ゲーム内広告のプラットフォームを提供するAnzuは2026年10月14日、ゲームの中に限っていた広告の配信先をゲーム以外のモバイルアプリにも広げ、同じゲーマーにゲームの内外で広告を届けられるようにすると発表しました。日本の広告主にとっては、海外でゲーム内広告を単独の枠ではなくほかのデジタル広告と同じ計画の中で買えるようにする動きが出てきたことを示す発表です。ただし今回の新しい在庫を日本で買えるかどうかは、2026年10月22日時点で公表されていません。
発表の内容
Anzuは自社を「ビデオゲームのために作られた広告テクノロジー」と説明しています。今回の発表「Anzu Extends Beyond Games, Reaching Gamers Wherever They Are」(Anzu公式ニュース、2026年10月14日)で示された事実は次のとおりです。

項目 | 発表内容 |
|---|---|
広告主側 | ゲームの画面とゲーム以外の画面をまたいだフルファネル(認知から購入まで)のキャンペーンを、Anzuの1つのプラットフォームから実施できる |
広告フォーマット | 複数のモバイルアプリのカテゴリで標準的な広告フォーマットを扱う。従来のイントリンシック広告(クリックできる型・できない型)と同じプラットフォームにまとめる |
アプリ側の連携 | アプリのパブリッシャーはSDK連携とSDKを使わない連携のどちらかを選べる。モバイルゲームのパブリッシャーにとっても、使えるフォーマットと連携方法が増える |
公表されていない点 | 対象アプリのカテゴリ名、提携パブリッシャー名、在庫規模、提供地域、計測パートナー、提供開始日。日本への言及もない |
リリースの末尾には「More news to follow(続報あり)」と書かれています。
リリースは発表の根拠として2つの調査を引用しています。オンライン人口の62%がゲームをプレイしている(Newzoo『Global Games Market Report 2026』)、Z世代の90%とミレニアル世代の84%が自分をゲーマーだと認識している(Deloitte『Digital Media Trends』)という数値です。どちらも本記事では原典を確認できておらず、リリースに引用された数値として紹介します。
共同創業者兼CEOのItamar Benedy氏は、リリースで次のように述べています(抜粋の訳)。
「ゲーマーはゲームを閉じてもゲーマーであり続けます。そして今、Anzuもゲームを閉じたところで終わりではなくなりました。このオーディエンスはもともと『ゲームのオーディエンス』にとどまる存在ではなく、オンラインで最も規模が大きく、多様で、エンゲージメントの高いオーディエンスのひとつです。同じ人が、1回のセッションの中でゲームとスマートフォンのほかのあらゆるものを行き来しています」
社外からのコメントはWPPの最高技術責任者(CTO)、Stephan Pretorius氏のものだけです(抜粋の訳)。
「ゲームはニッチなメディアバイイングから、ブランドがオムニチャネル戦略を組み立てるときの中核へと成熟しました。Anzuの今回の拡張で、ゲームはもはや独立したサイロではなくなります。同じオーディエンス、同じ計測、同じフルファネルの施策が、ゲームとその外側にまたがって広がります」
WPPはAnzuの既存の投資家で、2022年の資金調達の公式リリースでは同社にとって3回目の出資と記載されています。WPPが今回のローンチパートナーかどうかは、リリースに書かれていません。Pretorius氏のコメントは出資者でもある戦略パートナーの発言として読む必要があります。
Anzuとはどんな会社か

Anzu(正式社名 Anzu Virtual Reality Ltd.)は、ゲーム開発会社と広告主をつなぐプログラマティック型のゲーム内広告プラットフォームを運営するイスラエル発の企業です。公式サイトのトップページには2026年10月22日時点でも「PROGRAMMATIC IN-GAME ADVERTISING」と掲げられています。
基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
正式社名 | Anzu Virtual Reality Ltd. |
