コラム&特集記事

アドバーチャが提供するサービス

作成日:
更新日:

従来の広告より効果的?ゲーム内広告の可能性と未来

ゲーム内広告とは?Z世代にリーチする新たな広告手法

近年、マーケティング業界で静かに、しかし確実に注目を集めているのがゲーム内広告です。ゲーム内広告とは、その名の通りゲームアプリやオンラインゲーム内に表示される広告のことを指します。

従来の広告手法と比較すると、まだ認知度は高くありませんが、その可能性は計り知れません。特にZ世代へのアプローチに悩む企業にとって、見逃せない存在となっているのがゲームという空間なのです。

「ファミ通ゲーム白書2024」によると、2023年の国内ゲーム市場規模は2兆円を超え、5553万人ものゲーム人口を抱える巨大市場へと成長を遂げています。これは日本の人口の約半数に相当する数字です。

私がVRゲーム開発に携わっていた頃から感じていたことですが、ゲーム空間は単なる娯楽の場ではなく、新たなコミュニケーションプラットフォームとしての可能性を秘めていました。そして今、その可能性が現実のものとなりつつあります。

なぜ今、ゲーム内広告が注目されているのか?

ゲーム内広告が注目を集める理由はいくつかあります。最も大きな要因は、ゲーム市場自体の成長でしょう。

コロナ禍を経て、ゲームは一層身近なエンターテイメントとして定着しました。そして、若年層を中心に、世界的に一大エンタメ市場を構築しています。特に注目すべきは、若者がSNSやストリーミング配信と同じくらいの時間をゲームに費やしているという事実です。

しかし、可処分時間割合に対する広告費を見ると、ゲームはSNSと比較して約3割も少ないのが現状です。つまり、ゲーム広告市場はまだブルーオーシャンであり、大きな成長の余地を残しているのです。

私がアドバーチャを創業した背景には、このようなゲーム内広告の可能性への確信がありました。GAFAMでXRエンジニアとして働いていた経験から、メタバースやゲーム空間が新たな広告プラットフォームとして機能する未来が見えていたのです。

実際、Allied Market Researchによると、ゲーム内広告の市場規模は2021年に世界全体で68億ドル(約9,700億円)を突破しています。さらに、IMARCグループの最新の調査では、2024年の日本のアプリ内広告市場は81億米ドルに達し、2033年までに290億米ドルに成長すると予測されています。

この成長率は年平均14.3%にも及び、市場の拡大スピードの速さを物語っています。

ゲーム内広告の種類と特徴

ゲーム内広告には、大きく分けて以下のような種類が存在します。それぞれの特徴を見ていきましょう。

1. スマホゲーム内広告(アプリ広告)

スマホゲーム内で表示される広告は、最も身近なゲーム内広告と言えるでしょう。スマートフォンが生活必需品となった現代において、多くの人が日常的に触れる機会のある広告形式です。

これらの広告は「ディスプレイ広告」や「動画広告」に分類され、特に近年では動画広告の需要が伸びています。ゲームの起動時や画面遷移時に表示される「インタースティシャル広告」などが一般的です。

2. オンラインゲーム内広告

オンラインゲームのマップ上に、現実の屋外広告と同じように自社の製品に関する広告を設置する形式です。主にコンソールゲームやPC向けゲームで採用されています。

利用人口が多いゲーム内で広告を配信できれば、効率的に自社商品・サービスの訴求につながります。特に近年では、メタバースやVR空間内での広告展開も増えてきており、将来的に仮想現実にいる時間が現実世界よりも長くなるという予測もあるほどです。

私たちAd-Virtuaが提供しているのは、まさにこのタイプの広告プラットフォームです。ゲーム・メタバースの看板の中に動画広告を配信できるネットワークを構築し、すでに広告動画の累計再生回数は1000万回を突破、300以上のゲームタイトルに対応しています。

3. プロダクトプレイスメント

プロダクトプレイスメントは、ゲームコンテンツ内に実際に存在する商品を自然な形で登場させる広告手法です。一般的な広告とは異なり、ゲーム内の世界観に溶け込むように設計されるため、ユーザーに違和感を与えにくいという特徴があります。

例えば、レーシングゲーム内に実在する自動車ブランドの車が登場したり、スポーツゲーム内に実際のスポーツブランドのウェアや用具が使用されたりするケースがこれに当たります。

従来の広告と比較したゲーム内広告の優位性

ゲーム内広告が注目される理由は、従来の広告手法と比較して多くの優位性を持っているからです。具体的にどのような点で優れているのでしょうか?

