から調査する」という判断は、初回キャンペーンを検証不能なまま終わらせるリスクがあります。出稿前に調査会社との打ち合わせを行い、サンプル設計・設問設計・調査タイミングを決めておくのが標準的な進め方です。

統計的有意性の確保に必要な最小サンプル数(参考):

  • 接触群・非接触群それぞれ500〜1,000人以上が目安
  • 小規模出稿ではサンプルが確保できず、効果が「誤差」として処理されることがある

(出典:Google広告ヘルプ、GMOリサーチ&AI、2026年4月確認)

業種別ブランドリフト目標値の参考設定

業種ごとにブランドリフトの目標値は異なります。自社の業界標準(Norm値)と比較することで、試算の現実性を確認できます。

業種

広告想起率の目安(一般的なデジタル広告)

好感度リフト目安

特記事項

食品・飲料

20〜40%

5〜15pt

季節性・新商品投入タイミングで大きく変動

日用品・消費財

15〜35%

3〜10pt

ブランド認知度が既に高い場合はリフト幅が小さくなる傾向

外食・飲食チェーン

25〜45%

5〜15pt

来店意向との連動を重視

交通・インフラ

15〜30%

3〜8pt

公共性の高さで好感度ベースが高め

エンタメ・ゲーム

30〜55%

10〜20pt

ゲーマー層への親和性が高く高リフトになりやすい

※上記は一般的なデジタル広告のベンチマーク概算値であり、ゲーム内広告特有の水準ではありません。ゲーム内広告の業種別実績差異については2026年4月時点でAd-Virtua公式から公開データを確認できていないため、実際の数値は出稿後のレポートや担当者へのヒアリングで確認してください。

指標設計チェックリスト:出稿前に確認すべき7項目

出稿前にこの7項目を確認することで、「測れない広告費」を出すリスクを大幅に下げられます。

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確認項目

確認方法

1

主KPIが広告想起率・好感度等の態度変容指標になっているか

目的の確認

2

CTRをKPIにしていないか(サイネージ型広告の場合)

設計レビュー

3

ベースライン(非接触群の事前数値)を取る設計になっているか

調査設計の確認

4

統計的有意性を出せるサンプル数(500〜1,000人以上)が確保できるインプレッション規模か

試算実施

5

測定期間(最低4〜8週間)が確保されているか

スケジュール確認

6

調査手法(インバナーサーベイ/調査会社等)と費用を予算に計上しているか

予算計画確認

7

CPBの目標値を設定しているか

試算実施

こんな企業に向いている

ゲーム内広告でブランドリフトを追う施策が合っているのは、以下の条件を満たす企業です。

  • 認知拡大・ブランドリフトを主目的としており、クリックやコンバージョンを主KPIにしない
  • 週30万円〜の予算で4〜8週間以上継続出稿が可能
  • TVCM・OOHの補完として新しい認知接点を探している
  • Z世代・ミレニアル世代(20〜40代のスマホゲームユーザー)へのリーチを広げたいBtoCブランド
  • ブランドリフト調査のための別途予算(30〜200万円程度)を確保できる

こんな企業には向いていない

反対に、ゲーム内広告とブランドリフト施策の組み合わせが合いにくい場合も明確にしておきます。

  • 短期的なコンバージョン(購買・申込)のROIを主指標にしている
  • 1〜2週間の単発出稿でブランドリフト効果を検証しようとしている(統計的に有意なサンプルが取れない)
  • ゲームユーザー以外の特定ターゲット(高齢者・ビジネスパーソンへのBtoB訴求等)が対象
  • ブランドリフト調査費用を配信予算とは別に確保できない

よくある質問

Q1. ブランドリフト調査はゲーム内広告と同時に申し込めますか?

2026年4月時点でAd-Virtua公式サイトでの確認では、ブランドリフト調査のパッケージ提供・サポートの有無は明記されていません。配信と調査を連動させたい場合は、出稿前に担当者への確認を推奨します。外部調査会社(GMOリサーチ、電通マクロミルインサイト等)との連携が必要になる場合があります。

Q2. 週1回(300,000円)の出稿でブランドリフト調査に必要なサンプル数は集まりますか?

100万インプレッション/週で視認率96%だとすると視認可能インプレッションは約96万回です。有効サンプルを得るには調査手法によって変わりますが、接触群500人以上を確保するには複数週の継続出稿が前提になります。1週間のみでは統計的に有意な結果が出ない可能性が高いため、最低4週間以上の継続を検討してください。

Q3. CPBが「良い」水準とはどのくらいですか?

サイバーエージェントAD.AGENCYが実務で使う目安として「100円以下」が一つの基準として言及されています。ゲーム内広告の試算例(約0.54円/想起者)はこの基準を大きく下回りますが、あくまでベンチマーク値を使ったシミュレーションです。自社の過去キャンペーンのCPBと比較することで、より現実的な判断基準になります。

Q4. 指名検索数の増加をブランドリフトの代替指標として使えますか?

補足的な指標としては有効ですが、主KPIとしての使用には注意が必要です。指名検索数は季節性・プレスリリース・PR等の要因にも影響を受けるため、ゲーム内広告単体の貢献を分離して評価するのが難しいためです。ブランドリフト調査と組み合わせて使うのが現実的な運用です。

Q5. 好感度向上の「向上幅」の目標はどう設定すればよいですか?

自社の過去キャンペーンのデータがあれば、それをベースにします。初めての場合は業界Norm値(一般的なデジタル広告で好感度リフト3〜15pt)を参照しつつ、「業界平均の1.5倍を目標」等の形で設定するのが実務的です。絶対値ではなく競合・自社比較の相対値で設定するとKPIとして機能しやすくなります。

ゲーム内広告でブランドリフトを設計するなら

ブランドリフト施策をゲーム内広告で設計する場合、「出稿費用の安さ」だけでなく「測定体制まで含めた予算設計」が成否を分けます。

Ad-Virtua(アドバーチャ)は国内400タイトル以上のゲームアプリにサイネージ広告を配信するアドネットワークです。1週間300,000円〜の出稿プランで週100万インプレッションが目安となっており、自社調査ベースの広告想起率・好感度・視認率のベンチマーク値を公開しています(ad-virtua.com、2026年4月確認)。

ゲーム内広告を認知設計の一手として検討している場合、以下のような企業に特に適合性が高いとされています。

  • TVCM・SNS広告の補完として「プレイ体験を邪魔しない広告接点」を探している企業
  • 20〜40代のスマホゲームユーザーにリーチしたいBtoCブランド
  • 週単位で配信設計を柔軟に組みたい企業

ブランドリフト測定の設計から出稿効果の試算まで含めて相談したい場合は、Ad-Virtuaの公式サイトから問い合わせてみてください。

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