事業開始 | 公式サイトの表記は「Since 2017」。正確な設立日は公表されていない |
本社 | イスラエル・テルアビブ(公式サイトで拠点の最初に記載) |
拠点 | テルアビブ、ロサンゼルス、シカゴ、ニューヨーク、ロンドン |
共同創業者 | Itamar Benedy氏(CEO)、Ben Fenster氏(CPO) |
主な経営陣 | Michael Badichi氏(CTO)、Natalia Vasilyeva氏(EVP Marketing & Strategy)、Guy Ben-Dov氏(EVP Supply & Revenue Operations)、Crystel Debs氏(EVP Revenue & BD)ほか |
従業員数 | 非公開 |
出典: Anzu公式サイト Company、Claritasとの提携リリース
提供しているプロダクト
Anzuが扱ってきた中心の商品は「イントリンシック(intrinsic)広告」です。ゲームの世界の中にある看板、街頭ビジョン、スタジアムの広告板などに広告を表示する方式で、プレイを止めずに見てもらえる点が特徴です。

広告がゲームに表示されるまでの流れは次のとおりです。
- ゲームのパブリッシャーがAnzuのSDKをゲームに組み込み、ゲーム空間の看板などを広告枠として登録する
- 広告主はDSP経由のプログラマティック取引、またはダイレクト取引でディスプレイ広告や動画広告を入稿する
- 広告はゲームの環境に合わせて枠にあてはめられ、プレイを止めずに表示される
広告主向けページでは扱うフォーマットとして、クリックできる型とできない型のバナー・動画(サイズは問わない)、IAB準拠の動画・ディスプレイ枠、カスタム広告を挙げています。2026年2月からは、ダブルタップや長押しなど誤タップを起こしにくい操作で反応するクリック可能型も提供しています。今回の発表で、ここにゲーム外のモバイルアプリ向けの標準フォーマットが加わりました。ただし、その標準フォーマットがバナー・動画・全画面表示のどれを指すのかは示されていません。
パブリッシャーに対しては「non-cannibalizing monetization」、つまりアプリ内課金や既存の広告枠と食い合わない追加の収益源という位置づけで案内しています。

対応プラットフォームとインベントリ規模
指標 | 内容 | 時点・出典 |
|---|---|---|
対応プラットフォーム | モバイル、PC、コンソール。2025年11月からWebブラウザゲーム、2026年10月からゲーム以外のモバイルアプリ | 広告主向けページ、各公式リリース |
対応タイトル | 「あらゆるジャンルにわたる数百のクロスプラットフォームのゲーム」(具体的な数は非公開) | 広告主向けページ、2026年10月22日確認 |
過去に公表された規模 | AnzuのSDKを使うゲームが世界で100タイトル以上、月間アクティブユーザー1億5,000万人以上 | 2024年の公表値(ARROVAとの提携リリース) |
プログラマティック接続 | 主要DSPを含む40社以上と直接接続 | 広告主向けページ |
ゲーム外アプリの在庫規模 | 非公開 | 今回のリリース |
最新の公式な規模の数値は2024年時点のものです。今回加わったゲーム外アプリの在庫がどれだけあるかは分かっていません。
主要パートナー
区分 | 主な企業 |
|---|---|
出資者 | WPP、Sony Innovation Fund、NBCUniversal、BITKRAFT、Samsung Next、HTC、HBSE Ventures、PayPal Ventures、Emmis、American Express Ventures、Bandai Namco Entertainment 021 Fund ほか |
広告会社グループ | WPP(2020年11月に業界標準づくりで提携)、dentsu(2024年6月にグローバル戦略提携)、Stagwell(2024年6月) |
計測パートナー(広告主向けページ掲載) | HUMAN、Happydemics、Pixalate、Lumen、Comscore |
過去に提携を発表した計測会社 | Oracle Moat、IAS、Claritas(ROIと増分の計測) |