1. 若年層へのリーチ力

最大の強みは、従来の広告では接触が難しくなってきた若年層、特にZ世代へのリーチ力です。テレビCMを通じた若年層へのリーチが難しくなってきた現在、ゲームは彼らの日常に深く根ざしたメディアとなっています。

ネスレ日本の媒体統轄室マネジャーである小堺吉樹氏は「ゲーム上でしか出会えない消費者が確実に存在する」と指摘しています。ゲームを通じたコミュニケーションを選択肢として外すことは機会ロスに繋がるのです。

私自身、メタバース広告プラットフォーム「Ad-Virtua」を立ち上げる際、この点に着目しました。従来のメディアでは接触できない層に、自然な形でブランドメッセージを届けられる可能性に大きな魅力を感じたのです。

2. 広告体験の質の高さ

ゲーム内広告の最大の強みの一つは、ゲームの世界観を損なわず、ユーザーにストレスを与えない形で広告を露出できることです。

従来のゲーム広告は、ゲームの合間に全画面で動画広告を表示するインタースティシャル広告が主流でした。しかし、このような広告はユーザーにとっては鬱陶しいものでしかありません。

対して、現代のゲーム内広告は、ゲームの背景に自然に溶け込むため、ユーザーの反感を買いにくいという特徴があります。デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムの調査によると、ゲーム内広告は従来型のWeb広告と比較して、ブランドリフト効果が高いというデータも出ています。

3. 高い記憶定着率

イギリスの通信事業社TalkTalkが実施した調査では、従来型のWeb広告と比較して、広告想起率が約1.8倍、注目度が約1.7倍、視認率が約1.4倍という結果が出ています。また、84%のユーザーが「このような広告手法はゲーム体験に適している」と回答しています。

興味深いのは、KONAMIの「実況パワフルプロ野球」というゲーム内の看板広告と、テレビのプロ野球中継の看板広告を比較した調査です。この調査では、ゲーム内の広告の方が記憶に残りやすいという結果が出ています。

これは、ゲームがより「自分ごと化」した状態でプレイされるため、広告への接触がより深い印象を残すからではないでしょうか。

4. 二次的な拡散効果

近年、ゲーム実況がYouTubeやTikTokの人気コンテンツとなっていますが、実況動画内でもゲーム内広告は非常に有効です。ゲーム内広告は他の動画コンテンツと比べて、自然とゲーム内に映り込むため、広告が映った部分をカットされてしまうことは滅多にありません。

そのため、実況動画を通じて広告へのリーチが拡散しやすいのも特徴です。それが切り抜かれて、XなどほかのSNSで話題になれば、ゲームをしない、より多様な層にも届けることができます。

ゲーム内広告の実際の効果は?実証データから見る

ゲーム内広告の効果について、具体的なデータを見ていきましょう。UNICORNが実施したゲーム内広告の配信事例から、その効果が明らかになっています。

大正製薬「センパア」の事例

大正製薬の酔い止め薬「センパア」を、ゲーム/3D酔い対策としてゲームユーザーに訴求した事例では、13日間の配信期間で合計表示回数510,144、リーチ数240,912を達成しました。

ブランドリフト調査では、広告認知に関して8.0ポイントのリフトが見られました。また、利用意向に関しては3.0ポイントのリフトが確認されました。ゲームユーザーと酔い止めという商材の相性の良さが結果に表れています。

GRYPH FRONTIER「エクスアストリス」の事例

スマホゲーム「エクスアストリス」の事例では、18日間の配信期間で静止画バナーの合計表示回数251,340、リーチ数207,206を達成。また、動画バナーは合計表示回数125,438、リーチ数79,084という結果となりました。

ブランドリフト調査では、好意度が7.3ポイント、利用意向は28.3ポイントもリフトするという驚異的な結果が出ています。商材がゲームということで、ターゲットとの相性が非常に良かったと考えられます。

これらの事例から、ゲーム内広告は適切なターゲティングと相性の良い商材を組み合わせることで、高い効果を発揮することがわかります。

私たちAd-Virtuaでも、様々なブランドとゲーム内広告の取り組みを行っていますが、従来の広告手法では難しかった若年層へのリーチと高いエンゲージメントを実現しています。

ゲーム内広告の課題と今後の展望

ゲーム内広告には多くの可能性がある一方で、いくつかの課題も存在します。これらの課題を理解し、適切に対応することが、ゲーム内広告の未来を切り開く鍵となるでしょう。

1. ユーザー体験との両立

最大の課題は、広告表示とゲーム体験の両立です。広告がゲーム体験を阻害すれば、ユーザーの不満を招き、逆効果になりかねません。

私たちAd-Virtuaでは、ゲームの世界観を損なわず、ユーザーにストレスを与えない形で広告を露出することにこだわっています。ゲーム内の看板や背景に自然に溶け込む形で広告を配置することで、ユーザー体験を損なわないよう努めています。

この点は業界全体の課題でもあり、ユーザー体験を最優先にした広告設計が今後ますます重要になるでしょう。

2. 効果測定の標準化

ゲーム内広告の効果測定方法はまだ標準化されておらず、従来の広告指標との比較が難しい面があります。視認時間、エンゲージメント率、記憶定着率など、ゲーム内広告ならではの効果指標の確立が求められています。

現在、業界ではビューアブルインプレッションに対してのみ課金するモデルなど、新たな指標が模索されています。例えば、ゲーム内の広告枠が何秒スクリーンに映ったか、スクリーンの何%を占めたかなどの厳格な条件を満たした場合にのみ課金するという仕組みです。

