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なぜゲーム内広告は従来の広告より効果が低いのか

ゲーム内広告の現状と従来広告との効果差

ゲーム市場は年々拡大を続け、2023年の国内市場規模は2兆円を超え、5553万人ものゲーム人口を抱える巨大市場へと成長しています。若者を中心に、SNSやストリーミング配信と同じくらいの時間をゲームに費やすようになってきました。

しかし、そんな巨大市場であるゲーム内広告は、なぜか従来の広告と比較すると効果が低いと言われることがあります。この現象は業界内でも注目されている課題です。

ゲーム内広告の可処分時間割合に対する広告費を見ると、SNSと比較して約3割も少ないという現状があります。これは広告効果の低さを示す一つの指標とも言えるでしょう。

私はVRゲーム開発をきっかけにゲーム内広告の可能性を見出し、メタバース広告プラットフォーム「Ad-Virtua」を立ち上げました。その経験から、ゲーム内広告が従来の広告より効果が低いと言われる理由と、その打開策について考察していきたいと思います。

従来型広告とゲーム内広告の根本的な違い

まず、従来型の広告とゲーム内広告の根本的な違いを理解する必要があります。テレビCMや屋外広告、ウェブ広告などの従来型広告は、ユーザーの「受動的な視聴体験」を前提としています。

一方、ゲーム内広告はユーザーが「能動的にゲームをプレイしている最中」に表示されるという特性があります。この根本的な違いが、広告効果の差を生み出す大きな要因となっているのです。

ゲームをプレイしているユーザーは、ゲームの世界に没入しています。そのため、広告に注意を向ける余裕がなく、広告メッセージが十分に伝わらないことがあります。

さらに、ゲーム内広告は従来の広告と比較して、ユーザーの「広告回避行動」を引き起こしやすいという特徴もあります。ゲームプレイを中断させるような広告は、ユーザーにとって大きなストレスとなり、ブランドに対する否定的な印象を与えてしまうことがあるのです。

このような根本的な違いが、ゲーム内広告の効果を低下させる要因となっているのではないでしょうか?

ゲーム内広告の種類と効果の差

ゲーム内広告には、大きく分けて以下のような種類があります。それぞれの特性と効果について見ていきましょう。

インタースティシャル広告(全画面広告)

ゲームの合間に全画面で表示される広告です。視認性は高いものの、ユーザー体験を大きく妨げるため、ブランドに対する否定的な印象を与えやすいという欠点があります。

NHKの調査によると、ユーザーの多くはこのような広告に対して「鬱陶しい」と感じており、広告ブロッカーの導入を促進する一因となっています。現在、モバイル広告ブロックはあらゆる広告ブロック活動の55%を占めるまでになっています。

バナー広告

ゲーム画面の一部に表示される小さな広告です。ユーザー体験への干渉は少ないものの、ゲームに集中しているユーザーの目に留まりにくく、効果が限定的であることが多いです。

リワード広告

広告を視聴することでゲーム内報酬を得られる広告形式です。ユーザーの自発的な選択に基づくため、否定的な印象は少ないものの、報酬目的での視聴となり、広告内容への関心が薄れがちです。

電通の調査によると、2024年のインターネット広告費は3兆6,517億円(前年比109.6%)と成長を続けていますが、ゲーム内広告はその中でも効果測定の難しさから、十分に活用されていない領域と言えるでしょう。

ネイティブ広告(ゲーム内看板など)

ゲームの世界観に溶け込んだ形で表示される広告です。ユーザー体験を損なわない一方で、ゲームプレイに集中しているユーザーには気づかれにくいという課題があります。

しかし、アドバーチャが提供するような「ゲーム・メタバースの看板の中に動画広告を出せる」広告ネットワークは、この課題を解決する可能性を秘めています。

ゲーム内広告が効果を発揮できない主な理由

では、なぜゲーム内広告は従来の広告と比較して効果が低いのでしょうか?主な理由を詳しく見ていきましょう。

ユーザーの注意散漫と没入感

ゲームプレイ中のユーザーは、ゲームの目標達成や操作に集中しています。そのため、広告に注意を向ける余裕がなく、広告メッセージが十分に伝わらないことが多いのです。

ゲームは没入型のメディアです。プレイヤーはゲームの世界に入り込み、現実世界から切り離された状態になります。このような状態では、広告メッセージを処理する認知的リソースが限られてしまうのです。

