子ども接点の施策を検討しているマーケティング担当者にとって、「何が禁止で、何は許されるのか」は判断の前提になる。結論から言うと、日本には子ども向け広告を専門に規制する法律は現時点で存在しない。ただしGoogleやMetaといったデジタルプラットフォームの独自ポリシーが事実上の強制力を持っており、違反すれば広告アカウント停止・制裁金といった実害につながる。

この記事では、次の4点を解説する。

  • 日本の子ども向け広告規制の現状(法律・業界自主規制)
  • デジタルプラットフォーム別の具体的な制限内容
  • 国際規制の動向と日本企業への影響
  • 媒体別の規制リスク比較と、今すぐ使えるチェックリスト

子どもや10代への接触を含む施策を設計・実施している企業のマーケティング担当者・ブランドマネージャーを想定している。

日本の規制の現状:法的規制はなく、自主規制が中心

子ども向け広告の法的規制・業界自主規制・プラットフォームポリシーの3層構造」 width=

日本には、子どもを対象にした広告を包括的に規制する法律がない(2026年4月時点)。消費者基本法(2004年)にも子どもに関する固有の広告規定は含まれていない。

規制の担い手は主に次の3層構造になっている。

担い手

拘束力

法的規制

景品表示法・薬機法・個人情報保護法(子ども向けに限らず適用)

強制力あり

業界自主規制

民放連・GCNJ・JARO・CESA等

任意(申し合わせ)

プラットフォームポリシー

Google・Meta・YouTube等

違反=アカウント停止などの実害あり

実務上、最もリスクが高いのはプラットフォームポリシーの違反だ。法律ではなくても、配信停止や制裁金という形で即座に影響が出る。

業界自主規制の主なガイドライン

民放連「児童向けコマーシャルに関する留意事項」

日本民間放送連盟が放送基準の中で定める自主規制。2023年5月改正、2024年4月施行。子ども向け表現の倫理的配慮を求めるが、法的拘束力はなく、放送局・広告主への申し合わせに近い。

GCNJ・セーブ・ザ・チルドレン「子ども広告ガイドライン 2023年増補版」

2016年策定、2023年にインターネット広告の変化に対応して増補。「法的拘束力はない」が、業界の判断基準として参照される。

配慮を求める主な行為:

  • 番組・コンテンツと広告の区別がつかない手法(5歳以下への懸念が特に強い)
  • 友人関係を利用した購買誘導(バイラル戦略)
  • 人気キャラクターのコレクション化・希少性演出
  • 親の許可なく直接子どもに購買を促す広告

CESA「未成年の保護についてのガイドライン(2022年4月改定)」

ゲームアプリ業界の自主規制。未成年(18歳未満)による課金に関する保護者同意要件と注意文言の掲載義務を定めている。ゲーム内広告そのものへの詳細な規制は現時点で確認できていないが、運用上の配慮が必要な領域である。

デジタルプラットフォーム別の規制(実務上、最重要)

デジタルプラットフォーム(Google・Meta・YouTube・TikTok)の子ども向け広告規制比較」 width=

プラットフォームごとに規制の内容と対象年齢が異なる。担当者が最初に確認すべき領域はここだ。

Google広告

  • 子ども向けに制作されたコンテンツへのパーソナライズド広告配信は禁止(Google広告ポリシー「広告と子ども向けコンテンツ」より。2026年4月確認)
  • 2021年8月以降: 13歳以上の未成年者に対しても、年齢・性別・興味関心に基づくターゲティングを廃止
  • 子どもに誤解を与える主張・虚偽の主張も禁止
  • 違反した場合:広告アカウント停止のリスクあり

YouTube

  • COPPAに準拠して運用
  • 13歳未満のユーザー向けコンテンツはパーソナライズ広告・リマーケティング広告が禁止
  • 「子ども向け」に設定されたコンテンツへのターゲティング広告は制限される
  • 出典:Google広告ポリシー(2026年4月確認)

Meta(Instagram・Facebook)

  • 2021年8月23日以降: 18歳未満の利用者への興味・関心ターゲティング、リターゲティングを大幅制限
  • 事実上、10代ユーザーへの精密ターゲティングはほぼ不可能な状態
  • 出典:キッズマーケティングのスフレ「こども向けのマーケティングのいま」

