ゲーム内広告の「純粋な広告効果」を測定するには、広告なしでも起きていた成果を差し引くインクリメンタルリフト測定が、現時点でのベストプラクティスです。ラストクリック計測やインプレッション数だけでは広告の貢献を過大評価しやすく、予算配分の判断を誤るリスクがあります。

この記事では以下の内容を解説します。

  • インクリメンタルリフト測定の基本概念・計算式
  • ゲーム内広告固有の測定課題(Google/Meta非対応・コントロール群汚染問題)
  • 実験設計の3ステップ(配信指標 → アテンション → ブランドリフト)
  • RCT・ジオリフト・PSMの3手法の選び方と比較表
  • 測定ツール・調査会社の費用感比較(Happydemics等)
  • 業種別インクリメンタルリフトのベンチマーク(173キャンペーン実データ)
  • よくある失敗パターンと対策

ゲーム内広告の効果を経営・上位職に定量的に説明できるエビデンスを構築したいマーケティング担当者・広告担当者向けの実践ガイドです。

マーケティング担当者がノートPCでデータ分析を行う様子(インクリメンタルリフト測定のイメージ)

インクリメンタルリフト測定とは:「広告がなければ起きなかった成果」だけを取り出す考え方

インクリメンタルリフト(インクリメンタリティ)とは、広告やマーケティング施策による純粋な増分効果のことです。施策がなければ発生しなかったであろう成果のみを測定する考え方であり、相関関係ではなく因果関係に基づいた効果測定の方法論です。

2026年現在、Cookieの廃止とプライバシー規制強化によりユーザーレベルのアトリビューションが機能しにくくなっているため、インクリメンタルリフト測定への注目が急速に高まっています。米国の調査(EMARKETER × TransUnion、2025年7月)では米国マーケターの52%がインクリメンタリティテストを活用しており、ANA(全米広告主協会)の調査では広告主の71%がインクリメンタリティをリテールメディアの最重要KPIと評価しています。

ラストクリック計測が抱えるバイアスとの違い

従来のラストクリック分析は、コンバージョン直前の接触点に100%の成果を帰属させます。この方法には3つの根本的な問題があります。

  • 広告がなくても購買していたユーザーを「広告の成果」としてカウントする
  • ブランド認知・好意度など間接効果が可視化されない
  • ゲーム内広告のように直接クリックが発生しにくい媒体が過小評価される

インクリメンタルリフト測定では、テスト群(広告を見たユーザー)とコントロール群(広告を見ていないユーザー)を比較し、広告によって「追加的に生まれた効果」だけを切り出します。

計算式と数値例

インクリメンタルリフト(%) = (テスト群の測定値 − コントロール群の測定値) ÷ コントロール群の測定値 × 100

具体例:

  • テスト群(広告接触者)の広告想起率:5%
  • コントロール群(非接触者)の広告想起率:4%
  • インクリメンタルリフト = (5% − 4%) ÷ 4% × 100 = 25%

コントロール群との比較がなければ「5%の広告想起率がある」という事実しか分からず、それが広告の効果なのか、もともと認知度が高いブランドだから生じた数値なのかを区別できません。

(出典:marketing-analytics.site「インクリメンタルリフトの定義と計算方法」、2026年5月確認)

ゲーム内広告の効果測定が難しい3つの固有課題

一般的なインクリメンタルリフト測定の方法論はWebやSNS広告を前提としており、ゲーム内広告にはそのまま適用できない固有の課題が3つあります。この課題を把握せずに測定設計を進めると、信頼性の低い結果しか得られません。

実験・コントロール群の設計を行う研究者のイメージ(ゲーム内広告の効果測定課題)

課題1:Google/Meta Brand Liftが使えないケースが多い

ブランドリフト測定の定番ツールであるGoogle Brand LiftとMeta Brand Liftは、それぞれYouTubeとFacebook/Instagram向けの機能です。ゲーム内広告プラットフォームはこれらのエコシステム外で動作するため、多くのゲーム内広告ネットワークではこれらのツールを利用できません。