コンテクストとの不一致

ゲーム内広告がゲームの世界観やコンテクストと一致していない場合、ユーザーに違和感を与え、広告効果が低下します。例えば、中世ファンタジーゲームに現代的な製品の広告が表示されると、ユーザーの没入感が損なわれ、否定的な印象を与えてしまいます。

ユニコーンのブランドマーケティングチームが行った調査では、ゲーム内広告の効果を高めるには、ゲームのコンテクストとの一致が重要であることが示されています。

測定の難しさと最適化の遅れ

従来の広告と比較して、ゲーム内広告は効果測定が難しいという課題があります。クリック率やコンバージョン率などの指標が取りにくく、広告効果の最適化が遅れがちになるのです。

Infinity Agentの情報によると、コンバージョン率の計算方法は「コンバージョン率(%)=コンバージョン数÷サイトへの訪問数(クリック数)」ですが、ゲーム内広告ではこの計算が難しいケースが多いのです。

ユーザー体験の阻害

特にインタースティシャル広告のように、ゲームプレイを中断させる広告は、ユーザー体験を大きく阻害します。これにより、ブランドに対する否定的な印象を与え、結果として広告効果が低下してしまうのです。

アドバーチャ代表取締役CEOの私の経験からも、ユーザー体験を阻害しない広告形式の重要性は明らかです。ゲームの世界観を損なわず、ユーザーにストレスを与えない形で広告を露出することが、効果的なゲーム内広告の鍵となります。

従来広告との効果比較データ

ゲーム内広告と従来の広告の効果を比較するデータを見ていきましょう。これにより、両者の差がより明確になるはずです。

広告認知率と想起率の差

イギリスの通信事業社TalkTalkが実施した調査によると、ゲーム内広告は従来型のWeb広告と比較して、広告想起率が約1.8倍、注目度が約1.7倍、視認率が約1.4倍という結果が出ています。

一見すると、ゲーム内広告の方が効果が高いように見えますが、これは適切に設計された理想的なゲーム内広告の場合であり、実際には多くのゲーム内広告がこのような効果を発揮できていないのが現状です。

コンバージョン率の比較

一般的にBtoC向け商材などにおいて購入をコンバージョン設定していた場合のコンバージョン率は1%から3%前後が多くなります。一方、ゲーム内広告のコンバージョン率はこれを下回ることが多いのです。

ただし、ゲーム商材のプロモーションにゲーム内広告を活用した場合は、ターゲットとの相性が良く、高いコンバージョン率を記録することもあります。ユニコーンが行った調査では、スマホゲーム「エクスアストリス」のゲーム内広告において、好意度は7.3pt、利用意向は28.3ptもリフトしたという結果が出ています。

ユーザー印象の違い

ユニコーンが行った調査によると、「ゲーム内広告は記憶に残るか?」という質問では、テレビCMと屋外広告と比較すると、広告接触者と広告非接触者でリフトはありませんでしたが、ネット広告と比較すると、広告接触者は広告非接触者よりも4ptリフトしました。

また、「ゲーム内広告で見る方が興味を持ちやすいか?」という質問では、テレビCM、屋外広告、ネット広告の全てで、広告接触者は広告非接触者よりもリフトしました。実際にゲーム内広告に接触したユーザーは、商材により興味を持ちやすく感じていることがわかりました。

ゲーム内広告の効果を高める最新アプローチ

ゲーム内広告の効果が従来の広告より低いという課題に対して、どのようなアプローチで解決していくべきでしょうか。最新の手法を見ていきましょう。

プレイアブル広告の活用

プレイアブル広告は、タップ、スワイプ、ドラッグ、ホールドといった直感的なタッチ操作を用いて、実際のゲームプレイを再現するインタラクティブな広告ユニットです。これにより、ユーザーは「購入前にお試し」できる体験を得られます。

RevXの調査によると、プレイアブル広告は従来のビデオ広告や静的広告と比較して、最大で700%高いエンゲージメント率を記録しています。また、プレイアブル広告を通じて獲得したユーザーの質は高く、顧客獲得コスト(CAC)が40%低下し、売上が70%向上したという結果も出ています。

ゲーム世界観との統合

ゲームの世界観に自然に溶け込む広告は、ユーザー体験を損なわず、より高い効果を発揮します。アドバーチャが提供する「ゲーム・メタバースの看板の中に動画広告を出せる」広告ネットワークは、この考え方に基づいています。

広告動画の再生回数は1000万回を突破し、300以上のゲームタイトルに対応しているという実績からも、この手法の有効性がうかがえます。

データ駆動型の最適化

ゲーム内広告の効果測定と最適化を徹底することで、効果を高めることができます。ユーザーの行動データを分析し、広告表示のタイミングやフォーマットを最適化することが重要です。