Google AdSense(メディア側)

  • コンテンツが子ども向けの場合、「子供向け取り扱いタグ(TFCD/TFUA)」の設定が必要
  • 設定するとパーソナライズドでない広告のみが配信される(Google AdSenseヘルプより。2026年4月確認)

海外の規制動向:日本は最も緩い部類に入る

日本の自主規制のみの現状は、先進国の中では「規制が弱い国」に分類される。

国・地域

主な規制内容

対象年齢

スウェーデン

子ども向けテレビ番組中のCM放映禁止(番組前後のみ可)

12歳未満

ノルウェー

12歳未満への広告禁止。2024年4月からは清涼飲料・菓子の18歳未満広告も禁止

12歳未満(一部18歳未満)

カナダ(ケベック州)

テレビ広告禁止

13歳未満

英国

HFSS食品の広告を午前5:30〜午後9:00に放送禁止(2025年10月施行)。ウェブ・SNS・ゲームも対象

視聴者の25%以上が16歳未満の場合

EU

不公正商取引指令で子どもへの直接的な広告勧誘を禁止

未成年

米国

CARU(子ども広告審査ユニット)が12歳以下向けの自主規制ガイドライン策定・審査

12歳以下

日本

子ども専用の法的規制なし(業界自主規制のみ)

出典:ヒューライツ大阪(2017年)、label-bank「英国HFSS食品広告規制」(2024年3月)、Yahoo!ニュース専門家記事

特に注目すべきは英国の動向だ。 HFSSとは「高脂質・砂糖・塩分食品(High in Fat, Sugar and Salt)」のこと。2025年10月以降、テレビだけでなくウェブ・SNS・ゲームも対象となっており、日本の食品・飲料メーカーが英国向け施策を展開する場合は注意が必要だ(施行後の運用状況は引き続き確認推奨。2026年4月時点)。

WHOも2023年改定ガイドラインで、漫画キャラクターやおもちゃ同梱、有名人推薦などをHFSS食品の「問題のある広告手法」として指定し、各国に強制規制を勧告している(日本WHO協会「WHO食品マーケティングガイドライン」2023年7月)。

米国COPPAの影響

アプリが米国市場でも配信される場合、COPPA(Children's Online Privacy Protection Act)への対応が実質的に必要になる。13歳未満の子どもからオンラインで個人情報を収集する場合、保護者への通知と「検証可能な保護者の同意」の取得が義務付けられる。Google PlayやApp Storeにはアプリの対象年齢申告義務があり、申告内容と実態が異なると審査落ちや削除リスクがある。

子どもの発達段階と広告認識能力

子どもの発達段階と広告認識能力の違いをあらわす子どもたちの様子

各国の規制年齢の根拠になっているのが、子どもの広告認識能力に関する研究だ(ヒューライツ大阪「子どもに対する広告・マーケティングの影響を考える」米国心理学会調査引用より)。

  • 5歳以下: テレビ番組と広告を区別できない
  • 8歳以下: 広告が購買意欲を刺激する意図があることを理解できない
  • 12歳以下: 情報を信じやすく、大人より広告の影響を受けやすい

これを踏まえると、子どもが主要なユーザー層となる媒体・コンテンツでは、「大人向けと同じ手法をそのまま使う」こと自体がリスクになる。

避けるべき広告手法:禁止・注意リスト

GCNJ・セーブ・ザ・チルドレン ガイドライン(2023年増補版)、総務省の新指針方針(2024年)などを踏まえると、次の手法は回避すべきだ。

  1. 番組・コンテンツと広告の区別が困難な表現(過剰なネイティブ広告・ステルスマーケティング)
  2. 心理操作的マーケティング(人気キャラのコレクション化、希少性の過剰演出)
  3. 友人関係・ピアプレッシャーを利用した購買誘導
  4. 親の許可なく子どもに直接購買行動を促す広告
  5. HFSS食品(高脂質・砂糖・塩分の高い食品)の子どもへの積極的訴求(英国・WHO基準)
  6. ダークパターン(消費者を不利な決定に誘導するUI/UX設計。総務省が2024年内の指針改定で規制対象に)

なお、消費者庁はステルスマーケティングについて独自の規制指針を設けており(2023年10月施行)、インフルエンサーや口コミを利用した子ども向け施策では景品表示法違反にも注意が必要だ。