3. クリエイティブの最適化

ゲーム内広告は、従来の広告とは異なるクリエイティブアプローチが必要です。ゲームの世界観に合わせたデザインや、ゲームプレイを妨げない表現方法の開発が課題となっています。

例えば、スポーツゲーム内ではスポーツブランドの広告が自然に見えますが、ファンタジーRPGでは現実世界の商品広告が違和感を生じさせる可能性があります。ゲームのジャンルや世界観に合わせたクリエイティブ制作のノウハウが今後ますます重要になるでしょう。

4. 今後の展望

2024年の日本の広告費に関する電通の調査によると、インターネット広告費は3兆6,517億円(前年比109.6%)と成長を続けています。特にSNS上の縦型動画広告やコネクテッドTVなどの動画広告需要が高まっており、ゲーム内広告もこの流れに乗って拡大していくことが予想されます。

また、メタバースやVR/AR技術の進化により、より没入感の高いゲーム体験が普及すれば、その中での広告機会も質・量ともに向上するでしょう。

私たちAd-Virtuaは、2025年5月にメテオライズとの資本業務提携を締結し、ゲーム内広告のさらなる拡大と新たな価値の共創を目指しています。メタバースという新しいデジタル空間とゲームを活用した広告プラットフォームを提供することで、従来の広告とは異なるアプローチでブランドと消費者をつなぐ役割を担っていきたいと考えています。

今後は、単なる広告配信にとどまらず、ブランドとユーザーが相互に価値を創造できるような体験型広告の開発にも力を入れていく予定です。

ゲーム内広告を成功させるためのポイント

最後に、ゲーム内広告を成功させるためのポイントをいくつか紹介します。これから取り組みを検討している企業の方々にとって、参考になれば幸いです。

1. ターゲットとゲームの相性を重視する

ゲーム内広告では、広告を出稿するゲームとターゲットユーザーの相性が非常に重要です。例えば、若年男性向けの商品であれば、その層が多くプレイするゲームジャンルを選ぶべきでしょう。

また、商材とゲームの世界観の親和性も考慮すべきです。スポーツ用品はスポーツゲームに、自動車はレーシングゲームに、といった具合に、自然な文脈で広告が表示されるようにしましょう。

2. 非侵入型の広告設計を心がける

ユーザー体験を妨げない非侵入型の広告設計が成功の鍵です。ゲームプレイを中断させるような広告は避け、ゲームの世界観に自然に溶け込む形での広告展開を心がけましょう。

例えば、レーシングゲームのコース脇の看板や、スポーツゲームのスタジアム内の広告ボードなど、現実世界でも広告が存在する場所に配置するのが効果的です。

3. クリエイティブをゲーム専用に最適化する

テレビCMや屋外広告用に制作したクリエイティブをそのままゲーム内広告に転用するのではなく、ゲーム環境に最適化したクリエイティブを制作することが重要です。

ゲーム内では視聴時間や視認性が異なるため、短時間で印象に残るデザインや、ゲームの世界観に馴染むビジュアルを心がけましょう。

4. 効果測定と継続的な改善

ゲーム内広告の効果を正確に測定し、継続的に改善していくことが長期的な成功につながります。広告認知度、ブランド好感度、購買意向など、複数の指標を組み合わせて総合的に評価しましょう。

また、A/Bテストなどを活用して、どのようなクリエイティブや配置が効果的かを検証することも有効です。

まとめ:ゲーム内広告は新時代のマーケティング戦略の要に

ゲーム内広告は、従来の広告手法では接触が難しくなってきた若年層にリーチできる貴重なチャネルとして、その重要性を増しています。特にZ世代やα世代に対するマーケティング戦略において、ゲーム内広告は欠かせない要素となりつつあります。

高い記憶定着率や自然な広告体験、二次的な拡散効果など、従来の広告にはない多くのメリットを持つゲーム内広告は、今後のデジタルマーケティングにおいて中心的な役割を担うことになるでしょう。

私たちAd-Virtuaは、「リアルとメタバースの未来を創造する」というビジョンのもと、ゲーム内広告の可能性を最大限に引き出し、ブランドと消費者の新たな接点を創出していきたいと考えています。

ゲーム内広告はまだ発展途上の分野ですが、その潜在力は計り知れません。これからマーケティング戦略を考える上で、ぜひゲーム内広告の活用を検討してみてはいかがでしょうか?

新しいマーケティングの可能性を一緒に探求していきましょう。

詳細はアドバーチャ公式サイトをご覧ください。メタバース/インゲーム広告のアドネットワーク「Ad-Virtua」について、より詳しい情報をご提供しています。

WRITTEN BY

水野 征太朗

アドバーチャ株式会社代表取締役CEO | 学生時代からインディーズゲーム開発者として、複数のゲームを開発・リリース。名古屋大学経済学部を卒業後、アビームコンサルティング株式会社にて、メタバース/XR/センサーなど先端技術を用いたソリューションの提案・開発に従事。その後、アマゾンジャパン合同会社にてデータ分析・ツール開発・プロセス改善等を経験。2022年にアドバーチャ株式会社を創業。