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ブランドリフト測定とは?評価指標・手法・費用を実務で使える形で解説

ブランドリフト測定とは、広告・マーケティング施策によって「ブランドへの認知度・好意度・購買意向がどれだけ向上したか」を数値化する手法です。クリック数やCVRでは計測できない「心理的変化」を可視化し、ブランディング広告の費用対効果を正しく評価するために使います。
この記事でわかること:
- ブランドリフトの定義と、サーチリフト・コンバージョンリフトとの使い分け
- ファネル別に設計すべき評価指標の体系
- 主な測定手法3種類の特徴と比較
- 媒体別の費用目安と予算規模別の現実的な選択肢
- 測定精度を下げる落とし穴と改善策
ブランド認知・広告想起率・好意度の変化を数値で把握したいマーケティング担当者に向けた内容です。
なぜクリック数・CPAで測ることが間違いなのか

ブランディング広告の効果をCTRやCPAで評価しているケースは多い。しかしこれは、測定の目的と手法がずれている状態です。
ブランディング広告の目的は「今すぐ購買」ではなく、「将来の選択肢に入ること」——つまり認知・好意・想起の積み上げです。行動指標は短期の刈り取り広告に適した物差しであり、ブランド広告に使うと「数字が悪い」「効果がない」と誤判断しやすくなります。
広告の目的 | 適切な評価指標 | 不適切な評価指標 |
|---|---|---|
認知拡大・想起獲得(ブランディング) | 広告想起率、ブランド認知率、好意度 | CTR、CPA、ROAS |
検討促進(ミドルファネル) | サーチリフト(指名検索の増分) | インプレッション単体 |
購買転換(ロワーファネル) | コンバージョンリフト、売上増分 | ブランドリフトのみ |
ブランディング投資の価値を正しく評価するには、ファネルの位置に合った指標を選ぶことが出発点になります。
ブランドリフトとは:基本定義と測定の仕組み

ブランドリフト(Brand Lift)とは、特定のキャンペーン・広告活動によってブランドへの評価がどれだけ向上したかを示す指標群です。「広告接触者の指標値 − 非接触者の指標値」で算出されるリフト値(上昇幅)で表します。
出典:電通マクロミルインサイト(dm-insight.jp/column/brand-lift/)、2026年4月確認
測定の基本設計
ブランドリフト調査は、ランダム化比較試験(RCT)の考え方を応用します。
- 広告を配信するグループ(接触群)と配信しないグループ(非接触群)を無作為に分ける
- 同一条件でアンケートを実施し、認知率・想起率・好意度などを比較する
- 「接触群の回答率 − 非接触群の回答率」をリフト値として算出する
この設計により、「広告がなければどうだったか」という反事実を推定できます。売上などの結果指標だけでは見えない「広告によって生じた心理的変化」を数値で捉えるのが目的です。
3つのリフト指標の使い分け
指標 | 測定対象 | ファネル位置 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
ブランドリフト | 認知度・想起率・好意度(心理変化) | アッパー(認知・興味) | ブランディング広告の効果把握 |
サーチリフト | 広告接触後の指名検索・関連検索の増分 | ミドル(興味・検討) | 広告が検索行動を促進したか把握 |
コンバージョンリフト | 広告接触後の購買・申込の増分 | ロワー(購買) | 購買への直接貢献度を測定 |
出典:Digital Identity(digitalidentity.co.jp/blog/web-ads/brand-lift-search-lift.html)、2026年4月確認
ファネル別に設計すべき評価指標
ブランドリフト調査で「何を測るか」は、施策の目的とファネル段階によって変わります。以下はマーケティングファネル別の指標体系です。
リーチ・露出系(認知の前段階)
広告が「届いているか」を確認するための基盤指標。これ単体では効果の根拠にならないため、次の認知系指標とセットで評価します。
- インプレッション数 / ユニークリーチ:何人に何回届いたか
- フリークエンシー(平均接触回数):1人あたりの広告接触回数
- ビューアビリティ:IAB/MRC基準(ピクセル50%以上 × 連続1秒以上)で計測。広告が実際に見られる状態だったかの指標
認知・想起系(ブランドリフトのコア)
ブランドリフト調査の中心となる指標群です。
指標名 | 測定方法 | ポイント |
|---|---|---|
純粋想起率(Unaided Recall) | 「どのブランドの広告を見ましたか?」(選択肢なし) | 自発的に思い出せる率。最も厳しい想起測定 |
助成想起率(Aided Recall) | 「〇〇の広告を見ましたか?」(ブランド名提示あり) | 提示された上での認識率。純粋想起より高く出やすい |