また仮に利用できたとしても、Google Brand Liftは1KPIあたり有効回答約2,000件が必要(Google公式基準)であり、少額・短期間の配信では統計的に有意な結果が得られないことがあります。

課題2:コントロール群の「汚染」問題

インクリメンタルリフト測定の根幹は「広告を見た群と見ていない群の比較」です。ゲーム内広告では同一タイトルでプレイしているユーザーの多くが広告接触群に組み込まれるため、同一タイトル内でコントロール群を設定しようとすると汚染が発生します。

同じゲームをプレイしているユーザーの中から「たまたま広告を見なかった人」をコントロール群としても、選択バイアスが生じやすく純粋な比較が成立しません。

主な対策:

  • 配信タイトルとは別タイトルのプレイヤーをコントロール群として設定する
  • ジオリフト(地域ベース分割)で配信エリアと非配信エリアを分ける
  • ゲーム内広告対応の第三者調査会社(Happydemics等)が保有する独立パネルを活用する

課題3:認知KPIとコンバージョンの連動が弱い

ゲーム内広告はゲームプレイを中断しない「サイネージ型」の接触であり、直接クリックやコンバージョンが発生しにくい特性があります。強みはブランド認知・広告想起・好感度などファネル上部の改善にあり、ラストクリック型のコンバージョン計測では効果が見えにくくなります。

このため、ゲーム内広告のインクリメンタルリフト測定では認知・想起・好感度などのブランド指標を主KPIとして設計することが前提になります。

実験設計の3ステップ:配信指標 → アテンション → ブランドリフト

ゲーム内広告のインクリメンタルリフト測定は、最初からリフト調査を発注するのではなく、3段階で順番に確認することが実務上の正しい順序です。前工程の条件が満たされていない状態でブランドリフト調査を実施しても、信頼できる結果は得られません。

ステップ1:配信品質を確認する(視認率・vCPM・タイムインビュー)

測定の大前提として、広告が十分に「見られている」かどうかを確認します。以下の指標がベンチマークを下回る場合は、リフト調査より先に配信設定・クリエイティブの改善を優先すべきです。

指標名

内容

ゲーム内広告のベンチマーク

インプレッション数

配信された広告の総数

リフト測定には最低50万〜100万インプレッション規模の確保が目安

vCPM(視認可能インプレッション単価)

基準を満たした表示のコスト

約300〜500円(出典:Ad-Virtua公式サイト、2026年5月確認)

視認率(Viewability)

MRC基準を満たした表示割合

最大96%(Web平均67%比)※Ad-Virtua自社調査

タイムインビュー(Time-in-View)

1回あたりの平均視認時間

3.1秒(Anzu × Lumen Research、2023年)

ゲーム内広告の視認率は最大96%と他のデジタル広告媒体を大きく上回ります。配信品質の確認が取れたら、次のアテンション指標の確認に進みます。

ステップ2:アテンション指標を確認する(視聴時間と想起率の関係)

配信品質が確認できたら、「視聴の質」を確認します。広告が表示されていても、ユーザーが実際に注意を向けていなければブランド効果は生まれません。

指標名

内容

参考データ

平均視聴時間(帯域別)

1秒未満/1〜3秒/3〜10秒/10秒以上に分類して分析

1秒未満: 想起率21%、10秒以上: 想起率41%(電通・国内調査、2024年、8,000人以上)

注目度スコア

アテンション計測ツールによるスコア

約1.7倍(Ad-Virtua自社調査)

インビュー完全視聴率

広告を最後まで視聴した割合

電通の国内調査(2024年)では、視聴時間が10秒以上になると広告想起率が41%に達することが確認されています。アテンション指標がKPI閾値を満たしていることを確認してから、ブランドリフト調査の設計に移ります。

(⚠️電通2024年調査の詳細については、電通研究所等の原典でご確認ください)