媒体別・規制適合性の比較

施策を設計する前に、各媒体の規制リスクを整理しておく。

媒体

子ども向けターゲティング

パーソナライズ広告

個人情報収集リスク

主な規制リスク

Google広告

13歳以上のみ、制限あり

子ども向けコンテンツでは禁止

COPPA対応必要(米国)

ポリシー違反→アカウント停止

YouTube

13歳未満向けコンテンツは禁止

禁止(COPPA準拠)

禁止

COPPA違反→制裁金リスク

Instagram/Facebook

18歳未満の詳細ターゲティング制限

制限あり

制限あり

規約違反→配信停止

TikTok

13歳未満は利用不可

制限あり

制限あり

テレビCM

放送時間帯への配慮が必要

パーソナライズなし

なし

民放連の自主規制

ゲーム内広告(サイネージ型)

ゲームタイトル単位で選択可能

プレイ中の非パーソナライズが基本

プレイヤーデータを直接収集しない構造

出稿タイトルの対象年齢・ジャンル確認が必要

ゲーム内広告のサイネージ型(ゲーム空間の看板・モニターに表示するタイプ)は、プレイヤーの個人情報を直接収集しない仕組みであるため、COPPA等の個人情報系規制との摩擦が他のデジタル手法より相対的に少ない。ただし、子どもが主要なプレイヤーのゲームタイトルに出稿する場合は、広告表現・コンテンツの適切さを事前に確認する必要がある。

企業担当者が今すぐやるべきチェックリスト5項目

子ども接点施策を実施・検討している企業の担当者向けに、実務的なチェック項目を整理した。

実施前に確認すべき5項目

  1. 出稿先媒体のポリシーを最新版で確認しているか
    プラットフォームポリシーは頻繁に変更される。Google・Meta・YouTubeの各公式ヘルプページを施策前に必ず確認すること。
  2. 対象コンテンツの「子ども向け」申告を正確に行っているか
    AdSenseのTFCDタグ設定、YouTubeの「子ども向けコンテンツ」フラグなど、プラットフォーム側の申告が実態と一致しているかを確認する。
  3. 個人情報の収集・処理フローを確認しているか
    アプリやWebフォームで子どもの個人情報を収集する場合、法定代理人(保護者)の同意フローが設計されているか確認する(個人情報保護法・COPPA)。
  4. 広告クリエイティブに「避けるべき手法」が含まれていないか
    心理操作的な表現、過剰なコレクション訴求、ピアプレッシャーを利用する構成などが含まれていないかをクリエイティブレビューで確認する。
  5. 食品・飲料業界の場合、HFSS基準を確認しているか
    英国向け展開がある場合、またはWHOガイドラインへの対応が必要な場合は、商品区分がHFSSに該当するかどうかを法務・品質部門と連携して確認する。

こんな企業・施策に向いている / 向いていない

子ども接点施策を取り入れやすい企業

  • テレビCMを軸にしたナショナルクライアント: パーソナライズなしの接触が基本のため、プラットフォームポリシーとの衝突が少ない
  • アプリ・ゲームのパブリッシャー(Webサイト側): TFCD/TFUAタグを適切に設定すれば、法的に問題のない広告収益化が可能
  • 認知拡大が主目的でコンバージョン直結を求めない企業: ターゲティングの精度より接触数・好感度向上を重視するモデルは規制の影響を受けにくい
  • ゲーム内サイネージ型広告の活用を検討している企業: 個人情報収集を伴わない仕組みのため、デジタル広告の規制リスクを回避しやすい

子ども接点施策をそのまま展開しにくい企業

  • リターゲティング・リマーケティングを前提にしている企業: MetaやGoogleの規制により、子どもユーザーへの追跡型広告は事実上不可能
  • HFSS食品に該当する食品・飲料メーカーで英国展開を含む企業: テレビだけでなくデジタル・ゲームも対象となる英国規制に注意が必要
  • アプリでユーザー属性データを積極活用している企業: 13歳未満のデータ収集はCOPPAへの対応なしにはリスクが大きい
  • 広告とコンテンツの境界が曖昧なインフルエンサーマーケティングを多用している企業: ステルスマーケティング規制(消費者庁)と子ども保護のガイドライン両方に抵触するリスクがある