ブランド認知率 | 「知っているブランドはどれですか?」 | ブランドの存在を知っているかの基礎指標 |
メッセージ想起率 | 「その広告で何を伝えていましたか?」 | 訴求内容が正しく伝わっているかの確認 |
態度・評価系(ブランド好意の変化)
認知の次に育てるべき「ブランドへの感情的評価」を測ります。
- 好意度(Brand Favorability):ブランドへの好感・信頼の変化
- 比較検討意向:「購入を検討する候補に入れますか?」
- 推奨意向(NPS):「他の人に勧めますか?」
購買意向系(行動への橋渡し)
- 購入意向率:「近いうちに購入したいと思いますか?」
- 来店意向:店舗訪問の意向変化(外食・小売向け)
効率系指標:CPB(コストパーブランドリフト)
ブランドリフト測定では「リフト値の高さ」だけでなく、CPB(Cost Per Brand Lift)で効率を評価することが重要です。
CPB = 広告費用 ÷ リフト値(ポイント)
たとえば1,000万円の出稿で広告想起率が5ポイント上昇した場合、CPBは200万円/ポイントになります。同じ予算でCPBの低い媒体を選ぶことが、ブランド投資の効率化につながります。
出典:CyberAgent AD.AGENCY(cyberagent-adagency.com/column/298/)
主な測定手法3種類の比較

ブランドリフト調査を実施する方法は大きく3種類あります。それぞれの特徴を把握した上で、目的・予算・測定設計に合う方法を選んでください。
手法 | 特徴 | メリット | デメリット | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
インバナーサーベイ | 広告バナー枠内にアンケートを直接表示 | 回答率が高い・リアルタイム計測 | 設問数1〜3問に限られる | Google/YouTube・Meta等の主要媒体での計測 |
リードバナーアンケート | バナークリック後に専用ページへ誘導 | 設問数の制限なし・詳細設計が可能 | ページ遷移による離脱で回答率が低い | 詳細な設問が必要な調査向け |
調査会社モニタ活用 | マクロミル・GMOリサーチ等の保有モニターを対象に実施 | TVCMなどオフライン広告にも対応・クロスメディア測定が可能 | コスト・時間がかかる | TVCM・OOHとデジタルのクロス効果測定 |
出典:電通マクロミルインサイト(dm-insight.jp/column/brand-lift/)、2026年4月確認
ツール型の測定(行動データ推計)
アンケートを使わず、サイト訪問・検索データ等の行動データからブランドリフトを推計する手法も登場しています。設問設計やサンプル確保の負担を省ける一方、あくまで推計値である点に注意が必要です。
媒体別の費用目安と特徴
各媒体でのブランドリフト測定費用の目安です(2024〜2025年公開情報時点)。為替変動・プラットフォームの最新要件により変動するため、実施前に各社の公式ページで確認してください。
プラットフォーム | 費用目安 | 向いている指標 | 特記事項 |
|---|---|---|---|
Google / YouTube | $15,000〜$60,000(10日間)※約225〜900万円 | 広告想起・認知度・購入意向 | 1問: $15,000、2問: $30,000、3問: $60,000。RCTを自動設定 |
Meta(Facebook / Instagram) | $30,000〜(約450万円〜) | 広告想起・購入意向 | ストーリーズとの組み合わせが多い |
ABEMA | 200万円〜 | 若年層の認知・好意度 | TVCM代替として大型予算向け |
TikTok | 500万円〜 | 広告想起(若年層) | 短尺動画の想起率測定に適する |
LINE | 100万円〜(ネット金額) | 認知度・好意度 | 国内ユーザーへのリーチ特化 |
X(旧Twitter) | 追加費用なし | 広告想起 | 出稿額1,000万円以上の条件あり |
調査会社(マクロミル等) | 個別見積もり | クロスメディア全般 | オフライン広告対応・カスタム設計が可能 |
ゲーム内広告 | プラットフォームによる(要問合せ) | 視認率ベースの想起・好意度 | 没入型コンテキストで高い視認率・想起率 |
出典:Google広告ヘルプ(support.google.com/google-ads/answer/9049373)、skettt.com/column/brand-lift-survey(2026年4月確認)
予算規模別の現実的な選択肢
「ブランドリフト測定は大手ブランドだけのもの」ではありません。予算規模に合わせた現実的な手法を整理します。
大手ナショナルクライアント(1,000万円以上)
複数媒体のブランドリフト測定を組み合わせ、クロスメディア効果を検証できます。
- Google/YouTube BLS + Meta BLS + 調査会社(クロスメディア測定)