DSP・販売パートナー | StackAdapt、The Trade Desk(ロゴ掲載)、Smadex、InMobi(APAC)、Entravision(中南米・アフリカ・東南アジア)ほか |
ゲーム会社 | Ubisoft(Trackmania)、Gameloft(Asphalt 8、Gangstar Vegas ほか)、Socialpoint、Saber Interactive、Nordcurrent(Cooking Fever)、Strikerz(UFL)ほか |
出資者には日本企業のバンダイナムコエンターテインメントのファンドが含まれています。会社の全体像は「Anzu(アンズ)とは何か」でも詳しく解説しています。
ここまでの歩み
資金調達の振り返り
Anzuの資金調達を古い順に並べると、ゲーム内広告という市場への投資家の見方がどう変わってきたかが分かります。
時期 | ラウンド | 調達額 | リード投資家 | 主な参加投資家 |
|---|---|---|---|---|
2019年8月 | シリーズA | 650万ドルとされる(報道ベース) | BITKRAFT Esports Ventures(報道ベース) | WPP、Axel Springer Digital Ventures(報道ベース) |
2021年2月 | シリーズA(追加) | 900万ドル | BITKRAFT Ventures、HBSE Ventures(共同) | WPP、Sony Innovation Fund、Alumni Ventures Group ほか |
2022年3月 | 名称の記載なし | 2,000万ドル | 記載なし | NBCUniversal・HTC(新規)、WPP(3回目)、Sony Innovation Fund ほか |
2023年6月 | シリーズB | 4,800万ドル | Emmis Corporation | PayPal Ventures、Bandai Namco Entertainment 021 Fund(新規)ほか |
2025年6月 | 戦略投資 | 非開示 | American Express Ventures | ― |
各ラウンドで会社が目指していたことは次のとおりです。
- 2019年8月(シリーズA): Anzuの公式ニュースルームにはこのラウンドのリリースがなく、金額と投資家は報道によるものです。報道では、ゲーム・eスポーツ専門のファンドであるBITKRAFTがリードし、広告会社グループのWPPも参加したとされています。
- 2021年2月(900万ドル): 営業・マーケティングの強化と、米国・APACなど新しい市場への進出を掲げました。2017年以降の累計調達額は1,700万ドルと公式に記載されています(公式リリース)。Riot Games共同創業者のMarc Merrill氏もエンジェル投資家として参加しました。
- 2022年3月(2,000万ドル): ゲーム内広告ソリューションの拡張、対応プラットフォームとグローバルブランドの拡大に充てるとしています。NBCUniversalとHTCが新たに加わりました。累計は3,700万ドルと公式に記載されています(公式リリース)。
- 2023年6月(シリーズB、4,800万ドル): グローバル経営陣の強化と米国事業の拡大、独立した企業であり続けるための資金と説明しています。ここでバンダイナムコエンターテインメントの「Bandai Namco Entertainment 021 Fund」が新規投資家として参加しました(公式リリース)。
- 2025年6月(金額非開示): American Express Venturesからの出資で、イントリンシック型のゲーム内広告を主要なマーケティングチャネルにする取り組みを加速させるとしています(公式リリース)。
累計調達額の公式な数値は2022年3月時点の3,700万ドルが最後で、シリーズB以降の累計は公表されていません。
投資家の顔ぶれを見ると、初期はゲーム専門ファンドと広告会社グループが中心でした。2022年以降はメディア企業(NBCUniversal)、ゲーム会社(バンダイナムコ)、決済・金融(PayPal Ventures、American Express Ventures)へと広がっています。ゲーム内広告がゲーム業界の内側の話から、ほかの業界の企業も関心を持つ分野として見られるようになった流れと読めます。