ステップ3:ブランドリフト調査を設計する(テスト群・コントロール群の構成)

配信品質とアテンションの前提が確認できたら、インクリメンタルリフト測定の本体となるブランドリフト調査を設計します。

基本的な設計方針:

  1. テスト群:対象ゲームタイトルで広告に接触したプレイヤー
  2. コントロール群:同程度の属性を持つが広告に接触していないユーザー(別タイトル・別地域・または第三者パネル)
  3. 両群の属性(年齢・性別・プレイ頻度等)をできる限り均一にする
  4. 測定期間:配信期間中および配信終了後2〜4週間以内(記憶の鮮明なうち)

設計の段階でコントロール群の構成方法を誤ると後から修正できません。次節で具体的な手法を解説します。

実験設計の3手法:RCT・ジオリフト・PSMの選び方

コントロール群の設計方法には大きく3つのアプローチがあります。予算・配信規模・データ取得環境に合わせて選択します。

手法

概要

精度

ゲーム内広告への適用

費用目安

ユーザーベースRCT(ランダム化比較試験)

ユーザーをランダムにテスト群/コントロール群に割り当て

◎ 最高

△(Google/Meta非対応が多い。第三者調査会社経由で実現可能)

ジオリフト(地域ベース分割)

地域単位でテスト/コントロールを設定

○ 高

◎(ユーザーID不要・Cookieレス対応)

中(Meta GeoLiftはOSS)

PSM(傾向スコアマッチング)

広告接触者と非接触者の属性類似ペアを統計的に選定

△ 中

○(後付け検証・補完的用途)

低〜中

ユーザーベースRCT(ランダム化比較試験)

因果推論の観点から最も精度が高い手法です。Googleブランドリフト・Meta Brand Liftはこの設計を採用しています。ゲーム内広告では媒体側での任意グループ分割が難しく、多くのケースで直接適用できませんが、Happydemicsのような第三者調査会社の独立パネルを経由することでRCTに近い精度を実現できます。

ジオリフト(地域ベース分割)

ユーザーIDではなく地域単位(市区町村・都道府県等)でテスト/コントロールを分ける手法です。Cookieやユーザーレベルのデータが不要なため、プライバシー規制強化の環境下でも実施しやすいことが特徴です。

MetaがOSSとして公開しているGeoLiftツールを活用できます。地域間の人口構成・競合環境の差を最小化するための地域選定が精度を左右します。ゲーム内広告のインクリメンタルリフト測定で現実的に実施しやすい手法の一つです。

PSM(傾向スコアマッチング)

ランダム割り当てが困難なケースや、配信が完了した後の後付け検証に活用できる代替手法です。精度はRCTより低いものの、既存のデータを用いて実施できる柔軟性があります。単独での精度には限界があるため、RCTやジオリフトと組み合わせて補完的に使うことが多いです。

(出典:SegmentStream「Incrementality Measurement Guide 2026」、marketing-analytics.site、2026年5月確認)

ゲーム内広告の指標設計で使用するブランドKPI優先順位の考え方(広告想起率・好意度・帰属率)

指標設計の実践:何をどの順番で測るか

インクリメンタルリフト測定で失敗しやすいのは「何を測るかを後から決める」ケースです。KPIは配信前の計画段階で確定させる必要があります。

KPI優先順位の設定

ゲーム内広告の指標設計では、以下の優先順位で検討するのが一般的です。

指標名

定義

測定優先度

選定理由

広告想起率

「この広告を見たことがある」と回答する割合

最優先

ゲーム内広告の強みが最も反映される指標。業界平均32%(Frameplay × Happydemics、2025年)

ブランド好意度

「このブランドに好感を持つ」と回答する割合

ゲーム内広告の嫌われにくい特性を検証できる。好感度約85%(Ad-Virtua自社調査)

ブランド帰属率

「どのブランドの広告か分かる」と回答する割合

認知の「深さ」を測る指標。ゲーム内広告平均52%(Happydemics、2025年)