- TVCMとデジタルの相乗効果を媒体横断で把握
- フリークエンシーキャップの最適化にリフトデータを活用
中堅ブランド(100〜500万円)
主要デジタル媒体でシンプルな1〜2設問の測定から始めるのが現実的です。
- YouTube(1問: $15,000相当)でブランド認知・広告想起を測定
- LINE(100万円〜)で国内ユーザーの認知・好意度変化を把握
- ABEMA(200万円〜)で若年層への到達を確認
予算が少ない・まずは試したい場合
アンケートコストをかけずにブランドへの反応を観察する方法があります。
- サーチリフト観測:広告出稿前後でブランド名・指名検索数の変化をSearch Consoleで確認
- 自社モニタアンケート:顧客データベースや既存ファンへの簡易調査
- X出稿(1,000万円以上の場合は追加費用なしで利用可能)
測定精度を下げる5つの落とし穴
ブランドリフト測定は設計を誤ると、リフト値が実態より高く・または低く出る可能性があります。実務で注意すべき点を確認してください。
1. サンプルサイズが不足している
統計的に有意なリフト値を検出するには、接触群・非接触群それぞれで数百〜数千件の回答が必要です。サンプルが少ないと「リフトが検出されない」という結果でも、実際には効果があった可能性があります。
2. 接触群と非接触群の属性がずれている(セレクションバイアス)
年齢・性別・地域等の属性バランスが偏ると、広告効果以外の要因でリフトが生じる可能性があります。RCTを正しく設定し、属性をコントロールすることが前提です。
3. 設問が誘導的になっている
「〇〇ブランドの広告を好意的に感じましたか?」のような誘導的な設問は結果を歪めます。「どのブランドの広告を見ましたか?」のように中立的に設計してください。
4. 接触回数と測定タイミングがずれている
媒体によって「最適接触回数」が異なります。電通マクロミルインサイトの事例では、YouTubeは4回目の接触でリフト値がピークに達する一方、テレビCMは2回目でピークを迎えることが示されています(出典: dm-insight.jp/column/brand-lift/、2026年4月確認)。接触が少なすぎる段階で測定しても、リフト値は小さく出ます。
5. 商材がブランドリフト測定に向いていない
検討期間が極端に短い商材(衝動買い・価格訴求商品)は、認知・好意度の変化が購買に結びつくまでの時間が短く、リフト値との相関を見出しにくいケースがあります。
ブランドリフト測定に向いている企業・向いていない企業
こんな企業・商材に向いています
- 検討期間が長い商材(自動車・住宅・保険・高額家電):認知→好意→検討のファネルが長く、リフト値と将来の購買行動の相関が取りやすい
- 新商品ローンチ期:発売前後の認知率・想起率の変化を追うことで、市場導入の速度を確認できる
- 若年層・特定層へのブランド浸透を狙っている企業:ターゲット層に絞ったアンケート設計で、層別のリフト効果を把握できる
- TVCM・大型キャンペーンの投資対効果を証明したい企業:経営層への説明責任を果たすために数値根拠が必要なケース
- 複数媒体を組み合わせている企業:クロスメディア効果を定量化し、予算配分の最適化に活用できる
こんな企業・商材には注意が必要です
- EC中心・衝動買い商材:購買サイクルが短く、認知→好意度変化が購買に反映されるまでの期間が短い。コンバージョンリフトで直接効果を測る方が合っている場合がある
- 予算150万円未満のキャンペーン:主要プラットフォームの最低予算要件を満たさず、測定自体が設定できないケースがある
- ブランド認知率がすでに非常に高い大手ブランド:天井効果でリフト値が小さく出やすく、測定の感度が落ちる
ゲーム内広告はなぜブランドリフト値が高くなるのか
ブランドリフト測定を実施する上で、「接触品質の高い媒体を選ぶ」ことがリフト値に直結します。接触していても見られていなければ、ブランドへの心理的変化は起きません。
ゲーム内広告(ゲーム空間の看板・モニターへの動画配信)は、このビューアビリティと想起率の両面で高い測定値を示しています。
指標 | ゲーム内広告(Ad-Virtua実績) | 比較基準 |
|---|---|---|
視認率 | 最大96% | 業界平均67%(出典: Ad-Virtua公式サイト、2026年4月確認) |
広告想起率(助成) | 約58% | 他Web広告の約33%と比較して約1.8倍 |
広告想起率(純粋) | 約48% | 他Web広告比で高水準 |
広告好感度 | 約85% | — |
出典:ad-virtua.com/column/game-ad-success/、ad-virtua.com/column/gameapp_ads_summary/(2026年4月確認)
視認率が高い理由は、ゲームプレイの没入状態で広告が自然に視野に入るからです。インタースティシャル広告のように「強制表示」ではなく、ゲーム空間の景観として存在するため、好感度を損なわずに接触できます。