規制リスクを踏まえた施策設計の考え方

子ども接点施策において「規制を知る」だけでは不十分だ。重要なのは「規制に抵触しにくい構造の手法を選ぶ」ことにある。

現時点で比較的リスクが低い手法の特徴は以下の3点に集約される。

  1. 個人情報を収集・追跡しない接触型: プレイ中の環境広告・サイネージ広告・テレビCMなど
  2. パーソナライズに頼らない認知訴求: 視聴率・リーチ型の指標でブランド接触を設計する
  3. コンテンツと広告の区別が明確な形式: ネイティブ広告ではなく、明示された広告枠での配信

ゲーム内広告のサイネージ型(ゲーム空間の看板・モニターへの動画表示)は、この3つの条件を構造的に満たしやすいため、子ども接点を含む施策設計において検討しやすい手法のひとつといえる。ただし、出稿タイトルの対象年齢やジャンルの確認は個別に必要になる。

ゲーム内広告の仕組みや種類についての詳細は、「ゲーム内広告とは?仕組み・種類・活用法を解説」にまとめている。

Ad-Virtuaのゲーム内広告が適している企業の条件

記事の最後に、Ad-Virtuaのサービスが子ども接点施策の文脈でマッチしやすい条件を示す。

  • ブランド認知・想起率の向上を主KPIとしている企業(コンバージョン直結ではなく認知・好感度重視)
  • 既存のデジタル広告では精密ターゲティングが難しくなってきた層にリーチしたい企業(Metaの18歳未満制限等の代替施策として)
  • 動画クリエイティブをすでに持っている企業(既存のTV-CM素材や15〜30秒の動画素材を転用できる)
  • ゲームプレイを中断しない非侵襲型の接触体験を重視している企業(好感度を損なわないことがブランドにとって重要な企業)
  • プレイヤーの個人情報を収集しない構造の施策を求めている企業(コンプライアンス・ブランドセーフティを優先する企業)

ゲーム内広告(サイネージ型)の費用感や効果指標については「ゲーム内広告の費用・料金相場を解説」でまとめている。施策設計の参考にしてほしい。

Ad-Virtuaへの問い合わせ・資料請求はこちらから。

よくある疑問

Q1. 日本では子ども向け広告は法律で禁止されているのですか?

いいえ、現時点で日本には子ども向け広告を専門に禁止する法律はありません。ただしGoogleやMetaのプラットフォームポリシーが事実上の制限として機能しており、違反すると広告アカウントの停止など実害が生じます。景品表示法・薬機法・個人情報保護法は子ども向け広告にも適用されます。

Q2. SNS広告で子どもにリーチすることはまったくできないのですか?

完全に不可能というわけではありませんが、MetaやGoogleは18歳未満・13歳未満向けの精密ターゲティングを大幅に制限しています。ターゲティングを使わず「広くリーチする」形式(例:TV的なブロードキャスト広告)であれば、子ども層を含む形での接触は可能です。

Q3. COPPA(米国の法律)は日本企業も守る必要がありますか?

アプリやサービスが米国のユーザー(13歳未満の子ども)にも提供される場合、日本の企業でも対応が実質的に必要です。Google PlayやApp Storeにはアプリの対象年齢申告の義務があり、申告と実態が乖離していると審査落ちや削除のリスクがあります。

Q4. ゲーム内広告は子ども向け広告規制の対象になりますか?

ゲームタイトルの種類によります。ゲーム空間内のサイネージ(看板・モニター)型の広告は、プレイヤーの個人情報を直接収集しない仕組みのため、COPPA等の個人情報系規制との摩擦は相対的に少ないとされています。ただし、出稿するタイトルの対象年齢・ジャンル、および広告クリエイティブの内容は個別に確認が必要です。

Q5. 英国のHFSS規制は日本企業にも関係しますか?

英国でマーケティング活動を行う食品・飲料企業には直接関係します。2025年10月施行のルールでは、テレビだけでなくウェブ・SNS・ゲームも対象となっています(2026年4月時点。施行後の運用状況は継続確認推奨)。日本国内のみの展開であれば直接の適用はありませんが、WHO勧告の流れを踏まえると、国内でも同様の規制議論が起こる可能性は否定できません。