購入意向

「購入したい/検討したい」と回答する割合

中(長期評価)

ファネル下部指標。ゲーム内広告単独での変化は緩やかなことが多い

ブランド認知度

「ブランド名を知っている」割合

中(認知フェーズ向け)

既に認知されているブランドでは変化が出にくい

第一想起率

「最初に思い浮かぶブランド」

長期KPI

複数回キャンペーンの蓄積効果を測定する際に活用

実務的なポイント: 1回のキャンペーンでは2〜3指標に絞ることを推奨します。指標を増やすほどサンプルサイズが必要になり、調査コストが比例して上昇します。まずは「広告想起率」と「ブランド好意度」の2指標から始めるのが現実的です。

サンプルサイズと配信期間の目安

適切なサンプルサイズを確保できないと、統計的に有意な差が検出できず「効果があったかどうか分からない」という結果になります。

実務上の基準(参考):

  • Googleブランドリフト基準:1KPIあたり有効回答約2,000件以上
  • 配信期間:最低4〜8週間(週単位の変動を吸収するため)
  • 総インプレッション:少なくとも数十万〜数百万規模が目安

少額・短期間のテスト配信でリフト測定を予定している場合は、配信計画の段階から必要サンプル数を逆算することが重要です。

(出典:ad-virtua.com「ゲーム内広告のブランドリフト効果測定ガイド」、2026年5月確認)

測定ツール・調査会社の比較(費用感付き)

ゲーム内広告のインクリメンタルリフト測定に使用できる主要なツール・調査会社を、費用感と特徴で比較します。

ツール/手法

費用目安

ゲーム内広告への対応

精度

主な用途

インバナーサーベイ

10万円台〜

低〜中

低予算・速度重視の簡易測定

リードバナーアンケート

10〜20万円程度

詳細な質問設計が必要なケース

Google Brand Lift

約225万円〜(参考)

△(YouTube連携が前提)

YouTube広告との連携時

Meta Brand Lift

約450〜750万円〜(参考)

△(Facebook/Instagram前提)

ソーシャル連携キャンペーン

Happydemics

$10,000〜$100,000+(参考値・要問合せ)

◎(ゲーム内広告に対応)

最高

第三者エビデンス・クロスメディア比較

Macromill・GMOリサーチ等(パネル調査)

要見積

○(IDレス対応)

対外エビデンス構築・Cookieレス環境

⚠️ 各ツールの費用は参考値です。実際の費用は調査規模・設計・契約条件によって大きく異なります。事前に各社への問い合わせをお勧めします。

ゲーム内広告での第三者測定について:Happydemics

Happydemicsはゲーム内広告ネットワーク(Frameplay・Anzu等)と連携実績を持つブランドリフト測定ツールで、2025年時点でゲーム内広告に特化した調査プラットフォームとして第三者性の高い測定が可能です。2025年10月発表の報告書では173件のゲーム内広告キャンペーンを分析したデータが公開されており、業界ベンチマークとして参照できます。費用は規模・設計によって幅があるため(参考値:$10,000〜$100,000+)、導入前に要見積もりとなります。

広告効果のデータ分析プラットフォームの画面イメージ(業種別インクリメンタルリフトの測定イメージ)

業種別ベンチマーク:自社カテゴリのインクリメンタルリフト水準を知る

「自社のキャンペーン結果が良いのか悪いのか」を判断するためには業種別のベンチマーク値が必要です。現時点で最も大規模かつ信頼性の高い公開データはFrameplay × Happydemicsによる2025年の共同調査です。

Frameplay × Happydemics 2025年調査(173キャンペーン分析)

2025年10月27日にPR Newswireで発表された共同調査で、Happydemicsの7,000件超のブランドリフト調査から抽出したゲーム内広告キャンペーン173件を分析しています。

全体的な傾向:

指標

ゲーム内広告の数値

比較

広告想起率

32%

動画・CTV・SNS・ディスプレイ等、全デジタル形式中最高

ブランド帰属率

52%

メディア平均比 +9ポイント

ブランド帰属・好意度(Frameplay)

54%

検討意向(Frameplay)

24%

出典:Frameplay × Happydemics「In-Game Ads Outperform Traditional Digital on Key Brand Metrics」PR Newswire(2025年10月27日)

業種別インクリメンタルリフト(ブランド帰属指標):

業種カテゴリ

インクリメンタルリフト値(ブランド帰属)

ライフスタイル・リテール

+13ポイント

レジャー・カルチャー

+7ポイント

FMCG(食品・飲料・日用品等)

+4ポイント(セクター平均比)

FMCGカテゴリのリフト値が比較的小さいのは、もともとのブランド認知水準が高いためです。認知が既に高いブランドでも、ゲーム内広告によって「想起の優先順位を引き上げる」効果が期待できます。食品・飲料・日用品のブランド担当者にとっては、この+4ポイントという数値が投資判断の根拠として活用できます。

補足データ(Anzu × Lumen Research 2023年):

  • 誘導想起率:平均49%(最大97%)
  • 平均視認時間:3.1秒(標準2.9秒を上回る)

(出典:Anzu × Lumen Research、2023年公開資料)

MMM・MTA・ブランドリフト調査との使い分けと組み合わせ方

インクリメンタルリフト測定は万能ではありません。何を知りたいかによって最適な測定手法が異なります。

手法

何を答えるか

ゲーム内広告への適合

強み

弱み

インクリメンタルリフト測定

「この施策が本当に効いたか」(因果)

因果関係を直接証明できる

実験設計コスト・期間がかかる

MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)

「各チャネルが売上にどう貢献したか」(戦略)

○(複数施策・長期評価)

Cookieレス対応・全チャネル俯瞰

実施コスト大・短期の因果判定は難しい

MTA(マルチタッチアトリビューション)

「どのタッチポイントが貢献したか」(戦術)

詳細なパス分析

Cookie廃止で精度低下・ゲーム内広告はタッチ特定が困難

ブランドリフト調査(単体)

「認知・好感・購入意向が変わったか」(認知)

ゲーム内広告に最適化した手法あり

コンバージョン効果との連動が弱い

2026年のベストプラクティス:三角検証

業界では「インクリメンタルリフト(実験)+MMM(戦略)+ブランドリフト(認知)の三角検証」を組み合わせるUnified Marketing Measurement(UMM)アプローチが推奨されています(Triple Whale・Measured社 2026年予測)。

ゲーム内広告への実践的な適用順序として:

  1. まずブランドリフト調査:認知・想起・好感度の変化を迅速に確認
  2. 規模拡大後にインクリメンタルリフト測定:因果関係を検証し、予算配分の根拠を構築
  3. 全社施策として統合する段階でMMM:他チャネルとの相乗効果・長期貢献を評価

予算が限られる場合は、まず簡易なインバナーサーベイ(10万円台〜)で傾向を確認してから、第三者調査(Happydemics等)に段階的に移行することが現実的です。

IAB Gaming Measurement Framework 2025が示す業界標準

2025年6月26日、IAB(インタラクティブ広告局)がゲーム広告の測定標準化フレームワーク「Gaming Measurement Framework」を公表しました。インクリメンタルリフト測定がゲーム広告における「業界標準の推奨指標」として明確に位置付けられた点が重要です。

(出典:IAB「Gaming Measurement Framework」2025年6月、https://www.iab.com/guidelines/gaming-measurement-framework/

フレームワークの2層構成

ベースライン指標(すべての広告主に期待できるコア指標):

  • インプレッション数
  • クリック率
  • 平均インタラクション数など

追加指標(推奨):

  • アテンション指標(滞在時間・スクロール深度)
  • インクリメンタルリーチ(ゲーム広告が他メディアを超えてユニーク視聴者を追加的に獲得できているか)
  • ブランドリフト(アンケートまたは第三者調査)