対応範囲を広げてきた流れ
本記事の整理では、今回の発表はここ1年ほど続いている対応範囲の拡大の4つ目にあたります。
時期 | 出来事 |
|---|---|
2017年 | テルアビブで事業を開始 |
2020年11〜12月 | WPPと業界標準づくりで提携。Comscore、Oracle Moatなどとも提携 |
2022年3月 | ゲーム内広告企業として初めてUnityの「Verified Solutions Partner Program」に参加 |
2023年1月 | 広告トラッキング技術の特許取得を発表 |
2024年6月 | dentsuとグローバル戦略提携、博報堂DYグループのARROVAと日本で戦略提携 |
2025年3月 | Claritasと提携し、ROIと増分の計測に対応 |
2025年9月 | Cookieを使わないオーディエンスターゲティングを開始。ゲームのジャンルやタイトル単位から人単位のターゲティングへ |
2025年11月 | Playgamaと提携し、Webブラウザゲームに初めて対応 |
2026年2月 | クリックできるイントリンシック広告を開始し、パフォーマンス広告の領域へ |
2026年5月 | サッカーゲーム「UFL」にイントリンシック広告を導入 |
2026年10月 | ゲーム以外のモバイルアプリに配信を拡張(今回) |

2025年11月には、Playgamaを通じてWebブラウザゲームに初めて対応しました(詳しくは「Anzu×Playgama提携でintrinsic型ゲーム内広告が初のWebブラウザゲーム対応に」)。2026年2月のクリック可能型の発表では、すでに「フルファネル」を掲げていました(「Anzu、クリック可能なイントリンシック・ゲーム内広告を提供開始」)。

続報が確認できていない取り組み
Anzuは日本市場に3回取り組んでいます。2019年に日本のゲシェルと営業戦略で提携し、2020年6月には元Xboxの坂野拓也氏を日本市場代表に起用しました。その後、2024年まで日本向けの公式発表は確認できません。2024年6月には博報堂DYグループのARROVAと戦略提携を結びましたが、PR TIMES上のARROVAのAnzu関連リリースは2024年9月の説明会の告知が最後です。2026年10月22日時点でARROVAの公式サイトにはアクセスできず、会社やサービスの現状は確認できていません。一時的な障害の可能性もあり、撤退や終了を示す公式情報はありません。
2021年5月に発表した中国市場への参入も、その後の続報は公式ニュースルームで確認できていません。
Anzu自体がサービスを終了したり、事業から撤退したりしたという公式情報はありません。ゲーム内の大型タイトルの開拓も続いており、2026年5月にはサッカーゲーム「UFL」への導入を発表しています(「Anzu×UFL提携とは」)。
広告出稿事例
今回のゲーム外アプリへの拡張について、具体的な出稿事例はまだ公表されていません。ここではAnzuが公開しているゲーム内(イントリンシック)広告の事例を紹介します。
Sony「INZONE Buds」(サウジアラビア)
Sonyはゲーミング向けワイヤレスイヤホン「INZONE Buds」の広告を、サウジアラビアの18〜44歳の男性に向けて配信しました。モバイル・タブレット・PCをまたぎ、音が重要なクロスプラットフォームのタイトルを選んでいます。フォーマットはディスプレイと動画で、視認性はOracle、ブランドへの効果はHappydemicsが計測しました。
指標 | 結果 |
|---|---|
広告への関心 | +39ポイント |
ブランドイメージ | +42ポイント |
ブランド検討 | +35ポイント |
インプレッション | 400万 |
総表示時間 | 1万時間超 |
ディスプレイ広告の平均表示時間 | 4.48秒(IAB基準は2秒) |
オンスクリーン率 | ディスプレイ・動画ともに100% |
出典: Anzu公式 Sonyケーススタディ(2024年4月5日掲載)

SUPERPRETZEL(米国・食品)