ブランドリフト測定の効率指標CPBの観点でも、視認率が高く想起効率が良い媒体は、同じ予算でより大きなリフト値を生み出しやすくなります。
Ad-Virtuaが適合する企業の条件
- ブランド認知率・広告想起率を向上させる施策を探している
- TVCM・SNS広告の補完としてブランドリフト改善を狙っている
- 若年層(10〜30代のゲームユーザー層)への認知拡大を課題としている食品・飲料・日用品・外食・交通系ブランド
- 現行の広告出稿でビューアビリティ低下・CTR低下が課題になっている
ゲーム内広告の仕組みや費用感については、以下の記事で詳しく解説しています。
よくある質問
Q. ブランドリフト測定は小規模ブランドでも実施できますか?
Google/YouTubeやMeta等の主要プラットフォームは最低予算要件が150万円〜450万円程度かかるため、小規模キャンペーンには向いていません。予算が少ない場合は、Search Consoleで指名検索数の増減を見る「サーチリフト観測」や、自社モニタを活用した簡易アンケートから始めるのが現実的です。
Q. ブランドリフト調査の設問はいくつ設定できますか?
プラットフォームによって異なります。Google/YouTubeは費用に応じて1〜3問が標準。調査会社のモニタ調査を使えば設問数の上限は基本的にありません。ただし設問が増えると回答者の疲労につながるため、5〜8問程度に収めることが推奨されています。
Q. ブランドリフトが検出されなかった場合はどうすればよいですか?
Googleの公式ヘルプは、①ターゲティングの見直し、②クリエイティブの見直し、③設問設計の見直しを推奨しています(出典: support.google.com/google-ads/answer/9049373、2026年4月確認)。特に「設問の中立性」と「サンプルサイズの充足」は再確認が必要です。また測定タイミングが接触回数の少ない段階だった可能性もあるため、フリークエンシーが十分に積み上がった後で再計測することも有効です。
Q. サーチリフトとブランドリフトのどちらを優先すべきですか?
目的によります。「ブランドが認知・想起されているか」を知りたい場合はブランドリフト。「広告が検索行動を増やしているか」を知りたい場合はサーチリフト。予算に余裕があれば両方を組み合わせることで、認知→検討のファネル効果を一貫して把握できます。
Q. ゲーム内広告でブランドリフト測定はできますか?
ゲーム内広告プラットフォームによっては、独自調査によるブランドリフト指標を提供しているケースがあります。詳細はプラットフォームへの問い合わせが必要です。なお、視認率・想起率などの基本指標は公開されており、ブランドリフト測定の前提となる「接触品質」の評価に活用できます。
まとめ:ブランドリフト測定を正しく使うための3つのポイント
ブランドリフト測定は、ブランディング広告の価値を数値で証明するための実務ツールです。正しく活用するために以下の3点を押さえてください。
- ファネル段階に合った指標を選ぶ:認知拡大フェーズではブランドリフト、検討促進ではサーチリフト、購買転換ではコンバージョンリフトと、目的に合わせて使い分ける。
- 測定設計の品質を担保する:サンプルサイズの充足・セレクションバイアスの排除・設問の中立性が測定精度の前提。プラットフォームまかせにせず、設計を確認する習慣を持つ。
- リフト値だけでなくCPBで効率を評価する:どれだけリフトしたかだけでなく、「1ポイントのリフトにいくらかかったか(CPB)」で媒体の効率を比較することが、予算配分の最適化につながる。
ブランドリフト測定は大手ブランドだけのものではありません。自社のファネル課題と予算規模に合った手法から始め、継続的に積み上げることが重要です。
ブランドリフト向上に向けた広告施策の選択肢については、以下の記事もあわせてご覧ください。
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WRITTEN BY
水野 征太朗
アドバーチャ株式会社代表取締役CEO | 学生時代からインディーズゲーム開発者として、複数のゲームを開発・リリース。名古屋大学経済学部を卒業後、アビームコンサルティング株式会社にて、メタバース/XR/センサーなど先端技術を用いたソリューションの提案・開発に従事。その後、アマゾンジャパン合同会社にてデータ分析・ツール開発・プロセス改善等を経験。2022年にアドバーチャ株式会社を創業。