インクリメンタルリーチとインクリメンタルリフトの違い

IABフレームワークで定義される「インクリメンタルリーチ」は「他メディアと重複しない新規ユーザーにリーチできているか」を測る概念であり、本記事で主に扱う「インクリメンタルリフト(ブランドKPIの増分効果)」とは別の概念です。混同しないよう注意が必要です。

このフレームワークが対象とする広告フォーマットはディスプレイ(インゲーム・リワード・スポンサーシップ・インタースティシャル)・動画(インストリーム・ライブストリーム等)・オーディオと幅広く、今後の測定標準化の指針として参照することを推奨します。

よくある失敗パターンと対策5選

実際の測定設計で起きやすい失敗を整理します。

ゲーム広告測定ツールのイメージ(失敗パターンを避けた実験設計のポイント)

失敗1:コントロール群を同一ゲームタイトル内で設定してしまう

問題:同じゲームをプレイしているユーザーの一部を「見ていない群」として設定しても、コントロール群の汚染が発生する。

対策:別タイトル・別地域・第三者パネルでコントロール群を構成する。Happydemics等の専門調査会社の独立パネルを活用することで回避できる。


失敗2:サンプルサイズを計算しないまま測定を発注する

問題:配信後に調査を実施しようとしたら、サンプル不足で統計的有意差が検出できなかった。

対策:配信計画の段階で必要サンプル数(目安:1KPIあたり有効回答2,000件以上)を逆算し、配信規模・期間を決定してから測定設計に入る。


失敗3:測定KPIを多数設定しすぎる

問題:認知・想起・好感度・購入意向・第一想起すべてを1回の調査で測ろうとした結果、各指標のサンプルが分散して不十分になった。

対策:1回のキャンペーンでは2〜3指標に絞る。「広告想起率」と「ブランド好意度」の2指標からスタートすることを推奨する。


失敗4:配信終了から時間が経ちすぎてから調査する

問題:キャンペーン終了から数か月後に調査を実施したため、広告の記憶が薄れた状態の数値しか取得できなかった。

対策:配信期間中または配信終了後2週間以内に調査実施のタイミングを設定する。調査スケジュールは配信計画と同時に確定させることが重要。


失敗5:インクリメンタルリフト率(相対値)だけで判断する

問題:「インクリメンタルリフト+100%」という数値に満足したが、コントロール群の元の値が1%だったため絶対改善幅は+1ポイントにすぎなかった。

対策:リフト率(相対値)と絶対ポイント差の両方で評価する。元の値が低い指標のリフト率は見かけ上高く見えやすいため注意が必要。業種別ベンチマーク(Frameplay × Happydemics等)の絶対値と比較することが判断の助けになる。

こんな企業にインクリメンタルリフト測定をすすめる

積極的に取り組むべき企業

  • ゲーム内広告を3か月以上継続配信しており、一定のインプレッション規模がある企業:サンプルサイズを確保しやすく、測定コストに見合う結果が出やすい段階
  • 認知広告・ブランド投資の予算配分根拠を経営層に説明する必要がある企業:「感覚的に効いている」から「数値で証明できる」への転換が、社内の予算承認・維持に直結する
  • FMCG(食品・飲料・日用品)のブランドマネージャー:業種別ベンチマーク(+4ポイント)と自社結果を比較し、投資継続の判断材料にできる
  • TVCM・SNS広告と並行してゲーム内広告を運用している企業:各チャネルへの予算配分を最適化したい場合、チャネルごとの純粋な貢献度を分ける測定が必要になる
  • Cookieレスに対応した測定体制を構築したい企業:ジオリフト・第三者パネルを使うインクリメンタルリフト測定はCookieに依存しない

まだ配信規模を積む段階の企業

  • ゲーム内広告の配信を始めて間もない企業:まず配信品質(視認率・タイムインビュー)の確認と定性的なブランド反響把握から始める段階。リフト測定は次フェーズで
  • 月間インプレッションが数十万規模に留まっている企業:統計的有意差を検出できるサンプルが確保できず「効果がなかった」という誤った結論が出るリスクがある
  • 社内でKPIが「クリック率」「CV数」のみで固定されており、ブランドKPIの議論ができていない企業:測定設計より先に、KPI定義の社内合意を形成することが優先される

よくある質問

Q1. インクリメンタルリフト測定はどれくらいの予算から実施できますか?