SUPERPRETZELはJ&J Snack Foodsの冷凍プレッツェルのブランドです。広告会社160over90が担当し、フィラデルフィアとピッツバーグのZ世代・大学生(18〜24歳)に向けて配信しました。配信先はTrackmania(Ubisoft)、Asphalt Unite(Gameloft)、Cooking Fever、Slapshot: Rebound(平均セッション21分)で、モバイル・PC・コンソールをまたいでいます。
指標 | 結果 |
|---|---|
ブランドへの関心 | +29ポイント |
ブランドイメージ | +22ポイント |
購入意向 | +23ポイント |
動画完了率 | 81%(業界の目安は70%) |
平均表示時間 | 4秒(IABの要件は1秒) |
出典: Anzu公式 SUPERPRETZELケーススタディ(2025年3月25日掲載)。計測パートナーは記載されていません。

地域と年齢を絞って若年層に届けた食品ブランドの事例で、ここで挙げた事例の中では日本の食品・飲料メーカーに最も近いものです。
P&G(プエルトリコ・日用品)
P&GはGillette、Old Spice、Dawn、Gain、Febreze、Charminなど複数のブランドの広告を、メディアパートナーのEntravisionを通じてプエルトリコで配信しました。配信先はSimCity、Cooking Fever、Dragon City(モバイル・PC)です。平均表示率は97%、広告の再生は740万回、ユニークプレイヤーは77.9万人でした。視認性はOracle Moatが検証しています。
出典: Anzu公式 P&Gケーススタディ(2023年12月18日掲載)
Gameloft(ゲーム会社側の事例)
広告を載せるゲーム会社側の事例もあります。GameloftはGangstar Vegasでの実績を受け、Asphalt 8: AirborneとDragon Mania LegendsにもAnzuを導入しました。導入したタイトルでは、1日のアクティブユーザーあたりの広告収益(ARPDAU)が10%増え、イントリンシック広告の収益は5.8倍、1日のアクティブユーザーあたりのインプレッションは3倍になりました。その他のゲームの指標は安定していたとされています。
出典: Anzu公式 Gameloftケーススタディ(2025年11月26日掲載)

ここで挙げた効果指標はいずれもAnzuが自社サイトで公開したものです。ゲーム外のアプリ面を組み合わせたときに同じ水準の効果が出るかは、まだ公表されていません。
なぜこの動きが起きたのか
Anzu自身は拡張の理由を「ゲーマーはゲームを閉じてもゲーマーであり続ける」と説明しています。同じ人がゲームとほかのアプリを行き来しているので、ゲームの外でも同じ人に届けたいという考え方です。
この1年の発表を並べると、Anzuは順番に対応範囲を広げてきました。
- 2025年9月に、ターゲティングをタイトル単位から人単位へ変えた
- 2025年11月に、配信先をWebゲームへ広げた
- 2026年2月に、目的を認知からパフォーマンス(クリック)へ広げた
- 2026年10月に、配信先をゲームの外へ広げた
2026年2月の発表では「マーケターの75%がフルファネル施策を求めている」(Adobe for Business/MMA Global)という調査を根拠に挙げていました。人単位でターゲティングできるようになった時点で、同じ人に別の面でも広告を出す準備が整っていたと考えられます。
もう1つの背景として、ゲーム内広告を単独で予算化しにくいという課題があると考えられます。Pretorius氏が「ゲームはもはや独立したサイロではなくなる」と述べたように、ゲーム内広告がほかのデジタル広告と別枠で扱われてきたことを、広告会社側も課題と見ていたと読めます。ゲーマーという人の集まりを軸にほかの面と束ねれば、広告主はゲーム内広告を既存のデジタル予算の中で買いやすくなります。ただし、この読み方は本記事による解釈で、Anzuがそう明言しているわけではありません。
日本市場ではどうか
同じ動きは日本で起きているか