例えば、ゲームのレベルクリア後やポーズ中など、ユーザーの認知的負荷が低い瞬間を狙って広告を表示することで、広告効果を高めることができます。

クロスメディア戦略との連携

ゲーム内広告単独ではなく、テレビCMやSNS広告などと連携したクロスメディア戦略を展開することで、相乗効果を生み出すことができます。

特に、ゲーム実況がYouTubeやTikTokの人気コンテンツとなっている現在、ゲーム内広告は実況動画を通じて二次的な拡散効果を期待できます。広告が映った部分がカットされずに実況動画に含まれ、それがSNSで拡散されることで、より多様な層にリーチすることが可能になります。

メタバース時代のゲーム内広告の可能性

最後に、メタバース時代におけるゲーム内広告の新たな可能性について考えてみましょう。

没入型体験と広告の融合

メタバースでは、ユーザーはより没入感の高い3D空間で活動します。この環境では、広告もより自然に空間に溶け込み、ユーザー体験の一部となる可能性があります。

例えば、メタバース内のバーチャルシティに実在するブランドの看板や店舗を設置することで、現実世界とバーチャル世界の境界を超えた広告体験を提供できるでしょう。

ユーザー参加型広告の展開

メタバースでは、ユーザーが広告に能動的に参加する形態が可能になります。例えば、ブランドが主催するバーチャルイベントや、ユーザーが自分のアバターに着用できるブランドアイテムなど、従来の広告の枠を超えた体験を提供できるでしょう。

このような参加型広告は、ユーザーのエンゲージメントを高め、ブランドとの深い関係性を構築することができます。

データ活用の進化

メタバース環境では、ユーザーの行動データをより詳細に収集・分析することが可能になります。視線の動き、滞在時間、インタラクションのパターンなど、従来のウェブ広告では取得できなかったデータを活用することで、より効果的な広告配信が実現できるでしょう。

ただし、プライバシーへの配慮は不可欠です。ユーザーの信頼を損なわないデータ活用のあり方を模索していく必要があります。

新たな収益モデルの創出

メタバースにおけるゲーム内広告は、開発者にとっても新たな収益源となります。アドバーチャの仕組みでは、広告主から利用料を受け取り、メタバース開発者に登録報酬を支払うというモデルで運営されています。

このような仕組みにより、開発者はより質の高いコンテンツを無料または低価格で提供しながら、持続可能なビジネスモデルを構築することができます。

まとめ:ゲーム内広告の未来

ゲーム内広告が従来の広告より効果が低いと言われる理由は、ユーザーの注意散漫と没入感、コンテクストとの不一致、測定の難しさと最適化の遅れ、そしてユーザー体験の阻害にあります。

しかし、プレイアブル広告の活用、ゲーム世界観との統合、データ駆動型の最適化、クロスメディア戦略との連携など、新たなアプローチによって、これらの課題を克服することが可能です。

特に、メタバース時代の到来により、ゲーム内広告はより没入感のある、ユーザー参加型の広告体験へと進化していくでしょう。広告がコンテンツの一部として自然に溶け込み、ユーザーに価値を提供する形へと変わっていくことで、従来の広告を超える効果を発揮する可能性を秘めています。

私たちアドバーチャは、「リアルとメタバースの未来を創造する」というビジョンのもと、ゲーム内広告の可能性を最大限に引き出すプラットフォームを提供しています。ゲームの世界観を損なわず、ユーザーにストレスを与えない形で広告を露出することで、広告主とゲーム開発者、そしてユーザーの三者にとって価値のある広告体験を創造していきたいと考えています。

ゲーム内広告は、まだブルーオーシャンの状態です。その可能性を最大限に引き出すことで、従来の広告を超える効果を発揮する日も、そう遠くないでしょう。

詳細はアドバーチャ公式サイトをご覧ください。メタバース広告の可能性を一緒に探求していきましょう。


WRITTEN BY

水野 征太朗

アドバーチャ株式会社代表取締役CEO | 学生時代からインディーズゲーム開発者として、複数のゲームを開発・リリース。名古屋大学経済学部を卒業後、アビームコンサルティング株式会社にて、メタバース/XR/センサーなど先端技術を用いたソリューションの提案・開発に従事。その後、アマゾンジャパン合同会社にてデータ分析・ツール開発・プロセス改善等を経験。2022年にアドバーチャ株式会社を創業。