A. インバナーサーベイを用いた簡易測定であれば10万円台から実施できます。第三者機関(Happydemics等)を使った本格的な測定は$10,000〜が目安(参考値・要問合せ)ですが、費用は調査規模・設計・指標数により大きく変わります。まずはインバナーサーベイで傾向を確認し、結果を踏まえて第三者調査に移行するステップが現実的です。

Q2. Cookie廃止後もゲーム内広告のインクリメンタルリフト測定は機能しますか?

A. はい。インクリメンタルリフト測定は集計値・実験ベースの比較を使うためCookieに依存しません。ジオリフトはユーザーIDすら不要で実施できます。ゲーム内広告はもともと視認型の接触を基本としているため、Cookieレス環境で相対的に測定しやすい媒体です。

Q3. ゲーム内広告でRCT(ランダム化比較試験)は実施できますか?

A. 媒体プラットフォーム単独ではGoogle/Meta Brand Liftが使えないケースが多いですが、Happydemics等のゲーム内広告対応の第三者調査会社を活用することでRCTに近い精度の設計が可能です。実装のハードルが低い代替手法としてはジオリフトも有効です。

Q4. インクリメンタルリフト測定とブランドリフト調査は何が違いますか?

A. ブランドリフト調査は「ブランドKPI(認知・想起・好感等)の変化を測定する調査」を指す広い概念です。インクリメンタルリフト測定はその中でも「コントロール群との比較を通じて純粋な増分効果(因果関係)を算出する」ことを重視する厳密な設計手法です。ブランドリフト調査の設計にコントロール群比較を組み込んだものがインクリメンタルリフト測定と呼ばれるケースが多く、両者を組み合わせることが現在のベストプラクティスです。

Q5. 業種によってゲーム内広告のインクリメンタルリフトに差はありますか?

A. あります。Frameplay × Happydemicsの2025年調査(173キャンペーン)では、ライフスタイル・リテール(+13ポイント)が最も高く、レジャー・カルチャー(+7ポイント)、FMCG(食品・日用品等)は+4ポイントという順になっています。FMCGは既存認知水準が高いためリフト幅が相対的に小さくなりますが、「想起の優先順位を引き上げる」効果として実質的な価値があります。

Ad-Virtuaのゲーム内広告でインクリメンタルリフト測定を始めるには

Ad-Virtuaのゲーム内広告は、インクリメンタルリフト測定の前提条件を整えやすい媒体特性を持っています。

  • 視認率最大96%(Web平均67%比):コントロール群との差を生み出すだけの広告接触量が確保できる
  • タイムインビュー3.1秒水準(Anzu × Lumen Research基準を上回る実績):アテンション指標の前提を満たしやすい
  • 600タイトル以上に対応(公式サイト、2026年5月時点):コントロール群を別タイトルで構成する際の設計自由度が高い
  • 専任アカウントマネージャーによるサポート:測定設計の相談や第三者調査(Happydemics等)との連携調整にも対応

⚠️ 視認率・タイムインビューはAd-Virtua自社調査・第三者調査参照値です。

「ゲーム内広告の効果を定量的に証明したい」「測定設計から相談したい」という企業は、まず現在の配信規模と測定目的を整理した上でご相談ください。インクリメンタルリフト測定は一度設計を整えれば、継続的なキャンペーンの投資対効果を定量的に示す仕組みになります。

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