ゲーム内広告とゲーム外の面を同じオーディエンスで束ねて売る動きは、日本では一次情報で確認できていません。ARROVAが2023年11月に発表した「InGameAD for Z」は、地域・性別・年代・デバイス・ゲームカテゴリでターゲティングでき、IAB基準のビューアブル計測に対応した、複数のゲームを横断するDSPでした。対象はあくまでゲーム内です(ARROVAのリリース)。
Anzuと日本の接点

2024年6月、博報堂DYグループのARROVAはAnzuとの日本での戦略提携を発表しました(Anzu側の発表は2024年7月)。協業領域は4つで、AnzuのSDKを使ったパブリッシャー向けの在庫開発、在庫の販売、配信データの連携、マーケティングでのゲーム広告の普及です。ブランドはARROVAの「InGameAD for Z」を通じて広告を買い、在庫はAnzuが供給するという分担でした。この提携でAnzuはゲーム広告をオムニチャネル戦略に組み込むことも協業の中身に挙げていました。
提携の際、Benedy氏は日本について「デジタル広告の市場規模が世界第4位、ゲーム市場が世界第3位」と述べています(ARROVAのリリース)。dentsuもグローバルでAnzuと提携していますが、この提携が日本法人に適用されるかは確認できていません。
日本の広告主は今すぐ使えるか
今回のゲーム外アプリの在庫を日本の広告主が使えるかは、公表されていません。提供地域の記載がなく、日本のアプリ事業者が参加しているという情報もありません。
障壁になりそうな点は次の4つです。いずれも公表情報から考えられる点で、Anzuへの確認が必要です。
- 日本の窓口だったARROVAの現状が確認できない
- 日本のゲームやアプリの在庫規模が公表されていない
- DSPでの買い付けが前提で、代理店経由や定額パッケージが中心の国内の発注とは手順が違う
- ゲーム外の「標準フォーマット」が、国内の既存アドネットワークのバナーや動画とどこが違うのかが示されていない
日本で同じ広告を実施する選択肢
ゲーム外の面まで1つのプラットフォームで束ねる仕組みは、国内では今のところ確認できません。日本で近い施策を組むなら、ゲーム空間の看板に広告を出すゲーム内広告と、SNS広告や動画広告などほかのデジタル施策を、プランニングの段階で組み合わせる形になります。
国内のゲームタイトルに広告を出す選択肢の一つがAd-Virtuaです。Ad-Virtuaは国内のゲームタイトルの看板やモニターに動画広告を配信するアドネットワークで、公式サイトのFAQでは400タイトル以上に対応するとしており、年代・性別・カテゴリ・地域・タイトルを指定して配信できると案内しています。料金は1週間30万円からで、初期費用はかかりません。配信条件や料金の詳細はAd-Virtuaの公式サイトで確認できます。
Anzuとの違いは次のとおりです。
比較ポイント | Anzu | Ad-Virtua |
|---|---|---|
主な在庫 | 海外中心のモバイル・PC・コンソール・Webゲーム。2026年10月からゲーム外のモバイルアプリ | 国内のゲームタイトル |
買い方 | DSP経由のプログラマティック取引、ダイレクト取引 | 週単位の定額プラン(30万円〜) |
広告の形式 | イントリンシック広告(クリックできる型・できない型)、ゲーム外アプリの標準フォーマット | ゲーム空間の看板・モニターへの動画広告 |
ゲーム外の面との統合配信 | あり(2026年10月発表) | 公式サイトでは案内されていない |
クリックでの誘導 | あり(2026年2月から) | 公式サイトでは案内されていない |
第三者計測 | HUMAN、Happydemics、Pixalate、Lumen、Comscoreなど | 無料レポートを提供。第三者計測の体制は公式サイトでは案内されていない |
日本での提供状況 | 今回の新在庫は日本向けの情報なし | 国内で提供中 |
Ad-Virtuaの公式サイトで紹介している事例では、広告期間中に広告主の公式サイトへの自然流入が26%増え、平均滞在時間が1分9秒から3分4秒に伸びました。ゲーム内での接触とゲーム外での行動の関係を見るための材料になります。
Ad-Virtuaが合うのは国内の若年層にゲームの中で動画を見てもらい、ブランドを覚えてもらうことが目的の企業です。定額で始められるので、DSPの運用体制がなくても試せます。一方で、ゲーム内の接触とほかの面の接触を1つの仕組みで管理したい企業や、クリックからの購入までをゲーム内広告の中で完結させたい企業には合いません。その場合は、ゲーム内広告を認知の役割に絞り、獲得はSNS広告や検索広告など別の施策に任せる設計が現実的です。
広告主が取るべき判断
今動くべき企業
- 海外市場でも広告を出していて、グローバルの広告会社やDSPを通じてAnzuの在庫を買える企業。続報で対象地域やアプリのカテゴリが公表されたら、すぐに検討できます
- 国内でゲーム内広告をまだ試していない若年層向けブランド。海外でゲーム内広告がほかのデジタル施策と同じ計画に組み込まれ始めた今のうちに、国内で小さく試して自社の指標を持っておくと、将来の比較材料になります
- TVCMやSNS広告を補う接点を探している食品・飲料・日用品メーカー。SUPERPRETZELやP&Gのように、ゲーム内広告で地域と年齢を絞ったブランド施策の事例があります
様子見でよい企業
- 日本国内だけで広告を出していて、ゲーム外アプリまで含めた統合配信を前提に考えている企業。国内向けの提供情報が出るまで判断材料が足りません
- 刈り取り(購入・申込み)の獲得単価だけで広告を評価する企業。ゲーム外アプリの面でどんな成果が出るかは、まだ公表されていません
どちらの場合も出稿前にKPIと計測方法を決めておくことが前提になります。ブランドリフト、表示時間、指名検索、サイト流入のどれで評価するかを先に決めると、ゲーム内広告の結果をほかの施策と比べられます。
関連する基礎知識
- ゲーム内広告の種類や仕組みの全体像は「ゲーム内広告とは」で解説しています。今回Anzuが加えたゲーム外アプリの広告と、ゲーム空間に表示する広告の違いもここで確認できます
- Anzuの会社概要と資金調達の詳細は「Anzu(アンズ)とは何か」
- 2026年2月のクリック可能型の発表は「Anzu、クリック可能なイントリンシック・ゲーム内広告を提供開始」
- Webブラウザゲームへの対応は「Anzu×Playgama提携でintrinsic型ゲーム内広告が初のWebブラウザゲーム対応に」
- 大型タイトルでの看板広告の例は「Anzu×UFL提携とは」
よくある質問
Anzuの広告はどうやって視認性を測っているのですか?
Anzuはゲーム画面の中で広告が画面のどれだけを占めているか、ほかの物体に隠れていないかをレイキャスティングという手法で計測する技術を持ち、2023年1月に特許の取得を発表しています。あわせて不正検知とブランドリフトの計測も備えています。
Cookieを使わないターゲティングとはどういうものですか?
2025年9月に始まった仕組みで、Eyeota、Predactiv、Semcastingのデータを使い、6万2,400のオーディエンスセグメントで180カ国以上に配信できるとしています。Cookieやデバイスの広告IDに頼らない方式です(公式リリース)。
日本のゲーム会社がAnzuのSDKを導入した例はありますか?
本記事の調査では、日本のタイトルでの導入例を公式情報から確認できませんでした。ARROVAは2024年9月にゲーム会社とメタバース事業者向けのSDK説明会を開き、Unity・Unreal Engine・独自エンジンに対応し、導入期間の目安は1〜2カ月と案内していました。ただし、ARROVAの現状は確認できていないため、導入を検討する場合はAnzuに直接問い合わせる必要があります。
SDKを使わない連携は、どんな仕組みですか?
公開情報では分かりません。技術ドキュメントはログインが必要で、サーバー側で接続するのか、APIで接続するのかといった方式は確認できませんでした。
Anzuの広告はどのDSPから買えますか?
Anzuは主要DSPを含む40社以上のプログラマティックパートナーと直接接続していると説明しています。公式サイトにはThe Trade DeskとStackAdaptのロゴが掲載され、2026年2月のリリースではSmadexがコメントを寄せています。ゲーム外アプリの在庫が同じDSPから買えるかは、今回のリリースには書かれていません。


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